
総合評価
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powered by ブクログ最近すごく好きなんです。畑野智美さん。 このお話はこの後に幸せな展開が続いていきそうでじんわりと温かい気持ちで読み終えました。 関係性に名前なんて要らないよね!
9投稿日: 2024.04.24
powered by ブクログ大事な人を優先して自分の心を犠牲にする、、、みたいな話がよくあるけど、ひかるくんと木綿子さんが自分たちなりの幸せ見つけてくれてほっとした
1投稿日: 2024.04.18
powered by ブクログありのままの自分を誰かに肯定してもらうこと、受け入れてもらうことで生きる場所を見つけられる。温かい文章から、読んでいる私も肯定してもらえた気持ちになった。 司さんがひかり君に話した、「そのうち、自分のいるところが真ん中になる」というところ。その前後も含めて心に響いた。 終わり方もとっても良い。
11投稿日: 2024.04.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
手芸店を舞台に繰り広げられる、恋愛感情が分からない女性とネグレクトされて育った男性の物語。 畑野さんの作品を読むのは3作目だが、この本が一番好きだ。一気に読んでしまったし、最後は泣いた。
5投稿日: 2024.04.02
powered by ブクログすごくぽかぽかするお話だった。 もちろん悲しい過去や人には言えないような気持ちを抱えながら生きている人たちの話ではあるけど、そこがあるからこそ今の幸せを強く感じられた。 形式にこだわらない、偏見のない人たちの物語だからこそ、ここまで心温まる作品なんだろうなあ
3投稿日: 2024.03.30
powered by ブクログ恋愛小説とはまた違ったものがたり。光くん側の気持ちと木綿子さん側の気持ちが交互に書かれてて、サクサク読めた。多様性の時代。どんな考え方を持ってても、どんな関係でも二人が良いって思えるならそれでいい。自分の考えや思いが普通じゃなくたって、分かってくれる大事な人が1人側にいるだけで心強い。司さん家族の関係性もすごく良かった。
13投稿日: 2024.03.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
やわらかな手触りの物語。 二人の間に流れるやさしい空気が、相手への思いやりに満ちていて、とても心地よく感じられた。 それにしても、犬ころ男子は可愛いなあ。 周りの人達がそれを愛でてる図も、また微笑ましい。 無理に恋愛という枠に、当てはめなくたって良いんだ。 その人の涙を見るのが辛いこと、その人に笑っていて欲しいと思うこと。 何よりも誰よりも、大事に、大事にしたいと思うこと。 それはとても大きな、愛だと感じるから。 お互いのペースでゆっくりと、二人だけの関係性を築いていけたら良い。
4投稿日: 2024.03.22
powered by ブクログ畑野智美さん大好き! 畑野智美さん作品はたまに読むと私の中の共感がすごい!そうそうそれでいいよね?って思いながら読める 主人公ひかりくんも木綿子ちゃんもそれでいいんだよって言いたくなる。 このモヤモヤすることの多いご時世に心が洗われる最高の作品
15投稿日: 2024.03.15
powered by ブクログ30代女性の悩みも分かるってとこもある 生きづらさってところが共感した ただ、この2人は本当に周りに恵まれている。 成瀬君は変だけど良い人。 ひかりくん良かったねって思ってほっこりした。 綺麗な感じで終わった 二日で読みました。
4投稿日: 2024.03.09
powered by ブクログいとや手芸用品店を営む木綿子35歳と従業員のひかり28歳。雇用主と従業員といえども独身の男女が同じ屋根の下に住んでいれば周りは2人の関係が気になるのでしょうね。 しかし木綿子は恋愛感情というものがわからず、一度も恋をした事がない。一方ひかりは子供の頃から母親が家に帰らず小さな頃からアパートの周りのお年寄りに面倒を見てもらい、普通の家族というものがわからない。 一緒に暮らしていくうちにお互いとても大事な存在である事に気付くけれど恋人にもなれない。ましてや結婚して家族になることも考えられない。でも恋人とか家族とか決まった関係でなくても良いじゃない。誰にも理解されなくても2人が良いならお互い大切な人という関係でずっと一緒に暮していくのはありだと思う。
5投稿日: 2024.03.06
powered by ブクログ雨と風のため窓が割れ部屋にはいられなくなった。 ひかりに不幸が襲ってくる。 勤めている洋食屋の閉店と 住んでいるアパートの取り壊しが迫っている。 救ったのは『従業員募集!住み込み可!』の張り紙。 しかし、その店は「いとや手芸洋品店」だった。 祖母から引き継いだ手芸店でひとり暮らしの木綿子。 28歳の独身男性・ひかりを雇うことになる。 同居をする2人に周りは心配しつつ 次第に付き合っている男女と決めつける。 家族、恋人にもいろいろな形がある。 それは当然のこと。 木綿子の悩みも漠然としか伝わらないのだけど きっと、彼女のように悩み苦しんでいる人は世の中にたくさんいるはず。 愛し方がわからない2人の周りには支えてくれる人がいる。 「大事な人を守る」 それがわかっていれば大丈夫で いちばん大切なことのような気がする。 この本を読み「心が軽くなった」と思える人もいると思う。
2投稿日: 2024.03.04
powered by ブクログ生きることに辛さを感じている、男女2人の物語。 木綿子さんと光くんの恋仲でもない「パートナー」という関係性がとても素敵だった。 2人の何気ない会話にいちいちときめいてしまった。
10投稿日: 2024.02.25
powered by ブクログひかりと木綿子の関係性がとても良かった お互いがお互いを大切に想い、お互いの欠けているところを補いあう空気のような存在 夫婦の理想の最終形態のようだった(笑)
4投稿日: 2024.02.18
powered by ブクログ人が人を想う気持ちや、人と人との関係性は色々あって、恋人とか家族とか、ひとくくりにはできない。 自分が自分のままでいたら、周りには自分を理解してくれて大事にしてくれる人が集まってくる。
13投稿日: 2024.02.15
powered by ブクログ色んな形の家族がある。 多様性の時代と言われて 頭では理解できていても 見えてるものだけが全てじゃない。 身近な知り合いや友人、 もしくは自分の家族が 自分らしく居られる場所を見つけた時 そっと寄り添えるような そんな人でありたい。
9投稿日: 2024.02.13
powered by ブクログ手に取ったのは寺地はるなさんのXへのポストがきっかけで、当時は(今も?)心がつかれていてなにかに縋るような気持ちで読み始めた。中盤から自分でもひいてしまうぐらいに泣きながら読んでた。人にもオススメしたい一冊。
4投稿日: 2024.02.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
台風の夜に住む場所を失くした、無職の28歳独身男・ひかりは、嵐の中で雨宿りに入った軒先で住み込み従業員募集の張り紙を見つけ、飲食店の募集だと思い面接に行く。だが、その店は手芸用品店でだった。店主の木綿子さんの厚意で住み込みで働くこととなったひかり。 独身の年頃の男女が一つ屋根の下で暮らせばそこに恋愛関係を想像するが、恋愛迷子の二人にはその気はなく。 木綿子さんの友人で失恋のたびに手芸店にやってくるまいちゃんの言葉に考えさせられた。「恋愛って年齢で変わるよね。中高生の頃は憧れに近いものでかっこいい先輩とかに恋をして、大学生の頃は野性的でセックスのことしか考えてなかった。大人になると自分にあった人、生活の安定、出産のことを考えて恋愛する。単純の好きじゃなくなるんだよね。」(ニュアンス) 「ただ好き」だけでよかった恋がいつからかいろんな制約の中で展開していく。大人になったらあらゆる責任が付きまとうから当たり前だと思いつつ、なんだかむなしいなと感じてしまう。
7投稿日: 2024.02.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
先が気になって、適度な緊張感を伴うワクワクで読み終えました。 同じ畑野作品で言うと「消えない月」のように、今後何度も思い出す、という本ではないけれど、静かであたたかい感じを楽しみました。 ひかり君の辛いことの多い過去の描き方が、いかにもな書き方ではないところがいい。読んでいて胸が苦しくなるけれど。 わたしにはない経験で、木綿子さんにもひかり君にもとても共感!とはいかないけれど、むしろ「そんなん話してみなけりゃわからないよー!」と何度も思ったけれど(デリカシーないわ笑)、ひかり君へのじいちゃんや司さんの言葉がとても響いたな。 じいちゃんや成瀬君、今、大人として、成瀬君のお母さんのような人になりたい。簡単なようで簡単じゃない。 共感できなくても、そういうこともあるのねと思える人でいたいな。 二人とも、まわりに恵まれる人なのよね、それってなによりの財産だ。 ひかり君のように、「名前に合わせて僕が変わることはない、なんて呼ばれても僕は僕」とは思えないわたしは、ある意味いろいろ縛られているのかなー、自分自身が縛っているのかな。旧姓含め苗字を大事に思うのは、しあわせだからとも思うけれど。
