
総合評価
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powered by ブクログミステリというカテゴリーやけど、情景とかが浮かぶ文章とか、少年から成長していく部分とか、文学としても良かったと思う。
0投稿日: 2025.11.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
1961年夏。ニューブレーメンに住んでいた「わたし」ことフランク・ドラムの級友が、構脚橋の線路で列車にはねられて死んだ。それを皮切りに、現場近くで亡くなっていた身元不明の男、フランクの姉アリエル、アリエルの友人カール・ブラント…と多くの人の死が続いていくが、特にアリエルの殺害事件をめぐっての家族や周囲の人々の動きが本作の中心になっている。 フランクの父ネイサンは牧師だ。もとは弁護士を目指していたが、戦争で人を殺す経験をして牧師になった。フランクの母ルースはそれを不満に思っている。決して怒らず、情熱的に話すわけではないが静かに説教をして人々に神の存在を宣べ伝える姿は、神のように絶対的に正しい姿に見える。対して街の人々は粗野で、彼が戦場で臆病だったと揶揄したり、フランクの弟ジェイクが吃音なのをからかったりしている。一番印象に残ったのは、アリエルの葬儀の後の食事の席で、食前の祈りを唱えようとした父に、「ありふれた祈りをして」と母が頼むシーン。いつでも卒なく正しい道へ人々を導くネイサンに対し、この時母は突然娘を奪われた悲しみと怒りで神を拒否する心情になっているから、そんな夫の正しさが我慢できなかったのだと思う。それに対して、人前では3語とどもらずに話せたことのないジェイクが名乗り出て、代わりに本当に定型句のような、食前のありふれた祈りを、どもらずに捧げたシーンが本当に良かった。それは神からの奇蹟だし恵みだと思う。ありふれた祈り、原題はOrdinary Graceだが、そのgraceは祈りとも恵みとも訳せる。ラザロの復活のような劇的な奇蹟はなくとも、どもらなくなったとか、それで母に笑顔が戻ったとか、そうしたありふれた些細な出来事が神からの恵みであって、それに気づくこともまた恵みだと思う。 インディアン、吃音、障がい者、同性愛者など、弱者を描いた物語でもあった。 父は戦争で人を殺したことを、フランクは姉を殺したかもしれないインディアンのウォレンを見逃したことを、ジェイクは人から揶揄われる自らの吃音を、それぞれ十字架として背負いながら生きている。遠くへ行っても自分からは逃れられないから自殺したくなる気持ちは分かるとジェイクは言うけど、そうではなくて自分の重荷を口にして誰かと担いあったり許されたりしながら生きていく人間の姿がとてもよかった。最終的にウォレンは犯人ではなかったし、フランクが見逃したからウォレンは生き延びることができたのも、そもそもそうでなければ生きられなかったということ自体先住民差別が背景にあるけれども、それをフランクが後に知って許された気持ちになることも含めて恵みだと思う。
0投稿日: 2025.01.04
powered by ブクログ1961年、ミネソタに住む13歳のフランクと弟ジェイクとその家族の物語。 その街に住むひとりの少年の死から物語は始まるものの、ミステリーというより、 少年の成長や人間ドラマにポイントが置かれていて、じっくりとその世界を楽しめた。 やんちゃでちょっと短絡的、だけど兄弟思いの兄と、 吃音というハンデをかかえつつ、慎重で思慮深い弟の対比が良かった。 最初は冒険を嫌い、前に出ない弟にヤキモキハラハラし、中盤からは「お兄ちゃんもいいとこあるやん!」と兄の印象も変化し、二人のことが大好きになった。 ラスト付近で起こる奇跡にも胸が熱くなった。 牧師であるこの兄弟の父親にも好感が持てた。 信仰心を持たない自分にも、彼が場面場面で放つ言葉にうなづいたり、考えさせられた。 怒りを抑えることや冷静に行動するためのヒントをもらえた。 登場する他の大人たち、特に牧師と兄弟を精神的に支える男と 犯人の嫌疑をかけられるインデアンの男も良かった。 ※フォローしている方の読書記録は 次に読んでみたいと思う本の参考になり、たいへんありがたく思ってます。
