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あのひとは蜘蛛を潰せない(新潮文庫)
あのひとは蜘蛛を潰せない(新潮文庫)
彩瀬まる/新潮社
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総合評価

153件)
4.0
38
63
29
5
1
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    親との関係、恋人との関係、職場での関係、、、 たくさんの人との関わりの中で生きてる。 「みっともない」に縛られて生きるのは苦しくて悲しい。でもどこかそれに縛られてる自分が誰でもあるんじゃないのかな。

    0
    投稿日: 2018.06.21
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    真面目で内省的な主人公に良い風が吹けばいいなあと思いながら読み進めていたが、だんだんと底に落ちて行くので本当に不安になった。 親子関係、彼氏関係、職場関係、すべて己を制して生きていくとこんなにしんどいものなのか... 結局は制するが故に、ひとりよがりな行動にも出てしまって、不器用な主人公。 救いがあるようでないような終わり方だけど もうすこし苦悩は続きそうで(もしかしたらずっと) なんとも言えない余韻が残る

    1
    投稿日: 2018.06.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    薬局店の女店長。そして、家族や恋人お客さん。皆が皆、自分を縛る悩みやトラウマを持っていて、それでもぎこちなく、少しだけ交流をしては「訳のわからない人」だったり「新しい考えを見せてくれる人」だと感じながら日々を過ごす。静かでいて、ほんの少しだけれど、閉じ籠っていた世界を捲り始める主人公やその周囲の姿に、じんわりと温かくなるお話。 主人公か縛られていた言葉「みっともない」に少し共感。半歩踏み出した店長に元気を貰った気がしました(*^-^*)

    0
    投稿日: 2018.06.02
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    主人公の置かれた境遇と、それによって形成された性格について、「わかるなぁ」と思ってしまうけれど、きっとそういうのって本当はありふれたものなのね。

    0
    投稿日: 2018.02.13
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    彩瀬まるさんの小説には、人のダメなところに寄り添うような温かさを感じる。 この世の中には完璧な人間なんて存在しなくて、なかなか変えられない短所があったり、過去や環境に囚われたまま生きてしまうこともある。 そういう人間のダメな部分を、優しく抉ってそして許す。独特の愛情を感じる。 この小説の主人公は28歳の梨枝。ドラッグストアで店長をしている、ごく普通の女性。 コンプレックスはいまだに人と付き合ったことがなく処女であることと、締めつけのきつい母親の存在。 ある日年下のアルバイト男子・三葉くんと恋に落ち、それがきっかけで家を出て、生まれて初めて母親から離れて生活し始める。 恋愛の力って何て偉大なのだろう。それまで浸かり続けてきたぬるま湯から、勢いだけで一気に離れる決意を固められるのだから。 だけどひとまずの環境を変えたところで、過去や自分の中に根付く問題は変えられない。初めて好きな人が出来た梨枝は、自分の中の問題を三葉くんに投影してしまい、それによって徐々に関係がぎくしゃくし始める。 そしてそんな三葉くんにも大きな問題が…。 自分の中にあるものを身近な人に投影してしまうのはきっと誰にでもあることで、だけど「解ってもらいたい」という欲求を相手にだけ求めるのは間違ってる。 理解してもらいたいなら、自分も相手を理解する努力をしなくてはならない。 そういうことを、梨枝はだんだんと学んでいく。対三葉くんだけじゃなく、対母親や、周りの人たちと関わる上でも。 生きていれば色んな問題が発生するけれど、苦しんだり悩んだりしながらいつしかその問題が収束していったり、自分が変化することで周りの人たちの変化も感じられるようになったり、ということは現実でもよくある。 そういう時間の流れの優しさも感じられる小説だった。 最近の個人的ヒットな作家さんはこの方だな、と思う。

    8
    投稿日: 2018.01.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    20代後半、仕事の責任は重くなって、恋愛市場での自信のなさは加速して、親を鬱陶しいと思う一方守らなきゃみたいな気持ちを持ったりとか、まあどの年代でも同じように苦しんでると思うけどこの年代特有の憂鬱さや閉塞感に、共感で胸が苦しくなった。 主人公は母、母親は"支配する母親である自分"、三葉くんは姉、みんな少しの勇気やきっかけでひとつずつ何かを得て、引き換えに何かを諦めて、そうやって生きてくんだなと思った。最後は何かがキッパリ解決したわけじゃないんだけど、希望に向かっていくラストだった。主人公に用意されているような、明るい光がパァっと射す希望じゃなく、ぬるま湯の海に浸かっているような希望だ。

    1
    投稿日: 2018.01.07
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    良い小説だった。戦後の団塊ジュニア以降の世代には感じることの多い作品だったのではないかと思う。ケースとしては微妙に違っても気持ちの面で通じる作品。これは意外と成功することが少なく客観的に眺めるというより共感を覚えながら読むことができる。小説にしてくれたことを感謝したくなるくらい。小説らしいいい小説だった気がする。芥川賞にはこういう作品だといいような。同時に直木賞でも文句ない。そうい質の高い小説だったと思います。

