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総合評価

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     笠井潔の矢吹駆シリーズの第1作『バイバイエンジェル』の前に書かれた作品。矢吹駆の第ゼロ作とされている。書かれて、20年経ってから発表された。矢吹駆の原点ともいうべき作品。  笠井潔の体験を物語にする。左翼活動家のリーダーだったが、連合赤軍のリンチ事件から離れた。その時の体験と感じたことが作品となった。矢吹駆シリーズの出発点である。  なんというペダンティックな文章だろう。饒舌と言えるほどの言葉を吐き出している。『バイバイエンジェル』からは、言葉が整理されている。ここで繰り返されるのは、「完璧な自殺」  カケルは、学生運動に伴うリンチ事件の首謀者として、三年間の刑務所生活を終え、ひっそりと暮らしていた。そして、憑二から接触があり、元恋人の風視と会う。  カケルは、風視に革命は三つの革命が必要という。それは、個人、社会、そして存在そのものに焦点を当てた段階的な変革を示す。  自己の革命は内面的な変化を促し、価値観や信念の刷新、精神的成長を目的とする。  社会の革命は、自己の革命を経た人々が協力し、政治や文化、経済の制度を刷新することで、外部社会に影響を与える。  存在の革命は、これらを超えた人間存在そのものに関わる変革であり、科学技術の進歩や意識の拡張、肉体や形而上学的限界の超越を目指すもので、最も根源的な人間のあり方への問いを投げかける。 この存在の革命というのが独特な笠井潔の想いでしょうね。 革命の一般的な定義は、「既存の社会や政治の秩序、あるいは思想や技術などを、短期間に根本から変える抜本的な変革」である。  カケルは「革命家とは自身の趣味や正義感で革命家になった者ではない。革命家が革命を選ぶのではなく、革命が革命家を選ぶ。革命家とは革命によって選ばれ摑まれてしまった自身の宿命を自覚した人間に過ぎない」という。  カケルの元恋人 北澤風視との対話。人を殺していけない論。『オイディプス症候群』のナディアとの論議より、風視との論議が、具体的で優れている。  カケルはいう「風視、君はこの世界に棲んで、殺さないで生きられると思うのか」 風視はいう。「妊娠して、子供を産んで私は変わった。わたしは殺したくない。それは規範でも倫理でもない。生きること自体から切り離された観念に拘束されているからでも、殺されたくないから殺さないという損得計算でもない。殺したくないと、生きていること自体がわたしに感じさせる。わたしは殺したくないの。殺したくないと感じる事実の方が殺さなければならないという認識よりも重たいと思う」  爆弾テロ集団のリーダー憑二。革命のためなら殺人を正当化できると考えている。彼が命令するスパイへの拷問は、すざましい。それを嬉々と語るハレンチ。憑二と風視と葦男とカケルで「第三世界の貧民を毎分一人の計算で殺し続けている、日本最大の怪物的強盗侵略企業の首都会社」の爆破作戦をする。カケルは、殺人を前提とする作戦を行う憑二に、反対もせず、従う。そして、多数の死者を生む。 別に、ビルを破壊するなら、夜間でもいいはずなのだが。そういう考慮もない。  カケルは、憑二と哲学論争もしない。風視との論争だけだ。まだ、カケルは現象学哲学を実装していない。カケルは、革命について、まだ真剣に向き合っている。それにしても、革命とは?  憑二の言っていた幻の中央委員会を目指して、海外に逃亡するカケル。そこで、ルーレットに興じる。カケルは勘はいいけど、のめり込むタイプなんだね。海辺で、女の子と仲良く遊ぶ。そしてその女は、ランボーの詩を歌う。そして、なぜかカケルは「すべてよし」と言って物語は閉じる。カケルのキャラクターが分裂している。まだ、荒けづりだ。この本を最初に読んだら、矢吹駆シリーズは読まなかったと思う。