2投稿日: 2024.02.12
powered by ブクログ35まで恋人のいない独り身の女が〜 不器用な大人たちが〜 みたいなあらすじに惹かれて読んだ。 ウルトラ美人やないかい! ふざけんな!! 脳内キャストは中谷美紀(35)である。 ちなみに光は川岡大次郎である。 いやさ、アロマンティックなのはわかったけどさ、その美女っぷりで「単なる同居人」に下着まで洗わせて平気のへの字でその気ありませんってどうなん。 相手を軽視してねえか。 いやわかるよ? そういう一元的な見方をするなってテーマなのはわかるけどさ。 「あんたらは下着洗濯まで分けんと、それで付き合ってないと言っても、そらいけませんよ!とーりませんっ!」 って私の中の西宮のおばさんが火を噴いた。
2投稿日: 2024.02.10
powered by ブクログ恋愛感情がわからず、人の感情をうまく感じられない木綿子さん。 恋多き母親の影響で、恋愛感情で誰かと繋がることが信じられない光くん。 人とは違う…と悩み、それを誰にも話せず心の奥にしまい込んだ二人が出会い、 ともに暮らしていく中でお互いが大事な存在になっていく。 二人の関係性はなんていうのだろう。 恋でも愛でも、友達や恋人、家族でもない。 でも果たして、関係性に名前なんて必要なんだろうか…と思えてくる。 ただお互いに必要とし、一緒にいることで穏やかな気持ちで過ごすことができる。 相手の幸せを願い、だからこそ身を引くこともある。 でも、一緒にいたい。 それだけでいいと思う。 二人の何気ない会話や二人の周りに流れる空気感がすごく心地よくて、こちらまでこの世界がずっと続いてほしいなと思わずにいられなかった。 そして二人の周りにいる成瀬くんや美咲ちゃん、司さんなど、理解して優しく包みこんでくれる存在がいて本当によかった。
3投稿日: 2024.02.05
powered by ブクログ人と人との関係性は、家族や恋人…言葉で表現できる場合だけじゃないし、どんな形であれお互いに心地よい関係を築くことが1番なんだと思った。「普通」ってどういうことなんだろう?と考えるきっかけでもなった(答えはまだ見つからないけど)。
1投稿日: 2024.01.31
powered by ブクログわたしにとってもひかりのような物語だった。気持ちがリンクしてちょっと泣いちゃった。自分がいるところが中心になっていく。木綿子さんと光くん、ふたりがいつまでも幸せでいられますようにと思う。
2投稿日: 2024.01.31
powered by ブクログ著者17作目。しかしながら今一つ作風が掴めない。「読まなければよかった」作品の一つになっている著者の『消えない月』でトラウマになってしまった為かもしれない。あの話は今回同様男女両方から交互に視点を変えて描かれてなかったか?? 構成がよく似てるからどうしても暗闇を手探りで進む様に恐る恐る物語の展開に構えてしまう。 物語の時間軸と共に主人公の過去のネグレクトの話が少しずつ浮き彫りになってきます。 主人公の雇主もアセクシャルとして平行して描かれていて、その2人のお互いを想う感情を恋愛とは違う触れるか触れないかの微妙な距離感を見事に表現しています。 穏やかな文章で穏やかな展開の中、唯一出てくるある場面が、物語の構成上とてつもなく鋭利なナイフで抉られた感じになります。 かなり後を引いてしまった。
42投稿日: 2024.01.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ブクログの本棚でよく見かけるなーと 手に取った一冊 初読みの作家さんでした 初めての作家さんは なかなか手に取りづらいのですが ブクログのおかげでいろいろ挑戦できてます(^^) さて、こちらは 恋愛にいいイメージを持てないひかりと 恋愛感情がわからない木綿子の物語 2人の関係はなんなのか それは2人自身が一番わからなくて そして周りもヤキモキしてしまって 相手の気持ちもわからないし でも大切にしたい、一番。 そんな気持ちをずっと抱えながら 過ごしていく2人を見守っていく そんな物語でした 恋人、友達、家族、知り合い 人との関係の種類は意外と少ないのに どうしてもそれに当てはめてしまいたくなる。 でも、そういう圧力に苦しむ人もいるんですよね 2人はすごく悩んでますが お互いがどんなことでも 受け止めようとしてくれる姿勢が とても羨ましく感じました。 穏やかに、幸せに暮らしてほしいです 後半、手芸店の人たちが 2人のことを噂してるようなことを読んで 仲間だと思ってたのに…と ちょっと悲しくなりましたが そういうものなのかもしれないですね 2人がわかっていれば みんなにわかってもらう必要は ないのかもしれません その分成瀬と成瀬の家族の温かさが めちゃくちゃ沁みました、、、 あとおじいちゃんや司さんのセリフも すごく好きでした 自分のことを大事に思ってくれる人たちのことを考えて 生きていきなさい それで、自分のことも大事にしなさい うんざりするようなことを 言ってくる人もいるかもしれない。 でも、胸を張っていれば、 何も気にせずに付き合ってくれる人が 周りに増えていく。 そのうち、自分のいるところが真ん中になる じんわりと沁みる物語でした(^^) ちょっと手芸やりたくなりますー!
85投稿日: 2024.01.30
powered by ブクログ子供の頃に思い描いていた未来を手に入れるのは簡単なことではなく、それどころか普通の大人にさえなれていないと気付き落ち込む人は多くいるだろう。 人生を諦めるまではいかなくても出来ればもう傷付きたくない。 読んでいて苦しくなる場面もあったけれどそれ以上に励まされた。 一緒にいて心が傷付いてしまうような人との付き合いを絶ったり時には自分の心に正直に生きる。 そういった狡さを選ぶことを恐れてはいけないなと思った。
3投稿日: 2024.01.30
powered by ブクログ普通じゃない、人と同じことができないことは生きづらい。 素直で、まっさらで、でもどこか不安定なひかりと、手芸用品店の店主の木綿子さんの関係が素敵。 瀬尾まいこさんを思わせる世界観もある。 親に恵まれず、勉強も苦手で学校でも浮いてしまい、そのまま高校へも進学せずに働き始めるもやはり人間関係で揉めては辞めてを繰り返していたひかりを見ていて、ちょうど現実世界で騒がれている京アニ放火事件の青葉被告を思い出してしまった。 彼もまた、劣悪な生い立ちによって歪んだまま大人になってしまった。もちろん現実と物語だから比べられないことも多いけれど。 ひかりは、母がとても美人で本人も整った容姿をしている設定だった。唯一にして最大の理解者である幼馴染、成瀬もひかりがかわいいから好きなんだと断言している。顔だけのことをかわいいといっているわけではないにしろ、なんだか少し悲しくなってしまった。 人と違うこと、人と同じようにできないことはそのまま生きにくさに直結する。 そんな人たちにも、誰か一人でも大切に思ってくれる人がいますように。
6投稿日: 2024.01.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
恋愛感情がわからない木綿子とネグレクトを受けていたため愛情がわからない光が偶然出会った。 恋愛関係ではなくたって一緒にいたっていいよね?もしかしたらこれから恋愛に発展するかも?な感じ? シェアハウスで他人同士住むのはよくても2人だから周りがうるさいのかな?うん。そうだね。もし近所にそういう関係の人がいたらやっぱり珍しく思ってしまうかも。私の住んでるところは田舎だからシェアハウスも多分ない。あったら珍しく思ってしまうかも。 一人でずっと暮らしていく…って考えてみたらすごく怖い。だから、こういう良い関係、いいな。と、つらつらと思うのでした。
10投稿日: 2024.01.25
powered by ブクログ人はなぜ、「恋人」とか、「友達」みたいに人と人との関係性にラベルをつけたがるのだろう。 そうした方が、安心するからかな? ■ 大変なことも辛いこともたくさんあった。けれど、母親といれることは、僕の人生で1番の幸福だった。 →これって、どういう心理なんだろう。母親のせいで自分が傷つけられているのに、母親といることを望む。それは、「親に愛して欲しい」みたいな気持ちから来ているのだろうか? ■ 人と人との関係性は多様なのに、それを表現する言葉があまりにも少ないなと思った(友達、夫婦、恋人) 2人だけの関係性を表す言葉を2人で作ればいいのかな?