    1
    投稿日: 2017.12.18
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     蜘蛛・・・という語感がまず、薄暗さやうそ寒さを思い起こさせる。「蜘蛛を潰せない」人の話は導入部分でしかないんだけど、なぜ潰せないのか、と考えた時に挙げられる、弱さや優しさ、あるいは遠慮や逃げといったことが物語の背景にずっとある。  母娘、恋人、姉弟といった一対一の関係の中に、どんな想いがあり、どう変化するものなのかが描かれている。あなたとはもう関わらない、とばっさり切り捨てることが難しい関係。  登場する中で、私にとって一番実感から遠かったのは梨枝の母娘関係。母、紀子の放つ言葉は一瞬「ひどい」と感じる反面、どうしても裏に愛情があるように思えて、受け入れなくてはいけないような気にもなる。「賢い娘さんはみんな結婚までちゃんと親元で育つの。それが常識なの」なんて言われたら・・・。  親の愛情ってどこまで踏み込んでいいんだろう、子の自立ってどういう状態だろう、と考える。  自分の足が太いかどうかすら、よくわからないのだ・・・と梨枝が考えるところも、印象に残った。どうでもいいと追い払うことも、なんとかしようと乗り出すこともできずに「薄い闇」のなかをさまよっている事柄・・・私にも、あるような気がする。なぜ決めきれないかといえば、やっぱり梨枝が気づいたように「みっともないのは嫌だと思っている」からだ。  でもそれについて深く考えようとすると、自己嫌悪に陥るばかりで苦しいから、つい目を背けてしまうんだよなぁ・・・。

    1
    投稿日: 2017.10.23
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    蜘蛛を見つけた時に、どうするのか。つぶせる人、つぶせない人、逃がす人、色々いる。どの人も不器用な気がするお話。 2017/10/16

    0
    投稿日: 2017.10.16
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    読んだのはもう2年前ぐらいになるけれど、思い悩む若い女性の心を引き寄せて、過去に何度か疾走したことがある柳原さんの印象が強烈で、未だにそのシーンだけを振り返って読むことがある。閉塞感から疾走してしまいたいときが、私もたまにある。さしてドラマチックな物語ではないけれども、ふと共感したさに思い出してしまう。

    0
    投稿日: 2017.09.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2017/8/17 読み始めてこれは嫌いなタイプかも…と思ってたけどどっこい途中から来た来た来た!となりました。 梨枝の危うさと年下の彼氏が信じられず、もうこれは絶対ぶっ壊れるパターンやとびくびくしながら読んだし、実際途中ぶっ壊れたなと思ったんだけどそこからの立て直しが人間ってすごいなとまで思えるものだった。 みっともないの呪縛は日々感じるし、かっこ悪くなりたくなくて本音をセーブしまくる人生だから刺さるわー 誰にも本心を明かさないけどわかりあいたい欲求はある。本心って何かね?とも思う。 大丈夫なふりしてるけど大丈夫じゃないこともいっぱいある。でも結局は大丈夫やん?とも思う。 みんなあるんかな。 あるんやろうな。 わかりあいたいって人類最大の願いなのかも。 とか言葉にするのは難しいけど色々考える素晴らしい本だった。 読み終わってすぐ上の文章を書いてお風呂入ってまだ考えてた。 私は自分をコントロールできない女が出てくる話が苦手なのかな?と。 コントロールできてなさそうな女が嫌いなのかな? 男でも嫌いやけど男の場合はコントロールできてないと犯罪者になりそうね。 自分はコントロールできてるつもりやけどホンマに?何ができてたらコントロールできたと言えるのか?怒鳴り散らしたりしないけど食欲を抑えたり運動したりはできないわけでそれでコントロールできたとはおこがましいとか際限なくておもしろい。

    1
    投稿日: 2017.08.17
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    掴めにくいけど心が掴まれそうな表現や例えは絶妙です。「ちゃんとしなさい」の呪縛に囚われている自分の人生にも共感できる。。。

    0
    投稿日: 2017.06.20
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    善いことも悪いことも、自分の行動がその後の全ての事象に結びつくわけじゃない。起こることは起こる。無作為に、無慈悲に、すべての因果関係をまるきり無視して唐突にやってくる。だから、適度にコントロールして、適度に仕方ないかと折り合いをつけていけたら楽になるんだろうか。適度に、適度に。それが一番難しいから、梨枝さんも悩んでるんだよね。

    0
    投稿日: 2017.04.26
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    “女による女のためのR-18文学賞”の読者賞を受賞した経験のある作家で、ねっとり生々しい系を思わせるタイトル。さらに帯には「椎名林檎絶賛」の惹き文句があり、ドロドロした話を想像していたら、意外に清々しい物語でした。 主人公の梨枝はドラッグストアの店長を務める28歳、独身、処女。母と二人暮らし。6歳ちがいの兄はとっくに家を出て、弟は赤ん坊のときに死亡。大変なときに出張中だった父は、母から責められることに耐えられなくて離婚。以来、梨枝は「かわいそうな」母のそばから離れられずにいる。「かわいそうな」はずの母だが、ばりばり仕事をして住宅ローンをひとりで返し、料理の腕前はプロ級、部屋には埃のひとつもない。梨枝のやることなすことに文句をつけては「みっともない女になるな」と言う母。考えればつらくなるだけだから、「私は頭が悪いから」と自分に言い聞かせて事を荒立てないように済ませてきた梨枝。そんな梨枝が勤め先にアルバイトにやってきた大学生、20歳の三葉くんに恋をする。初めて母に抵抗し、一人暮らしを始めるのだが……。 母との葛藤が重くなりすぎない程度に細やかに描かれているほか、兄や義姉、恋人、ドラッグストアの従業員や客との関係が面白く、梨枝がやっと自分の殻を打ち破りかけた終盤は時折涙を誘われます。 食べ物や料理が大切な役割を果たすところを含め、瀬尾まいこが好きな人ならば本作も好きなのでは。この年代を過ぎた女性にお薦めしたい作品です。

