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グラン・ヴァカンス 廃園の天使I
グラン・ヴァカンス 廃園の天使I
飛浩隆/早川書房
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総合評価

75件)
4.3
32
21
10
1
1
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    このレビューはネタバレを含みます。

    穏やかで優しい海辺の田舎町の何気ない一日の風景、心安らぐ平凡な日常のシーンから物語が始まる。 ただ、最初からシミュレーション内の世界であり登場人物達がAIであることを隠そうとしないためであろうか、のどかだがどこか不思議な雰囲気の導入だとも感じた。 『1000年』という時間が比喩ではなく何度も文中に現れる。 このAIたちに対しては、世界や時間・過去に対する認識や内面が揺れ動く様で人間のようだと感じる一方で、1000年間を(正気のまま)少年であり続けられることやそれだけの長時間を共に過ごしたヒトを失った際の反応など、狂ってしまわない点に「やはり人間とは違うモノだ」と感じる、相反する感想が入れ子になっていた。人間としか思えないような優しく”人間味”のあるキャラクター達に感情移入や思い入れが生じるが、それが間違っていると心の隅で引っかかっているような妙な気分で読み進めていた。 序盤は「正統なSF作品だ」という感想だったが、中盤では巧みな恐怖演出とAI達の恐れが文章から良く感じられ「これはパニックホラーだ!」という印象を抱いた。終盤の世界観が完全に崩壊していく様や通常の動きを越えていくキャラクター達の様子はファンタジーのようでもある。 これは描写が克明で写実的であるためだろうか。 最終盤のジュールがジュリーに追いつくあたりのシーンが特に印象に残っているが、綺麗なシーンは音(無音・静寂)まで感じられそうだと思った。 逆に中盤からの残虐なシーンはAI達の最期があまりにグロい。緻密で鮮やかな描写も相まって著者の暗い性癖を反映しているのではないかと思えるほどだった。思い入れのあったAI達を次々に虐殺された怒り(?)から、「コレを人間で描写することに抵抗があったから作品の世界観を仮想空間とし、キャラクターをヒトのアバターではないAIにしたのではないか」と勘繰ってしまった。 最終章は、今までのエピソードが伏線のように別の側面を持っていたり、グラスアイやドリフトグラスの謎が明かされていく。 外の世界や大途絶の事、天使についてのようなAI達の世界の“外”のことはわからないが、それでも、それはそれとしてスッキリとした終わりかただと感じた。

    0
    投稿日: 2025.03.19
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    会員制仮想リゾート数値海岸の一区画、夏の区会 南欧の不便な港町、そこはゲストが1000年もの間訪れなかった 永遠に続く、平穏な日々をAIたちは送っていたのだが…ある日謎の存在「蜘蛛」の大群が全てを消し始める…というお話 まず何より文章が美しい 主人公、ジュールが夏の朝に海へ向かってかけて行く描写は今や忘れてしまっていた夏休みの日の朝そのもの あの爽やかな空気感、今日は何をしようかという高揚感を素晴らしく表しています 「蜘蛛」との戦闘描写も迫力満点 AI達の奮戦ぶり、そして死に様は残酷なまでに美しい エロ描写、グロ描写は詳細でどこか美しくて、儚げで、残酷で あとがきに「清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ」とありましたがまさにその通りでした この本を読んだ時に図書館の奥で眠っていた埃のかかった分厚い古いハードカバーの洋書のような印象を受けました 人の目に触れなくなってしまった物語の登場人物はどうなってしまうのだろう?という問いもこの話はもたらしてくれます 読む前ならば、彼らの前日譚が繰り返されているのか 途中で投げ出したのならば、その瞬間が永遠に続くのか 読み終わっても、物語は続いていくのか 悲劇は僕が読んでしまったから起こったのではないか? そう思いながら作品に触れました グラン•ヴァカンス、廃園の天使シリーズは多くの謎を残して終わりました 続編が刊行済みが一冊、連載中が一作あるそうなので追いかけてみようと思います!

    0
    投稿日: 2024.05.21
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    理系ではない頭では設定に理解がついていかない部分はあるけれど、それにしても面白かった。 登場人物はAIであり、グロテスクで救いのない場面が続くけれど、無機質ではない。むしろ、情や執着や羞恥心のような人間味と、生きていることの切なさのようなものがある。もっと雑にいえば、なんだかよくわからないけれど、切ない。 なんだかよくわからないというのは、設定やストーリーではなく、読み終わった後の感情がうまく形容できないという意味である。その、「なんだかよくわからない」を受け入れられる人にはこの本をお勧めしたい。

    0
    投稿日: 2024.02.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読み終わりたくなかった…読み終わってしまった…。 「零號琴」が面白かったのでこちらも、と手を伸ばしたのだけれど凄まじかった。2章のアンヌの登場あたりから面白さがどんどん加速していく。徹底した、容赦のない残酷さ。無慈悲さ。全編とおして、それこそ「天使」みたいな無機質さと美しさを感じる文章。 美しい永遠の夏の区界。表向きのコンセプトは「古めかしく不便な街で過ごす夏のバカンス」だけど、それは「踏みにじられる為のイノセンス、無垢」という意味合いも内包していて、その成り立ちからしてもう、この区界そのものが残忍さと美しさの集積で出来ている。  「零號琴」のときもそうだったけど、本作も一見美しく豊かな世界観の裏には幾重もの秘密と時間のレイヤーが埋まっていて、読み進めることはそれらを暴く作業になる。つらいんだけど、物語が進むのが面白くてやめられない。個人的にアンヌが好きなのでアンヌのところが辛かったな。ジョゼも可哀想だった。貧しい農夫と刺繍妻の話は本当に怖かったし。 とにかく続きが楽しみ。 ⚫︎あらすじ 仮想リゾート〈数値海岸〉の一区画〈夏の区界〉。南欧の港町を模したそこでは、ゲストである人間の訪問が途絶えてから1000年、取り残されたAIたちが永遠に続く夏を過ごしていた。だが、それは突如として終焉のときを迎える。謎の存在〈蜘蛛〉の大群が、街のすべてを無化しはじめたのだ。わずかに生き残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦が幕を開ける――仮想と現実の闘争を描く〈廃園の天使〉シリーズ第1作。 (ハヤカワオンラインより引用)

