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堆塵館
堆塵館
エドワード・ケアリー、古屋美登里/東京創元社
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総合評価

27件)
4.2
11
8
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    アイアマンガー三部作のうちの第一部. ロンドン郊外のゴミの山に築かれたゴミ邸宅にすむアイアマンガー一族.その中のクロッド少年と家政婦として外部からやってきたルーシーが主人公で,アイアマンガー一族は生まれてすぐに「誕生の品」をそれぞれ贈られ,それを一生身につけて暮らすという謎の習慣があるが,実は誕生の品とは・・・というお話. なかなか奇妙で,「シザーハンズ」や「チャーリーとチョコレート工場」と言ったら通じるか?

    0
    投稿日: 2024.08.26
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    ゴミで大金持ちになった一族の ゴミの中の館 19世紀イギリスの徹底した階級社会で 凄まじい悪臭が伝わるし空気がわるい 挿絵がヘンな魅力あって読んでしまった 三部作の第一作 おわり方も謎を残していて なかなかだ けど当分エドワード・ケアリーを読む予定は無い

    8
    投稿日: 2024.04.04
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    期待して読んだ、ケアリー初読書です。おもしろいです。 翻訳の古屋美登里さんが上手いのかな、読みやすい文章でした。登場人物が単純に2つの名前をもっていることになるお話しなので、ただで混乱しそうですが、分かり易いです。 解説によると、これは子供に向けたお話だそうです。だから分かり易いのでしょうか。 このプロットって、「シャドーハウス」そっくりだなと思ったのは私だけではないだろう。

    0
    投稿日: 2023.03.11
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    最初こそ、設定の奇抜さに戸惑ったが、世界観を理解した瞬間、変わりました。これは面白い。 十代の少年少女向けに書かれたというのも、奇妙な絵や世界観でありながら、単純に「クロッド」と「ルーシー」のハラハラドキドキの大冒険にハマってしまい、読書の止めどきが難しい感じで分かる。 それにしても、この世界観、私は好きですね。 人々から捨てられたもので造られた館の周りに、更に屑山があり、館の地上と地下で住む人々が分けられている、この設定自体がひとつの人生を象徴しているようにも思えてきます。前者は私の嗜好で、後者は私の性格なんてのは、悲観的すぎるだろうか。 更に、その屑山の中から価値のあるものが誕生することや、物と人との関係性の奇妙さは、物を大事にする大切さや、ゴミ問題、物で溢れかえる現代社会への皮肉にも感じられました。 まだ三部作のうちの初っ端で「⭐五」なのは、どうかとも思うが、物語と世界観がこれだけ上手く密接に絡み合っているのが素晴らしく、メッセージも感じられたし、何より、クロッドとルーシーに思い切り感情移入出来る、作品の熱量が好きです。個性的な絵柄も、最初は不気味に見えたが、次第に愛嬌あるものに感じられました。

    9
    投稿日: 2020.10.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    スチームパンク?…ともまた違うか。塵芥を集積したロンドン郊外に住むアイアマガー一族と彼らの召使とその皆が住む大きな屋敷の物語。 塵芥の山に立つ屋敷が舞台なのだから、汚れに汚れた不潔な世界観、人間関係もゴチャゴチャ、登場人物たちも好人物っぽいのは一切いない。主人公もなんだかフワフワだし、ヒロインは泥棒だし、それ以外の全員が悪役的。なのに、そのすべてがちょっと気になるというか居心地がいいというか。なんという世界観だ、これ? この1冊だけを手に取ってみたが、早く続きが読みたい。 ところで、3部作というより、全3巻なのではないだろうか?でないと、このラストは締めになってないぞ。

    2
    投稿日: 2020.07.31
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    三部作、貪るように読みました。子供の頃ハリーポッターにハマった時と同じ気分を味わえました。 ティムバードンの世界観が好きな人にはおすすめ。映画化に期待…!

    0
    投稿日: 2020.07.24
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    ゴミの山に囲まれた館,堆塵館は一つの宇宙である.この世界の中の秩序はアイアマンガーと分かち難く結ばれた誕生の品にかかっているようだ.一人の少女ルーシーがアイアマンガーのクロッドと出会い,その逢瀬が恋と館の崩壊へと進んでいく.最後,クロッドの善良なる心の結果のもたらしたものを思うと残念で,だから次の巻でのなんらかの展開が気になる.