    1
    投稿日: 2017.04.26
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    28歳実家暮らし、処女。 同居の母親とは共依存関係に陥っていて自立できていない。。 「母親がしんどい」を気持ち良いほどよく表している描写に、さくさくと読むことができた。 登場人物もこんな人いるなぁっていう人が多く、細かい設定に人間味がとてもある(三葉くんのような青年は思い浮かばなかったけれど)。 主人公が若いながらも部下を育てたり、仕事に奮闘するシーンもリアリティがあってすごく好きだ。自分のふがいなさに悩んだりすることって仕事や恋や、家族関係に対して絶対誰にでもあるに違いない。 そんな部分を、繊細に表現した素晴らしい作品だと思いました。 劇的な何かが起こるわけでもないけど、そんな平坦ささえも微笑ましかった。

    1
    投稿日: 2017.04.05
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    何度も読みたくなる1冊。 母に言い返せないという点。 母が言っていることざすべてが正しいと思う点。母のために生きてしまっていることが、良いことなのか悪いことなのかわからなくなる点。 特にこの親子関係に共感しました。

    0
    投稿日: 2017.02.27
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    「みっともなくないように」「ちゃんと生きなさい」の呪縛。かわいそうな母親から、母親の言葉から逃げ出したかったはずなのに、それを今度は自分が振り翳すようになる。カーテン一つ選べないのに。苦い経験を経て、人間関係を紡ぎ直す。

    0
    投稿日: 2017.02.13
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    最近話題の一冊。 同じ年代なのでとても共感できる。 できるからこそ、読んでても面白いとは感じない。 でも蜘蛛を潰せない、という感覚は好き。

    0
    投稿日: 2017.02.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読み終わってるのに、 ブログに感想を書いてない3冊目! これは、 小泉今日子さんの「小泉今日子書評集」から気になった本の、 「骨を彩る」を買いに行ったんですがなくて、 あったのがこの「あのひとは蜘蛛を潰せない」だったんですね。 新潮社推しなんで、 先に「あのひとは蜘蛛を潰せない」を購入! ちなみに、 「神様のケーキを頬ばるまで」は買ってますが「骨を彩る」はまだ手にしてない! で、 モノクロームの世界に色を取り戻すってあったの! これ、 個人的に「四月は君の嘘」とシンクロして欲しくなったの。 でも、 買ったのは読んだのは「あのひとは蜘蛛を潰せない」です! 蜘蛛って色々言われていますね。 1つは人脈を司る精霊です! ネイティブアメリカンが好きと言うか、 インディアンジュエリーが好きで、 経由して、 ネイテォブアメリカンの影響も受けている。 ホピ族の創ったリングに蜘蛛が描かれていて、 蜘蛛は神様からの言葉を運んでくる精霊なんだって! 糸で、 降りてくるイメージが神様からメッセージを伝えに来るイメージになったんでしょう。 つまり、 蜘蛛=天使なんですね! で、 その蜘蛛潰しちゃダメでしょう? と、 思いつつ読み始めると蜘蛛のエピソードは最初の方だけ。 しかも、 脇役レベルの人とのエピソードでやんの。 梨枝は28歳の実家暮らし。 実家にはめんどくさい母と住んでる。 ドラッグストアに勤めてて雇った大学生の三葉と付き合い始める。 恋が梨枝を変えていったのか? 三葉が梨枝を変えていったのか? 独り暮らしが影響したのか? トラウマが表面に出てきたのが影響したのか? 個人的には五月蠅いが、 梨枝の母はいいなぁー。 こういう母に育てられたかったって思ってしまう。 家族ものを読んでシンクロすることはほぼない。 でも、 憧れたり、 引いたり、 残念な気持ちになったりするが、 梨枝の母には憧れるというか、欲しいというか、僕は母であってほしいと思ってしまうのね。 でも、 どこかで梨枝と同じ気持ちにもなり、 同居を止め、 独り暮らしを始めてしまうはずなんです。 絶対に傷つけてしまうであろうけど、 悲しい気持ちにさせてしまうであろうけど、 その関係に憧れる。 雪ちゃんの料理下手! ちょっとわかる。 うちも境遇が似てるから。 雪ちゃんは梨枝母と上手くやれないから、 似てる僕もやっぱりダメかな? でもでも、 雪ちゃんも変わっていってるしね。 梨枝も変わっていってるしね。 そんなもんなんでしょうかね。 バファリン女みたくならないようにがんばります! 追伸 バファリンはたまにしか服用しませんから大丈夫です! ちなみに、 帯には椎名林檎さんがコメントを書いてて、 ちょっと、 刺さる紹介分が書いてあるんでぜひぜひ本屋さんで帯を読んで検討してほしい。 個人的には、 買って読んでいただきたい本である!

