自身のいる世界が「乙女ゲーム」の世界であり、自分がそのヒロインであると自覚した主人公がその既定路線を否定して独力で道を切り開き始める……と書くと割とありきたりな話に聞こえますが、冒頭から殺っ伐としています。サバイバルと言っても野外生活を主体としたニュアンスではなく、「常に命の危険と隣り合わせな日常を生き抜く」の意であります。 主人公少女の性格も、最初の事件とゲーム知識等の取得を契機に「とにかく生きること」以外の無駄を省いて効率を重視した現実主義的なものへとシフトしていて、やると決めたら一切ためらいがない冷徹さは、乙女ゲーの世界には絶対もう後戻りできなさそうです。だがそれがいい

よくある乙女ゲーム世界の転生物…ではない。舞台は乙女ゲーム世界であり主人公はそのヒロインという立場だが、「主人公が転生者じゃない」というこの手の作品としては非常に珍しい設定。 主人公自体は転生者ではないが、乙女ゲームのプレイ経験のある転生者が何人かいる。その転生者らに命を狙われた主人公は「乙女ゲームだのヒロインだのくだらない」と、一人で生きる決意を固める…というあらすじ。 画力・テンポ・表現・演出等、漫画としての完成度は悪く言えば中の上、良く言えば水準以上。私見ではあるが「飛び抜けてはいないが十分良い」といったところだろうか。 ストーリーについては前述の通り非常に斬新。典型的な乙女ゲーム物・異世界転生物がどんどん増える中、ここまで変化を付けて差別化をしたのは単純に素晴らしい。キャラクターの心理描写も上手く、主人公の反骨心や決意た、他転生者の得体の知れなさが上手く描けている。 まだ1巻なので今後どうなるかは未知数だが、とても期待のできる設定とストーリー。興味が湧いたなら是非。