12投稿日: 2023.07.22
powered by ブクログ読書備忘録696号。 ★★★★★。 翻訳される海外文学作品は、評価が高いから翻訳されている訳であり、やはりアタリが多い。 アメリカの中北部州ミネソタ州を舞台に少年が大人になっていく様を描いた秀作。 ミネソタ州はミシシッピ川があり、トム・ソーヤやハックリベリー・フィンが大冒険を繰り広げたり、大草原の小さな家でインガルス一家が住むウォールナットグローブがある。笑 すなわち、豊かな自然に恵まれた牧歌的な風景がすごく似合う舞台。 そんなミネソタ州のミネソタ・リバーのほとりの町ニューブレーメンで13歳の少年フランク・ドラムが初めて人の死、しかも最愛の家族の死に直面する残酷なひと夏の物語。そしてミステリでもある。 その年の夏、死の連鎖は知り合いの少年ボビー・コールがミネソタ・リバーに掛かるユニオンパシフィック鉄道の構脚橋で列車に轢かれるところから始まる。 そして、その事故死は、見知らぬ旅人の自然死を経て、最愛の姉アリエルの殺人事件に繋がり、連鎖して自殺と広がっていく。 物語は、主人公のフランクが当時の1961年夏を40年後の視点から回想する語り形式で進む。 まだ第二次世界大戦の傷跡が人々の心に残っている時代。戦争から戻り牧師となった父、牧師となったことに不満を持つ母、吃音が激しく人前では一切喋らないが聡明な弟ジェイク、そして音楽の才能がありジュリアード音楽院に進学予定だった最愛の姉アリエル。 教会で、父の手足となり働く戦友のガス、巡査のドイル、母の昔の恋人エミールとその家族たち。 ニューブレーメンという小さな町に暮らす人々がフランクの目を通して、生き生きと、日々懸命に生きる。 そして物語の大きな柱は中盤に突如訪れる。最愛の姉アリエルが家に帰らない。懸命に捜索する家族。そしてフランクはミネソタリバーに浮かぶアリエルの発見者となる。事故なのか事件なのか。悲嘆に暮れる家族の元に、検死の結果として殺されたことが伝えられる。 誰が何の目的でアリエルを殺したのか。町のごろつきや差別に苦しむインディアンに容疑者として浮かび上がる。しかし、フランクがたどり着いた真相は驚くべきものであった・・・。 少年であるが故、行動の不自由さ、それを巧みに潜り抜けて真相に近づいていくストーリーは、間違いなく珠玉のミステリー小説である。 牧歌的な風景の中で起きた死の連鎖、そして少年が必死で背伸びして青年になっていく通過儀礼的残酷なひと夏の物語には引き込まれました。 この作者の作品「このやさしき台地」も読む予定。そのうちに。舞台は当然ミネソタでしょう。笑
2投稿日: 2022.11.18
powered by ブクログ悲しい物語 でもミネソタ州の田舎町の風景と人々の情感がたっぷりで、荘厳な家族愛の映画を見終わったような、満足感と脱力感を感じる物語。 1961年夏 牧師の父と美しい母と姉に囲まれ、吃音障害を持つ弟と13歳の主人公フランクが経験した特別なこの夏の出来事。 自身の心の底に住み着いた戦争の後遺症ゆえに、ひたすら“神”の道を進む父の言葉は、困難にあった町の人びとの心にいつも寄り添っていた。 自分の家族に起こった困難のとき、母はそんな夫に「せめて今日だけは“ありふれた祈り”にして……」とつぶやく。 キリスト教の赦しや救済について、疑い迷い罵るという感情が普通にあること、それでいて、それらをすべて俯瞰するように包み込み潜んでいる“神”の存在。 信仰心ですべてを解決していたら、この本は「つまらない祈り」になっていただろう。