    1
    投稿日: 2017.01.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

     恋愛小説でありながら毒母がテーマでもあった。しかし、主人公が被害者意識に凝り固まっておらず、気持ちよく読めた。毒母だけど、それほどスポイルされていないケースなのかな。しっかりとした社会人として頑張っていた。  冒頭のエピソードでいなくなってしまった中年男が最後まで存在感を発揮していた。彼を基準にいろいろな人を見渡すような構成となっていた。  主人公は性経験がない20代後半であったが、さらっとセックスしていた。もっと掘り下げてほしかった。  バファリン女という呼び名が口裂け女みたいな言いようで、ひどいと思っていたのだが、それほど他意はないようであった。僕も頭痛の時にイヴを痛みが消えるまで4~5錠飲むことがあるため、習慣にならないように気をつけたい。  昨日読み終わった『脳が壊れた』と同じく、人と人とのつながりが大切であるというメッセージがこめられており、普遍的なテーマで、いろいろな人が形を変えて描くべきものであると思った。

    1
    投稿日: 2016.10.31
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    ふと、宮崎さんが、私の中の出来事の位置づけを「失敗」から「残念」に変えてくれたのだと、化粧水のボトルを並べ直す瞬間に遅れて気づいた。 ー梨枝 展開が気になって あっという間に読めた。 解説の山本文緒さんの 例えは納得した!

    0
    投稿日: 2016.10.12
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    このレビューはネタバレを含みます。

    解説の山本文緒が書き過ぎ~真夜中のドラッグストアで蜘蛛を潰せない中年パート社員。柳原に呆れる女性店長は28歳の恋愛経験のない梨枝だ。夜勤を終えて実家に帰ると母が用意してくれた朝食を摂りビールを飲んで寝る。穏やかな柳原だが,休憩室で若い女性に寄り添って歩いていたという噂が流れ,やがて駆け落ちてきた女房を捨てて失踪するが,これは二度目だと奥さんは言う。代わりに夜勤のアルバイトに入ったのは三葉という大学生で,8歳も年上の梨枝の事が気に入ったというので驚く。幼い頃に家を出て行った父が残した家のローンを払い終わり,反りの合わない5才年上の兄は梨枝の幼馴染みのカマキリの雪ちゃんと結婚し,地方勤務となって家を出て行った。「ちゃんとした」「笑われない」育てられ方に反発を持つ一方で,母・紀子とは喧嘩をしたくない。その兄が最初の子どもが生まれるタイミングで本社転勤を機に家に戻ることになり,梨枝は家を出るきっかけを得る。一人暮らしを始めた梨枝の家で三葉と初めての性交を行い,若い恋人をちゃんとしたくなる自分に梨枝は驚く。雪ちゃんは禄に料理できず,兄は末期の子宮癌に侵された女性の見舞いに通っている。母は元気をなくし,家も荒れてきた。三葉はバレリーナの姉に期待を寄せすぎている両親と解り合えず,堅実な一人暮らしをしながら,バイトで貯めた金で絵を買いたいのだという。梨枝のアパートで過ごすことが多くなった三葉は目的の20万円を貯めて,就職活動も始めて梨枝との距離を空け始める。来店する度に頭痛薬を買うバッファリン女が気になり,銭湯でも一緒になり,紀子や雪ちゃんや梨枝のように可哀想な女性にできることはないかと考え始める。合い鍵で三葉のアパートに入り,バレリーナの絵を見つけ,梨枝は三葉に思ったことをぶつけてしまうが…~20才の男の子が28才の足の太い女に惚れるかなぁ。惚れられたらいいなぁという女性の願望…現実としてあるシチュエーション? ま,何事も上手く回り始めたねって所でお話が終わってますね

    0
    投稿日: 2016.09.06
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    少し主人公の気の弱さみたいなところにイラっとしてしまうのは、私の独り善がりなのかも。 それでも、1日で読み切ってしまった。どこにでもあるような、些細で地味で小さな話なのに、引き込まれるのは何故だろう。 三葉くんとのくだりが特に刺さった。あぁ、この言葉は苦しくて素敵だってところがたくさんあった。 結論、素敵な作品だった。 人の弱さみたいなものと一緒に、柔らかさも染み込んでくるような作品だった。 三葉くんとの関係が終わらなくて良かった。 主人公は、蜘蛛を潰せない彼と最終的に同調したのか。それとも、鉢のように柔らかい断絶を覚えたのか。 なんだろう、この甘くて柔らかい現実感は。現実が甘いんじゃなく、同調する冷酷さ?みたいなものは。不思議な気持ちになった。