4投稿日: 2024.01.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
この作品は、嫉妬や告白、付き合うといった恋愛ドラマ的な展開はほとんどなく、もっと静かで、もっと深くて、もっと丁寧な「男女の人間物語」でした。読んでいて何度も、自分自身のこれまでの人生と重なる部分があり、心に刺さるような言葉がいくつもありました。 とくに印象的だったのは、主人公のひかり君が孤独を感じ、「これからもずっと一人なのかもしれない」と思っていたところから、少しずつ、自分の周囲にある“支え”に気づいていく過程です。友人とその家族、隣人のおじいちゃん、そして手芸屋を通じて出会っていく人たち。ひかり君は、自分の弱さや恥ずかしさを含めてまるごと受け止めてくれる人たちに囲まれて生きているんだと気づくその場面が、とても素敵でした。 また、木綿子さんとの関係性にも心を動かされました。恋愛感情を持たない者同士でありながら、だんだんとお互いの存在が必要になっていき、「ずっと一緒にいたい」と思える関係へと育っていく――その流れがとても自然で、ありのままを大切にしている感じが心地よかったです。恋愛という枠にとらわれない、多様なつながりのかたちに触れることができました。 ラストはドラマチックな盛り上がりがあるわけではなく、淡々とした締めくくりでしたが、逆にそれが「この日常がこのまま続いていくのだろう」と思わせてくれるような余韻があり、静かに心が満たされました。 私は、情熱的な恋愛を経て結婚した経験があるため、この物語にどこか“物足りなさ”のようなものも感じつつ、それでも「こういう人生もある」と思えることが、とても豊かな読書体験になったと思います。感動や派手さではなく、日々の中にある静かな奇跡を描いた一冊。大切にしたい作品です。
3投稿日: 2024.01.24
powered by ブクログ初読みの作家さんでしたが、セリフが多くって注意してないとどちらのセリフか解らなくなったり台本呼んでるようで感情の機微とか読者がイメージしてキャラ付けしていく無骨さを感じたのですがそれも何気に新鮮に思えました。 住込み従業員募集の貼り紙を見つけ面接にくるヒカリ。台風で洋食屋と勘違いしてた様子ですが手芸店だったとかの件は面白かったです。最初女子だと思って読んでたのですがどうも男だった。身の上を聴き採用してしまう木綿子は35歳の独身女性、自分嫌いで人にも興味ない感じ。ヒカリとは7つ年上とゆう年齢差が絶妙な設定でした。恋愛のできない木綿子の設定も面白く二人の距離感に興味津々で読み進めることができました。 それにしても、住込みで働くとゆうことは仕事とプライベートの区別が難しく雇用主の機嫌を損なわないようにしなければ追い出されそうだし、この手芸店休みがないようだし働くとゆうよりも、暮らすとゆう感覚で従事しなければ破綻しそうな関係が絶妙なバランスを保ってました。この二人の関係は、はたから見てても稀有で運命的なものを感じさせてくれました。ヒカリは元料理人だけあって料理下手の木綿子の胃袋をガッツリ掴んだ様子で見ていて楽しかったです。またヒカリの友人知人が店を訪れても嫌みひとつ言わず優しく接する木綿子にヒカリも公私わきまえずに対応できてる姿勢が居心地の良さを感じました。何故か親友の成瀬には苗字呼びのところが気になったりでしたが。 一緒にいて心地よくなければプライベートの時間に顔をあわせて食事したりテレビみたり、買物したりしないですよね。 同じ屋根の下で暮らしていてもお互い顔も合せず暮らしている親子や夫婦もいる訳だけど、近づきすぎてわがままにならず適度な距離をおいて互いを思いやることのできる関係って何気によさげに思いました。 ただ共感できるかとゆうとどうかなあって感じです。まあ他人事だしとやかく言うつもりもないわけですが、何か亀裂が入った場合は簡単に壊れそうだし、雇用主に都合のいい関係に思えて仕方ない。健康なうちはいいけど将来どちらか不幸があって一人になってしまう場合とか考えたらある程度の期間すごしたら曖昧に過ごすのも無責任に思えるので覚悟を決めて婚姻関係でないにしても入籍とか養子縁組とか考えたほうがいいのではと思ってしまいました。そうじゃないとなにかあった場合にヒカリが可哀そう。「病める時も健やかなる時も~」とかの誓いの言葉は困難な状態になった時も互いに愛し支えあう意味が込められてると思うのですがそこらへんって自分に都合が悪くなっても思いやることだと思うし普通に重要なことじゃないかなって思いました。
81投稿日: 2024.01.19
powered by ブクログ恋愛感情が分からない木綿子と、母親に捨てられた経験を持つひかり。 手芸用品店を営む木綿子の元に、住む場所を探し求めていたひかりが居候することになり、恋人とも友人ともいえない不思議な関係となった。 恋人にはなれないけど、一緒にいたい。 お互いを大事に思う気持ちは本物で、でもそれを表す的確な言葉がない。 そんなモヤモヤに悩みつつも、二人だけの関係を紡いでいく姿は、応援したくなるし、ずっと見守っていたくなる。 読み終わった後は、優しい気持ちになる、どこか懐かしいお話でした。
15投稿日: 2024.01.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
家族(愛情)とは。恋人(恋愛)とは。 2つのテーマが内在する物語。 「普通」の家族生活を送れなかった青年、光。「普通」の恋愛をしない手芸屋の店主、木綿子さん。2人の関係性を中心として幸福の多様性を考えていく構成となっている。 物語は光と木綿子さんのそれぞれの視点が交互に描かれていて、読者だけが2人のバックグラウンドや心情を読み取った上で展開していく。個人的には2人がこの物語の主人公で、主人公たちの行動や心理描写をどのように受け取るか、この複雑な関係性をどう受け止めるかが読者に委ねられているのではないかという気がした。 近年、多くの作品に取り入れられている「多様性」を一つのテーマにしつつも、恋愛だけに留まらずまた改めて家族愛や友人関係等の人と人との間にある愛情を見つめ直す作品だった。特に光の境遇は、少し前に話題になった「親ガチャ」という言葉が思い出される。物語の中で明確に言及はされないものもあるが、身近な人間関係の問題が所々に内在している。 物語の構成上、大きな事件や急激な展開は少なく穏やかに進んでいくので印象に残る場面をピックアップするのは難しい。しかしながら、その穏やかさが読み手にも考える時間を与えてくれているので、読後はかなり満足できた。 私自身がアセクシャルということもあって、この物語を読んだ後の印象や感想を色んな人に聞いてみたくなった。是非多くの人に読んでもらいたい。
5投稿日: 2024.01.18
powered by ブクログ恋人ではないけど、友達と呼ぶよりは大切なひと。そばにいて守りたい大切なひととの関係をなんと呼べばいいのだろう。今流行りのパートナーもちょっと違う気がする。 多様性を突き詰めていくと、自分は普通と言っている人も一人ひとり少しずつ違っていて、それぞれ一生懸命生きているんだと思う。 穏やかだけれど、少し緊張感のある木綿子とヒカリの今の関係がこれからも続くのか、変化していくのか。わからないままに終わるのだけど、もうしばらく見ていたかった。
8投稿日: 2024.01.15
powered by ブクログ恋愛感情がわからない木綿子さんと、ネグレストされていた光君をずーっと見守っていたくなる小説。 男女の関係は、夫婦、恋人、友達とかに分類されてしまうけど、どれにも当てはまらないけど、互いに一番大切な存在で、2人にしか分からない関係というのもありだと思った。
5投稿日: 2024.01.14
powered by ブクログ男女が一つ屋根の下で暮らすことの、恋愛感情がどうとか、周りから聞かれて、前も同じくだりあったなあと思いながら読んでいた。とてもいい話なんだろうけど、自分には刺さる話ではなかった。ラストも中途半端で終わってしまった。
9投稿日: 2024.01.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
あらすじ 「ぼく」夜野光は27歳。中学卒業後から料理関係の仕事を転々としてきた。若くして自分を産んだ母親はネグレクト気味で、家を出たまま亡くなった。長年住んでいたアパートは取り壊しが決まっていたが、その前に台風で部屋は住めなく鳴っていた。そんなとき、商店街で「住み込み可」の張り紙を見つける。手芸店だった。 手芸店オーナー木綿子は35歳、フリーの手芸作家として本を出版したこともある。学生時代から見た目の良さで人気があったが、本人は恋愛感情が理解できず、その延長で人間関係にも自信が持てずにいた。 主人公光の境遇はなかなか重い。彼が30歳手前なのに、作中での言動が幼く感じるところなんかも、これまで限られた人間関係で生きてきた印象を受けた。物語最初の方の、台風で部屋が水浸しになった、とか、手芸店でトラブルを起こして店を出た、あとの行き先が健康ランドぐらいしかないっていうところが辛かった。木綿子も表面から見えない負担を抱えていて、二人ともなかなか平坦ではない生き方をしている。ラストははっきりわかるハッピーエンドではなかったけど、これはこれで読後感よかった。
3投稿日: 2024.01.13
powered by ブクログ恋愛というものが良く分からない35歳美女の手芸店経営者と、ネグレクトで心が傷ついたまま大人になったプリティーな男の子が、恋愛なのか友愛なのか分からないけれど、お互いを必要とする関係になっていくという内容で、優しくてとてもきれいな世界です。 なんだかんだで美男美女じゃねえかと突っ込みながら読みましたが、結構好きな内容でありました。 僕自身男女が一緒に居ればカップルと見ますが、勝手なイメージでしかないんですよねえ。周りはとやかく言わずにほっとけという本が最近多いですが、僕も実際そういう意見なのでしっくりきます。
13投稿日: 2024.01.12
powered by ブクログ二人の関係性が、危ういようで危うくなく微妙に安定している感じが微笑ましかったです。この関係性が壊れませんようにと無意識に思いながら読んでいました。ところで文中にあった集中したら唇を尖らす人って見たことあります。
2投稿日: 2024.01.11
powered by ブクログ恋愛感情がないとか、性的感情がないこと、世でいう結婚出産のロードにあたりまえに進むことを望まず、誰にも理解されないかもしれないと恐れたふたり。男女というだけであたりまえにその思考になるのもおかしな話だよな、2人にとってこの関係がいいと思えたらそれがベストだし、見つけられることってとても良いななんて思いながら読んでいた。守りたいという感情が溢れ出て光が行動する姿も心打たれる。日向の正しさというのが優しさに見えて傷つける、というのも人の感情は一筋縄ではいかないから響くところがあった。
7投稿日: 2024.01.09
powered by ブクログ大切な人との関係。 恋人とか夫婦とか、あるけれど、同じ「恋人」でもその関係は本人たちによって様々で、それでいいんだなと思える本。 どうしても世の中に多数の関係が「普通」になってしまうけど、そんなことを気にせずに2人の関係性を大切にしていきたい。 終わりも、これからも物語がやさしく流れ続けるのが見える、素敵な終わり方。
58投稿日: 2024.01.07
powered by ブクログ複雑な家庭環境で育った男と、何不自由なく育ったが恋愛感情が理解できない女が偶然に出会い、お互いを大切に思いつつも微妙な関係を続ける話と要約してしまうこともできるが、ネグレクトやらダイバーシティーといった現代的な課題を盛り込んだ今の時代の小説という感じがする。 本筋とあまり関係ないが、主人公のひかりが子供の頃から住んでいたアパートが取り壊されることになり、小さい頃から面倒を見てもらっていた住人の「じいちゃん」が施設に引っ越すのをひかりが手伝いに来て、じいちゃんに「施設にも会いにいくから」と言ったのに対し、じいちゃんが「来なくて、いい」「ここでの暮らしは忘れなさい。それで、幸せになりなさい。それがここの住人、全員の願いだ」「年寄りのことなんて、気にしなくていいんだ」「ひかりが元気でいてくれるだけで、幸せだった。いつも笑顔であいさつをしてくれる姿に、ここの住人は救われた。これからは自分のためだけに生きて、幸せになりなさい。みんながそれを願っている」というセリフに胸を打たれた。こういうことを言えるじいちゃんになりたい。
5投稿日: 2024.01.07
powered by ブクログとても考えさせられる作品でもありました♪ 亡くなった祖母のあとを引き継ぎ小さな手芸用品店を営む糸谷木綿子(35)と、偶然にひょんなことから住み込み従業員として転がり込んだ全然畑違いで小さな洋食屋勤めだった夜野光(28)の二人が主人公の物語。 それぞれが密かに抱えている思いや感情や特質が所謂一般的な世間との常識的な関係性と微妙に違っていて、その理由は読んでいく中で分かってくるけどそんな二人の接近具合がなんとも切なく甘酸っぱくもどかしい! 二人に纏わる人たちがみんな良い脇を与えられていて、自然に多様性の社会を読者に考えさせてくれる切ないけれども温かい好作品に仕上がっています。 実際の所は作品のような、夜の闇を照らす光のような、当事者にとって生き易い社会には遠いのが現実ではありますが.....
