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東京タクシードライバー
東京タクシードライバー
山田清機/朝日新聞出版
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総合評価

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    13人のタクシードライバーの身の上話を収めたノンフィクション。 タクシー業界は一種のセーフティネットのように行き場のない人たちの受け皿になっているため、ドライバー達の経歴も種々雑多で実にさまざまな過去を持った人達が集まる。 妻に逃げられた元ホームレスや、バブル崩壊で約八億円もの借金を背負った元社長、子どもと専業主夫になった夫を養うためにタクシー業界に飛び込んだ元スーツアクターなど異色の経歴ばかりで、それぞれの人生がありとても面白かった。 無線屋ドライバーの何曜日の何時にどこで無線客が現れるかをもとにスケジュールを組み、配車センターのオペレーターの癖まで研究し尽くして確実に客を乗せて稼ぐテクニックがパチプロのようで興味深い。アナログからデジタル無線になってこの技が活きる余地がなくなったのが残念だ。 作者のフリーライター独立後の貧乏生活をつづったエッセイのような「長いあとがき」もクスッと笑えたりしんみりしたりするエピソードばかりで面白かった。

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    投稿日: 2022.11.16
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    「読む」というより、文字通り「聴き入って」しまったというような感覚。 13人分、それぞれがひとつの小説としても成立しそう。 酸いも甘いもしみじみと、著者も含めれば14人分、すうっと入って、静かに染み込んできた。 いい時間だった。

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    投稿日: 2022.08.28
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    13人のタクシー運転手がどのようにしてその職につくことになったのかを丁寧に書き綴ったドキュメント。 色々な人生があり自分自身の生き方を考えさせられると同時に、最終的に将来に希望を持っている運転手の方が多いことにホッとする部分もある。 後書きが必要であったかどうかは微妙なところ。

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    投稿日: 2021.02.28
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    人よりちょっと堪え性がなかったり、人よりちょっと運が悪かった人がタクシー運転手となって僕らと同じ日々を生きている。 たまたま乗るタクシーの運ちゃんにはとても複雑な事情がある。そして彼らだけでなく誰にでも事情がある。そんな当たり前のことを僕らは想像力を働かせる余裕が無くて気がつけない。 人にちょっと優しくなれる気がした

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    投稿日: 2020.06.14
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    4社の乗務員数人に取材した前職での挫折と現在の努力とちょっといい話が中心。所詮は4社乗務員、あまり過激で心打たれるエピソードはない。営業もお行儀良い4社スタイルでつまらん。それより著者のあとがきの方が行間から苦労が染み出てきて感動した。

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    投稿日: 2018.10.14
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    タクシードライバーってのは生きざまで、より所で、ため息なんだな。狭い空間の中、他人と同じ空気を吸い、同じ道を行く。ゆっくりと着実に、お気に入りのスピードで。目的地に到着後「ありがとう」と言える人間でありたい。そして、「こちらこそありがとう」と言える人間でもありたい。

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    投稿日: 2018.02.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    [いろいろある街の,いろいろある職で]ありとあらゆる背景を携える人間が集う東京で,タクシードライバーとして働く人々を対象にして行ったインタビューを基にした作品。著者は,『東京湾岸畸人伝』でも知られる山田清機。 短編集的なつくりになっているのですが,登場してくる人々が語る全ての話に哀愁と溶々たる感覚が漂い,なんとはなしに良い一冊でした。タクシーに乗るというちょっと贅沢な体験が,本書によってさらに楽しみになること間違いなしかと。 〜「旦那,来年はいい年にしましょうよ。がんばってさ,来年こそいい年にしようよ」〜 本書の「長いあとがき」も読み応えありです☆5つ

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    投稿日: 2017.09.27
  • タクシードライバー苦労人と見えて・・・

