
総合評価
(24件)| 6 | ||
| 11 | ||
| 2 | ||
| 1 | ||
| 0 |
powered by ブクログ映画化をきっかけに購入し、積んでいたものを2021.7月に読了。 記録も積む… 二部構成と思っていたら、三部があり、驚く。 三部にする必要が?とも思ったが、たぶん意味があるんだ、とも思い… 二部で、洗脳はこうして行われるのか、と興味深く感じると同時に恐ろしくなる。イーモンでなく、ステントンみたいな人が、最悪と。(注1) 読み終わって、すごくイヤな話だと感じた次第… マーサーは死んでない、としたいですが、ストーリーとしてはあのエンドで納得しています。(注2) 映画の評判は芳しくなかったですが、原作はすごかったです。 自分はこの作品の映画は観なさそうですが、映画でがっかりした方も、ぜひ機会があれば一読をオススメします。 文庫化されています。 自分的ヨムヨム詐欺から7年越しに解放されて、ほっ。 ※注1、2とも、今はすっかり記憶の彼方…
0投稿日: 2025.03.25
powered by ブクログ主人公メイが最初のうちは戸惑いながら、徐々に盲目になっていく様子が恐ろしかった。第二部の最後でなんだ、ここまで盛り上げて陳腐なラストか、と思ったけど最後まで読んで唸らされた。この物語が終わったあとの世界がどうなるなか気になる。 (映画は見ていないのですが、キャスティングは知っていたので主人公エマ・ワトソンで再生していたから余計に結末が意外だった。と思ったらやっぱり映画版は結末が違う模様。そりゃ陳腐になるわなぁ。)
0投稿日: 2025.01.18
powered by ブクログ”今年、映画も公開されており、日本封切り前に原作を読むと決めて購入。500ページ超の大作小説だけど、文体がかなり早口(?)なので、話が佳境に入ってからは思っている以上にさらさら読み進められた。 それにしても、ここまで公開されてしまう世界は怖すぎる… ただ、主人公メイの行動を笑いとばせない自分がいる。 マーサー、カルデンの言葉にうなづきつつ、迎えた結末は・・・。 映画ではどんな風に描かれているのか、楽しみ。 <キーフレーズ> ・トゥルーユー(Ty) ・「“コミュニティ第一”知っているだろうけど、これが我が社のスローガンだ。」(p.54) ・「当社では、社員のソーシャルネットワークのプロフィールとアクティヴィティを社内活動の不可欠な部分とみなしているの。」(p.104) ★「君はつまらない人間になったよ。一日12時間デスクに座り、そのせいかとして見せられるものといえば、一週間もすれば忘れられる実在しない数字以外に何もない。君が生きたという証拠は何も残らない。」(p.278:マーサー) ・秘密は嘘 分かち合いは思いやり プライバシーは盗み(p.323) ・「今起こっていることを止めなければ。僕は真剣だ。サークルの完全化が迫っている。」(p.340:カルデン) ・「みなさんの願いと気持ちだけを送ってください。メールやジングなどは結構です。」(p.385) <きっかけ> 田中伶さんのビジネス書サロンでの紹介を読んで。”
0投稿日: 2019.08.15
powered by ブクログ分厚めだったが一気に読んでしまった。 現代版1984、とか言われているらしく、これまでも私の人生に何度か訪れては無視されている、【今こそ1984を読むのだ】のお告げまた来た…。 主人公のメイが、「サークル」という会社の社是にだんだん染まって行く様子が恐ろしかった。 ヒトラーも、パルパティーンも、民衆に歓迎されて独裁者になった。 「サークル」もおんなじ。 私も、GoogleなりAmazonなりドコモ(こう並べると小物感あるからむしろ信じてるんだけど)なり…に個人情報を提供しまくる生活への抵抗感がどんどん薄れている。というか抵抗感はあるのだけど、それよりも「便利だからまあ仕方ない(今さら無い生活に戻れない)」という気持ちの方が勝ってしまう。みんなやってるし、それが世の趨勢か、なんてわかったような理屈で納得して、受け入れてしまっている。 