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夜の写本師
夜の写本師
乾石智子/東京創元社
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総合評価

123件)
4.0
34
43
26
5
0
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    何もかも奪われた者視点で淡々と書かれた復讐譚。一昔前にライトノベルで流行したRPGファンタジーよりは昔ながらのヒロイックファンタジーに近く、国や魔法の体系が凝ってない(良く言えば原始に近い、悪く言えば別れているだけで踏み込みがない)。 長い歴史が関わるので国の興亡や権謀術数やら出てきそうなものですが、そこはあくまで個人の復讐に終始しており、 原初の因果の規模も規模。登場人物も感情が足りず、ドロドロしそうな所業にも関わらず全体的にさらーっと進むので、ちょっと物足りなかった。終わりはいかにも女性が起因した終わり方。宝石とか本の装飾とか人形とか、小物が綺麗。文調は静謐で、さらーっといく原因の一つでもありますが、私は好み。

    0
    投稿日: 2014.10.13
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    右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠を持って生まれた運命の子。 幼いころに大きな喪失体験をした彼はやがて、<夜の写本師>として世界一の魔導師に挑む。これは、千年以上の時を経た壮大な物語です。 ブクログのレビューを通して知ったこの本、ずっと気になっていたのですが、先日図書館で偶然見つけてすぐに借りてきました。これがデビュー作だなんて信じられないくらい濃厚なファンタジー小説です。ファンタジー好きにはたまらない、しっかりと確立された世界観、体系的な魔術の数々、運命的な巡り合わせ、深い闇などなど、心をひたすらくすぐります。 夢あふれるファンタジー小説というより、これは「ゲド戦記」に近い闇の色が濃いファンタジー小説でした。なかなか残酷で、結構怖い。映像化したら美しい場面も数々あるけれど、ホラーになるかもしれない場面もあって、そのバランスがまた絶妙。 嬉しいことに、どうやらこれはシリーズが出ているようで、この世界をまだまだ楽しむことができるよう。大人になっても一気に心を異世界に飛ばしてくれるファンタジーはやっぱりいいと改めて嬉しく噛みしめた1冊でした。写本をはじめ、本好きには嬉しくなる設定もたまらないですね。

    7
    投稿日: 2014.10.08
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    非常に読み応えのある魔法ファンタジー。 文章の密度が濃く、易々とは読み尽くせないストーリーですが、それでいてテンポよく美しい文体なので、読み疲れはしませんでした。様々な魔道師の手仕事や、メインのテーマでもある写本師の繊細な仕事の描写がすばらしく、よくよく練られた世界観がより想像をかき立てる作品でした。

    0
    投稿日: 2014.09.14
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    読みだして、まず思いだしたのはタニス・リーだった。それからル・グィンのゲド戦記だった。そして、あの巨星のようなダンゼニイを思いだした。 これがデビュー作だなんて信じられないくらい、濃厚で、濃密な読書時間を味わった。とんでもない新人作家が出てきたものだ。これだから読書はやめられないんだ。

    1
    投稿日: 2014.09.13
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    いま日本でこんな重厚なファンタジーが書かれているのだね。技巧的な構成に比してストーリーは結構単純で神話っぽくあり。

    0
    投稿日: 2014.08.20
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    右手に月石、 左手に黒曜石、 口の中に真珠。 カリュドウは三つの品を持って生まれてきた。 この印象的な一節から始まる物語に、 思えば冒頭から掴まれていた様な気がする。 本好きならきっと、誰もが持ってるだろう 自分と相性の良い作品を嗅ぎ分ける嗅覚。 いわゆる第六感が働いた。 表紙の装丁も素敵だったので、 見た目でも惹かれていたわけだけど。 初めて出会う作家さんの本は買う前に必ず数ページ読んでみる。 でも、この作品は冒頭の4行だけで良かった。 そしてまず、タイトルが美しい。 ファンタジーは大好きだけど幾多あるファンタジーの中には駄作も多い。 それも巧妙に取り繕った"さもそれっぽく作りました"的な似非本格派ファンタジーも最近ではたまに見かける。 ましてや和製(異国モノ)ファンタジーはハンデがありすぎる気はする。 そんななかで、この作品。実に良く出来ている。 乾石智子さんは根っからのファンタジーファンなのだろうと思われる。 読んでいると様々な名作ファンタジーのエッセンスをしばしば見かける、けれどクサくない。 自分の世界観を確立されてるんだな、と感じた。 よく出来たファンタジー作品は実在はしないけれど存在はしている。どこかにこの世界が(パラレルワールドの様に)在る、若しくは在ったんだと感じさせてくれる。 魔術の世界と輪廻転生と、何より本が好きなら、 "言葉の持つチカラ"を信じる人なら、 きっと好きになる作品。 ただ、 乾石さんは若い作家さんなのかな? 文章で時々気になる部分があって、そんな時だけふと現実に戻ってしまったなぁ。 続編も期待。 単行本の装丁もとても素敵なんだけど 予算の関係上、文庫化を大人しく待ちたいと思います。 ちなみに、 キアルス→ケルシュ 紫水晶(アメジスト)→アムサイスト→エムジスト→アンジスト この辺りは途中で気づいて霧が突然晴れたかの様な爽快感を感じたけれど、 ブリュエ→ガエルクはわからなかったなー(笑)

