
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
人間はどのようなことを記憶して、どのようなことを忘却するのか、またいつ忘れたらいいのか、いつまで忘れてはいけないのか、そうしたテーマは今戦後70年の節目を生きる我々日本人にも大きな意味をもたらすと思った。図らずも安倍首相が語った、「こどもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と語った。そのために我は我は何が出来るのか。忘れるわけではな、記憶し続けておくことが必要なのだが、でもその記憶とどう向きあえばいいのだろうか。 この本を読むこと答えが見つかる訳ではない。しかし、何かを考えるきっかけにはなる。何かもやもや感のある読書感覚は記憶を曖昧さを感じることにもなる。不思議な読書体験ながら、ずしりと重い。
0投稿日: 2015.09.03
powered by ブクログ待望の長編。「わたしを離さないで」から、もう10年もたったのか。 ファンタジー仕立てということを知り、あ、ダメかも、と思ったが、やっぱりダメだった。 最初の方と最後の方はしっかり読み、ラストは衝撃だったが、間の冒険譚、さまざまなものや人との出会いなど、きっちり読めていない。悲しい・・・ ラストを知り、もう一度読み返せばいいのだが、その気も起きない。悲しい・・・ 実は「わたしを離さないで」も、評判は高かったが、私はあまり好きではなかったのだ。 もうカズオ・イシグロ好きとは言えないな。悲しい・・・
0投稿日: 2015.08.28
powered by ブクログ『昔ながらの不平不満と、土地や征服への新しい欲望---これを、口達者な男たちが取り混ぜて語るようになったら、何が起こるかわからない』 イシグロ・カズオの新作は相変わらすどこかファンタジーのようでいて実際には現実の社会を色濃く映し出したような手触りがする。「わたしを離さないで」もそうだったように。穿ち過ぎであるかも知れないけれど、少なくとも自分にはこの作品が、基本的にはラブストーリー、とは思えない。憎しみの負の連鎖。ハムラビ法典の時代から絶えず繰り返されてきた、それをどこで絶ち切るのが正しくどこからが過ぎた報復であると言えるのかというテーマ。アーサー王の時代のイングランドに舞台を設定したためか、遠すぎず近すぎず、現代を重ね合わせることができるように思えてならない。またその時代であれば、宗教的な対立の構図に拘泥しすぎることもない。その舞台の中で、許しに対する問い掛けが通奏音のように響き続けている。 ある民族と別な民族の争いと融和。そしてその和平協定に対する裏切り。大きな物語としてはそんな構図の上で繰り広げられる伝説的な一匹の竜を廻る冒険譚。すらすらと読んでしまうと、これはイシグロ・カズオによる指輪物語のプロローグかとも見えてしまうような話であるけれど、ここにあるのは勧善懲悪の物語等では決してなく、弱った竜に託されていた幸福と、その息の根を止め為されようとする正義との相容れないものの対立の物語なのだと思う。そして、そんな大きな正義の物語の直ぐ隣で、忘れられた過去を恐れお互いの許しという問題に向き合う老夫婦の物語が並走する。この一つのテーマを全体レベルと個人レベルの両方から描いて見せるところにも、どこかしら現代社会の縮図のような隠喩めいたメッセージを読み取ってしまいがちだ。 忘れられた巨人の意味するものは最後に明かされるが、その巨人が深い眠りから目覚めるか否かは明かされることなく物語は幕を閉じる。同胞の少年に負わされた重荷は単純にその巨人の怒りの中で解消するようには見えないし、擬似的なものであるにせよ、幾つかの家族的な関係を全体正義の中でどう捉えるか、読むモノ一人一人に考えて見るように問われてもいる。そして、最後に老人は許しを得たのか否か。その謎を残して物語を終える巧みさが、自分がイシグロ・カズオを鋭い社会批評家であると思う理由なのである。
2投稿日: 2015.08.24
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初読。図書館。一作ごとに異なる手法で描くイシグロさんだが、今回は歴史ファンタジー(?)。いろんなテーマが盛り込まれているが、個人的には民族対立と憎悪の連鎖の側面が、普遍的でありながら現代的なテーマとしても、興味深かった。老夫婦の会話で奥さんに必ず「・・・、お姫様。」と語りかけるのがじわじわと効いてきてよかったな。
0投稿日: 2015.08.18
