
総合評価
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井沢元彦が「逆説」なら、保阪正康は「仮説」で勝負
単なるIF物であれば、"有名な事件がもし起らなかったら"、ということを予想するだけだろうが、本書は長年にわたって昭和史をライフワークにしている著者だけに、「もし」の置きどころが絶妙だ。 例えば、張作霖爆殺前に日本人顧問が途中下車せず爆殺されていたらとか、駐華ドイツ大使による日中講和が実現していたらとか、宇垣一成が変心せずクーデターが実現していたら、などなど。 二・二六事件や日本軍によるタイ領の強行通過などは、史実とは異なる展開や結末が十分にありえたんだとわかる。 TV向きな内容でもある。 雑誌連載をまとめたもののため、写真が豊富なのはありがたいが、もう少し読みたいのにというのも少なくなかった。 それと、永田鉄山刺殺とか東条内閣成立後の「もし」は、私には非現実的であまり有益なIFとは思えなかった。 一少佐がルーズベルトからの親書を独断でおさえたり、酒気を帯びたまま上奏したり、大正から昭和に変わった途端に立て続けに重大な軍事行動を起こしたりと、まだ30歳を超えたばかりの昭和天皇を陸軍がどう見ていたのかよくわかるエピソードの数々には、考えさせられる。
2投稿日: 2014.11.27
powered by ブクログ著者は「ノンフィクション作家・評論家」としているが、著名な「歴史家」だと思う。 その多くの昭和期の著作は膨大な考察を積み上げてきていると高く評価していたが、本書は全くいただけないと思った。 そもそも歴史に対する「仮説」という構想は、「もしも・・・で・・・だったら」というトンデモ本が多数でているが、みな全く評価できないひどいものだ。 歴史的事実は、多くの人々の動きの集大成として構成される。現在から過去を見るときはごく一部の人々の動きしか把握できなくとも、現実には氷山が水面に見えているのはごく一部であるのと同じように、歴史的事実には多くの目に見えてこない膨大な人々の動きがあることは言うまでもない。 その歴史的事実を、思いつきの「もし・・・だったら」と単純化する愚にこの著者が手を染めるとは信じられない。 本書の内容も、それぞれのアイテムごとに、ディティールはさすがに詳しいし、「陸軍」や当時の「政治」への批判的視点からの構成にはなっているために、当時の政治情勢や属人的評価などを立体的に確認できる点はちょっと興味を持たないでもないが、やはり歴史は、このように扱うべきではないと思う。 本書は上・下二巻であるが、下巻を読む気を失ってしまった。
0投稿日: 2013.01.23