    0
    投稿日: 2024.02.08
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    これほどまでに文章だけで人を惹きつけることができるのか、と思った。どこまでも残酷で、救いがない。「作られた」存在であるAI。だがそこに確かに感情は存在している、心はある。例えそれすらも最初から規定されていたものだとしても。読めば読むほど苦しくなるのに読むのをやめられない。かけ離れているように思える残酷さと美しさが共存していた。そのアンバランスで脆く壊れそうな、高度の低い宝石のような美しさが好きだった。

    0
    投稿日: 2023.11.03
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    私は何を読んだんだろう。 何度も読むのやめようかと思いながら読み進めて、半分を過ぎてからは一気に駆け抜けた。 めちゃくちゃにグロくて、気持ち悪いけど、けどなんだろう。 よくわからない。

    0
    投稿日: 2023.07.21
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    全体の辻褄の合い方が心地よかった。 グロさ、官能、残酷さ、優しさ、諸々の要素が絡み合った、AIながら人間味あふれる描写が魅力的だった。 描写が丁寧なためか、感情移入して辛い場面が多かった。酷く痛々しく、醜い。 ありふれた設定かもしれない。それでも引き込まれる強さがあった。 ど好みではない。 続きは読みたいと思う。

    0
    投稿日: 2023.06.07
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    人の訪れることのなくなったリゾート地での一夜の攻防戦。設定はむずかしいものではなく読みやすい、けど耽美でありエログロでありすごくそそられる世界でした。

    0
    投稿日: 2023.01.04
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    情景描写を想像するのが難しく、こういうことかな?と随時思いながら読み進めていった。だが、ストーリーを淡々と読み進めていっただけで、私の感受性が乏しいだけかもしれないが、残酷な場面であっても事実として受け止めただけで、感情が生まれることはなかった。 ラギッド・ガールは今作に比べ好評なので、そっちに期待する。

    0
    投稿日: 2022.03.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    将来こういったバーチャル世界が数多開発され、その中で旧式のものは整備が追いつかず、似たような状態が起こる可能性があると感じました。

    0
    投稿日: 2021.10.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    全く前情報無しに読み始め、序章はちょっと変わった良くある能力バトルかと思いきや。 結構エグい描写が満載でゾクゾクしたが、悪趣味と思う人もいるかも。しかし話はなかなか凝っていてエヴァを想起させる様な描写もありかなり楽しめた。次回作も読んでみます。

    0
    投稿日: 2021.07.13
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    清新で残酷で美しく、か。まさにそのとおり。強いイメージを残す。 何十年か越しで続編も書かれているそうだが、これはこれで完結しているよな、と思う。 こんなに読みやすい小説でも一気に読めなくなっている。。。

    0
    投稿日: 2021.04.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    なんて残酷な、なんて美しい。 絵葉書の中の風景のような《夏の区界》の美しさと、それが崩壊する恐ろしさと。 そして崩壊しながら段々と見えてくる《夏の区界》の正体。 目をそむけたくなるくらいグロテスクなのに、凝視したくなるほど美しい。 挿絵もないし映像化もされていないのに、何故だか映像が想起される小説でした。

    0
    投稿日: 2020.11.01
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    8年ぶりに『グラン・ヴァカンス』読んだ。AIだけが取り残された仮想リゾートの設定、今読んでもそんなに古臭い感じがしないのはすごいなー。続編はいつか読めるんだろうか…

    1
    投稿日: 2019.12.31
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    このレビューはネタバレを含みます。

    AIたちが終わりなき夏を過ごす仮想空間「数値海岸<コスタ・デル・ヌメロ>」。ゲストとして訪れる人間をもてなすために構築されたこの世界には、もう1000年もゲストが訪れたことはなく、AIたちがルーチンのように夏の日々を過ごしている。 そんな平穏にして停滞した世界に、ある日突然災厄が訪れる。世界を無効化するために現れた<蜘蛛>、それを操る謎の存在。AIではあるものの確個たる自我を持つ彼らは、自己の存在を死守するために蜘蛛との戦いに臨む。終わりなき夏のとある一日、絶望的な攻防戦が幕を開ける・・・ 飛浩隆作品は、これまで短編をいくつか読んでいますが、鴨的には正直なところ「何が描かれているのか/何を伝えたいのかよく判らない」という印象で、ハードルが高いなと思っておりました。が、この作品は非常にストレートに世界観に入っていくことができ、世界観の解像度が半端なかったです。長編向きの作風なんですかね。 作品の冒頭では、AIたちが「暮らす」南仏の片田舎の港町風の素朴な生活が、淡々と描かれていきます。この過程において、AIが極めて人間的な「官能」の能力を持っていることに、鴨はまず違和感を覚えました(ここでいう「官能」は、いわゆる性的なそれだけではなく、五感を総合する広い概念を指します)。が、後半において、AIたちにそこまでの能力が付与されている理由が明らかにされます。 「数値海岸」は、単なる仮想リゾートではなく、性的嗜虐趣味を持ったゲストの快楽を満たすために、AIたちが従順に苦痛を受け入れることを目的として構築された世界である、という真相。反吐が出そうなほどおぞましい描写が、延々と続きます。でも、AIたちは「そのために作られている」存在であり、粛々と受け入れるしかありません。どこにも逃げ場のない、絶望的な修羅の世界。そんな残酷な世界でも、彼らはそれを守らずにはいられない。 語弊を恐れずに申し上げると、鴨は「村上春樹っぽいな」と思いました。 極めて凄惨で残酷なことが描かれているのに、極めて静謐で美しい筆致。ロジカルに突き詰めるなら、突っ込みどころは満載です。でも、そんな突っ込みどころを圧倒的な力でねじ伏せるだけの美学が、この作品には感じ取れます。そんなところが、ちょっと村上春樹っぽいな、と。 さっそくシリーズ2作目「ラギッド・ガール」を購入しました。この世界観がどのように展開するのか、楽しみにしています。