    0
    投稿日: 2016.08.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    なるほど、「神様のケーキをほおばるまで」も良かったけど、こっちの方がよく出来てるわ。 綾瀬まる、味わえる小説かける人やなぁ。 28歳女性、引っ込み思案のドラッグストア店長が、バイトで入ってきた若い男と恋仲になる。次第に距離を詰めるまではエエ展開だが、付き合いだして同棲して、入れ込み過ぎて、過干渉で、距離をおかれる。 筋だけ書くと、どっかにあったような小説みたいだし、現実にもこんなのいっぱい転がってそうな話である。それが綾瀬のペン(じゃないやろけど)にかかると、不思議な味わいの小説になる。味付けの基本は娘依存症的な主人公母の存在。この人が主人公の人生を大きく覆う傘となっていて、雨を防ぐつもりが日光すら当たらなくさせてしまったこと。 大切な人に徹底的に干渉したい、という欲求は誰しもが少なからず持っているものだと思う。若いうちはその欲求に振り回されて、自分も大切な人もワチャワチャになって、結果ギクシャク。そういう苦い経験を踏まえて人間は成長していくもん… なはずが、主人公母のように成長しきれない人はたくさんいるんだろうなぁ。我が子であれ大切な恋人であれ、過剰に関わるのは不幸の元なのだということ。子供はいずれ巣立つものだし、恋人は所有物ではない。人間は一人では生きていけないものだけど、インフラ整備状況としては一人で生きていく程度の整備はされている(現代日本)。 大切なもの(人)との関わりに、どれだけ上手に距離を置くか。近づきすぎると見えなくなるし、近眼になって本当の姿を見えなくもなるんやで。 若い頃なら分かっていなかった間合いの大切さが、苦い経験を経てちょっと分かる歳になったことで、この小説をしっかり味わえた。 綾瀬まるは…中年殺しなのかもしれない

    4
    投稿日: 2016.07.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    まずは毒親を持ち、苦労する主人公に共感。さらに言えば、主人公よりは三葉クンにより共感したかも。 序盤、母の「支配」からなんだかんだ理由をつけて脱却しない主人公に少しイライラ。 一人暮らしからの三葉クンとの半同棲生活は順風満帆だったのに、少しずつそれが崩れ始めるその要因が、主人公自身に染み付いた母親の影響だった(「ちゃんとした〜」的な価値観)のが、そら恐ろしく感じました。 最終的に母の価値観——世間体を気にするところや、周囲との衝突を自分を殺してでも極力さけようとするところ——をはねのけ、ほんのちょっと自分らしさを主張できたところは少し感動すら覚え、同時にうらやましくも思いました。 この本は各キャラが持っている各キャラ自身の考え方やポリシーのようなものがそれぞれしっかりとあって、どの人物も(個性を確立しているという意味で)ユニークだったところが印象に残りました。 その中で、主人公が最初空気のようにあたりさわりのない言動によって没個性になっている訳ですが、最後にその個性を得ることができ、ようやく一人の人間として存在できるようになった点に感動したのかな、と思います。

    1
    投稿日: 2016.06.13
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    主人公28歳、独身女性・女手一人で育ててくれた母と二人暮らし。 ・・・この設定なので、最初あまり入り込めなかった。主人公が若いからかな?と思ったんだけど、そうではなくて 主人公の母親の気持ちがわかる年齢になっちゃったので(苦笑)母親の一言一言が、何が言いたかったかわかるというか。 全体を流れる不快感、依存、不安。そんなものでときどき気持ち悪くなる。重い。 母との葛藤を乗り越えて、恋愛も一山超えたあたりの主人公はとてもステキですけれども。 主人公の義姉と母親のギョーザ作りとか、食事後のカレー作りをすすめるあたりもmとても好きですけれども。 こんなハッピーエンド、なかなかないだろ?とは思うけれども、だからこそ、良かった。(前半読んでる最中は☆2つかな?と思ったけど、ラストが良かったので☆3つです)

    1
    投稿日: 2016.06.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    初めて読む作家さん。 主人公と少し立場が似ていると思い、気になって読み始めたのだが、冒頭が上手いと感じた。 すっと溶け入るように、物語に入れた。 タイトルにもある「あのひと」は序盤であっさりといなくなってしまう。その理由にもビックリする。 けれど、「あのひと」は悪い印象ではなく、主人公の梨枝の中にずっと残っている。 その代わり、若い男の子がやってくる。 まさか、相手にされる訳がないだろう。おかん的要素が重くてすぐに逃げられるだろうと思っていたのに、結局は別れない。 お互いに葛藤があって、相手に反発するところがあって、それでもお互いが必要で。 男女関係とは難しいものだなぁ。 梨枝の性格には、共感するところもいくつかあった。 人の顔色を窺ったり、人のチェックをもらわないと安心できなかったり、自分がやらねばいけないところは腹をくくったり・・・。 母からの思いも、それを拒否しきれない思いも、わかるなぁー、考えさせられるなぁーと。 これは女性らしい考え方なのかもしれない。男性はどう読むのだろう。

    0
    投稿日: 2016.05.31
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    題名に惹かれる。そして、特に期待していなかったのに、なかなかよかったw 主人公のような女の人には、正直イライラするかも。 三葉くんのような、ピッタリな男の子と出会えて本当によかった。 まわりの人たちも、なんだかみんな一癖あって面倒くさいけど、人なんてみんな一皮むけばこんな感じなのかもしれない。 ひとりではダメな感じでも、身近にいる人と補い合って生きていけるなら、それも有りかなと思う。