安い方がいいし、早い方がいいし、楽な方がいいし、ちょっとやだなとは思っても、信念……なんて言うほどのものでもないしねえ、、ポチ、てな感じで。 こういう怠惰な心が独裁者を作るのだなあ。 頑なにケータイ持たない人、スマホにしない人、LINE使わない人、たちが時代時代にいた(いる)けど、周囲からさんざんからかわれたり文句言われたりしながらも「いえ私はmixiはやりません」と言っていたあの人みたいに高潔であらねば、とか思うその一方で、信念を貫くために死にたくはない。自分一人ならまだしも、家族が「死をも厭わず俺は信念を守る!」と言ったらどうする?生きるべきか死ぬべきか、それが問題よ…。 そんなこと考えている間に、ただの便利な道具として世界に浸透しきった「サークル」アカウントが、悪魔の全体主義ツールに変貌しちゃうんだから、トロイの木馬。
3投稿日: 2019.06.27
powered by ブクログこの物語のようなことは既に現実に起こっている。ばかばかしいと思っても世の中の仕組みから逃れられなくなっていく
0投稿日: 2018.11.04
powered by ブクログ「すごい、ここは天国だ」という書き出しで始まる、現代ディストピア小説。かつてのディストピア小説は共産主義国をモデルにしていたわけだが、この現代ディストピア小説のモデルは言うまでもなく Google で、誰もが内心気がついている恐怖感を具現化した。そして、これが壮大なパロディとなるか、黙示録となるかは、まだ誰にも判らない。 Dave Eggers は現代アメリカを代表する作家で、この "The Circle" も New York Times bestseller #1。本当は原著で読もうと思っていたのだが、面白そうだったので翻訳でサッサと読んでしまった。
0投稿日: 2018.07.15限りなくノンフィクションに近いフィクション
GoogleとFacebookが合体したような架空の会社サークル。 そこに入社した主人公の仕事やブライベートを通して現実を風刺している作品です。 IT関連の仕事をしている人やSNS好きには「分かる分かる」という内容がたくさん出てきます。 “透明化”が本当に実現したらどうなるのか、見てみたいような見たくないような
0投稿日: 2017.04.09
powered by ブクログ繋がること、シェアすることが加速していくと、こんな絶望的な世界になってしまうのかと思うととても怖い。こんなこと起こらないだろう、と笑えない今があるからこそ。 ブラックユーモアの極地、デストピア小説という言葉にも納得がいった。
1投稿日: 2017.03.28
powered by ブクログますます進化するIT化、ソーシャル化。 「いいね」押していい気分に。「いいね」押されていい気分に。 会社の資料はすべて共有フォルダへ。メールは全員へ返信で。 CCには知らない部署の人の名前までずらっと並ぶ。 すべてオープン、それが「善」となんとく思うようになり、 すべてを透明化することで社会が一歩前進すると信じていた。(少し前の頃) 透明化によって、貧富・優劣の差はなくなり、手助けし合える“素敵な”社会が生まれても、 なんか居心地の悪さも感じる。個性もいつの間にか失われている気がする。 そんな「違和感」が脳裏をよぎる人もちょいちょい出てきたが、世間の“ムード”には抗えない。(ここが今) 10年後 あの時に感じていた「違和感」は正しかったんだ、と気付いても遅い。 サークルという輪の真ん中は空洞。何もない。 手遅れにならないように、今、多くの人にこの本を読んでもらいたい。 ただ、手遅れにならないようにこの“ムード”に抵抗したいところだが、 抵抗する方法がわからない現実に気付くと恐怖感はさらに倍増する。 この本に書かれてるのは、良かれと思って築き上げた夢のような未来の影に潜む、 取り返しのつかなくなった「奇妙な世界」。 罪のない“ムード”をどうやって軌道修正すればいいのか、考えさせられた。 BGMはゆらゆら帝国「空洞です」の小泉今日子バージョンで。