    0
    投稿日: 2020.02.09
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    面白い。あまりにも面白い。 19世紀後半、ロンドンの外れにある巨大すぎるゴミ捨て場には、ツギハギのゴミ屋敷で暮らす、ゴミで財を築いた世にも汚らわしい一族が、ある秘密を抱えてうごめいていた・・・。 この導入部だけでもう堪らない。 続きを読むのが楽しみだ。

    1
    投稿日: 2019.09.22
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    BURRN!の書評欄で、そこを担当する本訳者自身が勧めているのを見て読みたくなった作品。まだ三部作の一だけど、のっけからグイグイ惹き込まれる内容。ゴミ屋敷が舞台で、冷静に考えると気持ち悪くなってくるんだけど、たぶんそこに住まう人同様、読み手の側もだんだん慣れてマヒしてくる。人とモノの関わりが物語の中心だけど、ふとしたきっかけでタガが外れて、だんだん対立構造へと移ろっていく不気味さ。作者自身が描いたというイラストのおかげもあって、いやでも応でも世界観に飲み込まれる。読み終わって尚、ちょっと酔ってるくらい。続きを早く読まなくちゃ。

    0
    投稿日: 2019.06.25
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    物語の舞台となるのは19世紀後半のロンドンのはずれにあるゴミ捨て場である。そのゴミ捨て場中央には大きな屋敷が鎮座し、アイアマンガーという一族が付近を管理・支配していた。 アイアマンガー一族には生まれつき誕生の品が与えられる。誕生の品は大事なもので肌身離さず持っているというのが、決まりであった。 そして主人公、クロッドは誕生の品の声が聞こえるのだ。 歴史的背景とファンタジー的設定が絡まり合って独特の世界観をなした本作は、特殊な能力を持ったアイアマンガーであるクロッドと無理やりアイアマンガー家に連れてこられた孤児のルーシー・ペナントという2人の人物を中心にして、読者の前で何度も何度も万華鏡のように展開を、世界を、変えてみせる。 そして、誕生の品やアイアマンガー一族の謎など驚くべき答えを見せつけながら予想もできない方向に物語を飛ばしていくのだ。 最初から最後まで面白く、打ちのめされるようなファンタジーの傑作。

    1
    投稿日: 2019.06.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    表紙を見ただけで絶対この本面白いと思わせる妖しさ!表紙も中のイラストも、ちょっとグロテスクなんだけどこの本の世界観がこれ以上無いくらいに表現されている。 まず設定がすごくて、アイアマンガー一族がみんな誕生の品を肌見離さず持っていること、それが一つ一つ名前があって自分の名前を喋ること、クロッドにだけその声が聞こえる(後に一族で何人かはそれが可能であることが判明するが)ことなどなんじゃこれはと思いながらもグイグイ引き込まれて、クロッドや、ルーシーに同調せずにいられない。 児童むけ?らしいが。ハマった。 早く続きを読みたい気持ちでいっぱいです。

