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秘書綺譚~ブラックウッド幻想怪奇傑作集~
秘書綺譚~ブラックウッド幻想怪奇傑作集~
ブラックウッド、南條竹則/光文社
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総合評価

23件)
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    アーサー・マッケン(1863~1947)、M.R.ジェイムズ(1862~1936)らとともにイギリス三大怪奇小説作家とも言われるアルジャーノン・ブラックウッド(1869~1951)の傑作集。芥川龍之介や江戸川乱歩も影響を受けた古典的ホラーである。高校生くらいのころに創元推理文庫の『怪奇小説傑作集1』で「秘書綺譚」を読み、最近岩波文庫の『芥川龍之介選 英米怪奇・幻想譚』で「スランバブル嬢と閉所恐怖症」という作品でこの作家と再会したのを機に、この傑作集を手に取った。 「空家」「壁に耳あり」「スミス―下宿屋の出来事」など、古い家屋にとり憑いた霊という常套的な設定が、安定した(?)恐怖を読者に提供してくれる。 「スミスの滅亡」はアメリカ西部が舞台で、スミスヴィルという火災で全滅した街の霊があらわれるというちょっと変わった作品。 「秘書綺譚」でのユダヤ人、「小鬼のコレクション」でのアイルランド人など、異民族への恐怖がテーマになっている作品はいかにも19世紀的である(発表は20世紀だが)。差別感情は、異なるもの・未知なるものへの恐怖感情と密接にかかわっている。それは21世紀になっても本質的に変化していない。 訳者の南條竹則氏は、1993年『酒仙』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しているほか幻想小説を多く執筆し、ラヴクラフト(新潮文庫)やチャールズ・ラムの「エリア随筆」などの翻訳、評論活動でも知られる。

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    投稿日: 2025.08.10
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    コツコツ光文社古典新訳文庫の時間です うーんやっぱり古典は当たり外れが大きいなぁ 「芥川龍之介、江戸川乱歩が絶賛したイギリスを代表する怪奇小説家の傑作短篇集。」とのことなんだけど、驚きみたいなんはなかったかな もっとじっくり読むとまた違うのかな? ただ短篇集は非常に多種多様だったのと、描写力も高く、詩的表現もあったりして 怪奇小説の教科書、文例集みたいな感じがしました 年内に怪奇小説を書く予定のある人には非常に参考になると思うのでお勧めです(そんな奴おらんわ!いや決めつけ良くないわ!いややっぱ少なくともそんな人はひまわりめろんのレビューなんか読まないわ!)