    1
    投稿日: 2019.05.09
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    90年代グロテスクの孫という印象の仕事。AI周りの描写は2002年という時期を考え合わせると非常によくできており、2019年の今読んでもまるで古ぼけていない。語彙は実に美麗だ。間違いなく何度も読み返し、あちこちのつくりを参考にするだろう。 とはいえこの物語には瑕疵とまでは言えないが、個人的に看過しがたい点がある。 人間の理不尽な残忍さを物語の基盤に埋め込んだだけならいかにもありふれていて薄っぺらいが、被虐者が残忍に「狎れ」た上で己の宿願を果たすため一層凄絶な手段を選択する描写を描くならば凄味は増す。物語後半に、檻に入れられた女のエピソードがあるが、そのことだ。しかし彼女の選択は辻褄が合わない。男から「それ」を得られるなら、硬い道具だってもっと簡単に得られるからだ。このエピソードが凄味を発するには、女がある程度は正気でなくてはならない。道具を持ってこさせる程度の思案もできないほど狂気に落ちているなら、彼女はどんなおかしなことでも選択できるわけだから、何をしたところでそれは彼女の選択ではなく、単純に著者の都合である。 陰惨の極みを描きたい著者の都合が先走って、物語の中でも特に慎重を期さねばならなかった場面でこの手の疑問が湧いてしまうのは大いに興が殺がれる。敢えて好意的に受け止めなければ、この重要な場面はすんなりと流れていかない。 この作品に限らず、90年代にあちこちで見かけたこの手の過剰なグロテスクはしばしば、このようにその前段でだらしない漏らしをしでかす。グロテスクを書きたいという都合が先にあり、その次に物語の体裁を整えるという順序を明かしてしまう。過剰なグロテスクを美しく整えるにはそれに見合うだけ精密な設計が必要だが、それが大抵足らない。おおよそは出来ていても、細部が綻んでいる。書き手はそれを気にも留めない。 しかしそのような、ファサードは大伽藍然として実際には細部の綻んでいる作品というのが、毒と荼味の塩梅がちょうどよくなるものなのかもしれない。

    0
    投稿日: 2019.04.05
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    文体もそうだけど出てくる単語が小難しくてちょっと読みづらかった。でもそういうのも加味して面白かった〜〜。なんか久しぶりにSF読んだな〜といった気分。 驚くほど緻密に計算された小説で最初の方に出てきたあのセリフあのシーン全部に意味があって繋がってるんだと気づいた時にちょっとした恐怖を味わってしまった。読み直したらまた面白そう。

    0
    投稿日: 2019.02.02
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    37:仮想世界に作られたリゾート地に住まうAIたちが主人公。今後の展開の壮大さを思ってうきうきします。AIがAIであることを自覚していて、その背後には記憶や歴史ともいえる膨大なプログラムが横たわっていて。 こういうバックグラウンドだからこそ、「ハック」という手法によって「制限つきの何でもあり」が可能になっています。サイエンス・ファンタジー寄りのSF、続きがとても楽しみ。予約、早く回ってこないかな。 '12.7.7 購入タグを追加。

    0
    投稿日: 2018.10.08
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    久々に「ヤバい」小説。田舎の鄙びたリゾートをおそう謎の物体。天才少年の活躍により、どうやら別の世界からやってきた人工知能に襲われていることがわかり、生き残った住民は不思議な力を発揮する「石」を駆使して謎の物体と戦うが、、、というよくある設定で映画マトリックスを想像させるが、大きく異なるのは、襲われている方も人工知能の世界の住人であること。高度に発達したAIにより、各自(各AI?)が独自の個性と記憶と判断能力を持ち、まるで自然人のように振る舞う。AI対AIなのか、そのAIを操っている人間がAIを襲わせているのか、全くわからないままストーリーは進む。読んでいて不思議なのは、まるで自分が傍観者としてすぐ近くでこの大事件を観察している気がすること。アバターやIDなど、ネットの世界で自分を代理させている”人格”があることが、このリアルさを生んでいるのだと思う。

    0
    投稿日: 2018.04.03
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     ヴァーチャルの世界に存在する仮想リゾート「夏の区域」が滅びゆく一日を描いた作品。  ヴァーチャル世界なので、登場してくるのは人間ではなくAI(人口知性)である。  仮想と現実の闘争、とあるが、現実側の現実感があまりないので、どこまでも仮想の世界内で閉塞されているように思う。  はてさて、これがSFなのだろうか。  ここ数冊、SFと呼ばれているジャンルの本を読んでいるが、どれもこれも僕自身のSFイメージとは合致しない作品ばかり。  どうも、僕のSFイメージが誤っているようだ。  まぁいいけど……。  仮想と現実の闘争の中で、AIたちは様々な殺されかたをしていく。  まぁ、もともと生のないAIたちだから、「殺されかた」という言い方は正しくないのかもしれないが。  いずれにしてもその殺されかたのイメージが残酷であり、美しくもあり、想像力豊かである。  映画で例えれば、「エルム街の悪夢」的な映像が浮かぶ殺されかたなのだ。  思うに「エルム街の悪夢」は現実ではない夢の中の世界のことであり、本書の場合も現実ではない仮想世界のことなので、乱暴な言い方をしてしまえば「何でもアリ」なのだ。  この「何でもアリ」な姿勢が読んでいて潔さすら感じてしまうくらいに面白い。  ただ、そうすると「やはりこれSFなのかなぁ」と再び疑問に思ってしまうのも事実なのだが。  ちょっと長すぎるなぁ、というのが正直な感想。  途中途中でなかなか物語が進まないじれったさを感じてしまった。  でもまぁ、面白かったんだけどね。