    0
    投稿日: 2019.02.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    え~!! ここで終わり? これじゃ、すぐに続きを読むしかないじゃん! というのが読み終わった直後の感想。 週刊少年ジャンプ並みの引きの強さ。 19世紀後半、ビクトリア女王の頃のイギリス…からちょっとずれた位相にあるロンドン郊外にある巨大なゴミ屋敷が舞台。 何しろ地上7階、地下6階の建物に一族みんなで住んでいて、館の中には駅まであるのだから、その巨大さも知れようというもの。 主人公のクロッドは純粋なアイアマンガーの一族として、地上に部屋を持ち、大勢のおじ・おばや従兄弟・はとこたちと暮らしている。 両親は彼が生まれてすぐに相次いで亡くなり、彼が物の声を聴くことができるという特殊能力を持っていることで、一族の人たちに蔑まれ苛められているため、親しく付き合っているのはいとこのタミスくらいのものだった。 もう一人の主人公は、何代か前までアイアマンガーだったという血筋の孤児の少女・ルーシー。 純潔ではない彼女は下働きとして地下の召使い部屋で暮らし、上の人たちと出会うことは禁止されていた。 しかしクロッドとルーシーが出会ったことにより、堆塵館に住むアイアマンガー達に大きな異変が起こり始める。 物事は見た目どおりではない。 アイアマンガー一族は、生まれた時に何か一つ『誕生の品』を与えられ、それを片時も手放すことなく大切に扱わなくてはならない。 人と物が一対なのである。 アイアマンガー一族がゴミの山に隣接するゴミ屋敷に住んでいるのは、もともとゴミ拾いだった先祖が、ごみの中から価値のあるものを見つけ出してはそれを売ることによって財産を得てきたから。 その強引な取引方法によって、周囲の住民たちからは忌み嫌われている彼ら。 アイアマンガーと非アイアマンガー。 純血とそうでないもの。 きっちりと線を引き、そこに上下関係を固定させ、かれらだけの理屈で存在するアイアマンガー。 ゴミを出し、ごみの処理をアイアマンガーに押しつけながら、彼らを忌み嫌うロンドン市民の姿は、現代の私たちに通じるものがある。 と、最初は思いながら読んでいたが、読み進むにつれ「千と千尋の神隠し」を彷彿とさせてくる。 見た目どおりではない物事。 汚染されたゴミの山に押し流されそうになり、逃げ惑う人々。 ゴミが結集してできている巨大な人型がとめようもなく暴力的に暴れ、そしてほどけていく様子は正に「カオナシ」のシーンそのものだった。 名前を奪われたルーシーを助け、ふたりで堆塵館から脱出しようとするクロッド。 で、ふたりの逃避行はどうなったのかが分からないまま(というか、失敗したっぽい?)、第2部に続くのだ。 これは読まなきゃいられないでしょ。 私は「千と千尋の神隠し」をイメージしたけど、書評家の杉江松恋氏は「未来少年コナン」だという。 作者は宮崎駿のファンなのかもしれない。 でも、ごみ溜めの悪臭と不快な感触は、「千と千尋の神隠し」なんだよなあ。 最後に、なぜ生きもの全てに惜しみない愛情を与える心優しいタミスは、一族の人から軽く扱われていたのかが気になる。 優しすぎて、心が弱いことがそんなに悪いことなのか。 タミスは…本当にいい子だったよ。

    0
    投稿日: 2018.09.24
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    映画の「東京ゴッドファーザーズ」や「ミックマック」をイメージしながら。 ごみ山って魅力的なんだよなあ…臭くなければ。

    0
    投稿日: 2018.04.02
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    物語の世界観(その舞台となる堆塵館の設定構造)など強く興味惹かれ魅力を感じるけれど、物語中盤まではそんな舞台設定の説明というか、主要登場人物たちを囲む状況の異様の説明(紹介)に充てられた感じで展開は緩慢。ヒトとモノとの因果律のあかされたあたりにきてグッと物語が引き立ったかに見えたが(すぐれた着想!)しかし残念ながらそれ以降も物語世界に深く入りこむことはできなかった。登場人物の奇矯や不気味(グロテスク)のそのイメージ、それを表した多量の人物イラストについても魅力は感じるものの中途半端(稚拙)な印象をもった。

    0
    投稿日: 2018.03.14
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    まず表紙に魅了された。目が吸い寄せられた。 作者自身による絵だと、後書きで知って納得。 「アバラット」みたいだなーという直感が当たった。 物語が表紙からにじみ出ている。 期待を裏切らないファンタジーだった。 あと二冊楽しみ!