    44
    投稿日: 2023.10.23
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     ヴィクトリア朝時代の英国産まれの作家、アルジャーノン・ブラックウッド。掌編から長編まで二百篇近くの作品を著し、未だ邦訳されていない作品も多い多作の作家です。手掛けたジャンルもホラーからファンタジーまで幅広く、それは彼が好奇心旺盛で、あらゆるものに接する性質だったからとも。  本書は、そんなブラックウッドの作品から『ウェンディゴ』など有名どころはあえてはじき、初期の作品であるショートハウスものなど11の秀作を選り抜いた短編集です。  以下、なるべくネタバレなしの各話感想。 --------------------------------------------------------- 『空家』  電報で呼ばれて叔母の元を訪れたショートハウス。心霊研究に夢中の叔母は近くにある幽霊屋敷を探索するつもりだった。そこの鍵を手に入れていたが独り身であるために、男手となるショートハウスを呼んだのだ。はたして、幽霊屋敷で二人を待ち受けていたものとは――。 (実体験を元にした、廃墟での肝試しを文学的に表現するとこのような感じになるという見本のような作品。) 『壁に耳あり』  紆余曲折を経て、アメリカの都市で素寒貧状態になっていたショートハウス。その後に運良く職と金を得た彼は、かろうじて住めるくらいに荒れた部屋を借りて住むことに。その後に数日経ったある夜更、隣室を誰かが訪ねてきて、それを誰かが出迎える音を聞く。はて、隣は空き部屋であるはずなのだが――。 (これもアメリカ在住時代の実体験を元にした作品。そのためか、行間から当時の様子が生々しく伝わってくる気がする。) 『スミス -下宿屋の出来事』  同じ下宿の住人であるスミス氏は、全てが謎で、どこか邪悪なものを感じさせる人物だった。ある晩、彼の部屋の前を通りがかった時、ぼそぼそとした会話のようなものと、何かが部屋を動き回っている音を耳にした私は、好奇心から耳を澄ましていると――。 (オカルティズムをテーマにした作品。現象に色々と見当はつけられるが、あえて固有名を使用しない方が読者の恐怖や不安を煽ることがよくわかる。) 『約束』  深夜まで勉強に励んでいたマリオットを訪ねたのは、かつての学友であるフィールドだった。ささやかな食事で歓迎するマリオットに対し、沈黙を続けるフィールド。やがて眠そうな様子を見せた彼に、マリオットは快く寝床を提供するのだったが――。 (ジュブナイルな怪談話。日本の古典怪談にも類似の話があるのだが、タイトルを失念して思い出せない。) 『秘書綺譚』  秘書のショートハウスは、雇い主から彼のかつてのパートナーへ書類を渡す仕事を任される。いかにもな屋敷でいかにもな使用人に出迎えられ、不穏さを感じながらも仕事を終わらせ、早々に退散しようとしたが、帰りの汽車に間に合わないという事態に陥り、急遽彼の屋敷に一泊することに――。 (ブラックウッドお得意の展開になると思いきや、その予想を覆される、捻りの効いた怪奇譚となっている。) 『窃盗の意図をもって』  ショートハウスに説得され、私は彼とともに、黒魔術の実験場と噂される場所で一夜を過ごすことになる。闇が濃くなり、徐々に眠気が二人を襲う。はっと気がつくと、ショートハウスの姿は消えていて――。 (刺激は弱いが、コンパクトにまとまった創作怪談。) 『炎の舌』  セシリアとハロルドは、人を褒めるより、意味も意図もなく貶す方に舌が回るカップルだった。そんな二人に訪れた「報い」とは――。 (表題は新約聖書に由来するもので、地上に顕現した聖霊の一つの姿である。そして炎は浄化と破壊のシンボルでもある。つまり表題は、カップルに対する報いとその原因に対する掛詞[ダブルミーニング]となっているのだ。) 『小鬼のコレクション』  ダットンは、ふと誰かに見られているような気がした。誰かがすぐそばで自分を見ている。アイルランド人の「この大部屋じゃ、ちっこくてピカピカ光るものがよくなくなる」という言葉の真意とは――。 (ブラックウッドによる妖精譚。古き良き日常系ファンタジーの一幕と言ったところ。) 『野火』  ヒースで起きた、奇妙な連続不審火事件。現場である荒野を訪れた画家のヒースは、そこに歓喜を覚えて身を委ねる――。 (「火」をテーマにした幻想譚。ブラックウッドのオカルティストとしての一面が存分に活かされている。) 『スミスの滅亡』  原油で財を成し、自身の名をつけた町まで作り上げたスミス氏と出会ったのは、私が仲間とともにキャンプをしている時だった。彼はただならぬ感情に取り乱したような顔をしていて、何かに怯えて逃げているようだった――。 (結末にて「滅亡」の真意がわかる、世にも奇妙な物語。) 『転移』  わたしが家庭教師を務めているフリーン家の屋敷の庭の片隅には、木も生えず花も咲かない場所があり、そこは「禁じられた片隅」と呼ばれて避けられていた。教え子のジェイミーは言う。「あいつは空腹なんだ」と――。 (吸血鬼の要素を交えた怪奇譚。その結末は妖しくも美しい。)

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    投稿日: 2023.08.22
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     1906年から1923年に書かれたアルジャーノン・ブラックウッドの短編を集めたアンソロジー。  ブラックウッドといえば、どの作品だかもう分からないが(本書にも入っている「秘書奇譚」かもしれない)高校生の頃読んでひどく衝撃を受け、「これは凄いかも」と思ったことがある。しかし、その後創元推理文庫『ブラックウッド傑作選』を読んでみると、そんなにショッキングなところはなくむしろ「ふつう」っぽくてがっかりしてしまった。あの時の「衝撃」というのは、その短編では恐怖小説の骨格ばかりが肉を落とされて露出し、その小説システムの露見が極めてラジカルなものに思えたのだ。骨格が露出するとともに、登場人物はハリボテ人形のような無機質な存在と化してしまう。その非-人間化のプロセスに衝撃を受けたのかもしれない。そうした非-人間化は、やはり私の好きなE. T. A. ホフマンの幾つかの短編にも見られるし、それを突き詰めてあっち側に飛躍してしまったようなのが、カフカの作品と言えるかもしれない。  本書で久しぶりにブラックウッドの怪奇短編を読んでみると、この作家の文章力はあまり良くないなと感じた。ちゃんと筋の通った文章ではあるが、何となく、リアルな描写という近代小説の必須な要素がしばしば置いてけぼりになって、小説と言うより神話的な語り口に見えてくるのだ。ラヴクラフトあたりと比べても、しっかりと描写を重ねていくところが物足りなく、一気に怪異の中心に飛び込んでしまうようなせっかちさが気になる。このせいで若い私に「骨格の露出」という印象を与えたのだろう。  本書前半の方の幾つかの作品は現在から見ると「あまりにもオーソドックスなホラー」という印象があるが、まあ、そういうスタイルを築き上げた古典的作品であるのかもしれない。  しかし特に本書後半はバラエティに富んだ感じがする。結構豊かな引き出しを持った作家だったのかも。あまり丹念に描写しない傾向が、ちょっと惜しい気がする。