    0
    投稿日: 2018.01.04
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    読了。バーチャル空間におけるAIたちが主人公で、現実世界で何が起こっているのかわからず働きかけもなくなってから千年が経過し…という話で、残虐に殺されるのはAIたちなんだけど、グロテスクな描写はおなかいっぱい。そういえば、ちょうど1年前に読んだ同じ作者の「象られた力」も、同じ感想を持った気がする。設定の発想がすばらしいが、気分が悪くなるような描写が多い。

    0
    投稿日: 2017.11.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    千年間の夏を繰り返し、ゲストをもてなす永遠の平穏を秘めているかのように見えたリゾート地。その突然の崩壊と悲劇の幕開け。露わにされていく、プログラムされたAIたちが秘めてきた叶わぬ想い。 冒頭ジュールとジュリーのボーイミーツガール的な物語を期待したところ、どんどん不穏な方向に運び始め…グロテスクでエロティックでありながらどこか艶かしく官能的。 何が起こっているのやら、と目を離せないまま覗き見るようにじっと読み進めてしまう。

    0
    投稿日: 2017.06.04
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    知らない本を買う時は、ほとんど表紙裏の粗筋しか読まない。著者の経歴や刊行年も見ない。だからSFなのだな、ということしか分からない。 中盤まで読んで、こんなはずじゃなかった、と考え始めた。タイトルから、読み始めた時から受けた印象が大きく覆されてきたからだ。だってヴァカンスだ。海岸沿いのリゾートの長い夏休みなのだ。なのに、痛苦に満ちている。 こんなはずじゃなかった。 でもその考えは、私が読書に期待する喜びそのものである。新しい本を読む時、常に望んでいるのは、これまで読んだことがないものを読みたいということだから。 著者のあとがきには「ただ、清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。飛にとってSFとはそのような文芸だからである。」とある。まさしく本書はそのようになっている。 2002年に刊行されて、2017年現在長編の続編は未刊行である。ああ〜続きが読みたい!

    0
    投稿日: 2017.01.16
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    「作られたプログラムである」という自覚と、「個人」としての自我。両方を抱えるAIたちの苦悩がフィクションながら真に迫っていて読みごたえがあった。記憶として持っている過去が「起こったことのない歴史」であることを分かっていながらなお、記憶として刻まれていることを否定できない、その矛盾。ややこしいが反面とても興味深い。 表現がけっこうグロテスクでヘビーなので読んでいてつらいところもあった。

    0
    投稿日: 2015.05.31
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    飛浩隆の長篇SF。自我を持つAI達が取り残された残酷の楽園の終末を描く。 美しい描写とうまくフォーカスされた人物の心理表現が際立つ。やや描写の詳細さの度合いがブレる頻度が高く、長期間にわたる執筆期間の影響があるのかな、と感じた。ヴァーチャルな世界を読者に視覚化させるために必要な過程として詳細な描写がなされる部分もあり、読中感は常に官能的とまではいかない。 SFといいつつ、SF的要素は飽くまでガジェットで、その中で展開される風変わりなエピソードが読者の欲望をうまく捉えているように感じる。人によっては、自分の中に眠る破滅願望なり、加虐・被虐願望が映し出されるように感じるかもしれない。 ガジェットや人間関係の設定に関しては2巻でメタ的な設定が付け加えられるが、1巻を読んでいる最中は「交感性のダイナミクスを埋め込んだ本を作り得るならばこんな感じになるのかな」と思っていたので作者の意図の一端は掴めていたのかなと思う。

    0
    投稿日: 2015.04.24
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    とても人を選びそうな本。 美しい描写で残酷な展開が続く。 全体の流れとしては突飛ではないけれど、容赦ない展開やぞくりとする一文を期待してページをめくっている自分に気付いて怖くなる(そしてその期待は裏切られない) この小説を面白かったと感じる自分は、夏の区界を訪れるゲストとなんら変わりない嗜好を持っているのかもしれない。

    0
    投稿日: 2015.04.23
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    最初20ページ読んだあと、別の本読むために放置していたのだが、20ページ目までの感想は「メシがうまそう」 この後少しでも読み進めれば、メシがうまそうなどと呑気なことは言ってられない展開なのだが、この描写力で残酷ながら美しい人間臭くもAIの域を出られないAIの最期が描写されていく。 謎が多く散りばめられた第一巻だったので、今後に期待。