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『日の名残り』を映画で観たときに知ったカズオ・イシグロ。本作は小説の初読。 村で除け者にされている老夫妻が、記憶もおぼろながら、息子を訪ねて旅に出る道中記。 アーサー王伝説が下敷きになっているらしい。 2015年8月、時間がないので挫折。
0投稿日: 2015.08.18
powered by ブクログ忘却の霧に包まれている世界で、息子に会うため旅に出る老夫婦。 記憶・歴史の積み重ねの上に今があるのに、霧に包まれるとこんなにも足が地に着いていない感じがするのかと。。 不安が絶えずまとわりついて離れず、その不安を払拭したくて読み進めたものの、余韻を引くラストでなんとも言いがたい読後感。
0投稿日: 2015.08.16
powered by ブクログ文学作品は著者と自分との個人的な関係なのだが、 読了後にもやもやとした時はついつい 書評なり解説の類の周辺情報をあさってしまう。 巻末の早川書房編集部による解説に記載の “The New York Times (http://nyti.ms/1wjJWNh)”、 “ The Guardian (http://bit.ly/1EC8N03, http://bit.ly/1GjQqyy)”と “The New Yorker (http://nyr.kr/1EtG22J)”をみてみた。 1 本のリポートと肯定的と否定的な書評が 1 本ずつの The New York Times がいい感じであった。 Ishiguro さんには申し訳ないが、 今回はMichiko Kakutani (http://bit.ly/1JiNp4z) さんの review が一番良かったように思う。 早川は当然 Neil Gaiman (http://bit.ly/1Nw7FNy) みたいだが。。。
0投稿日: 2015.08.15
powered by ブクログカズオ・イシグロの最新作で、「私を離さないで」以来10年ぶりの大作。アーサー王伝説をモチーフに、7、8世紀のイギリスが舞台のファンタジー。 竜や鬼や妖精が出てくるが、どれも気味が悪い。竜の息で、辺りに霧が漂い、人々の記憶が消えてしまう。ブリテン人とサクソン人、人種が違うだけで憎しみ合い、血の争いは終わらない。 物語は結局、最後までどんよりしていて、よく見えない。細かい部分は霧の中。戦いの悲惨さ、無意味さは明確に描いている。今の世でも繰り返す争いへのメタファーと受け止めた。
0投稿日: 2015.08.14
powered by ブクログこの作者さんはこういう構成が好きなのかしら。 少しずつ霧が晴れて周りが見えてくる感じ。 最後の解釈をどうしたらいいのか誰かと話したいところ。、
0投稿日: 2015.08.04
powered by ブクログイシグロが描くイギリス伝統のファンタジー。アーサー王伝説をも受け継ぐローマ時代のイギリス。 息子に会いに行く年老いた夫婦の旅立ち。 さまざまな出逢いと戦い。 新たなイシグロの世界観。 素敵です!
0投稿日: 2015.08.03
powered by ブクログ竜、鬼そして妖精などが跋扈し、ブリトン人とサクソン人が対立する6世紀頃の英国を舞台にした冒険ファンタジー。主人公である老夫婦の葛藤が恋愛小説としても読めるところも面白い、著者と同じアラカン世代なら楽しめること請け合いです♪
0投稿日: 2015.08.01
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イギリス。夫婦。騎士。竜。霧。記憶。ファンタジー。大切な思い出を忘れて、対立を忘れて、そんな生き方を変えたなら、のところで物語は終わる。夢のような話だった。
0投稿日: 2015.07.28
powered by ブクログ舞台となるのは、六世紀か七世紀ごろのイギリス。この地域を300年ほど支配したローマ帝国が勢力衰退によって引き上げ、土着のケルト系民族であるブリトン人と、新しく今のドイツあたりから移住してきたサクソン人がそれぞれ別々に村をつくって住んでいる。川や沼地には冷たい霧が立ち込み、鬼の隠れ家になっている。地面は耕すに固く、病気も流行する、厳しい世界だ。 主人公はアクセルとベアトリスというブリトン人の仲むつまじい老夫婦。村からはろうそくさえ取り上げられるほど冷遇されているが、二人で懸命に助け合って暮らしている。この二人が、長らく会っていない息子の住む村を目指し、旅に出るところから物語は始まる。とはいえ息子の顔や声さえさだかではない。この国は「健忘の霧」に蔽われていて、二人だけではなく、みな数日前のことさえ忘れてしまうのだ。 