    1
    投稿日: 2022.07.29
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    ジム・ショートハウスが主人公なのは、空家/壁に耳あり/秘書奇譚/窃盗の意図をもって 「小鬼のコレクション」この部屋では、小さくてピカピカ光るものがなくなる。後でこっそり返ってくるところが可愛らしい。 ブラックウッド作品では、幻想と怪奇の「柳」が好きです。

    1
    投稿日: 2021.12.18
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    説明できないけど何だか気味悪い、どうにもあの家や部屋や人が、理由はわからないけど我慢ができないのよ、という感じは誰しもあると思う。ホラーというには大袈裟であり、江戸時代の小豆洗いのような生活に密着した、避けようのない恐ろしさ、そういう気張ってない日常的な奇怪さを感じました。ジム・ショートハウスという人物が出てくるのを集めたようで、この人がわざわざ厄介ごとに興味を示して向かってゆく描かれ方が、愉快な調子で良かった。後書きには、あたりはずれの多い万華鏡のような作者だそうで、うまいこという。

    1
    投稿日: 2018.07.12
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    ジム・ショートハウス物を全篇収録。解説でも書いてある通り、佳作揃いでどれを読んでも面白かった。クラシカルな怪奇モノではありますが、バリエーションに富んだ品揃えで。 あと、解説で芥川や乱歩のブラックウッド好きに触れてます。早くから日本に紹介されてた作家なんですよね-。

    0
    投稿日: 2018.01.10
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    冒頭の「空家」が結構苦手な怖さで耐えられるかと心配になったが、あとは比較的好きなタイプの怖い本。 「壁に耳あり」やっぱ壁が膨らむところが怖い。 「スミス―下宿屋の出来事」ラブクラフト的? 「約束」これ好き。冷たいスコーンとか妙にリアル。 「秘書綺譚」壁の絵が怖い。狂気。 「窃盗の意図をもって」他のアンソロジーで読んだ。どれもそうだが、おかしくなった人の描写がリアルで本当っぽいのでぞわぞわする。日本の古典怪奇映画っぽいというのかな。 「炎の舌」ちょっと面白かった。自分でも気をつけよう。 「小鬼のコレクション」小鬼というよりフェアリー。きれい。 「野火」1回スルーしてしまった。改めて読んで詩に近いかなと。 「スミスの滅亡」切ない。 「転移」これがいちばん好きかなぁ。町とか地面とか人でないものが意識を持っているというのは私もそう思うときがあるので共感できるのです。 解説によると明治大正期に愛された怪奇小説。何編かに登場するショートハウス氏は解説を読むと自身の経歴をなぞった人物(破産状態で新聞記者にとか)。

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    投稿日: 2016.08.31
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    「空家」は何度読んでもゾクゾクします。 ビジュアルではなく、音や触感で感じる恐怖。 私にとっては最高傑作です。 けれど他のどの作品もブラックウッドらしい美しくもの悲しい雰囲気の中、恐怖や不思議が絶妙に描かれていて読みごたえがあります。

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    投稿日: 2016.05.16
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    ショートハウスなる人物が登場する話が複数あるので、最初この人物が主人公なのかと思った。各話によって少し性格設定が違うけども。そして私は南條竹則氏の訳文がやっぱり苦手。訳がイマイチだと思って訳者を見るといつもこの人だ。2012/608