31投稿日: 2024.01.06
powered by ブクログ子どもの頃の環境は大事だな、幼くても子どもは覚えているものだな、と考えさせられる話でした。また、こんな関係もありなのかなと思い、応援したくなるような二人でした。 そしてそして、私も美味しいもの作ってもらって食べたくなりました(笑)
7投稿日: 2024.01.03
powered by ブクログネグレクトをされながら成長してきたひかりと、一般的な家庭環境の木綿子が出会って、住み込みという同居がはじまる。子供の頃の環境って大切なんだと改めて思った。 木綿子の悩みは一部分かるなと共感した。 この二人の関係が今後も穏やかに続いていけばいいな。 若葉荘もシェアハウスの話で今回も他人同士が同居するという共通があってどちらも惹き込まれた。この手の話が好きみたい。
7投稿日: 2024.01.03
powered by ブクログ自分自身、20代も半ばになって、この先ひとりで生きていくことへの恐怖や不安、周りと同じようにライフステージをクリアできないことへの焦りをよく感じるようになったので木綿子さんの気持ちに共感するところがとても大きかった。 誰かと一緒に生きていきたい、けど恋愛関係になるのはなんか違う、モヤモヤを抱える自分をそっと包み込んで肯定してくれるような優しさを感じた。 多様性という言葉をよく耳にするようにはなったけど、言葉だけがひとり歩きしているような気がする。 実際のところ全てを受け入れて理解することは難しいのだと思う。(だからと言ってみんなに理解してほしいとは思っていないけど、、複雑だ、、) お互いの不足部分を補って支え合う関係、その関係に名前はなくても一緒にいて幸せならば、自分たちがずっと一緒にいたいと望むのであれば、それはそれでいいのではないか。 この先も木綿子さんとヒカリくんが穏やかに過ごせたらいいな、と思えるラストだった。
3投稿日: 2024.01.01
powered by ブクログ「普通」って何だろうって、改めて感じた。 「付き合ってる人はいるの?」「結婚はまだ?」「子供は?」 何気ない会話の一部でも、心に棘が刺さる人もいる。 「多様性、多様性」と騒がれる時代になったけど、まだまだだよね。 likeのような好きもあるし、loveのような好きもある。2つ合わさったような好きもある。 人間一人ひとり個性があるように、好きの感情も人それぞれ。 木綿子さんとひかり君、心の温かい2人の新たな手芸屋さん、私も行ってみたいな。
35投稿日: 2023.12.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
祖母の手芸店を受け継ぎ、いとや手芸用品店を営む木綿子は、35歳になった今も恋人がいたことがない。台風の日に従業員募集の張り紙を見て、住み込みで働くことになった28歳の光は、母親が家を出て以来"普通の生活"をしたことがない。そんな自らの生い立ちから恋愛や結婚を避けている。周りからは一緒に住んでいるのに恋愛関係ではないということがなかなか理解してもらえないが、木綿子と光はお互いを大切な存在だとしながらも世間的にカテゴライズされにくい関係を作っていく。 「できることならば、今がずっとつづいてほしい。」まさにそんな感じで2人のこのままの関係をずっと読んでいたいと思った。お互いに傷つけないように、距離をとりながら、お互いに幸せになってほしいと思っているのに、名前のつけられない関係性や普通ではないことにがんじがらめになってしまう。お互いに気持ちを話せてどんな形であれ二人が「ずっと一緒にいると」決めることができて本当によかった。
5投稿日: 2023.12.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
【あらすじ】 いとや手芸用品店を営む木綿子は、35歳になった今も恋人がいたことがない。台風の日に従業員募集の張り紙を見て、住み込みで働くことになった28歳の光は、母親が家を出て以来“普通の生活”をしたことがない。そんな男女2人がひとつ屋根の下で暮らし始めたから、周囲の人たちは当然付き合っていると思うが……。不器用な大人たちの“ままならなさ”を救う、ちいさな勇気と希望の物語。 「自分の好みや生活を変えられてしまうほど、他人を強く思うことはない。常に自分の「好き」が最優先で自分のことばかり考えている。」 【個人的な感想】 私はこれまでの人生で「他の人と自分は違う、変わっている」と思ったことがない。普通と言われる、思われるものを好んで選んできたため、あまりこの物語には入り込めなかった。 ただ、この物語を読んで「自分の正しさ(例えば両親に愛されてきたこと、自分が当たり前だと考えていること)」のせいで傷つく人がいる、ということは考えさせられた。
3投稿日: 2023.12.17
powered by ブクログずっとこの物語が続いて欲しいと思ってしまう小説。 読んでいてとても心穏やかに過ごせる時間でした。 人って関係性を求めがちで、型に嵌めたがる傾向があるのかも知れません。 そのために見栄や世間体を気にして生活をしているような気がします。 でも、この物語を読むともっと自分らしく自分らしい関係性を作っていいんだと思わされます。 内容自体は、表現が優しく、可愛らしい話なのでオススメです。
7投稿日: 2023.12.13
powered by ブクログヨルノヒカリ=夜野ひかりくんという28歳の男の人と糸谷木綿子さんという35歳の女の人の物語。 光くんは結構複雑な家庭で育ちその事が原因のトラウマも抱えながら生きていた。 木綿子さんは今まで恋愛感情というものがわからずでも大好きな手芸を仕事にしながら不自由のない生活をしていた。 今の時代だから理解してもらえるような、家族でもなく恋人でもなく友達でもない2人だけの言葉には表せない関係に勇気をもらえた。 大変な思いをしてきた光くんだけど、支えられて過ごしてきた。
13投稿日: 2023.12.08
powered by ブクログありきたりな感想だけど、とても胸に響いた。 どうしてタイトルがカタカナなの?という疑問は読了時にわかる。 この6文字に色んな意味が込められていた。 みんな誰かのヒカリなんだね。 普通か普通じゃないか、正しいか正しくないかは本人が決めることで決められることじゃない。 人は形や目に見えないことに対して当てはまるものを探そうとするけど、その状態でいいものは世の中に沢山ある。 周囲に合わせて取り繕ったり、歪める必要はない。それを知っているのは自分だけでいいと思える勇気がわいた。 そしてそれを分かち合えた瞬間こそが私にとってのヒカリなのかもしれない。
24投稿日: 2023.12.07
powered by ブクログ光は家族というものがわからない。 木綿子は恋というものがわからない。 自分が「普通」とは違うということに悩む2人が、小さな一歩を踏み出すまでの9か月間を描くヒューマンドラマ。 物語は主人公の2人、光と木綿子の視点で交互に描かれていく。 ◇ 大型台風が町を襲ったその日、強風で飛ばされた物干し竿がアパートの部屋の窓ガラスに突き刺さった。たちまち吹き込む雨風。 6畳ひと間の部屋が居場所もないほど水びたしになっていくのを見て、光は隣の駅近くにある健康ランドへの避難を決めた。 駅に向かいながら、光はこれからの身の振り方を考える。 働いていたレストランの閉店まで1か月を切っている。蓄えもさほどないため早く次の職場を決める必要がある。 おまけに次の住居も早急に探さなければならなくなった。台風被害で部屋が住める状況ではないからだ。 取り壊しが決まっている今のアパートの退去期限は2か月後という約束だが、今さら修復は頼みにくい。もう退去したほうがいいだろう。 とにかく職場と住居探しを急ごう。 隣駅を出た光に対し、威力を増す雨風は容赦ない。ビニール傘は一瞬で壊れた。全身ずぶ濡れで商店街を通っているがどの店もシャッターが下ろされ照明は消えている。 途中で目についた店の軒先で一旦休憩しようと近寄った光は、店の壁に貼り紙がしてあるのに気がついた。貼り紙にはこう書かれていた。 『従業員募集! 住み込み可!』( プロローグ ) * * * * * 様々なタイプの人たちが登場していて、とてもおもしろかった。また、現代の社会問題の数々も取り上げられていて、いろいろと考えさせられる作品でもありました。 主人公の1人、夜野光。 いわゆる毒母からネグレクトに近い育てられ方をした。美人の母に似た顔立ちをしており、幼い頃には短期間同居した母の恋人から性的虐待を受けそうになったこともある。 最終的に母親に捨てられるのだが、幸い祖父母の支援と親友の成瀬一家の支えがあり、道を外れることなく成長した。 