旅が進むにつれ、じょじょに世界の広がりが見えてくる。かつて大きな戦争があったらしいこと。悪鬼や獰猛な烏が増えて、どうやらこの国はだんだんと悪いほうに傾いていること。そして、クエリグという雌竜が吐く息こそが「健忘の霧」の正体であるらしいこと。 そしてサクソン人の旅の戦士ウィスタン、故アーサー王からクエリグ退治を命じられた老騎士ガウェインとの出会いにより、二人の「息子を訪ねる旅」はいつしか「クエリグ退治の旅」へ、すなわち「世界の謎」にかかわる活劇へとスライドしていく。 ファンタジー要素が注目されているが、本書の本質はミステリーだ。戦士にも、騎士にも隠された本当の使命がある。アクセルは昔、二人に出会っていて、ただの農夫ではなかっただろうこともほのめかされる。しかし、なにしろこの国には「健忘の霧」が立ちこめているのだ。「信用できない語り手」しか登場しない世界を、読み手は老夫婦とともにさまよい歩かなくてはならない。 謎は、老夫婦の間にももちろんある。そもそも二人が「息子を訪ねる旅」から寄り道するきっかけになったのは、ある船頭の話を聞いたから。長年連れ添った夫婦でも一人ずつしか渡してくれない不思議な島。その島で二人で幸せに過ごすには「一番大切に思っている記憶」について、別々に答えなければならない。この話を聞いて不安になったベアトリスは、どうしても記憶を取り戻したくなったのだ。しかし、思い出したくない記憶だって、長年連れ添った夫婦のなかにはある。時折、不実の影が顔を出し、不穏な空気を漂わせる。 一方、世界最大の謎は、かつての大戦争に関わること。「わが敬愛するアーサー王はブリトン人とサクソン人に恒久の平和をもたらした」と語るガウェイン卿に、「偉大な王はどのような魔法で戦の傷を癒やされたのですか」と尋ねる戦士ウィスタン。もしかしたら「忘却の霧」こそが、その要にあるのではないか――。 歴史というものを「民俗の記憶」ととらえたとき、「思い出したくない」ことを忘れてしまっていいのか、その忘却が何をもたらすのか。ファンタジー仕立てになっていることで、かえって「現代」を思わせる物語になっている。
1投稿日: 2015.07.19
powered by ブクログ数世代に及ぶ人類の歴史を一世代の夫婦の人生に収斂させた歴史物語なのだろうか。かつての民族間の激しい諍いも、現世を生きる者たちにとってその痛ましさは記憶にない。記録さえも時とともに霧にかすんでいく。邪悪な雌竜、現代ならば核兵器は、眠らされているものの、争いの抑止を担ってきた。その廃絶によってもたらされるものは、平和なのか、新たな諍いなのか。ないがしろにされる古き者ども。彼らは最期の十念を次代に遺すため、つとめて忘れ去ろうとしてきた忌まわしい過去、その巨大な犠牲を手繰り寄せる旅に出る。かな。
0投稿日: 2015.07.19
powered by ブクログファンタジー アーサー王のちょっと後の時代。 だがそれはそういう設定であるだけ。 本質はすべての時代の物語である。
0投稿日: 2015.07.19
powered by ブクログ私には難しい部類の本だと思うのに,なぜか先が気になってしまいながら読んだ。すごさなのだろうか。こういうことが言われているんだろうなぁということが何となく分かった気がする読後感。 アーサー王といった知識がなくても楽しめる,と書かれていたけど,知識があった方が断然おもしろいだろうなと思う。
0投稿日: 2015.07.16
powered by ブクログ初のカズオ・イシグロでした。 うーん、この作品中にも霧というものが出現しますが、最初はおぼろげな、登場人物やストーリーでしたが霧が晴れるようにが集約されて行く構成に夢中で読んでしまいました。 でも完全には晴れないんですが(笑 最後をどう解釈するか少し戸惑いながら、記憶というものについて、人間について、色々と考えさせられる作品でした。 他の作品も読んでみます。
0投稿日: 2015.07.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
なかなかいろいろ考えさせる小説.竜だとか鬼だとかが出てきて,何のアレゴリーかを考えてしまうが,あまり考えない方が本のテーマには入っていけそう. 記憶(あるいは忘却)と赦しがそのテーマか.忘却がなければ赦しはないし,忘却をすれば記憶を取り戻したく思い,そして過去の記憶は赦しを導かない.この関係が個人対個人,民族対民族と多層的に絡み合っている.難しい問題. 私自身,あるいは日本ののまわりをみても,同じ問題はたくさんある.私が惚けてすべての過去が忘却されるとき,真のやすらぎが訪れるのか.
