如何にも「なろう」なタイトルに加え、同じくなろうには比較的多いフェンリル物+食事・料理物だが、意外にも上手く描かれている。 雰囲気は強いて言えばスローライフ物に近いが、スローライフ物にありがちな「物語に緩急がなくスローライフとは名ばかりの退屈な物語」ではなく、しっかりと物語に緩急や起伏を作った上で優しさや穏やかさを描いた物語にしており、読んでいて冗長・退屈な印象を受けない。 なろう作品らしく「前世の記憶」という要素はあるが、「おぼろ気な記憶がある」程度の描写に抑えられており、なろう臭さは殆ど感じられない。レベルやステータス、ご都合主義といった要素もなし。 一方で設定はくどくならない範囲で練られており、上手くストーリー展開に活かされている。コマ割り・構成・キャラクターデザイン等も良いため、漫画としての完成度はかなり高い。 特に作画の良さには目を見張るものがあり、中でも「場の雰囲気・空気感」の描写・演出が非常に上手い。あえてトーンの使用を控える事で清浄感を表現して、本作の静かで穏やかな作風を引き立てている。 また、大半のコマが動きの少ない静止画で描かれており、これもまた本作の特徴である静かな雰囲気を上手く演出している。 欠点は、強いて言えば場面転換が若干分かりづらい程度。飛び抜けた評価点はないが全体的に高品質の良作、という評価って感じかな。