ただ、成長段階において「家族像」がまったく作れておらず、家庭を持つ自分をイメージできない。さらに何かのはずみで感情を爆発させるところがある自分に嫌悪と恐れを抱いており、人と親密な関係を結ぶことを避けようとする。 そんなことから28歳になった今も、将来への夢や希望を抱けないでいる。 もう1人が糸谷木綿子。 木綿子には恋愛感情というものが昔からわからない。美人で明るく気立てもよいため、男子から告白されることは少なくなかったのだが、その「恋する」という気持ちが理解できないでいた。 それでも高校・大学時代には誘いに応じデートもしてみたが、手を握られただけで気持ちが悪くなってしまう始末だった。 自分はそういうタイプなのだと思うことにしたものの、人目を引く美人であるゆえ勤務先でも恋人や結婚について詮索されることが多い。そんな日々に疲れていたところ、手芸店を営む祖母が亡くなったのを機に退職し、手芸店を継ぐことにした。 店の客は常連さん中心で、そのほとんどは女性。木綿子は元々、休みの日に祖母を手伝いに来ていたこともあり、顔見知りの客が多いのもよかった。 多数の好奇の目に晒されることがなくなって、やっと落ち着いた。趣味の手芸を活かせるということもよかったのだろう。 とは言うものの35歳になった今、生涯1人きりで生きていくことにそこはかとない淋しさを感じている。 と、なかなか深刻な人物設定です。 主人公がこうだと、普通は暗く重いストーリーになりがちだけれど、そこはさすが畑野智美さんです。展開を速くして重暗い空気を引きずらず、光と木綿子の人間性のよさをほのぼのと描くことで読者にひと息つけさせてくれています。 例えばこの2人の会話がなんと言ってもいい。 いつも遠慮がちに、そして敬語で話す光ですが、家事の苦手な木綿子に代わってその一切を引き受けているだけあって家内に関することはきっちり言います。 年下で子犬のような可憐さを持つ光にフランクに話しかける木綿子。でも光が少しでもしょげた顔をすると、慌ててフォローしたりもします。 ( なんて微笑ましい! ) 料理人の仕事を探していた光。学校で服飾を学んだ女性や手芸店で働いた経験のある女性を探していた木綿子。 本来ミスマッチとなるはずの2人の出会いが台風によってもたらされたという設定が、とてもよかったです。 さて主な脇役陣です。 恋愛依存の女性が2人出てきます。光の母親の由里と、木綿子の親友の真依です。同じ「恋多き女」でも2人はまったく違います。 自分に言い寄ってくる男 ( 結構いる ) なら誰とでもくっつくのが由里です。 由里自体が、知性もなければ人間的な奥行きもないという、見てくれだけの薄っぺらな女です。 そんな由里に言い寄る男にろくな人間がいるはずもなく、アパートに居着かれ、暴力を振るわれた挙げ句、捨てられる。 そんなことを繰り返し、ついには光を置き去りにして男と夜逃げしてしまう。結局、出奔先でも男に捨てられ病死する。 という絵に描いたような、色ボケで身勝手な因業女です。 一方、恋は好きですが相手をきちんと見極めるのが真依です。自分を決して安売りしない。 大手広告代理店でバリバリ仕事をしているだけあって、頭の回転が速くなかなか気が強い。言いたいことははっきり言う。 ( 恋が長続きしないのはそのあたりに理由があるのではと推測します ) 木綿子にとって、よき相談相手であり頼りになる友人でもある。 と、なんとも魅力的な女性です。 相手任せの恋に終始した由里と自分をしっかり持って恋に臨む真依。対照的な「恋多き女」が印象的でした。 次は、光と木綿子に関わってくる2人の男です。 光の小学生時代からの親友で恩人とも言える成瀬良一と、出版社に勤める編集者で木綿子についての記事や本を企画した日向です。 どちらも至極まっとうですが、そのまっとうさの使い方に違いがあります。 成瀬は、教室で1人になりがちで小柄なため虐められやすい光の面倒を、何くれとなく見てやるようになります。また姉とともに光の身の回りのことにも気を配り、両親に相談したうえで再々、光を家に呼び食事や入浴、団欒など心身のケアに努めていきます。 ( 両親がよくできたステキな人たちなんでしょうね ) また、光の祖父が光と同じアパートに越してきてからは、祖父にも気を遣って始終顔を見せに来たりもするのです。 と子犬のような光を好きになった成瀬は、少年時代の光にとっては保護者のような存在でした。 日向は優秀な編集者で、木綿子の作る小物をSNSで知り、まず雑誌で作品を取り上げ、続いて作品と木綿子自身を紹介した本の刊行を主導します。 ( 手芸店のネット販売の注文が殺到したり来店客が増えたりしたので、まずまず売れたと思われます。) ある日、日向は木綿子に恋人として付き合ってほしいと告げます。もちろん恋愛や男性に後ろ向きな木綿子は断り、日向との仕事は終わりにしたいと申し出たのだけれど、日向は木綿子との仕事を諦めませんでした。恋愛抜きでいいから ( 口先だけです ) と、木綿子に連絡を取り続けて来ます。 と、一見紳士的な日向は、恋愛対象や取材対象にはグイグイいく暑苦しい男でした。 成瀬も日向も、気に入った対象にかける想いはまっすぐで、言うことも至極まっとうです。けれども、相手のために動く成瀬と自分のために動く日向。その「まっとう」の使い方の違いがおもしろかったです。 その他、女装趣味のイケメン偉丈夫エリートサラリーマンの司 ( イメージとしては『マカンマラン』のシャールさんです ) も重要な役割を果たしています。そのかっこよさもお楽しみに。 家族を持ちたいという欲求のない光。 アロマンティックアセクシャルらしい木綿子。 でも光は木綿子と一緒にいることで安らぎを感じることに気づいたし、木綿子は光がそばにいることで孤独感を忘れ、心が満たされていることに気づきます。 そして互いに、これまで人に話せずにいたことを打ち明けあったあと、一緒に暮らしていこうと決めました。すごくいいシーンでした。 家族や夫婦の形態って、きっといろいろあっていい。その人たちにとっていちばん合うスタイルで一緒にいられればそれで十分なんだということを、改めて感じさせられた作品でした。
56投稿日: 2023.12.07
powered by ブクログ手芸用品店を営む木綿子は、35歳になった今も 恋人がいたことがない。住み込みで働くことになった 28歳の光は、”普通の生活”をしたことがない。 不器用な大人たちの”ままならなさ”を救う、ちいさな 勇気と希望の物語。
3投稿日: 2023.12.07
powered by ブクログすごく悲しくて淋しくて温かくて優しい話だった。 若すぎる母やそのパートナーにネグレクトや暴力や性暴力の虐待を受け、孤独な子ども時代を過ごしたひかりと、家族には恵まれながらも恋愛感情がわからない自分に戸惑いながら歳を重ねる木綿子。 友達でも恋人でもない2人だけの名前のない関係を築く話。 同じアパートで暮らしていたおじいちゃんや成瀬のひかり愛に感動した。周りに愛されながらもやはり親からの愛の代わりにはならないんだと痛感。 私は木綿子の非恋愛体質に少しだけ共感した。
13投稿日: 2023.12.03
powered by ブクログ静かな物語だった。 ラストシーンも静かだった。 お互い誰よりも大事な人と分っているけれど、恋人ではない関係。 そして、その“大事”という感情をなかなか相手に伝えられないもどかしさ。だって大事だけれど、恋人になりたいのかどうかは自分でも分からないのだから。こんなことを伝えたら相手はどこかへ行ってしまうのではないか。だけど、誰よりも大事だからずっと一緒にいたい。でもそれは、相手を縛り付けてしまうことなのではないか。 お互い、究極に唯一無二の人に巡り会えたんだな、と感じます。でも大事過ぎて好き過ぎて、嫌われたくないからなかなか本音が言えないんですよね。 世間一般からはどうしても、友達だったり恋人だったり夫婦だったり名前のある関係性を求められるから困りますね。 でも、主人公の周りの人達の「普通に幸せになってもらいたい」という気持ちも痛いほど分かるのです。 “普通”とは、特殊な関係を排除するということではなく、唯一無二の相手と巡り会ってほしい、心を許し合える人と生涯を共にしてほしい、ということだと私は思います。自分亡き後、その人に託したいんですよね。“大事”なその人のことを。 そう考えると、主人公の二人は「普通に幸せ」なんだと思います。
91投稿日: 2023.12.02
powered by ブクログ表紙かわいい!で手に取った本 普通に見える人でも歪な所は絶対あるのに、自他ともに認めたがらなかったり みんな違ってみんな良いって言いながら、やっぱり普通でいたがったり 認め合える人が数人でもいてくれればいいんだけど、そもそも開示するのが無理だしそんな人見つかる?ってマイノリティの悩みを理屈っぽくも説教臭くもならずに淡々と丁寧に描いてあってとても良かったです