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    投稿日: 2025.09.14
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    ミステリーではないということだが、シリーズの一部ということでミステリーカテゴリに入れる。 読むかどうか迷ってしまう。あるところで処女作と書かれていたが、そういったものを後出しされるのはあまり好きではないので。しかも矢吹駆なイメージが崩れるほど過激な内容?らしい。

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    投稿日: 2015.03.06
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    矢吹シリーズ第0作って言われてる作品。 初期3部作読んだんで、そろそろいいかなぁと思って、読んでみた。 まったくミステリ色のない作品。シリーズ読んでなかったら、きっと読んでないかも……。

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    投稿日: 2013.05.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

     時代は全学共闘会議(全共闘)の終結から五年後。世界同時革命を目指し、リンチ事件の首謀者として逮捕され、刑期を終えて出所し、ひっそりと暮らしていた男に、かつての恋人から声がかかる。求めに応じ、かつての同志と再会した男は、同志から新たな革命運動への参加を求められ、男は、同志の革命思想を粉砕するために、あえて計画に乗ることにする。  これは、矢吹駆がナディア・モガールと出会う前、「革命」という高みを目指し、「革命」に目が眩み身を焼かれ、地に堕ちた熾天使(イーカロス)の、再生の物語――。  はっきり言って、これは推理小説ではなくハードボイルド小説、厳密には「革命」という名の観念に憑かれたテロリストを描いた小説である。だが、誰にでも現在があり、過去がある。推理小説ではなく、「矢吹駆」という「人間」に興味があるのであれば読んでほしい。これを読めば、今までとは違った観点から過去作品、特に『バイバイ、エンジェル』を捉えることになるだろう。

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    投稿日: 2012.11.11
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    矢吹駆シリーズ第ゼロ作。冒頭で躓きそうになりましたが、読了後は満足感で一杯。もちろん全てを理解したわけではないけど、『バイバイ、エンジェル』へと至る、カケルの精神的な遍歴を十分に知ることはできたと思う。それとは別に、本作品の中心概念だと思われる「革命」、学生運動等、大変勉強になった。

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    投稿日: 2012.01.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    矢吹駆シリーズ リンチ事件の逮捕から出獄したカケルをつける人物。かつての同志、恋人の北澤風視。新たな爆弾テロを企てる組織のリーダー憑二。実行された爆弾テロ。風視の死。  2011年5月21日読了

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    投稿日: 2011.05.21
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    逆説を逆説で補完したらイチ、という考え方もありますよ 衝動を理念で補完したならそれは全能感というやつではないだろうか 学生運動家のなかには、全能感に酔いしれて無茶をした人もあったかもしれない そういったものに対する批判者として、虚無の観念が浮かび上がってくるのだが 実際的な暴力・権力に対して、観念は太刀打ちできない 無力な批判者の「傲慢さ」に、主人公は怒る そして・・・ まったく救いのない小説です しかもこれは、長い戦いの始まりにすぎない

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    投稿日: 2010.11.21
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    ■矢吹駆の罪と罰を描いた、シリーズ第ゼロ作 学生運動に伴うリンチ事件の首謀者として、三年間の刑務所生活を終え、ひっそりと男は暮らしていた。ある日彼は、自分が誰かに尾行されていることに気付く。待ち伏せてみるとそれは昔の仲間であったのだが……。頭蓋の奥で響く囁きに誘われるように飛翔を試みた、かつて革命の時生きた男は、何を思い、何を求めるのか。

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    投稿日: 2010.05.14
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    最初の一文で思わず本を放り投げそうになる一冊。うわあ、たしかに拒否されてるよ~(笑)。 「矢吹駆シリーズ第0作」というこの作品。まあたしかにシリーズの一環として捉えられないでもないけれど。まず、ミステリじゃないし。相当難解だし。いきなりこれから読み始めようというのは、かなり苦しいと思う(いや、そう思うの絶対私だけじゃないって!)。「哲学者の密室」くらいまで読み終えてからのほうが、まだ理解できるんじゃないかな。「完璧な自殺」の観念だとか「合理的な大量殺人」だとか。

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    投稿日: 2009.12.30