    0
    投稿日: 2014.08.07
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    高校時代に読んだ《イルスの竪琴》シリーズ以来の感動をおぼえました。 実にファンタジーらしいファンタジーであり、しかもオリジナル溢れる世界が拡がっている。これがデビュー作とは思えない完成度です。 日本のファンタジーもついにここまで来たのか!

    0
    投稿日: 2014.08.05
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    その筆力に圧倒され、ぐいぐいと読まされた。読みながら、頭の中でずっとジブリ調のアニメで再生されてしまうのが止められなかった。しかし、内容が重いため、何度も読み返す派としては、心に余裕が無いと読み返せない本。

    0
    投稿日: 2014.08.03
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    いわゆる、竜とか魔法とか剣とかの、王道的なファンタジーは苦手です。 でもこれは、まずタイトルが美しいじゃないですか! タイトルに心奪われて読み始めて。 このお話、好きだ・・・!と思い、時間を無理やり作り出して、それでも3日かけて読みました。おかげで遅刻しかかった(笑) 特徴のある文章は美しいけれど、内容は結構ダークな復讐譚。苦手なはずのグロテスク表現も決して少なくはありません。 本の厚さのわりに内容が濃いというか、このときに主人公カリュドウはこう思った、こう思うに至るまでに彼はこんな日々をこんなことを感じながらこんな行動をとった、などの人物の細かな描写はあまりないんですね。何(どんな思い)を理由に、何をして、何が起こったか、が淡々と語られる。 そこに若干の物足りなさを感じながら読んで、エンドまでたどり着いて、やっと納得。これは、「口承の伝説」なんですね。神話などで「英雄だれそれはどんな人物で何をしたか」は重要だけど、個人の細かな心の動きなんかは必要じゃないのと同じ。この作品、カリュドウの物語でありながら、実は「この世界(この国)の物語」です。 そして、「この世界の物語」でありながら、最後に訪れる客とのやりとりに、カリュドウという人物にやっと触れられたような安心感がありました。 同じ世界を舞台に何作もあるようです。触れてみたいような、この物語ひとつをそっと大切にしまいこみたいような、なんとも複雑な読後感です。

    1
    投稿日: 2014.07.13
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    悠久の時の流れの中で積み重ねられる魔道師の物語。薄い本だけど、小さな活字でギュッと濃縮された復讐譚は、詳らかに描かれる架空の世界や写本師の仕事に縁取られ、独自の世界を作る。 この本の全体の世界観みたいなものを感じながら物語の世界に浸ろうとすると、一気に読み下すのが良いような気がするのだけど、仕事が忙しくてゆっくり本を読むのもままならず、時空を超えて語られる筋立てやそこに沈殿する怨念や宿願を十分に感じ取ることが出来なかったような気がして、我ながら残念。

    0
    投稿日: 2014.06.29
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    読み応えがあった。 終盤に向けて止まらなくなる感じ。 続きが文庫本ででたら買ってしまうだろうと思う。

    0
    投稿日: 2014.06.29
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    ふわぁ~すごいもの読んだぁ…という読後感でした。 壮大などファンタジー。 http://feelingbooks.blog56.fc2.com/blog-entry-1062.html

    0
    投稿日: 2014.06.28
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    話の広がりの割にはさくさく進むので読みやすい。 本来はこれ1冊だけで『指輪物語』並みの分量で書けると思います。

    0
    投稿日: 2014.06.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    右手に月石、左手に黒曜石、口の中に真珠をもって生まれてきたカリュドゥ。魔法では勝てない相手に対抗するために選んだ手段が、魔法ならざる魔法を操る「夜の写本師」というのが面白い。甘いファンタジーかと思って読み進めると冒頭からかなりダークだが、文章のうまさや美しさにどんどん物語に引き込まれていく。復讐の物語だけどそれだけではない余韻のあるお話だった。3つの品がどんな意味を持つのかも、物語のなかで自然に理解できる。私はとても気に入ったので、これからもこの作家さんを追いかけたい。

    0
    投稿日: 2014.06.14
  • 上橋さんが描くファンタジーに負けず劣らずの秀作です、素晴らしかった

    日本にこんな世界観を持つ上質なファンタジーがあったなんて… 本当に驚きました 「女を殺しては魔法の力を奪う呪われた大魔道師への復讐劇」 表面上からはそんなストーリが浮かびますが その裏にある、人の想い、執念 その全ての源であるところの「愛」が強く炙り出されており 感動が押し寄せました