    0
    投稿日: 2018.01.30
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    「絶賛意見が多いけど、ジュブナイルものだから微温いんだろうなぁ」と失礼なことを思いながら読みはじめたところ、傑作。 それまで寓話的と思われたストーリーがぐっとリアルになる中盤の展開には唸ってしまう。

    0
    投稿日: 2017.12.29
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    YAとして書かれた作品のようだけど、YAでは売れそうにないので一般向けとして売っている、という印象の本。 日本の中高生に受けるかは疑問。誕生の品含め、すさまじくたくさん名前が出てくるので、翻訳小説が苦手な人にもおすすめできない。 絵と設定は魅力的。ディケンズ的でもあるし、ティム・バートンのアニメ(で見たい!)のようでもある。 ゴミで財をなした一族が世間的には地位が低いのに、実際は貴族のような暮らしをしているというのも、キリスト教徒がしたがらない金融業でのしあがったユダヤ人や、インドの不可触民の富豪を思わせ、象徴的。 ただ、この本ではまだ話が始まったばかりで、謎も多く残されたまま。これ続刊が出るほど売れなかったらどうするつもりだったのだろうか。 苦言をいうなら、キャラクター設定は陳腐。ひ弱な劣等生だが実は隠された能力のある貴族の子と、容姿には恵まれないが勇気と知恵のある召使が惹かれ合うとか、意地悪な優等生、見捨てられる変り者、不気味な支配者などは今までにもたくさんあったので、今後どうひっくり返してくれるかにかかっているが、主人公が能力に目覚めて召使とともに力を発揮し、敵を倒し、謎を解き、社会を改革するなんてことのないようにお願いしたい。

    0
    投稿日: 2017.08.12
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    不思議で、奇妙で、不気味な空想物語。おもしろかった。この迷宮感はクセになる。 . 見返しにある建物の見取り図をチラチラしながら読むのが好き。絵もすべて著者が描いてるんだとか。 三部作の1。続きが気になる。

    0
    投稿日: 2017.05.23
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    あぁ、失敗した…いや、良い意味の失敗です。三部作とは分かっていたものの、どうしても早く読みたくてつい手に取ってしまい、読み出したらどっぷりハマってしまいましたが、続きが気になる!!揃ってから読めば良かった〜。ヴィクトリア時代でダークファンタジー、作者のエドワード・ケアリーの不思議な世界。読まずに年は越せませんでした。この作家さんの『望楼館追想』も読んでみたいのだが密林では相当高値だわ…。

    0
    投稿日: 2017.05.18
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    子どもも楽しいし、もちろん大人だって楽しい1冊。 怖くはないけど不気味な世界は好奇心をかりたてるね。 あとがきを読むとなってるとなかなか言葉遊びがちりばめられていて、英語で読めればどんなにか!(もちろん古屋さんの考え抜かれた妙訳です) とんでもないところで終わっているので、どうぞどうぞ続きも出ますように。

    0
    投稿日: 2017.04.30
  • キモ系ファンタジー

    独特の世界観を持つ小説は山ほどありますが、これもその一種。醜く汚い方向に寄った話というところが特徴的。 表紙の少年が主人公ですが、登場人物はみんなこんな感じの一癖も二癖もある者ばかり。最初は気持ちの悪い描写に多少の抵抗感を感じるのですが、読んでいる内に全く気にならなくなります。独自の世界が舞台で、この世界の前提となる知識を持たない状態で読むのはやはり楽しいですね。読みながらストーリー展開を推測するだけでなく、この世界の仕組みやり立ちまでも想像できるのは良いことです。 三部作の一作目ということで、続編が待ち遠しいシリーズです。 少々価格が高いですが、ためたポイントで買ってしまいましょう。

    0
    投稿日: 2017.04.08
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    初めは何のことか分からず混沌とした感じで始まるも、ある程度情況が理解できてからは面白くなってくる。 特に訳が素晴らしい。各章話者が変わり、話し言葉で語りかけてくるという形式なので、訳しやすいのかも知らないけれど、いかにも英文訳!ではなく、日本語としてこなれているので、すんなり理解できる。 後半からは、スリルが加わり、あたかもハリーポッターの映画を観ているような雰囲気になる。 アイアマンガー一族の描写には、ユダヤ人とその歴史を彷彿させる様に思ってしまう。 3部作とはいえ、それぞれある程度の区切りがついて終わっているのかと思っていたのだが、やはり連続しているのですね…次を読まざるを得ない様に出来てます。この先期待して良いのでしょうか?