0投稿日: 2015.07.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
今までの カズオイシグロの作品と比べると 評価は低くせざるをえない。 中世の イングランドを舞台に 過去の記憶の多くをなくした 老夫婦が旅にでる。 ドラゴンあり 鬼あり 妖精ありの不思議な世界。 そして明らかになる過去。 それなりに読ませるし、どうなるのか予想がつかない展開を最後はまとめる 構成力はなかなかのもの。 しかし 記憶することの意味。 民族の対立。 憎悪を記憶し、それを持ち続けることなおどの 概念が十分咀嚼されていない感じで いろいろと中途半端になってしまった感じで 残念。 多分 ドラゴンや妖精や騎士など 作者なりに 何かの隠喩なのだろうが いまひとつ 響かず 多少読みづらかった。
0投稿日: 2015.07.06
powered by ブクログう〜つまらん。 途中でリタイア。 神秘的なファンタジーで本来好きなジャンルのハズなんだけど、続きを読む気がしない。 あまり印象に残るシーンがないからかな。いくら文体とか描写とか雰囲気が良くても面白くなければ最後まで読む事はできません。 よく半分も読めたなぁと思うくらいつまらんかった。
0投稿日: 2015.07.05
powered by ブクログカズオ・イシグロの作品は、シニカルさを感じるものが多いが、この物語では作家のメッセージが直球で届いた。 我々は、平和や愛を求めながら、憎しみや復讐を繰り返す。今も昔も変わらない。 真実と向き合い、時間がかかっても、問題を乗り越えられる時が来ますように。
1投稿日: 2015.07.04
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★2015年7月4日読了『忘れられた巨人』カズオ・イシグロ著 評価B-B+ 長崎県出身で5歳から英国に滞在する日本人作家の作品。海外では大変評価が高いらしく、長崎出身と聞いて興味を持ったので、読んでみました。ノーベル賞を村上春樹よりも先にとるのではないかとの噂もあるらしい?! 様々な作風の著作があるようですが、今回は英国のアーサー王没後の時代の物語で、ファンタジー系。 翻訳のために、その作風は本当に日本語訳の通りかどうかは原作に目を通さないと何とも申し上げられませんが、うーん 評価は難しいところ。 ファンタジーとしての物語の出来は、上橋菜穂子さんの方がずっと上のような気もするし、雰囲気、書き込みの表現はイシグロ氏の方が数段上の感じ。おそらく、イシグロ氏はネイティブの英国人と同等の感性で、書いておられるので、日本人の私には理解出来ない世界、背景がやはりあると考えざるを得ません。そう、作品全体にイメージで言えば、英国の荒涼とした原野とどんよりした雲と氷雨という雰囲気が重く感じられると申し上げればお分かりいただけるでしょうか? ブリトン人の老夫婦のアクセルとベアトリスは、村ではつまはじきにされて苦しい生活を送っていた。ある日、家を出て他の村に住む息子を訪ねようと夫婦は旅立つ。 その旅の途中で、若きサクソン人の戦士、ウィスタンと鬼に襲われて胸に傷を負い、村人から鬼に変わると怖れられ殺されそうになっている少年エドウィンと出会う。 国中を覆うクリエグという雌竜の吐く奇妙な霧によって、皆が昔の記憶を失う状況に、そのクリエグを追い求める旅になってしまう。その旅の道すがら、アーサー王の騎士で年老いた老騎士ガウェインに出会い、危ない目に遭いながらも、クリエグを遂に見つける。そして、、、
1投稿日: 2015.07.04
powered by ブクログ記憶の問題、かみ合わないコミュニケーション、信頼と憎しみ。読み進めるのは、決して楽ではない。しかし、象徴と寓意を考えずにはいられない。「お姫様」という呼びかけが、優しさに満ちている。 ゆれる主人公が最後、きちんと待てる人になれる、というのが、まさに象徴的。
1投稿日: 2015.07.03