3投稿日: 2023.11.30
powered by ブクログアロマンティックとかアセクシュアル、最近出てきた言葉だけど、公表できないだけで、昔からこういう人はたくさんいたんだろうな。それがちゃんと社会で認知され、概念となって理解されていく過程に必要な作品。2人の関係性の構築の過程や、ひかりくんの過去の描写に胸が詰まり、読了までに時間がかかった。関係性に名前はいらない、そんな当たり前なのに難しいことがよく沁みた。年の差カップルや性を超えた付き合い、本人たちが良ければそれでいいじゃないか。ウチはウチ、ヨソはヨソ。周りは口出ししないのが当たり前の世界になるといいな。たくさんの人に読まれて、理解が広く深まりますように。 p.272 「ひかりくんと木綿ちゃんは、2人の関係を築いていけば良い。何か言う人がいても、2人がしっかりしていれば、大丈夫だから。理解できないと騒ぐような誰かに認めてもらう必要なんてない。うちみたいに。所と違うから、社会の隅で生きていこうとかも、思わなくて良い。うんざりするようなことを言ってくる人もいるかもしれない。でも、胸を張っていれば、何も気にせずに付き合ってくれる人が周りに増えていく。そのうち、自分のいるところが真ん中になる」 この先、木綿子さんがそばにいても、楽しいことばかりが起きるわけではないだろう。2人でいることで、嫌な思いをするかもしれない。「普通ではない」ということに対する世界の厳しさは、子供の頃から感じてきた。20代後半の男と30代仲間の女性が何年も一緒に暮らしていれば、「普通は」と言い出す人は出てくる。それまでは「付き合っているの?」と聞かれる位だったが、それでは済まなくなるだろう。自分自身は、何を言われても良い。そのことで、裕子さんが苦しむようなことを言われるのは、避けたかった。でも、大事なのは自分たちがどうしたいかだ。周りに合わせ、小さくなる必要は無い。 p.303 「友達、恋人、夫婦、人と人の関係性を表す言葉はとても少ない。そのどれにも当てはまらなくていいと思います。僕と木綿子さんだけの関係を作っていきましょう」
4投稿日: 2023.11.28
powered by ブクログコーヒーと糸。光と木綿子の視点印が、交互に辛い胸の内を打ち明かす。司さんの信念ある生き方が素敵。人の目を恐れ、型に嵌めたがっているのは、詮ずる所自分自身なのかもしれない。
0投稿日: 2023.11.26
powered by ブクログ畑野作品は3冊目。ひかり君と木綿子さんの関係性が焦ったくて、とっととお互い一番大事に思っている事を話し会えればいいのにって思いながら読んでいたけど、ほんと良い終わり方。 後半はほとんど泣きながら読んでいた。 大事な相手だからこそ、傷つけたり傷つけられたり扱いが難しい。大事な人を大事とちゃんと気付けてさえいないこともある。無くなることを怖がって最初から深く付き合わないようにするのも、諦めるもうに自分から逃げてしまうこともあったなあ。大人になると、特に年齢を重ねていくと大事な人ってどんどん減るからこそ、大切にしないとな。
4投稿日: 2023.11.25
powered by ブクログ木綿子と光、2人の関係性がとても愛おしい。 人はどうしても"理由"や"物語"を欲してしまう。 そして、何にでも"名前"をつけたがり、カテゴライズしようとする。自分が安心したいから――。 分からない異質なものは理解できず怖いから、自分から遠ざけたり排除しようとする。 でも、そんな世間一般の枠に無理矢理当てはめる必要なんかない。この作品はそれを教えてくれた。 ご飯を一緒に食べるだけで安心して、一緒にいるだけで満 たされる。 楽しいことがあれば誰よりも先に話して聞かせたいし、美しいものを見たら同じものを見せてあげたい。 悲しいことや辛いことがあれば、元気になれるまで隣にいる。 相手の望みを優先したいし叶えたい。笑顔でいてもらえるなら何でもするし幸せになってほしいと願っている。 「ただいま」と言って帰ってこられる場所でありたい。 作中に出てくる、このような2人の思い。 相手を誰よりも大切に想うこの気持ち以上に、大切なことなんてないんじゃないかな? 友情だろうが恋や愛だろうが、どれでも無かろうがどうでもいい!この関係性に、名前も理由も、説明もいらない。 理解してもらう必要も、認めてもらう必要もない。 「2人だけのカタチ」を作っていけばいい! そう思った。 文中の「人と違うから社会の隅で生きていこうとかも、思わなくていい。そのうち、自分のいるところが真ん中になる。」という言葉が心に染みた。 タイトルの「ヨルノヒカリ」。 これは単純に光のフルネームじゃなかった。 夜も母親を一人待ち続ける光にとって、"ヒカリ(月光)"は "追い求めても永遠に届かない存在=母親" の象徴だった。 アパートを取り壊すシーンでは、「見落としてしまいそうな細い月」という表現だったのが、木綿子と出会ってからのシーンでは「半分より少し膨らんだ月」と表現されている。また、「子供のころ、母親を待ちながら月を見ていた僕に、いつかひとりではなくなることを教えてあげたかった。」とある。 "ヒカリ"の表現の変化は、木綿子と出会ったことで、自分の心が求める大切な存在が、母親→木綿子 に変わったことを表しているのだと思った。また、遠くて届かない不安な存在→自分を照らし導き満たしてくれる存在 に変わったことを意味していると思った。 星★は4.5! 減点理由は、 ・「日向さんがそこまで悪い人には思えないし、光に殴られる理由に乏しい。」 例えば、日向が木綿子に詰め寄るシーンで、木綿子の肩や腕を掴んでしまうとか、身体に触れるような行為があれば理解できるけど…。ただ詰め寄っただけで殴るのでは、光の人間性を疑ってしまう。 ・「最終章の必要性をあまり感じない。終わり方が好みじゃない。」 最終章で木綿子がまた同じ悩み(光がこの先ずっといてくれるのか等)を悶々と考え始めるので、なんだかずっと堂々巡りしている感じで少ししつこく感じた。わざわざ2人の気持ちを再確認し合ったり、お互いの悩みや過去を打ち明けあうシーンも、なんだか説明臭くて必要無いと思う。 最終章前の、2人が初めて手を繋いで家に帰るシーンで終わったほうが綺麗な結末になった気がする。2人のこれからを読者の想像に委ねる「余韻」がほしかった!
17投稿日: 2023.11.24
powered by ブクログ周りが何を言おうと本人たちが幸せなら良いのである。凪良ゆうさんの本でもそんな感じの本があったが、本書は主人公2人を取り巻く人たちが優しさに溢れている。 結婚していない男女が同じ家で暮らすとなると、誰かしら口を出してくると思う。本書でも「彼とはどうなの?」と言ってくる者こそいるが、皆、本気で2人の幸せを願っているのが分かり、微笑ましい。ただ、若干まだるっこしいなとも感じた。もっと言いたいことを互いに言ったらいいのにと思うが、そうできたら2人とも今まで苦労することがなかっただろう。 主人公の女性は、恋愛とはどういう感情なのかが分からないが、相手を大切に想う自分の気持ちは分かっている。 恋愛感情なのか思慕なのか、それとも…と何でもかんでも枠に嵌めなくても、人は人を大事に思うことはできる。それでは周りは納得しないかもしれないが、関係ない。
8投稿日: 2023.11.24
powered by ブクログ7歳差の女男関係ということで、映画「水は海に向かって流れる」の広瀬すずと大西利空をイメージ。こういう設定はやはりおけつこそばゆいのう。
0投稿日: 2023.11.23
powered by ブクログこういう関係、これから増えそうだなと 思いながら読了。 人はやはり一人で生きにくい生き物だから、 一人で老いていく恐怖には共感しかない。
5投稿日: 2023.11.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
切なかった。 柔らかく気持ちに響くところもあり、ズシンと重く感じるところもあり。 ひかりの肖像がひかり自身の言葉だけでなく、色んな人の側から言われていて。そこでどっと泣けたりした。 木綿子さんの柔らかい部分や、ひかりの真っ直ぐなところがとても可愛くて切なくて、ずっと見ていたかった。 二人はふたりの距離で関係で、少しずつ真ん中を育んでいくんだろうと、幸せな気持ちになった。 ただひとつ、もっと望むとすれば。後半に、ひかりの気持ちがもう少し描かれていたら、もっと満足していたかも。マイナス☆はマイナスなのではなくて、もっと二人の、ひかりの気持ちが読みたかったという、読者のわがままのマイナス☆で。ほぼ満点です!