1投稿日: 2022.09.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
いくつもの死に向き合う中で成長する兄弟。 とりわけひとつは最愛の姉の死。 姉の死にまつわるフーダニットの目くらましも悪くない。 また、そういったミステリ性をおいておいても、周囲の人々との繋がり、母の心身崩壊と再生を通じて過ぎて行く少年時代の特別時間の描き方がとても良いと感じた。 時間の軸を進め、関係者達のそれぞれの死でこの物語を締めくくっていくところもふさわしいクロージングだった。
1投稿日: 2019.08.20
powered by ブクログ40年前の1961年の夏を当時13歳だった主人公が回想する。ミネソタ州ニューブレーメンに住まう主人公とその家族や、かかわりのある人々が構脚橋で起きた出来事とともに丹念に描かれ、時代と西部のテイストが楽しめる。中盤からは・・・もうネタバレしちゃうので書かないけど、じっくり読ませる深い味わいがあり堪能しました。初クルーガー。他の作品もボチボチ読もっかな。
0投稿日: 2018.12.25
powered by ブクログ2014年エドガー賞、 文春3位、このミス3位 1961年夏、ミネソタ州の田舎町 語り手 フランク・ドラム13歳 牧師の父親 ネイサン 芸術家肌の母親 ルース 音楽の才能に恵まれた姉 リーゼ 吃音症の弟 ジェイク ジョン・ハートの『ラスト・チャイルド』『川は静かに流れ』に続いて『ありふれた祈り』を読んでみると エドガ―賞って長編推理小説だけどミステリー的な要素より 人間の内面を深く描いた優れたヒューマンドラマが評価されてるような印象。 後半、動き出してエピローグまで良かったけど 中盤にかけては退屈な感じ あんまり退屈な時間が長くてどうも エピローグがなかなか効いてましたが たどり着くまでは、いまいち感が強かったなぁ
0投稿日: 2017.10.26
powered by ブクログ★3.5 少年達のひと夏の思い出は、キングの『スタンド・バイ・ミー』や『IT』を彷彿とさせ、取り返しのつかない過ちを回顧する語りは、クックの『記憶』シリーズを思い起こさせる。ただクック作品とは違い、ミステリやサスペンス色はかなり薄く、事件は起きても爽やかさ(と言うには死が身近すぎるが)が前面に出ている印象だ。 主人公兄弟の忘れ得ぬ夏は一人の少年の事故死から始まり、あまりにも痛ましい悲劇を経て否応なく子供達を大人へと成長させる。子供らしい好奇心がひとつの悲劇を生むきっかけを作ってしまうくだりは読んでいて痛ましいが、この後に迎える家族の再生と奇跡はその悲劇ゆえに心に響くものがある。
0投稿日: 2017.05.13
powered by ブクログドイツ系住民の多い、ミネソタの田舎町の殺人。 牧師の父とその家族が経験する夏。 引き込まされる。
0投稿日: 2017.02.04
powered by ブクログ他の方のご指摘の様に、スティーブン・キングの 「スタンド・バイ・ミー」っぽい事は否めないかも。 ですが、逆を云えばああいうテイストが好きならば 十二分に楽しめる事間違いなしです。 何より、行間から匂い立つような夏の強い日差し、 カラカラに乾いた砂や土、ひんやりとした石切り場、 咽るような草の香りに、汗。 著者の表現力の素晴らしい事! 死や悲しみ(差別的な事も多々)を根底に置きながら、 美しくまとめ上げ、そしてこのさわやかな読後感よ。 おお、神よ(笑) あと、地味に食べ物の描写が好きでした。 ガスがドラム家の台所で作るポテトとチーズの料理が 美味しそうです食べたいです。 解説を読んで知ったのですが、意外にも ニューブレーメンが架空の街とは… これだけ風景描写が手に取る様に書かれているのに!