    0
    投稿日: 2015.01.04
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    ーーー仮想リゾート〈数値海岸〉の一区画〈夏の区界〉。南欧の港町を模したそこでは、ゲストである人間の訪問が途絶えてから1,000年、取り残されたAIたちが永遠に続く夏を過ごしていた。だがそれは突如として終焉のときを迎える。 仮想と現実の闘争を描く〈廃園の天使〉シリーズ第1作 初めて読む作家、飛浩隆の長篇SF 特徴はなんといってもその文章だと思う。 ときには韻文を連ねながら、詩的に美しい文章と、SFとしての「理屈づけ」が絶妙にブレンドされている。 続編への期待を余韻として残しながらも、すごく綺麗な終わり方だった。 シリーズ2作目の既刊『ラギッド•ガール』も早く読みたい。 「決めろ。『しかたがない』ことなど、なにひとつない。選べばいい。選びとればいい。だれもがそうしているんだ。ひとりの例外もなく、いつも、ただ自分ひとりで、決めている。分岐を選んでいる。他の可能性を切り捨てている。泣きべそをかきながらな」

    0
    投稿日: 2014.10.14
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    図書館で。なんとなく借りたんですが私には合わなかったな~ SFって言うかファンタジーですかね。 最初の方は箱庭の崩壊にどう立ち向かうかみたいで面白かったのですが段々と登場人物が多くなり誰が誰だか覚えきれなくなりました…。大体AIの定義がよくわからない。私のイメージだとゲストのレクリエーションの為に作られたプログラムならだれも使用していない間はシャットアウトされているだけって気がしたんですが。 ある意味死というか断絶というか。 作中登場人物も言ってたけど彼らが動くための電力を提供してるのはなぜなんだろ。そして彼らの感情やイメージがあまりに人間臭い。たとえばですがトイレのスリッパはトイレのスリッパである自身を恥じるのだろうか?ほかのスリッパやサンダルに比べて。人に使用されることを忌む、与えられた役割を厭うAI。それって存在意義がなんかおかしくないかなあ?AIは道具ではない、一つの意志なのだというならそれはなぜ、という説明が無いためただ仮想現実に生きる人間、というような位置をされても違和感が。AIの思考回路を人間と同じにとらえるのはそれはそれでおこがましい気がするんですよね。もっとなんか人とは違う思考回路をもつんじゃないかと期待しているんですが。 誰が何のために箱庭を存続させ、なぜ崩壊させようとしているのか。それがまるで分らないのでただ外から眺めているだけの読者はその世界の法則性もわからず皆目解決の検討もつかず途方に暮れる、という感じで取りあえず私には合いませんでした。 ソードアートオンラインのフラクトライトの仮想現実に生きる人間の説明の方が解りやすかったな~

    0
    投稿日: 2014.06.04
  • キーワードは「残酷」

    アミューズメントとしての仮想空間や、そこで来訪する客をもてなすNPC(ここでいうAI)たち……というモチーフは、確かにSF世界観としていまや新鮮味が薄いかもしれません。 でも、声を大にして言える。 そんなことに拘るのは馬鹿馬鹿しいほど、圧倒的な魅力の溢れる作品だと。 正体不明の〈蜘蛛〉は強靭で、〈夏の区界〉AIたちはみるみるなぎ倒されていきます。 それも酷く残虐な方法で。 そして物語が進むにつれ、〈夏の区界〉そのものがゲストたちの厭らしい欲望をぶつけられてきた歪な世界だと判明します。 思わずぎょっとするようなグロテスクな展開も多いです。 でも読後感はとても爽やか。 あとがきに「ただ、清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。」とある通り、文章も端正でとても美しい。 だからなのか、SFというジャンルでも、世界観の把握はスムーズにできます。 仮に「SFって何だか苦手」という理由だけでこのタイトルを敬遠しているとしたら、それはとてももったいない。 この一冊だけでは謎はすべて解けません。 シリーズ続編である「空の園丁(仮)」が心底待ち遠しいです。

    3
    投稿日: 2014.04.05
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    構想から10年の歳月をかけて書かれたというSF大作。そして、そこでは「大途絶」から1千年後の「夏の区界」のヴァーチャル世界が実に緻密な筆致をもって描かれる。小説世界の基本構造は極めてシンプルである。ジュールと、ジュリー、ジョゼとアンヌがそれぞれの極をなしつつ、そのムーヴメントが作品の時間を形作っていく。この作品に内包されるもの、そしてここで描かれるものは、「時間」そのものの形象だ。そして、そのすべてを見通すことになる老ジュールこそは、まさにゲルマン神話の「さすらい人=ヴォータン」にほかならないのである。

    1
    投稿日: 2014.04.05
  • 美しくも残酷でエロテックな物語

    とにかく残酷な話である。話がはじまってから物語の舞台となる「鉱泉ホテル」に主人公たちが集う前半までに何千、何万という人々が死んでしまう。ここまでに主要メンバの知合いや家族が実にあっさりと殺される。で、ここからが逆に主要メンバが時間をかけてじわり、じわりとなぶり殺されるのだがスプラッタかというとそんな事はなく、むしろ鮮やかな日本刀で断ち切るような殺され方をする、そして鮮血の赤。苦痛と快楽。。。。最初は作者が何故ここまで執拗にこの大虐殺(ジェノサイド)を描いていくのかがわからなかったのですが、物語の進むにつれておぼろげに見えてくる、がそれも「夏の区界」の消滅とともに物語りも終焉を迎えるので結局のところはっきりとはわからず終い、またたくさんの謎が提示されたまま終わってしまう。 その点では、この物語は完結していません。続きは作者が他の区画を舞台にした物語や「夏の区界」の前日譚を用意して「廃園の天使」シリーズを書き綴っていくらしいのでそれを待つことになります。 ただ、非常に無駄のない文章で美しくも残酷でエロテックなこの物語、一読の価値あり。