3投稿日: 2023.11.16
powered by ブクログ恋愛感情を持てない木綿子さんと一人ぼっちだった夜野光が嵐の夜一枚の求人貼り紙が縁で知り合い関係を築いていく。 生き辛さをお互いを大切に思う気持ちで支え合う姿がとても美しい。普通ではない人々への優しい眼差しが物語の底にあって、とても温かい気持ちになりました。 手芸品店もその作品も楽しそうでした。
3投稿日: 2023.11.15
powered by ブクログ――ヨルノヒカリ――夜野光― 彼の子供時代は寂しさに耐え、母親の帰りを待ち続けていた。お腹をすかし、 服を替えることもなく。たまに帰る母は 男が一緒のこともあった。 そんな生活でも、周りの人々に助けられ 後に祖父母の元へ行った。 光は中卒で独りバイトで生計を立てた。 “普通”の人とは? 両親の元で育ち、高校又は大学へ行き就職をする。恋愛をして結婚、そして子供 が生まれ・・・・だろうか?いや、違う。 自分で自分が普通であるか?自分のことをどう思っているのか?複雑だ。 三十五才、恋愛経験なし。手芸用品店 経営者、糸谷木綿子は独り暮らしで寂し かった。シャッターに「従業員募集!住み込み可!」と貼紙を出した。木綿子は 恋って?恋愛感情って?そんな思いを抱いていた。 台風の夜、光は避難する為街中を歩いて いて、貼紙を見つけた!アパートは取り壊しが、バイト先は閉店が・・・・光には ぴったりの貼紙だ。 ひとつ屋根の下状態、恋愛感情いまいちの木綿子、成長に問題のあった光。 お互いに自分を普通ではないと思っている。それでも、二人は生活を楽しんで いた。 読んでいて苛々した。仲が良いのに、 お互いを思っているのに、それ以上へは 無理。・・・・きっと、きっと・・・・だって 二人の周りには見守ってくれる人が沢山いる! ゆっくり、ゆっくり、今以上の仲に、 絶対なれる!幸せに!! 2023、11、15 読了
51投稿日: 2023.11.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
優しくて、でもただ優しいだけじゃない物語だった。 タイトルのヨルノヒカリ、はまさかの人の名前!(夜野光くん)ということに驚きつつ、ひかるくんが偶然働くことになった手芸店での生活の話。 手芸店は木綿子さんという美人な店主が祖母の代から引き継いだお店でひかるくんは住み込みで働くことに。 幼い頃から母親の結婚や離婚で名前が変わったり、虐待を受けたり、我慢をしたりしてきたひかるくんが木綿子さんのお店で穏やかに暮らせていることが幸せすぎました。 ひかるくんの友人の成瀬くんも底抜けに明るくていい子で好き。好きなことしか興味ないっていうのもいいなぁ。 一方木綿子さんは恋愛感情がわからなくて、ひかるくんのことを大切には思っているけど、これは恋なのかと悩む。 確かに、恋愛感情って改めて家族愛とか友情と比べて何が違うんだろう?と思った。 でも、その答えはきっと人それぞれだし、2人が2人ならではの関係性を築くのがきっと正解なんだ。
4投稿日: 2023.11.10
powered by ブクログ題が人の名前とは思わずに読みま始めました。手芸店をテーマにした小説は珍しくいろいろと新たな発見もありました。また、2人のお互いを思う気持ちや、周囲の思いやりがほのぼのと心地よく、幸せになってほしいと思わずにはいられず一気よみしました。
3投稿日: 2023.11.04
powered by ブクログマイノリティや虐待がテーマの本が最近は多い。 この本もそうで、たけど目を背けたくなる様な描写ではないので読んでいて苦しくならずに済み、切ない感情と幸せになってね と願いが残る本だった。
2投稿日: 2023.11.04
powered by ブクログこちらの作品、表紙が可愛いですよね♪畑野智美さんの作品を読むのは2作品目ですが、畑野智美さんの描く物語はとっても読みやすくって、それでいて今の生きにくい社会を、懸命に生きようとする登場人物に思わず感情移入しちゃえるんですよね! いとや手芸洋品店の店主、糸谷木綿子は35歳になるが恋人がいたことがないという女性。そして、夜野光28歳は、母親から充分な養育をしてもらった経験もなく(むしろネグレクト)、中学卒業を機に自立し様々な飲食店に勤務してきた経験を持つ。光が住むアパートを取り壊しも決まり、そして勤めていた飲食店も閉店することになり、途方に暮れる中台風の影響でこれ以上住めなくなる事態に陥ってしまう。アパートにいられなくなった光は、灯りの灯ったいとや手芸用品店の店先に掲示された、従業員募集(住み込み可)の貼り紙を見て翌日面接を受ける。翌日面接を受け、住み込みで働かせてもらうことになる…。木綿子はこのお店の上階に住んでいることから、ふたりの生活がここから始まることになった…。 お互いを想いながらも、その気持ちをどんな風に表現していいのかがわからないふたり…ちょっと焦れながら、それでもふたりの今後をそっと応援したくなるような、そんな読後を持ちました。他の人がどう見ようと、どんな風に思われようと、そこは関係ないんですよね…。そして、小学生の時から続いている光と成瀬の友情…これもまたいいなって!優しい気持ちになれるそんな作品でした。
64投稿日: 2023.11.03
powered by ブクログ私もカテゴライズしがちだから、気をつけないとなーと実感。 男女間なんてそれこそ色々あるのに、つい「恋愛」という枠に当てはめて物事を考えてしまう。 司さんのような、しっかりと自分を持ってる人に憧れるなぁ。 ひかりくんと木綿子さんがこの先も幸せでいれるといいな。
15投稿日: 2023.11.01
powered by ブクログ世の中の人と人との関係を表す言葉なんてとても少ないのに、どうして誰かは誰かをカテゴライズしたがるんだろう。 司さんの「言ってくるような誰かのことなんて納得させなくていい、胸を張って歩いていればそこが自分の真ん中になる」がすごく心に残った。 何が誰の幸せかなんてわからないし、自分でも自分の気持ちがわからない時なんてたくさんあるし、でもそれでいいんだと思う。 木綿子さんとひかり君2人だけに流れる静かな空間の描写、木綿子さんが手芸をする時間、ひかり君がご飯を作る時間の描写が涙が出るほど自然で、読者もほっとしあわせになれました。 フィクションだとわかっているけど、どこかでこの2人の穏やかな暮らしがずっと続きますようにと願わずにいられません。 今年読んだ小説のトップ3に入るなあ
9投稿日: 2023.10.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
恋愛感情が解らない木綿子と、過去にネグレクトにあっていて家族の温かさを知らない光。 台風の日に取り壊しが決定したアパートの窓が破損し、途方に暮れた光が商店街を歩いていると、住み込み従業員募集の張り紙が目に入った。手芸店とは知らずに応募した事をキッカケに、不器用な2人が家族になっていく… 恋愛関係ではない、親子でもない不器用な2人が少しずつ距離を縮めていくのが、不思議な関係だけど、ちゃんと家族になっていったのが良かったです。 光の周りにちゃんと自分を理解してくれる友人家族が居たのも救いでした。 これから木綿子と光、変わりなく過ごしていくんだと思うと、ほんわかした気持ちになれました。
7投稿日: 2023.10.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
亡くなった祖母の手芸店を一人で継ぐ木綿子。誰もが認める美貌の持ち主だが35歳で未だ恋愛経験はない。 28歳の光は、恋愛に自由奔放なシングルマザーにネグレクトをされ育ち「普通の家庭」を知らずに過ごしてきた。 木綿子の営む手芸店に住み込みで働くことになった光。 世間から見た「普通の恋愛」の出来ない男女2人が ひとつ屋根の下暮らすことで 周囲からの目を窮屈に思いながらも ゆっくりと心を通い合わせていく。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ レビュアーさんの、あ、カリスマレビュアーさんの(こちらとは別の本)のレビューを読んでいて、ずっとMISIAさんの『アイノカタチ』が頭の中で鳴っていた。 『愛にもしカタチがあって それがすでにわたしの胸にはまってたなら あなたのことを知るたびに そのカタチはもうあなたじゃなきゃ きっと隙間をつくってしまうね』 木綿子と光。今まで付き合った誰とも心の隙間を埋めることは出来なかったけど、出会ったんだねぇ。「大切」だけど「恋」ではない2人の距離感がもどかしいと思うのはきっと、私がこの本の登場人物なら真依ちゃんだからなんだろう。 週末には自分で作ったワンピースで女装する司パパの娘ちゃんたちがとってもいい子。光の親友 成瀬もめちゃいい子。 私は何も作れないけど手芸店はワクワクするから好き。 ☆ギリ3なのは、なんか木綿子があまり好きにはなれなかったこと笑 近づきたくない相手には心のシャッターを降ろしちゃうのは私も同じ。傷つけられるのはイヤだ。でも木綿子の態度は極端すぎるというか。 この人ダメって思ったら速攻で心のセコムが作動して すぐさまビービー警報鳴らしてシャッターガチャン!で寄せ付けない。 男性が怖い木綿子が自分を守るためであっても、その態度は相手を傷つけてない? 相手を理解して思いやるって大事だけどなかなか難しい。
35投稿日: 2023.10.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
確かに良いお話だと思う。 ただ、しばらく作品から遠ざかっていたので、申し訳ないことに、初期の畑野さんのイメージから、何か妙な設定があるのではないかと期待していた。 確かに主人公の2人の設定は、ちょっと不思議である。が、瀬尾まいこさん的でもある。 暴力の欠片だけか。クセはあるけど、良い人ばかりの登場人物の中に、少しの影を落とすのは。
3投稿日: 2023.10.17
powered by ブクログするすると読めてしまい一気読み。 前向きになれる読後感で夜寝る前に読みたい。 普通って難しい。 何かしら形にはめらててしまう 形にはまることで安心できる そこから外れる事は普通じゃない そんなふうに括られることの窮屈さとそこにはまれない自分自身へにジレンマへの葛藤を抱える木綿子と 家庭環境から抱えきれない傷を背負ってただ生きる事だけに精一杯のひかり。 お互いに形にはまらない形でお互いがお互いのかけがえのない存在になっていく。 みんな違ってみんないい 日向君のくだり、違いを受け入れるというのは大なり小なり難しい事を改めて考えさせられる。 「悪い人ではないの。でも、正しい人だから。わたしはその正しさに傷つけられてしまう。」 善悪ではない、ただ違う。
7投稿日: 2023.10.15
powered by ブクログ自分を他人と比べなければ、もっと楽に生きていけるのに。 そうわかっていても、自分の気持ちはなかなか切り替えられない。 大好きな母親と離れ離れになったヒカリ、恋愛に踏み込めない手芸店の女主人。お互いに現実社会には溶け込めないのに、二人でいると心地良い。 自分とは、全く境遇が違う人たちの物語なのに、世間の決めつけへの息苦しさには、とても共感できた。
25投稿日: 2023.10.15