0投稿日: 2017.03.17
powered by ブクログ誰もが知っている検索大手のあの会社っぽい架空の会社「サークル」が舞台。そこに中途入社した若い女性が主人公の話。普段何も考えずに利用しているIT技術の数々、ソーシャル系のツール類が「社会を良くしたい」という私企業によって統合され、個人情報が丸裸になってしまった場合、行き着く先はどんな社会かを垣間見れる。企業に情報が集中してしまうこと対する警告とも読み取れるが、政府がやっている個人情報の透明化施策にも同様の恐怖を感じた。
2投稿日: 2017.03.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2017年映画が来るということで先読み。まぁおもしろかったのだが、スピーディーなテンポがまるで映画向き。読書としては少々疲れます。原文がそうなのかどうか未確認とした上で、日本語版はけっこう読みづらかった。古式ゆかしい文学ではなく、そのスタイルでさえ情報の海の中心である“サークル”的な表現なのだとすれば、ふさわしい訳文と言うべきか。 Facebookなどソーシャルメディアとのつきあい方を見直したい人や違和感を明文化しておきたい人(大なり小なりきっと誰もがそうだと思うのだけれど?)は読んでみるといいかも。確かに「嘘やヒミツがなければその場面で争いや憎み合いにならないのに」と思うことはある。でもヒミツ――まだ語られていないということは、人生で必要だとも信じているので、同書で描かれている世界はわたしにとって完全にデストピアでした。 予告編で観ただけで判断するなら、メイ役のエマ・ワトソンがおそらくはまり役。完全にイメージ付けられてしまい、読書中も脳内再生はエマ・ワトソンだらけでした(笑) これは映画が楽しみ。救われる方向の描写があると嬉しいのだけど、どうなるのでしょうか。
1投稿日: 2017.02.15
powered by ブクログ世界最高のIT企業「サークル」に転職した24歳のメイは、熱意ある同僚に囲まれて充実した会社生活を送りはじめる。しかし、社員同士のコミュニケーション手段がSNS主流の生活は、次第に彼女のストレスとなってくる。 人間とインターネットの未来の良いところと悪いところを考えさせられる小説。
0投稿日: 2017.01.28
powered by ブクログ全てのものがIoT化されたときに起きるものは。最後があっけない。続編が出るのかもしれない。読むのに意外と時間がかかった。
0投稿日: 2017.01.09
powered by ブクログメールやSNSでの活動、支払い履歴などの全データを蓄積する巨大インターネット企業「サークル」により、個人のプライバシーが可視化し1つの巨大な世界になっていく様を描く。 映画化されるみたいですね メイはエマ・ワトソン、トム・ハンクスはカルデン? 現在のテクノロジー進歩スピードを考えると SFでもない気がする、怖いですね。 つかみはOKだったが、途中でだれた、長かった。
1投稿日: 2016.03.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
なんという恐怖小説。グロでもオカルトでもないのに。 訳者はあとがきで「にやりとさせられたり膝を打ちたくなったりするようなエピソード満載」と書いているが、笑えるどころではない。最高に恐ろしくて気持ちが悪かった。 もちろんそれはこの小説が面白くないという意味ではなく、SNS疲れを感じている人や、逆に所謂ツイ廃の自覚がある人に読んだ感想を聞いてみたい。 恐怖と気持ち悪さの要因は2つ。強制コミュニケーションとファシズム的情報管理。 1部では、見聞きした情報や映像を含む自分の全ての情報を同じ「サークル」の社員たちと共有するのが当たり前であり、毎日膨大なメッセージを交わし合うのがコミュニケーションであるという社風が延々描かれる。 