    6
    投稿日: 2013.11.15
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    「最期の言葉は―――そうだ、あの蜻蛉にかけてやったのと同じ科白」  美しく清新で、残酷な物語。  存在意義を失われて1000年。設計されたものと、使用されたことによって蓄積された負の記憶。この数値海岸のAIたちが、ゲスト(人間)によって付けられた爪痕が、来訪者によって抉りだされる。  その時に生じた、苦しみと痛みと何よりも悲しみは、ひとつとしてみていて気分のいいものではないはずなのに、目が離せない。それは、人間を限りなく模倣したAIたちが、観客でしかない自分では感じることができない苦痛と悲劇に、哲学的ともいえる絶望に見舞われているから。それを憐れむことや先を求める残酷さすら、読者たる自分には自由に選択できるのに比べて、AIたちはどこまでも不自由に、分かりきった決められたロールを繰り返すしかない。その圧倒的な不平等さが、今の日本にはどこにもない、生まれの「身分」による優越感を味わせてくれるのだろうか。  上の言葉は、自ら「罠のネット」と同化することを選んだジェリーが、最後に見せることができた優しさ。設計されたロールではなくて、彼女自身が生きて獲得したもの。長すぎた夏休みを終える、一言です。この物語を締めくくるのにふさわしい、一文でした。

    0
    投稿日: 2013.10.13
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    序盤のファンタジー風冒険譚から一転、中盤以降は「ここから先、酷いことが起きるよ」って看板が立ってる道をトロッコで下っていく感じ。言葉の選び方や描写の美しさが、酷さをより際立たせている。SF的な世界観、主要キャラクターたちのそれぞれが持つ論理も精緻に練られていて、善悪の二元論では括れない多層的な整合性を成立させながら描かれる神話的絶望と僅かな希望が心を圧し潰し、絡め取ろうとする。天使とは何か、ランゴーニの作戦とは、ジュールの旅路は、AIたちの運命は。続きはまだですか。早く読ませてください、飛さん!!

    1
    投稿日: 2013.09.03
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    著者が水見稜の『マインド・イーター』の解説を記していたことから興味を持った次第。 読了後はさながら這う這う(ほうほう)の体といったところで、これまでに読んだSF小説の中で最も衝撃を受けた一冊。 AI(人工知能)が暮らす仮想空間が混迷の一途を辿る、という凄惨なストーリーでありながら、描かれ方がやけに甘美。随所に「人が物語を作ること・読むこと」への寓意やメタファー(隠喩)が織り込まれており、小説読みの一人として胸を貫かれる思いだった。 展開の悲惨さゆえ星は四つに留めたが、ただのSF・娯楽では終わらない、本物の文学。 文章自体は至って平易だが、この小説の真意をどれほど汲み取れたのかは不明。 ※のちに星五つに変更

    2
    投稿日: 2013.05.05
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    名作とのレビューも納得。美しい文章と自然に練り込まれたプロット。ここ一年のベストです。 どうしても続編を読みたいとまでは思いませんでしたが。 解説にネタバレ(プロット)があります。

    0
    投稿日: 2013.04.13
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    『廃園の天使』シリーズの第一作。 私は知らなかったが、著者は知る人ぞ知るSF作家だったらしい。Jコレクションから出たこの『グラン・ヴァカンス』単行本が復帰作だったとか。 非常に映像的な文章を書く人で、情景がスクリーンに映し出されているような感覚になる。

    0
    投稿日: 2013.03.04
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    文章力に飲み込まれそうだ。 私自身が文章を味わうというよりも、書かれた言葉が私の内を蹂躙し、駆け抜けていくような気さえする。 苦痛と悦楽の坩堝。 それは正反対のようで、実はごく近いものなのかもしれない。 濃密な読書体験だった。 しかしこれは人を選ぶな。

    1
    投稿日: 2013.01.23
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    課題本読了。 柔らかいのばっか読んでたから、久々に脳味噌に負担かかった。 作中のキャラクターを描き方が、重いというか、ぐろぐろしている。 海外SF的なイメージを持った。 それぞれの用語について解説をせずに、とりあえず作中世界に突っ込ませるところとか。 後半の防衛陣営が崩れていくシーンはシチュエーションだけ見れば俺好みなのに、共感できなかった。 人間が内側から崩壊するけれども、それが伏線として描写されていないわけでもないし。 相手側、敵側の正体が良く分からないからか。 それとも絶望を感じる間が少ないからか。 個人的評価高くないから続刊は読まないな。

    1
    投稿日: 2012.12.30
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    ネットで買えばいいものを、なんとなく本屋の本棚から自分の好みに合う本と出会えた時のあのワクワク感がたまらなくて、つい栄のジュンク堂まで出かけましたが、買ってよかった。

    0
    投稿日: 2012.12.10
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    すごい。 緻密に作られた世界を美しく残酷に崩壊させる、またその手法も表現も 計算されつくした隙の無い文章・文法を使用。完璧としか… 一見ありがちな設定なのかと油断させておきながら、 気が付くとAIたちの深淵を覗く「罠」にこちらが嵌められていて、 その一体感みたいなものが更に作品にのめり込ませる状態。 息苦しい中に最期を求めてページを捲る手が止まりませんでした! 「象られた力」を読んで、作者の美しい文章に魅せられましたが、 長編一冊まるっと堪能できました。素晴らしい! 続きはいつ出るのかなあ…