    0
    投稿日: 2016.05.18
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    読んでいる間、ぞわぞわした。 身に覚えのある感覚。抱く不満と不快感と苛立ちと恐怖。 この手の話の大団円は、そんなはずないと思えてしまう。この作品の結末にもそんなはずないと思う部分もある。けれど、素直に、こういう結末でよかったなと思う。 読んでいると目をそらしたくなる。否定したかったり手を差し伸べたくなる。だからこそ、ちゃんと手元に置いておきたいと思う。

    0
    投稿日: 2016.04.14
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    暗いは暗いでもあまり好きじゃない類だったのとテーマが苦手だったけど、「むりやり言うと、こんがらがって他のものになっちゃうから、言わなくていいよ」っていう台詞は良い。まさしくだなと思った。

    0
    投稿日: 2016.04.11
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    私が抱えてる不安がそのまま書いてある部分がたくさんあった。そのままの自分を誉めてもらった経験が少ないと、不安になるんだよ

    1
    投稿日: 2016.03.29
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    よくわからない感動だったような気がする。 自分の境遇に重ね合わせて考えてしまった。 もう二度と読むことはないだろうけど、 なんとなく良い本だったと思う。

    0
    投稿日: 2016.03.27
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    巻末の解説で本書の魅力は大方語り尽くされている観があるが、端的に言えば「三十路手前のパラサイトシングル女性が、その現状を打破していく物語」だ。一見退屈そうに見えるストーリーだが比喩の仕方がいちいち新鮮で、毎度驚かされるし、度々描かれる人間関係における難しさに頷かずにはいられなかった。

    0
    投稿日: 2016.03.11
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    タイトル、テーマ、比喩表現と絶妙ですごいなぁ、と。 彩瀬さん好きな女の子が、絶妙なビルドゥングスロマンと言っていたが、確かに現代的な教養小説ってのがピッタリくるかも。 山本文緒さんが、演歌とは違ったウェットさと表現してたけど、確かに。演歌な書き手の桜木紫乃さんと比べると面白い。どちらも女を描いてながら、方向性が全く違う。ただ、彩瀬さんは男性読者はつきにくそうだなぁとも思う。

    0
    投稿日: 2016.03.06
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    ラブストーリーなのかワーキングウーマンの話なのか家族問題の話なのか、話の焦点がフワフワしててちょっとフシギ。でもおもしろかった。

    0
    投稿日: 2016.02.27
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    幼い頃から「みっともない」「恥ずかしい」と呪文のように母親から言われ、束縛されていたら、萎縮もするだろうし、自立するのも難しいだろうなあ……程度の差こそあれ、この母娘のように共依存している人達って珍しくないのかもしれない。なかなか自分を解放することができず、恋人に対して母親と同じ間違いをしてしまうけど、最後は希望が持てる終わり方で良かった。 母親を疎ましく思いながらも「かわいそう」と矛盾する想いを抱く梨枝が痛くもあり、健気にも感じた。 彩瀬さんは、短編を読んだだけで、これが初めて読む長編でした。 文章が綺麗で、優しくて、追いかけたい作家さんがまた増えた。

    1
    投稿日: 2016.02.26
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    ドラッグストアの店長・梨枝。 母親はいつまでも娘に手をかけずには居られず、口癖は「ちゃんとしきなさい」。子供を1人亡くし、父親に出て行かれた母に対して、幼い頃の梨枝はずっとそばに居てあげよう、と暮らしてきたけど、逃げてしまいたくなる。 8歳年下の恋人の松田くん。兄の妻で幼なじみの雪ちゃん。毎週、深夜に来店するバファリン女のサキさん。みんな、何かしらの悩みを抱えてる。環境を変えることで、他人と関わる中でそれぞれの悩みが変わっていくのを丁寧に描かれている。

    2
    投稿日: 2016.02.19
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    タイトルや著者名から軽い小説だと思っていたのですが、読んでみればズッシリとした重みを感じる本でした。 誰も悪くはないのに壊れかかる家族と男女の仲。それがちょっとしたはずみで修復されていく。この流れがわざとらしくなくて見事です。 でもそれも一時的なものなのでしょうね。またいつか壊れ始める。さて次はどうなるのかな。そんな事を考えさせられた本でした。

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    投稿日: 2016.02.02
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    「ちゃんとしなさい」の呪縛。 決められない、正しい答えが欲しい、人を傷つけたくない、不快な思いをさせたくない。周囲の人を傷つけないよう、正しく生きることが大切だ。だから問題は自分で抱え、自分を傷つけることで私も満足してきたんだと思う。 その生き方って本当にいいのか。もちろんここにも正解なんてないけれど、もっと私も変わりたいと思った。自分で決め、ときには人を傷つけるかもしれないけれど、もっと自分の想いを伝えられる人になりたい。

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    投稿日: 2016.01.02
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    恋愛部分だけクローズアップするとただの夢見がちなファンタジー?とすら思えるリアリティのなさなんだが(そこがキュンキュンしてアラサー女としては魅力を感じるけど)、主人公含め登場人物が抱えている家族に対する複雑な感情や歪みがみごとに「恋愛」と絡み合っていて、読んでいて重苦しく、息が詰まるような緊張感が絶えることのない恋愛小説。 28歳独身、処女、実家住まい、強烈なデキた母からの呪縛に雁字搦めにされて、判断力が育たない、カーテンひとつ、スカート1枚選ぶにも素直な自分の欲求と向き合えない、おどおどした女。 そんな彼女と一見対極的な明るく素直な大学生バイトの三葉くんと付き合うようになり、自分の感情を冷静に見つめられるようになる。 母親と口論できないあの感じ、すごくよくわかるよ。