    0
    投稿日: 2017.04.07
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    これが児童文学なのか。名前が力を持つ。ロンドンの汚穢を引き受けた一族。富を持つと同時に、差別もされる。当時のロンドンやパリってあまり清潔ではなかったんだな。そういうところはオースティンもブロンテ姉妹も描かない。江戸の方が多分清潔。これからはゴミ屋敷ではなく、堆塵館と呼ぼう。幼い恋の行く末がどうなるか、ルーシーは戻れるの?遅くても来年には次作を出してね、東京創元社さん。

    0
    投稿日: 2016.12.20
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    この秋は海外ものが豊作…(私にとって) 「望楼館追想」もいっぷう変わった話だったがこちらは三部作とあっていきなり梯子をはずされた結末にぼう然。 モノが意思を持つのは日本古来の付喪神信仰も連想。 結局クロッドはどうなったの?

    0
    投稿日: 2016.10.29
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    暗雲立ち込める空の下、塵芥の山の上にそびえたつ城のような館を背に、沈鬱な表情を浮かべた半ズボン姿の少年が懐中時計状のものを手にして立つところを描いた表紙画が何ともいえない味わいを出している。著者自身の手になるものだそうだ。アイアマンガー三部作と銘打ったシリーズの第一巻。表題はディケンズの『荒涼館』を意識したのだろう。貧しい人々が生きていくために屑拾いをし、親を亡くした孤児が売り買いされるロンドンの街外れを舞台に、まさにディケンズ張りの世界を描く。 主人公のクロッド・アイアマンガーは、堆塵館という大きな館に住むアイアマンガー一族の一員。先祖のセプティマスは土地を持たない屑拾いからはじめ、屑山に捨てられた不用品の中から金目の物を探し、他人の借財を買い集めて財を成した。その資金を元手にロンドン中のゴミの山を一か所に集めたのがここ、フィルチングだ。アイアマンガー家の力が大きくなるにつれ、人々はそれをそねみ、憎んだ。一族を不浄の者と蔑み、フィルチング区の壁の中に閉じ込め、区外へ出ることを禁じた。 アイアマンガーの者は、人々が見捨てた物、壊れた物、汚れた物に愛情を注いだ。それは自分たちと同じ臭いがするからだ。そして、屑の山の上に、ごみの中から使えそうな扉や窓枠を探し出し館を建てるに至った。それが地上六階、地下五階に及ぶ広大な堆塵館だ。地下にはロンドン直通の蒸気機関車が走り、騾馬を動力とする昇降機を備えた近代建築でもある。地上には純血種のアイアマンガー一族が暮らし、地下には、どちらか一方の親がアイアマンガーの血を引くものが、純血のアイアマンガーたちの世話をする役として雇われ、居住している。 水平的平面では、その職業に対する差別意識によって、他のロンドン市民から差別され、隔離されているアイアマンガー一族は、垂直的には、地上階と地下階で、支配する者と隷属する者とに二分されている。同じ地下にあっても、執事や家事頭には名前があるが、下働きの女たちは館に来るまでは所有していた固有の名前を取り上げられ、ただアイアマンガーと呼ばれることに甘んじなければならない。事ほど左様にこの物語は差別被差別、支配被支配の関係の上に成り立っている。 アイアマンガーの支配するフィルチングには、ロンドン市内でやっていけなくなった貧しい者、病人、罪人、借金取りに追われる者、異国の者が集まってきた。彼らはごみの選別の仕事を与えられたが、そのうち奇妙な病気が流行り出した。それに感染すると人が物化するのだ。それはやがて区外にも派生し出した。壁近くに住んでいたルーシーの両親もその病で死に、ルーシーは孤児院に入れられた。ところが、親のどちらかがアイアマンガーの血を引いていたらしく、ルーシーは館に迎え入れられ暖炉係として働くことになる。 ディケンズの小説で描かれているように、当時のロンドンの下層階級に位置する人々の暮らしは貧しく悲惨なものだった。ルーシーは、その階級を代表するヒロインだ。一方、市民からは白眼視されながらも、経済的には富裕層である純血のアイアマンガーであるクロッドは、上流階級とはいわぬまでも中流程度の階層に位置している。この二人の身分ちがいの恋が、主題になっている。階層社会がそれなりに保たれるのは、互いの不干渉が前提である。そこに亀裂が走れば、あとは革命まで一直線だ。 物語は、当然のように二人の出会いに始まり、禁忌の侵犯があり、安定していた構造に揺らぎが起こる方向へ動き出す。そのための仕掛けが、「誕生の品」と呼ばれるものである。アイアマンガー一族が、人が物化してしまう病気から免れているのは、誕生すると同時に、贈られる「誕生の品」をいつも身近に置いておくことにある。まあ、言ってみればお守りのようなものだ。屑の中から選ばれるそれは、蛇口であったり、浴槽の栓であったり、というものだが、ロザマッド伯母の誕生の品であるドアノブが紛失したことが、アッシャー家ならぬ堆塵館の崩壊の契機となる。 誕生の品には、それぞれ名がついている。たとえば、クロッドの誕生の品である栓は、ジェイムズ・ヘンリー・ヘイワードという。一族の中で、誕生の品の名前やその他の物の話す声が聞こえるのは、イドウィド伯父を除けば、クロッド一人だった。いつも家族から疎んじられているクロッドには「聴く人」の力が備わっていたのだ。みじめな少年が異界からやってきた王子様ならぬみすぼらしい孤児の力を借りて、輝かしい騎士に変容する。このあたりのみそっかすがヒーローに変身するあたり、典型的な昔話のスタイルである。もともと児童向けに書かれた絵入り小説らしく、堆塵館に吹きつのる嵐の中、物たちが反乱を起こす場面など、血沸き肉躍る痛快冒険小説のノリで、手に汗握る展開はまるで映画を見ているよう。 いわゆる幻想小説を期待すると、ちょっとちがうかな、という気にさせられるが、見捨てられたものが力を結集して群体を作るという発想など、手塚治虫の『鉄腕アトム』にあったエピソードを思い出した。口髭用カップが走り出すのにつられて、いろんな物が次々と命を授かったように動き回るあたり、日本の付喪神を髣髴させる。屑となった物や、社会から振り落とされ、無用の烙印を押された者を支配する頂点に立つアイアマンガー一族の長である祖父を向こうに回して、虐げられた者や物の側に立つクロッドとルーシーがどう闘うのか、次巻の刊行が待たれる。