0投稿日: 2016.12.30
powered by ブクログいろいろな事を考えさせられる深い本だった。ミステリーというよりも「祈り」と「赦し」の本。背景描写も登場人物の心理描写も 素晴らしく静かに落ち着いて心に訴えかけるのは 翻訳も良かったからだろう。ただ自然信仰と神道と仏教を足して割ったような考え方を持ってる私には どうしてもキリスト教の教えを骨にして書かれているこの本の作者が伝えたかったであろう事は 心の底からは やはり理解できない部分が残る。それでも 読んで良かったと思える 深い本だった。
1投稿日: 2016.08.28
powered by ブクログトマス.クックが好きなひとははまる。確かに、ミステリー色は薄いが、アメリカの片田舎の都市のよき文化と悪しき文化が匂いたつ。なぜか、行ったこともないのに、懐かしい気がするのはどうしてなんだろう。
0投稿日: 2016.06.21
powered by ブクログボビー少年と旅の人の死、この二つの死の真相については結局語られなかったな。正し過ぎる人は周囲の親しい人達を追い詰めてしまう可能性があるのかも。
0投稿日: 2016.03.03
powered by ブクログ少年の日の、ひと夏の事件を回顧する内容。 初めて読んだ作家さんですが、切なく、確かな描写で、とてもよかったですよ。 ミネソタ州の田舎町、1961年。 13歳のフランクはやんちゃ盛りで、街中をすばしこく飛び回っていました。 穏やかで博識な父親は牧師。 母は、良家の出で、芸術家肌。 二つ下の弟ジェイクは賢いが、緊張すると吃音になるため、からかわれることもあります。 姉のアリエルは美しく、音楽の才能に恵まれていて、弟達にも優しい。 一家の希望の星だった姉が行方不明となり、フランクの住む世界はとつぜん悲痛な色を帯び始めます‥ 豊かな自然に恵まれた町ですが、上流階級と庶民の住む区画は分かれています。 人種差別もあり、普通の人々の中に、いろいろ癖の強い人間もいる。 互いに許しあってほど良い加減で暮らしていた、ゆったりした描写が、しだいにテンポを速めていきます。 複雑な出来事をただ目を見張って受け入れるうちに、男の子達は大人の世界に一歩、足を踏み入れていく‥ 卑小な人間のどうしようもなさ、悪気はなくとも個性がぶつかり合い、弱点がすれ違う哀しさ、苛立ち、切なさ。 タイトルになっているシーンは感動的です。 よく描ききってくれたな、と胸をうたれました。 エドガー賞はじめ全米の主要なミステリの最優秀長編賞を独占した作品です☆
1投稿日: 2016.02.11
powered by ブクログコーク・オコナーのシリーズは未読のまま。ウィリアム・ケント・クルーガーの作品を初めて読む。 あの夏のすべての死は、ひとりの子供の死ではじまった――。1961年、ミネソタ州の田舎町で穏やかな牧師の父と芸術家肌の母、音楽の才能がある姉、聡明な弟とともに暮らす13歳の少年フランク。だが、ごく平凡だった日々は、思いがけない悲劇によって一転する。家族それぞれが打ちのめされもがくうちに、フランクはそれまで知らずにいた秘密や後悔に満ちた大人の世界を垣間見るが……。少年の人生を変えた忘れがたいひと夏を描く、切なさと苦さに満ちた傑作ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作! 教会付属の幼稚園に通っていたので、食前のお祈りを必ずしていたことを思い出した。一貫して静かな、心に残る物語。ミステリとしては珍しい読後感であった。
1投稿日: 2016.02.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
何故かはわからないがちょっと取っつきにくくて読み進むのに時間がかかった本だった。タイトルの意味が分かったあたりから盛り上った感じでしたが。主人公が男の子だったせいですかね?感情移入がイマイチ出来なかったような……
0投稿日: 2016.01.30
powered by ブクログミステリーというより,家族の物語としての重みが先に来て,読み応えたっぷりの満足感がある.現在の私が40年前を振り返って書くという形式で,13歳の少年にすぎない私の考察も重厚になって,一夏の経験というにはあまりにも次々起こる出来事に崩壊していく家族と踏みとどまる人の強さがぎっしり詰まっている.ニューブレーメンという街の様子もそこにあるかのようで,川や草原や吹きゆく風など匂いなども確かに感じられた.吃音の弟ジェイクに訪れた奇跡に感動した.