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    投稿日: 2015.04.14
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    幻想怪奇小説好きだけど幽霊ものはあまり読みたくない小心者、でも光文社古典新訳文庫の南條氏訳のは全部読みたい好奇心。というわけでやっと秘書綺譚を手に取った。幽霊譚でも<約束>はわりと好き。他は<スミス―下宿屋の出来事><小鬼のコレクション><転移>が好みだった。幻想・怪奇・神秘・恐怖小説を程よく楽しめる、ブラックウッド入門になる一冊だった。

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    投稿日: 2014.10.02
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    スタンダードな幽霊譚や幻想的な「転移」「野火」。どれも恐ろしい感じはしないのだけど、不思議と登場人物の表情や暗い風景がありありと浮かぶ。とりあえず、ジム・ショートハウスは怖い思いし過ぎだと思います。 単純に私の感覚的な問題かもしれないけど「ホラー」という言葉には日本の小説がしっくりきて、「怪談」は欧米の古い作品がしっくりくる。

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    投稿日: 2014.09.06
  • 幽霊屋敷に連れてって

    本書はあの芥川龍之介も愛したという怪奇小説集です(全11編)。 「空家」、「壁に耳あり」、「約束」あたりはよくある幽霊話といえるでしょう。しかし、かっちりとした文体で語られているせいか、文学を読んでいて突然異形のものに出くわしたような怖さがありました。ちなみに、「空家」に出てくる主人公の叔母は、自分が幽霊屋敷を見たいからと甥に付き添いをせがむ困った人です。 怖いというより微笑ましい「小鬼のコレクション」、異形と異形との戦いを語った「転移」も好きですが、なかでも印象に残った1編が「野火」です。赤々と燃える美しい幻想は、小説だからこそ描きえたものだと思います。

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    投稿日: 2014.05.25
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    「幻想怪奇」という言葉に惹かれて。 一つ一つの話が「アレは何だったんだろう?」という後味の悪さを残して終わっていく。特に表題作「秘書綺譚」のアレは何だったろう?感が凄い。こういう引っかかる感じが、本読みにはたまらない。 確かに幻想怪奇な傑作が詰まった素晴らしき1冊。江戸川乱歩が絶賛しただけあるなぁ…。

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    投稿日: 2013.01.20
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    百年前の作品なんて信じられないです。 最近は妙に凝った作風のものが多いせいか、こうあっさりとしたプロットなんだけど文章力で勝負! ていう作品がひどく新鮮でした。 本当に面白い。 じっくりと読みたいって思っていたのに、この後どうなる? で、どんどんページをめくってしまい、すぐに読み終えてしまいました。 古典文学に分類される作品ですが、新訳だからか読みやすかったです。

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    投稿日: 2012.10.24
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    幽霊譚など怪奇幻想もの。小説の構造として奇妙なものも多いんだけど、文章の密度というか、ビジョンというか、雰囲気がすごく良くて、怖いというよりも、物語がしみじみ心にしみてくる感じ。

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    投稿日: 2012.10.13
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    全編面白かった! 100年前の作品なのに、全てやりきっている。ジム・ショートハウスを主人公とした短編が全て入っていたのがありがたい。この本には収録されていないが、ジョン・サイレンスを主人公にした作品の方が有名らしいので、それも読んでみたいと思った。 が、果たして翻訳されてるのか…?

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    投稿日: 2012.09.29
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    ショートハウスが出てくる作品を主に集めた短編集。 ゴーストが主だけど、人狼的なもの、吸血鬼的なもの、バラエティに飛んでいて面白く、すぐに読み終わってしまった。何度でも読み返したい本。

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    投稿日: 2012.05.02
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    表題作他10編の、英国式古典的怪談集。 蝋燭の仄明かりを頼りに暗がりを進んで行くと、 フッと何者かの顔が視界に飛び込み、 またすぐに消えた……が、 それが何だったのか、説明がつかないまま終了――とか。 このモヤモヤ感が堪らない。 本体が死すとき、 その分身(投影、あるいは副産物)も共に滅びる、 という「スミスの滅亡」や、 牙を剥いて生き血を啜る典型的なタイプではない吸血鬼の話 「転移」が特に面白かった。