    0
    投稿日: 2012.12.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    永遠の夏休みを演出する仮想空間。 あるときを境にしてゲストがふつりと途絶えたその場所で、AIたちは 千年以上もの間、与えられた“役割”に縛りつけられていた。 甘やかで、切なくも美しい日常。 いつまでも続くかと思えたその世界は、突如として破壊と苦痛の嵐に呑み込まれる。 とある小さな仮想空間が蹂躙されていく様子と、それに抵抗するAI達の姿を描いたSF作品。 あくまでも甘く官能的な描写で彩られる絶望の鮮やかさには、読んでいて思わず眩暈を覚えるほど。 目の前に映像として立ちあがるような細やかな情景。 鋭敏さを増していく感覚のうねり。 いなくなってもなおAIの行動原理を支配する人間の病性…。 しだいに明らかになる世界の姿は、残酷なまでに歪んだ形で、完成されている。 加速する狂気のなかで掴みだされたのは、イノセントな愛情。 それはしかし、鈍い痛みだけを最後に残す。 *** 「この記憶が、俺を、拘束している。思い出の思い出が俺を呪縛する。」 「きみの不幸はすべてきみを土壌に咲いている。」 「あの人は劣等感とその裏返しのはったりでできている。その落差の中に純粋な優しさを保持している人だ。それはとてももろい優しさ。」 「ここのAIは、みな同じ。まだ観たことのないものが、好き。好きなんだ。」 「もともとは区界の制作者がデザインした感情だったにしても、それでもぼくらのかけがえのない真正な感情なのだ。」 *** 徹底してAIの視点を通すことによって、人間の身勝手な欲望のおぞましさを彫り出している。 一方で、硝視体という不思議な物質から感じられる、あたたかな体温のようなものの“意味”を知ったときには、少しだけ救われたような気がする。 少年の成長譚としてもSFとしても読み応えのあった作品。

    1
    投稿日: 2012.10.30
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    起きる出来事、それがある種ヴァーチャルな世界であっても何千年も変わらないままの日常でもそれが終わる、変わりゆく時にその当事者達は何を抗うのか従うのか。物語の世界の人々、その物語の外側にいる人との干渉、交渉、軋轢、様々な想いからあるべきものはある日突然終わりに差しかかる。 SF的な想像力の散乱銃が冷静に世界をとらえてあるべきものの本当の意味を、むきだしにしてしまう。 読み終わった後の読後感がすごい。物語と内部と外部が読んでる間に自分を勝手に何度も通過する。

    0
    投稿日: 2012.09.25
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    試しに買ってパラパラ読んでいたがこれはまいった。 南欧を設定された人工空間に住むAIたちは、接待するはずの人間たちが来なくなって千年になり、永遠の夏を過ごしていた。この人工楽園が悪夢に変わる一日が始まる。 SF設定としてはありきたりなのだが、文章が非常に良い。翻訳調でまっさきに三島由紀夫を連想した。五感と情念の細かな動き、比喩や風景の描写に感心した。あとがきでマンディアルグのことが書かれていた。ああ、そうだ、この美しくも残酷でエロティックな世界はマンディアルクなのだ。よくぞ換骨奪胎できたものだ。 久しぶりに良い本に出会えたと思った。

    1
    投稿日: 2012.08.10
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    会員制の仮想リゾート<数値海岸>の<夏の海岸>ではAIが暮らしを営んでおり、現実世界の人間はお金を払うことでゲストとしてその仮想空間で様々なロールを演じることができる。そこはゲストに性的な快楽を与えるため空間であり、様々なシチュエーションが用意されている。 そこに暮らすAIたちであったが、1000年前の「大絶途」以降ゲストの訪問が途絶えてしまう。理由は不明だが、その後もリゾートは閉園されることはなく、AIたちは誰一人としてゲストを迎えることなく千回にも渡る終わらない夏を繰り返して来た。 だが、その永遠の夏は突如として終焉の時を迎える。謎の存在<蜘蛛>の大群が押し寄せて彼らの空間を食い散らかして行く。徐々に住処と仲間を奪われていくAIたち。何が起こったのか?何が起ころうとしているのか?絶望に満ちた一夜の攻防戦の果てにあるものとは? なんか大作RPGをやっているような気分にさせられる小説でした。 内容自体はグロテスクな描写も多くすごく残酷だけど、文章やそこから想起されるイメージはとても美しい。そんなところがFFのようなRPGの幻想的な雰囲気を醸し出しているのかもしれない。 自分たちの暮らす空間や自分たち自身のプログラムそのものにも干渉することが出来る圧倒的な存在と対決する絶望感。そして突如いつもの生活を壊される不条理。そんなAIたちからすれば神とも思える存在ですら恐れを抱く天使という存在。続きがすごく気になる終わり方でした。 これだけ残酷な物語なのに、すごく綺麗にまとまってるなという印象です。

    1
    投稿日: 2012.05.26
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    前作の中/短編集でこの人の作品は話が長くなるほど話がもつれて読んでるとしんどいなと思っていたが本作はネット上の仮想リゾートを舞台に繰り広げられる惨劇を無駄のない文章で書き切っている。 リゾートの住人であるAI達が「蜘蛛」によって惨殺されるさまが淡々と書かれる文章は残酷でもあるけど美しくも感じてしまう。 ネット上の話ではあるけどサイバー感より耽美的な雰囲気に満ちた作品。

    0
    投稿日: 2012.04.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    仮想世界で人間をもてなすために作られたAIたちに 突然襲い掛かる悲劇と終末を描いた物語。 題材はすごく好みなんだけど、残念ながらあまり楽しめなかった。 グロ・ゴア表現はそんなに気にならなかったけど 人物描写があっさりとしていて感情移入ができず、 誰がどんな人物かを思い描く前に次々死んでいき 気がついたら終わっていたという印象。 設定上の重要人物への描写よりも その他の人物や設定上の作り話の部分が面白かった。 (盲目婦人と夫の物語やレース編みの若奥さんの部分) 人間が来なくなった日・グランドダウンという単語が度々出る割に それに対する回答やヒントが作中になかったのが残念。 3部作の第1部だから仕方ないのかもしれないけど、 人物や物語にあまり興味が持てなかったので続きはもういいかな。

