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イティハーサ(1)
イティハーサ(1)
水樹和佳子/クリーク・アンド・リバー社
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総合評価

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  • 古代日本を舞台とした神話ファンタジー

     古代の日本を舞台に、見事な世界観で作り上げられた神話ファンタジーであり、神と人の関係を問うSFでもあります。 古来からの「目に見えぬ神々」が消えた時代、「目に見える神々」威神と亞神が外国(とつくに)より来て争う。そんな舞台が幕開けです。 美しい絵、美形ぞろいのキャラクター、破綻無いストーリー、神々の謎、本当に完成度の高い作品です。  絵だけでなく、物語で登場する様々な言葉の美しさも格別です。その人の魂に刻まれた名前、真名(真名)、現世での仮名(かな)、力を呼び出す真言告(まことのり)、作者が選び抜いた言葉は、読む人を違和感無く日本神話に吸い込みます。 第一部は「神名を持つ國」  「この國は神名(カムナ)を持つ國   未来永永末始終   多くの仮名(カナ)で呼び響(とよ)められしも   秘めし神名でよばれることはない   それ故   いかなる神々にも   決して支配されることはない」  日本という国のなりたちが、本当に自然に表現されていて、現代日本とつながっているので、「これ、古事記と日本書紀をマンガ化したんだよ」と言われたら信じてしまうくらいの『日本』がそこにあります。こんな作品が30年も前に描かれたとは。その構成力、世界観の壮大さは「指輪物語」にも匹敵します。また、神と人間の関係を考察するSFとしては、光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」を彷彿させます。2000年度星雲賞も受賞している傑作SFです。  巻末には、電子化にあたって、新規の作者あたがきが(2014)もあり、それもうれしいポイントです。

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    投稿日: 2015.07.10