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    投稿日: 2015.12.29
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    「みっともない女になるな」という母の呪縛から、常に「ちゃんとしよう」とすることで自らを苦しめる梨枝。ドラッグストア店長として、年下の彼氏の恋人として、そして何よりも母子関係の清算を望む彼女の次の一歩を描く長編小説。 生きていくことは辛さを抱えること。主人公の梨枝だけでなく、母の紀子も三葉くんも柳原さんも雪ちゃんもバファリン女も小林くんもみんな同じだ。でも、各々が救いあえば次の一歩を踏み出すことができる。そんな表現を「蜘蛛を潰す」という比喩で置き換えた作者は侮れない。

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    投稿日: 2015.12.07
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    一言でまとめると、度々読むべき意外と良い本。 最近のメンヘラが思考停止して現状に安穏とするためのクソバカサブカル文芸だと思っていたけど、予想の範囲内で期待を裏切る良書であった。 主人公と、周辺人物の生き辛さがクローズアップされているが、何てことはない。人は人格形成期に何かを得ると同時に何かを失う。何故なら僕たちの生とは意思決定の連続にあるからだ。 何かしらの正しさに取り憑かれていたらそれを踏み外すことを怖れ、人を失う怖さを知っている人は目の前のものに過剰に執着する、愛情というものの存在を掴みきれていない人は代替物にそれを求め虚空で手を握りしめる、何も難しいことを考えずに育った(些か暴力的な表現ではあるが)人はそれ故に葛藤を知らないでいる…それだけの話。それだけの話だ。口で言うのは簡単だ。 ただそうした足りない何かがある中でこの社会を泳ぐことはどれほどに恐ろしく難しいことか。そんな中で目の前の満足に対して思考停止に悦にいることは簡単だ。でも必ず、何処かに綻びが出る。その中でも僕たちは上手く生きようとする。しかしそれを本質的に助けてくれるものはこの世には意外と少ない、無限にあふれる音楽も、時代を超えて残る音楽も、心のスイッチを切らせるテレビ番組も、本当の意味で僕たちを助けてはくれない。 ではどうするか、繰り返す闘いの中で自分に真に向き合うしかないのだ。月並みな表現になるが足りない自分を受容し、そんな自分も愛し、向き合うといったところか。刹那的な助けに刹那的な安穏を得つつ、自分が一皮剥けるしかない。社会は同じように大海原でもがく人ばかりだ、自分と向き合う中でそんな自分を受容した上での自己表現(それは世では多く自分をさらけ出す、弱さを見せると言われるのだろうか)は思っている以上に人を救うのだろう。 でもそんなことほ頭では意外と多くの人が分かっているのではないだろうか。ではその一歩を人はどう踏み出すのだろうか。主人公の決めるという姿勢は一つな気がするけど、それはどうなんだろう…どうなんだろう… また読みたいし読まないといけない気がする一冊。

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    投稿日: 2015.11.07
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    「二十八年も生きてきて、触ってくれたのはあの子だけなのに」 この言葉…。 この言葉の絶望感が解る側の人間からしたらほんとにこの言葉はおそろしい言葉なんだよ。だからこそ、三葉くんが戻ってきてくれて、現実では決して戻ってこなかっただろう三葉くんが戻ってきてくれて本当に嬉しかった。本当に。 いやあ、思ったよりとても良い本だったなあ。 梨枝がとてもいい、自分から逃げずに自分とも周りとも向き合い続けて、ひたむきに考え続けた結果を見届けられてよかった。なんか勇気付けられた。こうやってもがくことをやめてはいけないんだなあ。

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    投稿日: 2015.11.02
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    帯の椎名林檎の一言に一目ぼれして購入。 「この作品は、体だけ歪に成人した我々のための手引き書である。」 前半は単調で、よくある話かと思っていたが、後半に行くにつれ、もの凄く主人公に感情移入していった。 凄く分かる。 誰しもが多かれ、少なかれ縛られているのではないかと思う。 ハッピーエンドは大好きなのだが、 実世界で、あの状態で三葉くんは帰ってこないだろうし、バファリン女とも決裂するだろうと思うのだが、そんな些細なことはどうでも良いと思える程度に、引き込まれる小説だった。

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    投稿日: 2015.10.20
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    「ちゃんとした」「みっともない」「恥ずかしい」「かわいそう」… 人によって基準が違う曖昧なこれらの言葉に敏感。思っていることをうまく言葉にできない。母親のことを自分がどう感じているかも実はよくわからない。 そんな28歳ドラッグストア店長の主人公が8つ下の男の子と恋愛をしたり、初めて実家を飛び出して一人暮らしを経験するお話。 自分で「決める」ことをわかってきて、年上部下にキリッと言い返した時はすごくかっこよかった。 人の綺麗も醜いも混ざったいろんな感情のつまったお話でした。