    1
    投稿日: 2016.10.29
  • すべてがヘンテコなごみ屋敷ファンタジー

    19世紀ロンドンを舞台にした3部作の第1巻。ジャンル分けしにくい作品ですが、あえて分けるならファンタジーでしょうか。 とにかく読み始めから、この物語が持つ異様さに圧倒されました。独特な設定に、変人ぞろいの登場人物。なにもかもがヘンテコすぎて、いったいどんな話になるのか想像がつきませんでした。 なのに、読み進めるうちにぐいぐい引き込まれ、アイアマンガー一族の変人ぶりから目が離せなくなり、ついには彼らのことがすっかり好きになっていたのだから不思議です。特に気に入ったのはルーシーで、誰に向かっても物怖じしないところや、ズバズバと言ってのけるところがすがすがしく感じられました。ところどころにちりばめられた奇妙なユーモアや、中盤以降のスピード感ある展開もよかったです。 ルビが多めなので頑張れば子供でも読めそうですが、もし自分が子供のときに読んでいたら、きっと衝撃を受けたことでしょう。それくらい、唯一無二の作風だと思います。 難点は、値段がお高いこと。翻訳もの(翻訳料が発生する)&紙版がハードカバーということを考えると仕方ないのかもしれませんが、電子書籍で3000円は勇気がいるかと……。

    8
    投稿日: 2016.10.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    待ちに待った……というか、最早、邦訳は出ないもんだと思っていたエドワード・ケアリーの最新作。前2作は文藝春秋社から刊行されたが、本書は東京創元社から。 幻想的で閉ざされた世界は本作でも健在。というか、これが無ければエドワード・ケアリーじゃないよね。前2作よりもかなりその点は突き詰められていて、異様さは増している。めっちゃ濃い。 閉ざされた世界は最終的に破綻するしか道が無いのだが、その『破綻』もスケールが増している。 著者の手による装画もインパクトがある。特に眼と視線の表現が好みだった。第二部が早く出ないかな……。

    0
    投稿日: 2016.10.08