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    投稿日: 2012.03.30
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    ・私がアルジャノン・ブラックウッドですぐに思ひ出すのは短編「柳」である。これは超のつく有名作で、ブラックウッドにつ いて書く時には、誰もが必ずといつて良いほど言及する作品である。あの自然の怪異と畏怖には圧倒的なものがあり、一読讃歎、彼の代表作と いふにふさはしいと思ふ。同じく、「古い魔術」も彼の代表作であり、実に多くの人がこれに言及してゐる。もしかしたら猫好きな人には愛憎 半ばする物語かもしれないが、あの紛れ込んだ世界の実在感もまた圧倒的である。ブラックウッドは多くの怪奇幻想小説を書いた。この2作以 外にも優れた作品が多い。生まれは1869年、日本では明治元年になるのであらうか。30代終はりに作家となつた。イギリスの怪奇小説黄 金時代を生きた人である。そんな人だから、優れた怪奇幻想小説を書いてゐるのは当然であらう。ブラックウッド「秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集」(光 文社古典新訳文庫)には11の短編を収める。いづれもそんな時代を彷彿とさせ、そんな雰囲気を 堪能させてくれる正統的な短編である。更に、本書のポイントはショートハウス物すべてを収めるといふ点にある。この人物はジョン・サイレ ンスほど有名ではないし、登場する作品は4作しかないが、それをここに収めてあるのである。「彼の性格は作品によって多少違いますが、若 き日の作者の分身である」(「解説」346頁)とか。ブラックウッドは若い頃、様々な仕事を経た後に金持ちの秘書を務めた(同前333 頁)。このあたりを言ふのであらう。 ・その表題作「秘書綺譚」、やはり大金持ちの秘書として務めた仕事の話である。主人の命で、主人のかつての盟友の家を、古い契約書の件で 尋ねる。そこは田舎家、奉公人のユダヤ人との二人住まひ、普段は尋ねてくる人とてない寂しい生活を送つてゐる。歓待され、依頼された仕事 は無事終了、さて帰らうとすると……お決まりの如くに、既に最終列車の時間には遅くなつてゐる。そこでやむなくショートハウスは泊まるこ とにする。さうして、後は恐怖の一夜が待つてゐる……本当に型通りの見事な展開である。この先はどうなのであらう。その家の雇ひ人がいさ さか不気味な男であつたり、主人が生肉しか食はなかつたりで、早々に部屋に入れば、そこは「まことに気持ちの良い素敵な部屋だったが、 ショートハウスは(中略)神経が発する警告を無視できなかった」(174頁)。これもまたなかなかのお膳立てである。さうして最後に事が 起きるが彼は難を逃れて帰着、務めを果たしたゆゑに主人は「給料を上げてくれたばかりでなく、帽子と外套を新調しろ、勘定書はこちらへま わせ、と言ってくれたのだった。」(189頁)実際、この物語は綺譚である。単なる怪奇、恐怖小説とは違ふ。その意味では、先の「柳」と は全くタイプの違ふ作品である。これに対して、冒頭の「空屋」「壁に耳あり」は幽霊譚である。「空家」は伯母との幽霊屋敷探検である。こ れは屋敷の様子とそれに対する二人の反応が中心である。「壁に」はその部屋に取り憑いた霊の出現の物語である。最後にその事情が明らかに される。幽霊譚でも律儀なとでもつきさうなのが、ショートハウス物ではないが、「約束」である。日本ならさしづめ○○の契りとでも題され さうな内容である。要するに、ある男がかつての約束を守つて友のところに幽霊として出現するのである。どちらもよくありさうな物語である し、現代ではかういふのは書かれないであらうとも思ふ。古典的である。イギリス怪奇小説の黄金時代を思はせる作品である。他に、変種の吸 血鬼譚もある。代表作ではなくとも、楽しめる作品集である。

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    投稿日: 2012.03.25
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    乱歩が早くから紹介していたブラックウッドの短編集。光文社の古典文庫で、新しく翻訳されて読みやすい。作品も、幽霊話あり心霊現象ありサイコ系ありバラエティに富んでいて、読み飽きません。

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    投稿日: 2012.03.03
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    最近、寝しなに読んでいます。この作家は神智学協会員でもあって、心霊的現象の詳細な描写がいかにもという感じ。

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    投稿日: 2012.02.06
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    ジム・ショートハウスもの11本。 怖さというより、どちらかというと、不思議だったり薄気味わるかったり。 芥川龍之介や江戸川乱歩が絶賛したというのも、さもありなん。 「秘書奇譚」など、芥川「魔術」への影響を感じる。

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    投稿日: 2012.01.22