1投稿日: 2016.01.25
powered by ブクログ評価はやや甘め。ジョン・ハートやトマス・クックを彷彿とさせる家族をテーマにした祈りと赦しの物語。死体は登場するが、謎解き目線で読むと失望する。 ミネソタの田舎町を舞台に、主人公の家族と周囲の人々の生活を牧歌的に綴っているだけなのだが、序盤から引き込まれそのまま読了。中盤に大きく動き出すまでは普遍的なエピソードの繰り返し。でもどういうわけだかハマってしまい、このまま事件もなく終わってしまってもいいとさえ思ってしまった。主役の兄弟をはじめ、人物造形が巧い。あっさり描かれているのにそれぞれが活き活きとした印象で、登場人物の希望も苦悩もすんなり受け入れられる気持ちにさせられた。 終盤ではちょっとしたサプライズもあるが、真相は予測可能。若干間延びした感じが残念だが、謎解きに対する肩透かしは想定内だったので、特に問題なし。 タイトルの意味がわかる場面は秀逸。読み手の私が一番救われた気になった。全体を通して感じるのは浄化。年の瀬にのんびり読めたからかな、いろんなものが洗い流されたようで、気持ちのよい読書時間でした。つくづく、作品とタイミングの相性って大事よねー。
4投稿日: 2015.12.31
powered by ブクログ犯罪を通して、宗教、人生観の違い、家族愛を描いたって感じ。一人一人の役割が重い。「解錠師」を思い出す。
0投稿日: 2015.12.29
powered by ブクログミネソタの元保安官コーク・オコナー・シリーズで知られる作者のノン・シリーズ。 エドガー受賞作ということとタイトルが渋いので手にとってみました。 舞台は60年台初頭のミネソタの田舎街。戦争から帰って法曹界のキャリアを捨てて牧師になった父と、そんな父に不満を持つ美しくて音楽的才能に恵まれた母、その才能を受け継いだ姉と吃音に悩む弟を持つ少年の回想。 友達の一人が線路で命を落としたところから主人公一家にも悲劇は襲いかかり…という話。 地味で静かなストーリー展開なんだけどさすがはエドガー受賞作だけあって読み応えありました。面白かった。
0投稿日: 2015.09.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
この作者の作品は以前読んだがさほど好みではなかったが…。 この作品は少年が遭遇したひと夏の出来事が抒情的に、そしてすごく視覚的に描かれている。 サスペンスという括りにするとさほどの事件も起きないし、犯人(真相)もあっさりと分かるのでは? でもこの作品は殺人事件を核にしながら、61年夏のアメリカの田舎町の生活や人間関係を少年の視線を通して濃密に描きこんで、文芸作品に近い。 この時代を過ごした人々から見るとたまらなく懐かしく切ない物語であろう。 またこの時代を共有しない我々でも、トマス・H・クック、ジョン・ハードの小説や、「スタンド・バイ・ミー」「グリーンマイル」のような映画、ホッパーの絵画に描きこまれたアメリカの古き良き日常の生活が見事に再現され、懐かしさを感じる。 運命の糸のように絡んだ人々の人生と、兄弟の少年時代の終わりと卒業が切なく描きこまれて傑作となった。 こんな文章が書ける作者だったとは!改めて他の作品を読んでみようと思う。訳も丁寧だしおそらく原作にあるリズムが大切にしてあってとても気持ち良く読めた。 ・・・エピローグは心に沁みる。
2投稿日: 2015.08.09
powered by ブクログアメリカの家族もの、とりわけ父子ものはちょっと苦手だけれど、これはおもしろく読めた。主人公の少年、父母、姉と弟、周囲の人々、それぞれの造型にリアリティがあって、しみじみ胸に迫る物語になっていると思う。 ミステリとしての「真相」は、そういうのに鈍い私でも途中で見当がついたし、すごく派手な展開があるわけでもない。同じようなのをどこかで読んだような気もする。それでも最後までぐいぐい読まされた。あざとさのない語りがいい。欠点のない人などいないし、苦しみのない人生もないけれど、人は生きていくのだ。そんなことを思った。
2投稿日: 2015.08.04
powered by ブクログエドガー賞受賞作品なので読むことにしたが,推理小説としての出来はよくない.殺人が起こるのは物語の半ばごろになるし,犯人は想像どうり.ただ話の半分以上はキリスト教の赦しとミネソタの田舎の事なので,そこが受賞理由かもしれない.ニューブレーメンはニューウルムのこと.マンカート(Mankate)と訳してあるが,マンケイトが正しい発音です.ミネソタ物.