powered by ブクログこれまで邦訳されたものは全て読んでいるカズオ・イシグロの最新作。作品ごとにテーマが異なるのは彼の作品の一つの特徴だが、今回はイギリス中世を舞台にした歴史ファンタジーという点に驚かされた。鬼や竜が登場し、アーサー王伝説を下敷きにした騎士が活躍するというこれまでの彼の作品世界からはかけ離れたものであったが、読み進めればいつもの彼の文学世界に浸ることができる。 彼が得意とする「信頼できない語り手」の文学技法は、登場人物数名の一人称で語られる本作でも健在であり、主人公の老夫婦の語り口を怪しみながら、どのような結末になるのかを期待するのは、彼らの作品の大きな楽しみ方であるように思う。 大傑作『私を離さないで』のような衝撃的な結末ではないが、序盤に張られた伏線が結末で解きほぐされ、じんわりとした暖かさを与えてくれる佳作。
1投稿日: 2015.07.01
powered by ブクログ英流ファンタジー?歴史?英雄譚?恋愛?結局どんな枠組みにも入らないというのがカズオ・イシグロのすごさなんだろう。400ページを超える分量を一気読みさせるストーリー展開と3人称と一人称を巧みに絡み合わせる技法で読み手をも絡み取られたような気がする。 ファンタジーや歴史ものには共通して、その世界観や場面展開を理解していないとついていけない。アーサー王が崩御してしばらく経った頃の魔法や竜が存在する、つまりなんでもありの場面設定がちょっとご都合主義的でもある。あのころのイギリス、ブリトン人やサクソン人の関係は勉強不足で分かりにくい。 霧が記憶を消していく中、最後まで残ったものは何だったのか・・・うわぁ~ネタバレしたい~
0投稿日: 2015.07.01
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不思議なガジェットが散見するのはイシグロの趣味? 未婚の娘にとって災難な草。僧が順に鳥に体を差し出す修道院。 卑劣な行為も残虐な情景も、品位を保った落ち着いた語彙で静かに淡々と語られるのがこの作家の持ち味だと思ってたんだけど、修道院を抜けた後の川で小妖精たちにベアトリスが襲われるシーンや、山羊を繋いだ後の三者三様に自己主張するシーンには、珍しく焦燥感があった。そういうシーンでも、闇雲にテンポアップするんじゃなくて、むしろスローモーションで細部まで描写するような筆運びが斬新。
0投稿日: 2015.06.28
powered by ブクログカズオイシグロ+ファンタジー、ということで非常な期待をしてしまった。ドラゴンや妖精、鬼が登場し、著者の作品につきものの「ぼんやりとした不安」みたいなのも感じさせつつ、解説にあるようにテーマは「恋愛」。思ったほどでもなかったなあ、というのは、読みながらなんとなくつっかえてしまう和訳のせいでしょうか…。
1投稿日: 2015.06.28
powered by ブクログ古代のイングランド、ブリトン人の老夫婦が息子に会うための旅に出掛ける。自然の驚異、サクソン人の村、忘却の霧、竜の吐息、アーサー王の騎士、修道院、 記憶が消えているから曖昧で、過去に何があったかも後からすこしづづ浮き上がってくる。実のところ、忘れていた方が幸せだったのかも。なかなか寓意は読み切れませんが。
0投稿日: 2015.06.26
powered by ブクログラストに疑問は残るが、忘れることによって愛が深まる矛盾が少しわかるような気がする。人間の負の側面をファンタジーで上手く表現している。過去を思い出したとしても、許すことで愛し続けられると信じたい。
1投稿日: 2015.06.23
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忘却の霧に支配された土地で、人々は過去が不確かなまま生活をする。 アクセルとベアトリスは仲のいい老夫婦だが、失くした記憶の向こう側に見える過去から、自分達には息子がいることを知る。そして息子の村へと二人は旅立つ。 二つの国の対立と、強引に解決した過去。 忘却の霧によって二つの国の国民は隣人への憎しみを忘れていたが、やがてその霧を払うために遣わされた男と、老夫婦が出会う。 面白かった。 忘れることで麗らかな関係を築いていたとしても、当然許しにはなっていない。 しかし、全てを思い出したあげくに発生するだろう対立の果てに何が待っているのかはわからない。 老夫婦は人生の終わりを見据えて全てを思い出す道を歩んだのだろうけど、若者にとっては悲惨な結果かもしれないと思う。
2投稿日: 2015.06.21