powered by ブクログ木綿子が営む、いとや手芸用品店で住み込み従業員として働く事になったひかり。 自らを普通ではないと認識し、そこに対するジレンマを抱えながら不器用ながらも互いを支え合おうとする2人の勇気と希望の素敵なお話。 ん〜そもそも普通って何でしょうね〜 十人十色、皆違う人…だから普通の基準も本当はそれぞれ別のはずなのに。 夫婦、恋人、愛、恋、絆、親友(なんかこの物語には心友の方が合ってる気がする)名称なんて何でもいい、名称のない関係性があっても全然いいと思う。 本人達が心地良いならば人に説明できない関係性があってもいいと思うし、人に説明する義務もない。 要は多様性と叫びながらもそれを認識し、理解し、受け入れる…というハードルが今の日本にはまだまだ高すぎるんでしょうね。 多くの人と少しでも違う部分を消化するキャパがまだまだ備わっていない。 なんなら木綿子さんやひかり君の様に自分自身ですら消化しきれず普通じゃない、変だ…と自らを追込み、傷付ける。 誰も傷付きたくなんてない、人との関わりを避けようとするのは当たり前だ。 でも木綿子さんには聡子さん達お店のパートさんや修ちゃんがいて、ひかり君にはじいちゃん達や成瀬君家族がいてくれて良かった。 何よりもの救いだ。 そして木綿子さんとひかり君が巡り逢えて良かった。 皆それぞれの想いを抱えながら生きている。 白黒つけなくてもグレーのままが心地良いならばそのまま穏やかに暮らしていけたら良いのに…
22投稿日: 2023.10.10
powered by ブクログ多様性のあり方をいろいろな登場人物が考えさせてくれた。ふたりの中心人物の視点で交互に描かれており、穏やかに展開していくのが読みやすかった。明るいヒカリを感じられる最後なのも、読後の気持ち良かった。
3投稿日: 2023.10.09
powered by ブクログ暗い夜に一筋の光が差し込んだような感覚の物語。 手芸用品店を営む35歳の木綿子は恋愛感情がよく分からない。 28歳の光はネグレクトの母親の元で育ち、「普通」とは無縁で生きて来た。 そんな男女がひとつ屋根の下で暮らし始める。 胸の奥に誰にも言えない寂しさを隠していた二人が、男女の枠を超え少しずつ距離を縮めていく過程が心地いい。 派手な展開があるわけではない。 静けさを伴いながら淡々とした日常が紡がれ、互いに相手を思い遣る感情が芽生えていく。 その関係性に名前がなくても二人が安らぎと幸せを感じられるならそれでいいと思える。
5投稿日: 2023.10.04
powered by ブクログ読み始めてすぐに〝はまった〟。 とにかく、心地よい。終わるのが惜しい感じで読み進めた。終盤は、ちょっと重くなって来たがとても良かった。これは「読まないと損」の部類だ。 つらい時期もあり、いわゆる普通ではないが (何をもって普通というか・・・は問題だが) 素敵な主人公2人。周りの人たちのキャラも素晴らしい。
6投稿日: 2023.10.03
powered by ブクログ感想 普通なんて誰が決めるのか。親か、友達か、教師か。そんなこと考えなくても良い。ルールは自分たちで決められる。楽しくのびのび生きる。
3投稿日: 2023.10.03
powered by ブクログ裏表紙を読んで、これは好きな小説だっ!と衝動的に購入。 題材は好きなものです。いろんな人がいていい、型にハマらなくてもいい。めっちゃどタイプのテーマ。でも期待が大きかったからか、物足りなさを感じてしまった。 もう少し登場人物に深みを出してほしいと思ってしまう自分は難しいのだろうか。また、この物語は女性と男性の物語が交互に入れ替わり展開するので、どうしても女性作家なので、女性パートの方がより共感できるし、読みやすい。男性パートは読み進めにくく感じてしまう。
5投稿日: 2023.10.02
powered by ブクログいろんな形があっていいと思う。 わざわざ型にはめなくても。 それぞれが幸せであれば。 周りと比べる必要なんてない。 100人いれば100通りの思いや考えがある。 周りと違うからって自分がおかしいのかもって思う必要もない。 みんな違うのが当たり前。 周りに納得してもらえなくても 自分たちが幸せであればそれが一番⭐️ 木綿子と光、ゆっくり進んでいけば幸せは永遠に続くんじゃないかな。 本屋で思わず手に取った本。 心が温かくなりました。
21投稿日: 2023.10.02
powered by ブクログアパートの取り壊しが決まり、五年間勤めていた洋食店もオーナーが体調を崩して閉店が決まった。 台風に物干し竿が飛んできて窓が割れる。 とりあえず健康ランドでも行くかと出て、大雨の中『従業員募集!住み込み可』の張り紙を見た、28歳のひかりは、手芸店だとは知らずに翌日には面接をしている…。 祖母から継いだ手芸店を営む木綿子は、35歳になっても今だ恋人もいたことがない生活だったが、ひかりを住み込みで受け入れる。 ひかりは、母親が家を出て以来家族を感じたこともない生活で、木綿子は恋愛感情というものがわからないままずっと1人。 不器用な2人がいっしょに住むことで変化していくものとは…。 普通とは何か? 普通でなければならない、ということなど何もありはしない。 恋愛だってそうだと思う。 これは恋愛小説だと言えそうでいて、もっと奥が深い人間愛なのかもしれないと思った。 人の心の中なんてわかりにくいけど、自分の心の中をわかりやすく伝えるのも難しいものだと感じた。 だがいろんな場面で、この2人に愛情を感じてしまう。 他人だけど家族に近い関係で、お互いに必要として大切に思っているのが伝わってくる関係。 この2人に幸せになってもらいたいと心から思った。 成瀬くん、良い友だちだな。
65投稿日: 2023.10.02
powered by ブクログ何でもかんでも男女が一緒にいる理由を恋愛にしないでほしいし、しなきゃならない理由もないよって言ってあげたくなる。やさしくてあたたかですごく好きな一冊。手芸やりたくなる
13投稿日: 2023.10.01
powered by ブクログ「ちょっと普通ではない」ことにとやかく口を出して来るのが世間。その人の在り方やその周りは千差万別なのに。 ということをやわらかく伝えてくれる作品。 個人的に「多様性」という言葉は嫌いな偏屈人間だが、この作品はすっと胸に落ちた。
4投稿日: 2023.10.01
powered by ブクログ恋をしたことがない木綿子と、家族という存在がよくわからない光。 光が木綿子の手芸店で住み込みで働くことになり、二人は時間をかけてお互いの特別な存在になっていく。 恋愛の形は人によって違うし、年齢によっても変化していくもの。確かにその形について他人にとやかく言われるものではないよなと思った。 「人と違う」と感じている二人だからか、言葉のかけ方や立ち振る舞いに配慮があって、とにかく優しい。 温かな余韻に包まれて、幸せな読後感。
33投稿日: 2023.09.28
powered by ブクログ恋をしたことのない35歳の女性 子供の頃、育児放棄されていた20代後半の男性 二人は偶然、一緒に暮らすことになる。 恋や愛、恋人でも友達でもなく、お互いにとってとても大切で傷つけたくなくて、傷つけるものからも守りたいと思える、大切な相手。 二人の関係を言葉にするのは難しい。 的確に表す言葉はないのかもしれない。 作中では、ネグレクトや多様性など、重いテーマも扱っている。 そのことは、二人の個性にも関係あるのかもしれないけれど、二人の関係はとても美しい。 二人の悩みや苦しみは私にはどこまで理解できているかわからないけれど、こんなにも大切で理解し合おうとする人と出会えることはとても素敵だなと思った。 夜の光のような静かな優しさにあふれ、包まれているような読後感。 ひかりくんが作るご飯がとても美味しそうでした。
11投稿日: 2023.09.16
powered by ブクログ恋をしたことがない木綿子と、家族という存在がよくわからない光。わたしたちの関係が“特別になるまでの9カ月。書き下ろし長篇"
2投稿日: 2023.09.13
powered by ブクログ優しい夜の光にあたたかく包まれて 灯のようにやわらかく照らしてくれる。 自分を自分のまま受け入れてくれる。 心のベクトルを合わせて共に歩んでくれる。 関係性を言葉にはめ込む必要はない。 凝り固まった考えをほぐして 自由な形を許してくれる。 そんな希望の光のような二人が愛おしい。 闇夜にある星はどれもそれぞれで そのひとつひとつの瞬きに それぞれ救われる人たちがいる。 この夜の光もきっと誰かを照らしてくれる、 そんな物語です。 とっても大好きで大切な本になりました。 星あかりの中から特別な光を見つけたように 出合えたことが心から嬉しいです。 ページが終わるのがとても寂しくて もっとずっとこの物語の中にいたかった。 せめて戻りたくて 読み終えてすぐ読み返してしまいました。 なんだろう…なんて愛しいんだろう。 あ〜この作品好きだ〜〜ってなる。 微笑みが心に灯るように じんわりとした幸せが この胸の中にいつまでも続いています。 この光に救われる人に届いてほしい。 必要としてる人に、ちゃんと届きますように。
10投稿日: 2023.09.10
powered by ブクログ若葉荘の暮らし、トワイライライトに続くコロナ禍以降の作品。 ひかり君が閉店する洋食屋さんに勤めているという出だしで若葉荘の暮らしをまず思い出しました。 本作が恋愛の話かどうかは意見が分かれると思うけど、恋愛はもどかしいくらいがちょうどいいと本作でも思いました。やはり自分は畑野さんの作品が好きみたいです。 木綿ちゃんとひかり君を始め、登場人物みんなが幸せであるように願いました。日向君でさえも幸せであってほしい。
8投稿日: 2023.09.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読み終わって一日経っても、私の心は温かいままだった。 春の雨の夜のような、静かで温かい優しさに包まれたままだった。 人と同じになれない自分を抱えて、誰かの優しさにおびえて、それでも光を求めてうずくまっている1人きりの寂しい夜を包み込む、そんな小説だった。 傷ついた心は優しささえ刃物になる。壊れそうな心を抱えた二人が出会ったのは、偶然じゃなく、多分必然。 その出会いに、物語の外から感謝する。 私が私を大切に思う人のことを大事にすること、そして自分自身を大事にすること。それは私が私の世界に中心にいると思えることにつながる。そう教えてくれた司さんの存在の大きさ。 彼もまた他人から傷つけられ続けた人。 大切な人に伸ばした手の行方。空を切るその手を握ってくれる誰かに出会えたこと。臆病な心が踏み出した一歩。一人じゃないと心で、身体で感じる安心感。自分を大切に思ってくれる人がそばにいる、その幸せをかみしめた。 けれど、やはり「母親」という呪いを感じないわけにはいかなかった。 「母は僕の光だった。そして僕は母のひかりだった」という最大にして最強の幸福感。それが間違った認知だったとしても、その殻を破るのは並大抵ではないだろう。でも、いや、だからこそ、ひかりの周りにたくさんの愛が集まってきたこの奇跡に感謝したい。 ただ、ラストが少し物足りない気もする。もう少し二人を心配してくれる人たちの、その思いと、二人のある意味困難な行く先も描いて欲しかった。 小野寺史宜さんの『ひと』シリーズが好きな人におススメ。
14投稿日: 2023.09.08