0投稿日: 2015.07.08
powered by ブクログ始まりが1人の少年の死からなので、『トーマの心臓』を思い出す。 少年の死は直接メインテーマではないけれど、この話の始まりとしてはすごく大事。 子供のままではいられない、というさしせまってくる話。 真実は残酷なものだったが、知りたいと思ってしまった以上、突き進まないわけにはいられないという心理は理解できる。
1投稿日: 2015.05.27
powered by ブクログ「天にましますわれらが父よ、この食べ物と、これらの友と、わたしたちの家族への恵みにたいし、感謝します。イエスの御名において、アーメン」それだけだった。それで全部だった。実にありふれた祈りで、記憶にとどめるほどの理由もないくらいだった。だが、あれから四十年、その祈りを私は一字一句おぼえている。「ありがとう、ジェイク」母が言い、わたしは母の顔つきに変化が生じているのに気付いた。父は魅入られたような、ほとんど幸せともいえそうな顔をしていた。「ありがとう、息子よ」そしてわたしは、畏敬の念に近いものを持って弟を見、心の中で思った。神よ、感謝します。
1投稿日: 2015.04.19
powered by ブクログなかなかやるなあ、この人。 "少年時代""大人になって振り返る"という点で、思わず「スタンド・バイ・ミー」を連想させられる。 そして終わりには静かな余韻が用意されている。
1投稿日: 2015.04.10
powered by ブクログ手にした段階から、自分好みの物語だとの予感がしました。アメリカ中北部ミネソタ、主人公が少年。大草原の小さな家? スタンドバイミー? ジェイムズディーンが出できそうな雰囲気、、、前半、なかなか舞台説明、人物紹介が長くてじらされますが(^^*)、待つだけ後半楽しめました。それだけ奥行きあり! 性格の違う兄弟、どちらもいいです。 庶民の生活、人生感にも見える神との距離。 心の平和なることを祈る、与えられた境遇から、人それぞれ、か、、、
1投稿日: 2015.03.23煮えたぎる怒りの果てに訪れる小さな奇跡
好きな小説やテレビドラマは決まって、登場する人物たちがたまらなくいとおしく思えてくるのだが、この作品も同じだった。 読み終わってなお、ニューブレーメンという小さな町とそこに住む住民たちが身近に感じられ、とても作者が創造した架空の町だとは思えない。 何度も家族(とりわけ兄弟がたまらなくいい)、町の人との何気ない会話のシーンで涙があふれそうになり、ページを繰る手が止まった。 全米4大ミステリ賞で最優秀長編賞を独占した本書だが、失礼な話むしろそれが余計に思えてしまうほど、ジャンルに囚われない新鮮な読後感と深い余韻をもたらしてくれる傑作だった。 とりわけ主人公たちがブラント家を訪問する最初のシーンは印象深い。 ポーチでは父親で教区の司祭を務めるネイサンと隠遁した盲目の天才ピアニスのエミールが籐椅子に座り談笑しながらブラインド・チェスをしている。 家の中では将来を嘱望された音楽家である姉のアリエルが、そのエミールの口述した回顧録をタイプしている。 庭では耳が聞こえず情緒不安定なリーゼを吃音症の弟のジェイクとその兄で主人公のフランクが手伝っている。 牧歌的で平穏な交流場面がやがて悲しみに変わるのだが、作者は単なる悲劇で終わらせず、最後には再生と許しを用意している。 「ありきたりの祈り」というタイトルの付け方も見事で、家族を救う小さな奇跡という込められた意味は明かされてなお胸に迫るものがあった。 気に入った箇所をいくつか。 「幸せとはなんだ、ネイサン? ぼくの経験では、幸せは長く困難な道のあちこちにある一瞬の間にすぎない。ずっと幸福でいられる人間などいないんだ」 「喪失は、いったん確実になれば、手につかんだ石と同じだ。重さがあり、大きさがあり、手触りがある」 「彼らはおれたちの近くにいるんだよ」 「彼らって?」 「死者だよ。違いはひと息分もない。最後の息を吐けばまた一緒になれる」
4投稿日: 2015.03.22
powered by ブクログミネソタ州の小さな町に暮らす牧師一家を襲った悲劇、渦中におかれた13歳の少年の視点で事件の顛末が語られていく。1961年という時代設定もあってか、時間がゆっくり流れるような前半の語り口が味わい深い。感情の起伏を制御し家族や友人を慈しむ牧師である父親の言動と思春期の入り口で家族に降りかかる災厄に胸を痛める兄弟の姿が琴線に触れる。翻訳ミステリを丹念に読むという久しくなかった行為を楽しめる秀作。