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さすが、イシグロ・カズオ。苦手なファンタジーっぽい 設定でも(ファンタジー小説ではないが悪鬼や雌竜、騎士などが出てくる)飽きさせることなく読み終えたよ。 ブリトン人であるアクセルとベアトリスの老夫婦が遠く離れて住む息子を訪ねていく道中の物語。 そこで出会うサクソン人の戦士ウィスタンに助けられた村の勇敢な少年エドウィン、のちにウィスタンと戦うことになるブリトン人のガウェイン爵。 そして重要なのは船頭。 果たして、ひとりづつ乗せて運ぶことになったけど、ちゃんと戻ってアクセルをベアトリスの元へ連れていってくれるのか… 物語は唐突に終わった感があるけど、あの終わり方がベストだと思う。 アクセル自身が多分、忘れられた巨人なのだろう。 (記憶は霧によってあいまいになっているが) その霧は晴れることがあるのか、獰猛な生物、竜クリエグはウィスタンによって退治されたけど。 なぜ、息子は死んだのかも。 あいまいな部分は残るけど、その独特な文体がなんとも心地いい。 映画化されるみたいだけど、どんな映像になるのか楽しみ~
1投稿日: 2015.06.17
powered by ブクログ忘れずにいて、しかし赦しあうことは可能か。 忘却による安寧と、確執による復讐の連鎖と。 縦の論理と、横の倫理と。 仕事と、愛と。 偽の物語にすがることの愚鈍さと、真実を引き受けることの残酷さと。 誰もが引き裂かれている。矛盾を抱えている。 霧が晴れるにつれてさらに痛みは募る。 忘れることなく、 発狂することなく、 誇りを失うことなく、 人は矛盾に耐えていけるのだろうか。
1投稿日: 2015.06.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
中世の英国。老夫婦が息子に会うために旅立つ。途中の村で泊めてもらったり、戦士や少年、老騎士と道連れになって竜を退治したりして、なんかドラクエ的な展開wそして最後はお互いの愛情と信頼を試される。忘れたほうが幸せな事ってあるのかもしれない。特に夫婦関係においては・・・。 アーサー王の魔術が解け、平和に共存しているように見えたブリトン人とサクソン人が憎しみの記憶を取り戻した時、彼らは許し合えるのか? 人間性を問う、ブラックな童話。
1投稿日: 2015.06.07
powered by ブクログこれはきっと何か大きな歴史や文化の暗喩の物語であるのだと思うのですが、それの意味するところをまったく理解できず、ひたすらに続く老夫婦のまだるっこしい会話やつまらない活劇がただただ退屈で仕方なかった。 訳者の責任もあるのかどうか?登場人物の吐く台詞がいちいち回りくどくて的を得ない。ベアトリス婆さんの台詞には憎しみを抱くほどだった(笑)。 っていうか、根本的な文化の違いなんだろうと思う。 読む人が読めばきっと良い作品なんだろう。。。
0投稿日: 2015.06.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ネタバレっていうよりも、場所違いな感想のためネタバレにチェックを入れました。 ランキングから外れてから感想を書いたのもそのためです。 この小説自体の途中までの感想としては、もう少し時間がたち、訳者自身の言葉が落ち着き、文章へ根を張るようにいくつか修正されるのを待ってから購入するのも手だと感じました。 もちろん、そんなこと気にしなくても面白いのですが、私の読み手の実力として、この本を読み解けるほど成熟してないんだなと感じるから・・というか新刊を手に取るってこういうこことなんだなと、ほどよい手ごたえを残してくれる物語だった。いや、読み途中なんだけれどね。 ここから場違いな、ほんっとただの妄想な感想です。 読んでいてずっと感じていたことは、 ライトノベル「人類は衰退しました」の始まりと終わり。 それが自分の意識にずっとちらついていた。 私自身、二次創作で2作ほどpixivで投稿しているのだが、最近の一般紙小説の受賞作品は(文芸春秋のやつを見ているだけだけど)、pixivの二次小説, その実験っぷりの影響が透けて見えいる気がしている。 この作品からもその印象を受けた。 だからなんだと議論する気は全くない。 ただ私が言いたいことはこの本を読んだ方は、 「人類は衰退しました」 読むと面白いかもしれないってこと。 著者でもなんでもないファンがこんなこと書いてもアレなんだけれどね。あくまで、個人の感想としてなら許されるかな・・っと。
0投稿日: 2015.05.24