何しろポルトガルの話で盛り上がるためのブランチ会のお誘いメッセージをスルーした主人公が上司に呼び出され、メッセージを無視されたことに涙ぐむ会の主催者に謝罪させられ、その経過レポートを全社員が共有するというんだから相当気持ち悪い。 この上司いわく、 「たとえば、この会社が幼稚園のクラスだとして、ひとりの女の子が誕生パーティーを開いたときクラスの半分しか出席しないとすると、誕生日の女の子の気持ちはどうなると思う?」 幼稚園児の集まりかこの会社は。 主人公はこんな社風に疲れ病んでいくのか……と思いきや、2部ではむしろ主人公のほうが気持ち悪さのスターダムにのし上がっていく。 全ての情報が公開され誰もがそれを見られることこそが全世界の幸せだと信じて疑わない主人公は、ただ静かに病気を癒したいと願っている両親のメルアドを無断でネットに公開し、「サークル」に情報管理されたくなくて逃亡した元カレを監視カメラとネット信者の「協力」で追い詰める。 どれもこれも発端は彼女の「善意」であり、何故それを両親や元カレが厭うのかが彼女にはさっぱり分からない。全てをオープンにして全世界と繋がることをどうして拒むのか? 果ては昏睡状態に陥った友人の頭の中を覗けないことにすら苛立ちを覚えて侮辱と感じる。 いよいよ世間で不評のマイナンバー制度が施行されようとしているが、これを読んだらますます不安しか覚えない。
0投稿日: 2015.09.06
powered by ブクログ2015/5 怖い小説だ。半分はリアルな世界で起きていることで、半分はこれからリアルになりかねない世界。facebook twitter 食べログ 楽天 amazon Yahoo! google etc これらが合併したら便利なのか恐怖なのか。
0投稿日: 2015.05.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
SNSをカリカチュアライズしたような小説で、Facebookなどを一生懸命やっているのであれば面白く読めるのかもしれない。 冴えない地方公務員であったメイは知人のつてで人も羨む最先端企業サークル(グーグル?)に転職する。「起こったことは全て知らされるべし」の原則のもと、メイはSNSに没頭して社内でのパーティーランクを上げ、プライベートでも謎の男性カルデンとの関係を深めていく。サークルの新たな社是である透明化(常にカメラを装着してプライベートの全てを公開する)にもいの一番に志願し、世界の全てを透明化し選挙もサークルのSNS機能に統合しようという会社の広告塔になっていく。 カルデンがサークル設立者の一人であることを明かされ、過度の透明化、政治化への危惧を説かれたメイは、一大発表会で透明化への反対を表明するように説得されるが、、、
0投稿日: 2015.05.06
powered by ブクログページ数が多いのに、1ページにしめる文字数も多くて本当に読みきれるのか不安になったけど、なんとか読み切ることができた。 内容は監視社会になるまでの話。まさかのバッドエンドだった。 なんとなく、サマーウォーズを思い出した。ハッキングされたら大変なことになるな。いや、それも監視してるからそういうことが起こる可能性は低いのかもしれない。気付かれないように盗撮できるかもしれない仕組みを社会的にいいことと宣言するのはどうなんだ・・・。 いやでも、本当、こんな会社なら嫌だよね。コミュ障の自分なら絶対ついていけない。 後、主人公がまさかのヤリマンだった。3%しか嫌う人がいないことに驚き(無記名投票じゃないから、嫌いでもそうじゃないと答えた人はいそうだけど)。
0投稿日: 2015.05.04
powered by ブクログサークルの目指す「完全化」。これまで自分が繰り返し夢想してきた世界と重なる部分が数多くあった。したがって、薄気味悪さや居心地の悪さを少し感じながらも、完全化された世界への拒絶感はなく、むしろ自分のような人間には歓迎すべき世界なのかもしれないなどと思ってしまった。 自分はもしかしたら、「サークラー」の世界の方が心地よいのかもしれない。深い人間関係を築かなくても、組織の一員でありさえすれば、自分のスマホで検索するだけで他人のすべての行動が把握可能な世界だ。現実世界での人間関係の構築が不得手な自分にとっては、好都合ではないか。 最近、ブクログのレビューを書くことに重きを置きすぎていないか?もう少し純粋にがむしゃらに読書したい。しばらくは読書状況の記録にとどめて、レビューを休んでみてもいい。