2投稿日: 2015.02.14
powered by ブクログアメリカには少年の冒険小説がよく似合う。トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンに始まった少年が冒険する物語は、少年向けの小説であったとして、スティーブン・キングの『スタンド・バイ・ミー』やロバート・マッキャモンの『少年時代』などなぜかホラー作家の正統派少年小説として、かつて少年であった大人たちに読まれ、評価された名作として知られている。 時を経て、リーガル・サスペンスの巨匠、兼売れっ子作家であるジョン・グリシャムですら、『ペインテッド・ハウス』というジャンル外の傑作をものにしている。そららの流れはミステリの世界にも受け継がれ、ジョー・R・ランズデールの『ボトムズ』や『ダークライン』などは少年冒険小説でありながら、一方でミステリの形を損なわないばかりかむしろミステリとして評価されている部分が注目される。 同時に少年の冒険の舞台としてしばしば取り上げられたのが、アメリカ南部である。南北戦争の影、黒人差別の文化、そしていっぱいの手つかずの自然。少年の眼という純粋な感受性のフィルターを通して、驚きと発見に満ち満ちた世界で、様々な大人たちの生と死を見つめながら、人間生活の矛盾に満ちた世界の仕組みを理解してゆくには適した土地風土であったに違いない。 だからこそ南部出身の作家はジャンル外であろうと少年時代の物語を書いてみないではいられないのかもしれない。 さて、その少年冒険小説の系譜に、また一作の金字塔が登場した。本書は、ミネソタ・リバー沿いに広がる田舎町を舞台にしたの郷愁と抒情に満ちたミステリーである。作者はコーク・オコナー ・シリーズで知られる作家だが、シリーズ外作品を書いたことで、なんとこれがアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)を受賞、さらにバリー賞・マカヴィティ賞・アンソニー賞と続けざまに受賞し四冠に輝くことになる。 なんと言ってもこの作品の魅力は、1961年に生きる12歳の少年を主人公にした作品世界がとても魅力ある登場人物たちと時代背景によって構築されていることだろう。2歳年下の純粋な正義感に溢れた吃音の弟、音楽の才能に恵まれた年頃の美しい姉、大戦の傷を引きずる教会神父の父に、その父の戦友で放浪者のガス。『大草原の小さな家』と同じミネソタを舞台に、自然いっぱいのミズーリ川流域で、川にかかる鉄道線路を渡る二人の兄弟の姿があまりにもみずみずしい。 それでいながら、これはしっかりとミステリである。死と向かい合い、やがて少しずつ成長をとげてゆく少年たちの物語でありながら、死の絶望的なほどの悲しさと、生き残った者が心に負う痛みは、抉られるようだ。それでも少年たちの生命力は泉のように途方もなく、彼らは真相に迫ってゆく。小さな名探偵たちが辿る冒険の道は、このひと夏にこめられている。 いくつもの死と別れ、真相の残酷さ、癒しと成長をこめたこの素晴らしき世界にこそ、少年たちの夏があった。一ページ一ページに作家の品格が滲み出ていて、少年のどきどきするような好奇心に連れられ読者はこの本から眼が離せなくなるだろう。ぼくにとっても『ボトムズ』以来の傑作登場が嬉しい。アメリカならではの少年時代の郷愁小説である。この種の作品は希少ゆえにとても価値があり、なおかつ誰の心にもあるノルタルジーに共鳴するせいか、いつまでも心に残る。そんな作品に餓えている読者にお勧めの一冊である。
4投稿日: 2015.01.22
powered by ブクログ最初(2ページまでに)に提示されるキーワードが、1960年代、少年、夏、線路、そして死体。 作者はあえてこのキーワードを並べたんだと思ってますが。読み手はイメージを掴みやすいですから。 しかし彼の物語より遥かにミステリ色が濃い物語。 米国人はノスタルジックな物語が好きなんでしょうかね。 年初にいきなり佳作との出会いです。
1投稿日: 2015.01.07
powered by ブクログあらすじに惹かれて購入。 『少年時代の過去を回想する』という定番の構成。ナイーヴな子供の揺れ動く感情と謎が上手く絡みあい、飽きさせない。当時の偏見を上手くミスリードに繋げているのは著者の問題意識だろうが、あまり鼻につくような印象はなかった。 全体的には良く出来た切ない青春ミステリとして纏まっていると思う。
1投稿日: 2014.12.17