    妻の不倫で親権までとられたのに妻の借金を抱えたまま、うるさい親から逃げてホームレスになった男。中途入社したディスカウントストアの上場を経営企画室課長と言う立場で切り盛りし、年長の大卒社員をこき使わざるを得ず燃え尽きた男。会社勤めに向かない専業主夫のかわりに勤めに出た女。お嬢様育ちからALSの権威になった医者の夫の代わりにタクシー会社を継いだ女社長。色々な経歴をもつ10人ちょっとの物語。 タクシードライバーには2通りのやり方がある。駅で待つ「着け待ち」は基本的に駅間以上の距離を走ることはなく、いかに回転を上げるか。つまりはどれだけ行き先や道を近いしているかが勝負だ。万収という1万円を超える売り上げはめったにないが程々に堅く、待ってる間に知り合いのドライバーと話をする楽しみもある。一方の流しは「なか」つまり都心3区を目指す。タクシーチケットを持った長距離客をうまくつかまえれば実入りも大きい。そしてそこには微妙なテクニックや勘にも左右される。 パリッとした服装のいかにもお金持ち然とした客が、必ずしもロングとは限らない。金持ち客は都心の高級マンションに住んでたりして、以外と近距離だったりするからだ。では、どういう客が本物の上客かといえば、ヨレヨレのスーツを着て、いかにも疲労困憊した雰囲気を漂わせているサラリーマンだと言う。確かに社内でも飲み過ぎて終点まで行った話やちょっと遅くなるともう開き直ってタクればいいと言う話はよく聞く。一回飲みに行く回数を減らせば一緒だとか・・・ 流しの場合には近場への現金客を合法的にスルーするテクニックが存在する。タクシーは基本乗車拒否は出来ないことになっているので先頭を走った場合にはどんな客を乗せるかは止まってみないとわからない。しかし、2番手であれば少し違う。タクシーチケットを持った客は目当てのタクシー会社を決めているので、先頭のタクシーをスルーして自社を待ってる客はロングの可能性が高い。他にも高速に乗るつもりの客なら同じ場所でも待つ場所は変わってくる。ロジックと直感の組み合わせが万収の確率を高めるのだ。 優先配車にも使い道がある。優先配車は無先客を優先的に回してもらうしくみで、無線の場合普通はオペレーターがマイクのスイッチを話した瞬間に早い者勝ちで了解ボタンを押せば取れる。(今ではGPSがあるのでこの仕組みは無くなってきている)それでも例えば毎週月曜朝に自宅から工場に出社する中小企業の社長の行動パターンを知っていれば呼ばれた瞬間に駆けつけることは出来る。短距離客を無線で乗せると優先配車が取れるので、初乗りで終わるとわかっている客の時は優先ボタンがつくまで待ち、ロング客が乗る銀座の夜間にその権利を使う「銀座・三原橋優先待機入ります」と言った具合だ。 夫の代わりにタクシー会社を継いだ女社長は禁煙タクシーを導入した。イメージとは違い導入の狙いは会社のイメージアップは全く関係なく従業員の健康が目的だった。禁煙タクシーは素人のお思いつきから始まったのだった。 一番面白かったのがPCメーカーの新人コンテストで営業成績2位になり美人の嫁と郊外の一戸建てを建てながら納入先の官庁とはそりがあわずあっという間に借金生活に落ち妻から捨てられたた男の話。この男が40代後半のころ不倫女性に相談された雪の日の話だ。 この男はその瞬間に仕事を放棄し缶コーヒーを買ってきて話を聞きだした。 「最後に捨てられるのはあなたの方に決まってます」 「男はみんなそう言うっていうけれど、それって本当なんでしょうか」 「本当です。間違いない。そんなふしだらな関係、もう明日でやめにした方がいい」 「でも・・・」 「どうしてもやめられないというのなら、どうしてもやめられないなら・・・このばで僕とつき合うことにしなさい」 「えっ、いまなんておっしゃったんですか」 「僕でよければ、絶対にあなたの面倒を見てあげるから、だから・・・いまここで僕とつき合うと言いなさい。いや、僕とつき合え」 そして1週間後「私でよかったら、おつき合いしていただけますか」 この雪の日から7年、そしてこのドライバーはいま、彼女との関係をどうするべきか悩んでいる。

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    投稿日: 2016.05.18
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    人間の強さと切なさが詰まった一冊。 タクシー運転手は小さいときになりたいと思った職業の一つ。だからわたしは乗車のたびにいろいろとお話しさせてもらう。ドラマがたくさんで楽しいものだ。

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    投稿日: 2016.03.13
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    著者の山田清機氏は、早大政経学部卒業後、新卒で就職した大手鉄鋼メーカーを1年半で辞め、その後出版関係の仕事を経てノンフィクション作家となった、異色のライター。自らの過去の体験についても、「長いあとがき」として綴られている。 本書は、東京のタクシー会社4社で働くタクシードライバー13人への取材に基づいて、それぞれの人生、様々なエピソードについてまとめたノンフィクション作品である。2014年に出版、2016年文庫化された。 それにしても、タクシードライバーというのは、非常に特異な職業である。タクシードライバーになるために必要なものは、第二種運転免許(東京の場合は、更に地理試験)のみで、過去の職歴や年齢はあまり問われない。そして、タクシー代を払えるだけの金銭を持っていること(本書には、それすら持っていない乗客も登場するが)以外の条件は何もない見ず知らずの人間と、長ければ何時間も密室とも言える空間で過ごす。。。即ち、極めて多様な属性の人間同士が、偶然ほんの一時の接点をもつ、ある意味不思議な時・場所に関わる職業なのである。また、それ故に、そこでは時折、現代日本の首都・東京の縮図とも言えるようなエピソードが生まれるのだろう。 タクシードライバーの体験を題材にした作品は、古くは梁石日の『タクシードライバー日誌』など、少なくはないが、本書の魅力は、著者自身が苦節の半生を送り、それが、登場人物から(必ずしも明るいものばかりではない)エピソードを引き出し、味わいあるものとして描かせているところではないだろうか。 大都会東京で生きる人々の、悲しくも、ほの温かい物語が詰まった一冊である。 (2016年3月了)

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    投稿日: 2016.03.12