0投稿日: 2015.04.20
powered by ブクログ秘密は嘘 分かち合いは思いやり プライバシーは盗み すべてを人に見られている生活を拒むことのできないことの悲劇がある。
0投稿日: 2015.03.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
とにかく面白かった。500ページ超の本を一気に読んだ。 実在するIT企業を髣髴をさせる現実的な設定が特に面白かった。 あと10年もすれば全て実現できるのでは?と思わせる 妙にリアルな近未来の世界がぞわぞわと心に迫ってくる。 便利にすること、だれにでも分かりやすくすること、正直で公平であること。 そこから始まったことが段々と常軌を逸していく。 スタートが「善」だと、そこに異議を唱えるのは難しい。 中庸というのは本当に難しいのだと改めて思った。 このシステムは本当に便利だ、だれにでも無料で使えるようにするべきだと思うシステムもあった。けれど、その裏には常に危うさが付きまとう。 オンラインが実生活から切り離せなくなっている以上、この難しいバランスをずっと取り続けなければならないのだ。
0投稿日: 2015.03.11
powered by ブクログ現代の1984。舞台はサークルという「C」のロゴを持つIT企業。疑いようもなくモデルはGoogleであり、世界は知らず知らずのうちに情報を管理され、プライバシーはなくなり、監視のもとに晒される。「C」の穴が閉じるとき、サークルは完全な円になる。 ここでは、SNSのニコマークを得るのに中毒になっている人間や、知る権利の正義を信じてハードワークをこなす人間がたくさん出てくるが、それらは全て私たちの生き写しだ。私たち一人ひとりは罪のない一般人だし、影響力もないし、そんなに悪い人でもない。ただその無意識の盲信が集団で持つ力はあまりに大きすぎる。 知る権利は確かにあるところまで正義だろう。性犯罪をなくすこともできるだろうし、介護が必要な親の生活を見届けることもできるだろうし、税金の無駄遣いをなくす効率的な政治をすることもできるだろう。しかし、アカウントを義務化して、人間にマイクロチップを埋め込むのはやりすぎだ。ただ、その境目はどこだろう。その境目ははっきり分かったり急にやってくるものではなく、あまりにグレーで緩やかにやってくるために、我々は変化に気付かず、気付いた時には世界は終わっている。 非常によくできた小説で、デイヴ・エガーズという新進気鋭の作家の実力にも非常に惹かれた。
1投稿日: 2015.03.08
powered by ブクログライフログの公開による「透明化」を推進する社会を描くティストピア小説。 「 秘密は嘘 分かち合いは思いやり プライバシーは盗み 」 という標語は、オーウェルの「1984」に出てくるダブルスピーチの翻案だろう。 極端な情報公開主義と新自由主義の結託と暴走、という大構図もさることながら、細部にくりかえし描かれる、承認への渇望とハイパーメトリックの「病み」と「闇」がリアル過ぎてつらい。みんな、こうやって狂っていくのだ。 こんな風にはならないよ、と信じる理由が私にはない。テクノロジーもメンタリティーも、もう揃ってるのだから。 ハリウッドのアクション映画の文法でつくられたようなビジュアル優先で構想されたように感じるシーンが繰り返し出てくるのも印象に残った。具体的には、遠隔操作で追い詰められるところのアナウンサーの嬌声の差し込み方や、鮫の水槽のシーンのアップの表情を次々切り替えながら切迫感を出すところ、プランクトン会議でのプレゼンテーションと喝采など。悪い意味で目に浮かぶようだ。テクノロジー支配下の想像力の限界についての物語が、その作劇においてハリウッド的想像力の枠組みとらわれているのは興味深い出来事だ。