    9
    投稿日: 2014.06.12
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    単行本で読んだ「魔導師の月」ほか幾つかの作品と舞台を同じくするシリーズの、初文庫化。 過去にさかのぼり前世を体験する部分に多くが割かれているのは、シリーズの特徴の一つなのかな。 復讐が目的のこの物語。痛みを痛みで返した後に、なにが残るのか・・・ということをちょっと考えさせられる。ラストがけっこうあっさりしていて、あんまり深く考え込むような余韻はないかもしれない。

    0
    投稿日: 2014.06.08
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    とても長い年月を積み重ねた復讐を描いたダークファンタジー。写本師vs魔導師。写本師が職人肌で新鮮だった。 もっと登場人物たちの交流、写本師の仕事を読みたかったけど、このページ数で考えれば濃厚なファンタジーでした。結末も爽やかな風が吹き抜ける感じで素敵。 他の作品も読んでみたい。

    0
    投稿日: 2014.05.29
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    久しぶりに地盤の堅い、根の張ったファンタジーを読めました。魔法の解釈が古き良き伝統を引き継ぎながらも新しくて、興味深かったです。 しかし、やや世界や魔法の説明が多すぎて、登場人物にあまり共感ができなかった気がしたのと、前半(正直言うととびらのあらすじ)で大筋が見えてしまったのが、個人的には残念。この手のファンタジー小説と比べるとページ数の足りなさと、内容の物足りなさを感じてしまいました。 とはいえ、完読しなければ、得られないものもたくさんあるので、最後まで読むべき、良いストーリーです。

    1
    投稿日: 2014.05.21
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    文庫になるのを待ち抜いた作品。 魔術の概要、世界観を説明的にならず読者に分からせる筆力は素晴らしい。引き込む力が強い物語で一気に「読まされた」。 アンジストの過去はいっそもう一冊別に用意するぐらい書き込んでもよかったように思う。非道な敵の理由付にしてはあまりにあっさりとした感があった。故に終盤は若干収縮気味。 すでに既刊の「魔術師の月」は今作の守れなかった魔道師・レアルスの物語。キャラクターとキャラクターで作品を繋ぎ、一大叙事詩のような物語を創り上げて欲しい。

    0
    投稿日: 2014.05.18
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    多彩な人間模様が魅力。“生まれ変わり”のロマンとどんな人間にも闇と救いがある緻密なファンタジーの著者の世界は、日々の現実に縮こまった気持ちを一気に開放してくれる。 対抗する度に敗北してしまう展開と見え隠れする複雑な女心にやきもきしたが、男同士の終盤の決戦は落ち着いて読めた。シルヴァインの真っ直ぐな愛に彼が救われて、あのラストになったと信じたい。

    1
    投稿日: 2014.05.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    単行本で出たとき、表紙絵の美しさに惚れた本。どこかで見た推薦文が私の好きな作家で(有川浩だったかな?)、欲しいなぁーと思っていた本だったから、ようやく文庫化されて嬉しい。 日本のFT界の次世代、みたいな扱いだったから、どんな感じなんだろうと思ったけれど、ずいぶん煽ってあるだけあって面白かった。 文体は固めで、荻原規子(空色勾玉、RDG)や上橋菜穂子(精霊の守人、獣の奏者)の様な読みやすさはなかったけれど、凝った作りだなーという印象。 時空をバンバン越えていく書き方は、色んな物語を読んでるようで、お得感(笑) 3人の魔女の話だけで3冊書けたんじゃないかな。4冊目を、このカリュドゥの話にして完結でもそれなりに面白くはなりそう。海外のFTは、そういうの多いと思うし。でも私としては、この1冊に纏めて、冗長にならないような書き方は好き。海外FTは無駄に長い話が多すぎる…。 最後の、3つの力を取り戻していく描写はちょっとご都合主義で物足りなかったかなー。そこは少し残念。

    1
    投稿日: 2014.05.13
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    私の場合、ファンタジーものを読んで失敗した時のがっかり感は、他のジャンルの時よりもひどいような気がするので、迂闊に手を出せないのですが、この作品は、帯に書かれている「日本ファンタジーの歴史を変えたデビュー作」という文を信じて購入しました。 恐る恐る読み始めたのですが、やはり、帯を信じて良かったです。 しっかりと作りこまれた世界観に、どんどんと引き込まれて行きます。 話が飛ぶ箇所も、きちんとフォローがされているので、置き去りにされる事もありません。 全ての謎が明かされた後の、最後のオチが和やかで、良かったです。 世界観も、それぞれのキャラも良かったので、続きが早く読みたいです。

    1
    投稿日: 2014.05.05
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    日本の作家ではあまり見かけない、ファンタジー小説。 単行本が出たときからかなり話題になっていたが、それも納得。やや古風な文体も作風に合っている。

    1
    投稿日: 2014.04.22