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    投稿日: 2015.10.11
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    この前に読んだ本の感想に、松田くんの家庭について身につまされると書いたけど、これはまたそれ以上に身につまされるお話ね。 幼い弟の死をきっかけに両親が分かれ、母の手で育てられた主人公。 ことある度に「ちゃんとした生き方」を求められ「みっともないことをするな」と教えられてきた彼女は、母に反発しながらも「かわいそうな母」を捨てておけない。 母の教えを疎ましく思いながら、そこから出られない彼女。 妻の出産で兄が家に帰ってきたことを機に、前後して勤務先のバイトの子に好かれて付き合いだしたこともあり、家を飛び出し一人暮らしを始める。 その部屋をこれまでとは違ったテイストで飾り、その中でこれまでと違ったテイストの服を着る。何だか分かるけど、イタイなぁ。 『私がきらいって感じても、本当はその人のほうが正しいことを言ってるのかもしれない。私になにか、わかっていないことがあるのかもしれない。そう思うと、こわくなる』とか『吐くなら水場、恥ずかしい洋服は着ない、人に迷惑をかけない、大きな声を出さない、みっともないことはしない、そういうものから、出られないの』って感じ、よく分かる気がする。そうした心象を象徴するさざんかの花の赤さが不気味。 椎名林檎さんが書いた帯に『この作品は、体だけ歪に成人した我々のための手引き書である』とあるけれど、どう育てられたかを意識するしないに拘わらず、それから抜け出したいか否かも関係なく、身に染み付いたものになっちゃってるわけで、これを手引きにそこから抜け出せると良いかなぁ。 私は父に反発し、あのような父親にはなるまいと思っていた筈なのに、二人の子どもに対しては全く自分がされたように接して育ててしまい、いまだに振り返っても彼らに悪いことをしたなぁという忸怩たる気持ちが充満する。 そういう気持ちを持ちながら、物理的距離が少しずつ関係を変えていくのも助けにしながら、彼らに接して生きていくしかないような気がしてきた。

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    投稿日: 2015.10.09
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    私も蜘蛛を潰すのがこわい、花を摘むのもなんかいやと思うタイプだから、「生きづらそう」とか「気味の悪い世界で生きてる」とか言われて少々ショック。「かわいそう」ってなんだろう。

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    投稿日: 2015.10.07
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    いいのを読んだ。本当にいろんな人がいるし、誰かについて自分が知っていることはほんのわずかなことだということを噛みしめる。だから相手のことなどわかっていないと思うくらいでちょうどいいと思えた。また、主人公がただ悩むだけや違和感を叫ぶだけじゃなく、母とも雪ちゃんとも三葉くんともサキさんとも新しい関係を紡ぎ直そうと自分で動き出すところが好きだ。私もそうでありたい。諦めたり逃げるだけは辛いから。あと、こんなに、うまくお互いの痛みと家の事情が通ずる相手と出会えたらいいのにな。情景の描写の使い方、文章の静かさが好み。

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    投稿日: 2015.10.06
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    2015年30冊目。 好きなタイプのお話だった。 誰もが静かに抱える闇。あるいは、自分の闇に気づかずに生きていること。 知らぬ間に縛られていたこと、反発できないのはまた、そこに愛もあるからなのか。 この作品だと、「かわいそう」だから大切にしなくては、という縛りや義務感で描かれていた気がするけど…それは愛ではないのかな? 見過ごしてしまえる程度の不安や悩みや哀しみや闇を、こうして物語にしてくれるのだなと。

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    投稿日: 2015.10.03
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    久々に感想が書きたくなった.初読みの作家さん.弱い自分を突き付けられているようで,息苦しさと憤りを感じながら読みすすめていたのに,気が付けば気持ちが楽になっていた.とても不思議な一冊.文句なし,今年読んだ中では一番でした. あらすじ(背表紙より) ドラッグストア店長の梨枝は、28歳になる今も実家暮し。ある日、バイトの大学生と恋に落ち、ついに家を出た。が、母の「みっともない女になるな」という“正しさ”が呪縛のように付き纏う。突然消えたパート男性、鎮痛剤依存の女性客、ネットに縋る義姉、そして梨枝もまた、かわいそうな自分を抱え、それでも日々を生きていく。ひとの弱さもずるさも優しさも、余さず掬う長編小説。

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    投稿日: 2015.09.26
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    家族・恋愛・職場・人間関係…今までのいろんな世代の自分が梨枝に共感しながら読み終えた。 蜘蛛をどうするか? 蝿とり蜘蛛は雪ちゃん派。 おっきな蜘蛛はおろおろしながら視界から消えるまで待つ派。

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    投稿日: 2015.09.16
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    怖がりなことは悪くない。 怖がりでないことも悪くない。 ただ、それでも何かを起こさなければつらいままだけれど。

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    投稿日: 2015.09.16
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    今読むべき本だと思った。 書かれていたのは紛れもなく私で、誰かのように思えた。ずっと疑問に感じてた「かわいそう」という言葉。独りであることの寂しさと強さ。上手く説明出来ないけれど、そういった誰もが持ってて、隠してる恥であり人間くささが、この本の私が思い出させてくれた。

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    投稿日: 2015.09.07