0投稿日: 2015.03.08気鋭の作家が描くプライバシーが悪だとされる完璧な民主主義社会の姿
巨大インターネット企業「サークル」を舞台にした近未来小説。というより小説仕立ての予測シミュレーションと言った方が適切かも。きっかけはこれまで未整理で複雑だったユーザー情報を一つに統一したトゥルーユーの誕生と、お互いにシェアしあえば世界中の何百万のライブ映像にアクセスできる安価な個人用ライブカメラの登場にあるのだが、やがて社のトップは「秘密がなくなれば、人類は善になる」とか、「人類が経験しうるすべての経験への平等なアクセスは、基本的人権である」と宣言するまで至る。その過程に、なんら不自然な突飛さはない。 ただし同じような発想が日本でも生まれるだろうか?という問いは興味が尽きない。これはアメリカ、いやシリコンバレーという地でしか育まれない特有の思考形式だと思う。秘密は、「常軌を逸脱した行動様式の一部であり、反社会的で、非道徳的で、破壊的な行為を助長する」からなくすべきだし、すべての人のあらゆる経験にアクセスできることは必須で、自分の経験をオンライン上でシェアできないようにすることは、「知識の独占」で「わがまま」だという考えは、アジア人の間にも生まれまい。 透明性とオープンアクセスを信奉する会社で生き残るために、主人公のメイはキャンパス内で必死に努力する。 なにせこの会社は、ソーシャルであること、オンライン上のあらゆるアカウントで絶えず存在感を示しつづけることが、仕事の欠かすことのできない一部であるとする会社なのだ。一定レベル以上のコミュニティ参加が求められる職場というのは、まさに一昔前の社内運動会が盛んだった日本企業そのもののような気もするが。 ソーシャルネットワークとジャンクフードの類似性を指摘する箇所が面白い。社交的でないとなじられたマーサーが、問題は不自然に極端な社会的欲求を生み出す彼女の会社のツールにあると指摘し、他社との極度なコンタクトなんて誰も求めていないのになしで済ませられなくなるのは、科学的に塩分と油分が配合されたジャンクフードみたいなもので、「やめられない空疎なカロリーのソーシャルネットワーク版」だと言い返す。 マーサーはこの他にも、ソーシャルネットワークの進んだ状態を「誰にも強制されること」なく「自ら進んで自分を鎖に繋いで」しまう「社会的な自閉状態」と呼び、なるほど思わせる。 今年発売されるApple Watchがただのオモチャにしか思えないほどの究極なウェアラブル・デバイスが登場する。手首のモニターとつながるセンサーをドリンクと一緒に飲むことによって得られるデータは次の通り。心拍、血圧、コレステロール、体温の変化、摂取カロリー、睡眠時間、睡眠の質、消化効率、ストレス値、汗のPH値、血中酸素濃度、赤血球数、歩数、姿勢などなど。 しかし、自分についてのデータ収集が、やがてそれだけでは済まなくなり、他の人のデータまでも欲しくなり、それなしには足りないと感じてしまうような世界が、サークルが目指す完全化の達成した倒錯した世界なのだ。 何も持たず旅に出るなんてわがままで、非ソーシャルは自尊心の低さの現れだと主人公が詰られるシーンがあるが、新興宗教施設内での折檻や連合赤軍の総括を連想させ、なかなか恐ろしい。自分の趣味や興味を周りの人に知らせることは、自分の役割を果たすことにつながり、コミュニティの一部であることの不可欠な要素であるとする指摘は、一見まっとうに思えてなかなかに罪深い。 透明化したメイが自分は以前よりはるかに改善されたと感じる場面はなかなか興味深い。ついつい甘いものに手が伸びるダイエット志望の人にも、ついもう一杯と杯を重ねるアルコール依存症患者も、カメラによって常に見られて窮屈だという思いよりも、メイのようにカメラによって自分の振る舞いが矯正されたという感謝に変わるのだろうか?
2投稿日: 2015.03.07