powered by ブクログカズオイシグロさんの新作はファンタジー仕立て。 アーサー王時代後、老夫婦が息子に会いに旅に出る・・・ 竜や鬼、兵隊などいつものイシグロさんの世界にはでてこないものばかりだけれど、そこはやはりイシグロさん。 老夫婦の過ぎ去ってしまった過去の後悔が描かれます。 長年連れ添った過去と過ち、後悔、許しと幸せ。
1投稿日: 2015.05.23
powered by ブクログカズオ・イシグロは大好きな作家だが、新作をリアルタイムで読むのは、これが初めてのことになる。結論から言えば、『わたしを離さないで』『日の名残り』の二作に優るとも劣らぬ素晴らしい傑作だ。 ただし最初のうちは戸惑った。舞台は、アーサー王が死んでから数十年後のブリテン島。鬼やドラゴンや妖精が当たり前のように跋扈し、騎士が重要な登場人物となり、『薔薇の名前』を思わせる修道院まで出てくる。設定だけ見れば、完全な中世ファンタジーの世界だ。これまでのイシグロ作品のイメージとあまりにも違うので、何か入れ小細工のような設定になっているのではと疑いながら読んでいたが、最後まで設定は変わらない。主人公の老夫婦はどことなくホビットを思わせるし、これはカズオ・イシグロ版『ロード・オブ・ザ・リング』なのかと思った。しかし拡散気味に見えた様々な要素がドラゴン退治に集約される終盤に至ると、神話的であると同時に限りなく現代的なテーマを持った物語の全貌が明らかになる。 「記憶と忘却」「捏造された記憶」はイシグロ作品にいつも出てくるテーマだが、今回はそれが個人だけでなく民族の問題にまで発展する。「忘却に基づく平和」が正しいのか「真実の記憶に基づく戦争」が正しいのか…その対立の果てに、憎しみの連鎖(視点を変えればそれは「正義」と呼ばれる)が壮大な悲劇をもたらす。このあたりの展開には、明らかに21世紀の世界が重ね合わされている。ブリトン人とサクソン人の歴史に詳しいイギリス人なら十分に予想出来た結末かもしれないが、知識が乏しい日本人としては、次第に明らかになっていく各人の行動の真意や終盤の劇的な展開に、手に汗握る思いだった。 そして本作は、民族の興亡を描く叙事詩であると同時に、ある老夫婦の愛を描いた抒情詩でもある。主人公のアクセルは一体何者なのか? 彼と妻ベアトリスの間に本当に息子はいるのか? 二人の過去に一体何があったのか? 記憶、忘却、愛、憎しみ、そして赦し…様々なテーマがぶつかり合い溶け合っていく最終章は限りなく美しく、一つの世界の終わりと新たな世界の誕生を同時に見ているかのようでもある。悲劇を乗り越えるためのかすかな希望も、そこには感じられる。 舞台設定こそ『ロード・オブ・ザ・リング』のようだが、途中から強くイメージが重なったのはテオ・アンゲロプロスの映画だった。当初ホビットのように見えた老夫婦は、それ以上に、父親を探して旅をする『霧の中の風景』の姉弟のようであり、ラストは『シテール島への船出』を彷彿とさせる。アンゲロプロスは、民族の歴史と個人の人生を共に描くことに成功した映画作家だったが、同様に、イシグロも本作において叙事詩と抒情詩の融合に成功した。一貫して描き続けてきたテーマをさらに深化させ、同時に全く新しい物語世界を構築した、カズオ・イシグロの見事な傑作。予想とまったく違う形で期待に応えてくれたのが、何よりも嬉しい。
15投稿日: 2015.05.13
powered by ブクログカズオイシグロの長編小説。これまでの作風とは変わって(毎回変わってるが)、竜や妖精が登場するファンタジー的な物語。 記憶が消えることによって保たれる平穏。平穏の積み重ねによってできた愛は記憶が戻っても続くのか。老夫婦による個人のレベルと国家の両方のレベルで問う。 いくつかこれは伏線か、と思ったものが回収されずに読み終わってしまったので、読み取れてない部分も多いかもしれない。
1投稿日: 2015.05.07
powered by ブクログカズオ・イシグロの新作。なんと10年ぶりの長編らしい。『わたしを離さないで』からもうそんなに経っているのか……。 その『わたしを離さないで』はSF、『わたしたちが孤児だったころ』はミステリと、ジャンル小説の手法を用いるイシグロだが、今作はファンタジー。『新作は単なるファンタジーではない』という発言でやや物議を醸したらしいが、純粋にファンタジーかと言われるとちょっと首を傾げる。ご本人がおっしゃっている『本質的にはラブストーリー』が一番ぴったりなんじゃないかなぁ……。
2投稿日: 2015.05.05