    0
    投稿日: 2012.03.10
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    仮想空間に造られたリゾート〈夏の区界〉。 南欧の港町をイメージして造られた古めかしい町で過ごすヴァカンス。 石畳の小路、おもちゃのような家、坂道、入道雲、鳴き砂の浜、 オリーブオイルとヴィネガー、格式高い〈鉱泉ホテル〉でのチェス大会。 これはそこに暮らすAIたちの話だ。 舞台だけ眺めると鳩山郁子の作品の世界みたい。 〈夏の区界〉に現実世界からの『ゲスト』が来なくなって一千年。 AIたちは永遠に続く夏休みを過ごしていた… 著者は「清新・残酷・美しさ」を心がけて書いたと記しているけれど、 私には「残酷」の割合が凄く高かった。 血しぶきは飛ばない。でもこんな恐怖は初めてかも。 普通じゃない残酷さ。骨が折れ、内臓がつぶれても死なずに苦痛だけを感じる…とか、生きたまま大男に食べられる…とか、顔をフライパンで焼かれるとかとか…… それでいて、ヒンヤリした美しさはあるのだから。

    0
    投稿日: 2012.02.06
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    AIもここまで来たら人間。 物語の内容も残酷で醜悪だったけど、夏の区界の制作者や利用者のことを考えるともっと寒々する。 でも解説を見て自分も気を付けないといけないなと思った。

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    投稿日: 2011.09.15
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    人間の欲望に蹂躙されることを理解しても、怯えた顔でゲストに微笑むAI。 人間が大嫌いなのに、人間に依存している矛盾。 まあそれはサブ要素だけどね。そういうの好き。

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    投稿日: 2011.09.02
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    緻密で繊細で甘美でいてグロテスク。 グランヴァカンスがファンタジー的なアプローチだったのに対しラギッドガールはSF的なアプローチでグランヴァカンスを補完する。 全文に無駄がなく、所々に散りばめられたワードが様々な所に繋がっており、読み進めるうちにグランヴァカンスとラギッドガールの相互性に気がつく。 解説の言葉を借りると読者が物語にて出てくる侵入者と重なり、読み進めるうちに背徳感が生まれる。 何度読み直しても新たな発見がある。 作者も「清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。」と言ってるが本当にそのとおりだった。残酷なのに美しい。これに尽きると思った。物語が一枚の絵画のように美しい作品だった。

    0
    投稿日: 2011.07.09
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    そこが人間のための楽園であることが、ジュリーがパンツを履いていないことの必然性。ラキッドガールも読まないと。

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    投稿日: 2011.05.09
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    小説と言うより詩的なイメージの断片のよう。あるいは、デイヴィッド・リンチがSFを書いたらこんな作品になるんじゃないかという感じです。 ゲスト(人間)が訪れなくなって1000年以上立つ仮想現実の世界のAIたちが主人公という設定のためか、残酷なシーンが数多くあるにも関わらず読後感はそれほど悪くなく、また感情移入を拒むような雰囲気があります。 なんとも不思議な気持ちになる小説でした。

    0
    投稿日: 2011.02.15
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    装丁がいい ヴィジュアルイメージが豊かで、読ませる 登場人物ほぼAIだけど感情に違和感あった AI特有の感情の動きを設定してほしかった

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    投稿日: 2011.02.09
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    1000年以上人間<ゲスト>の来訪が途絶えた仮想リゾート空間『夏の区界』。そこでは使命を失ったままのAI達が穏やかに暮していたが、突如として『蜘蛛』の大群が出現し殺戮を始めた。圧倒的な蜘蛛の力の前に為す術無く消去されてゆくAI。 だが、辛うじて生き残った者達は区界に唯一残された「鉱泉ホテル」に集結し、反撃を決意する。 今、AI達の生き残りをかけた地獄の一夜の帳が降りる。

    0
    投稿日: 2010.12.15
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    やはり飛さんはすごいですね。 描写も設定も展開も複線の張り方もとにかく緻密、濃密。 ベートーベンみたい。 ただ本作品はあまりに痛々しくて読んでいられなくなって挫折してしまいそうになりました。。。 以前、美術館でアネット・メサジェという人の作品を初めて見た時の衝撃を思い出しました。 ともあれ、読む人の五感にここまでの働きかけが出来る作家はそういないと思います。

    0
    投稿日: 2010.12.12
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    美しくて残酷…的な内容に触れるレビュウは他者に譲るとして、極私的な感想を。 なんというか、読んでいる最中、多幸感に包まれるような貴重な体験となった。行間にまで滲み出る有形無形の情景描写の素晴らしさは勿論のこと、あえて使う「ひらがな」や、喋り言葉として曖昧に使われるようなコトバをテキストにして定着(明文化)させる手腕が素晴らしい。まるで古典を読んでいるかのような錯覚さえおぼえた。 そして、そうした優れたテキストワークが「美しくて残酷」な物語に違和感なくフィットしている。文句なし!☆10個! しかし残念なのは、背表紙等で謳われる梗概ですね。嘘は云ってないけど、あれでは従来どおりの読者しか捕まえられない。この「美しくて残酷」な物語は、そうしたニッチ市場を越えたところで読み伝えられるべきものだと思う。

    0
    投稿日: 2010.11.26
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    とにかくすごい小説、の一言に尽きる。巻末の解説に「完璧な小説」という表現があるのですが、まさしくそう呼ばれるにふさわしい作品のひとつではないかと。ノスタルジックで背徳的で、残酷で美しい。これ以上の説明は野暮なだけかな、と感じてしまいます。

    0
    投稿日: 2010.10.29
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    飛浩隆「グラン・ヴァカンス」を読み始める。電脳コイルのAI版、といった感じの印象か?グラスアイもメタバグっぽいものなのかしら?なんだか面白そう。 わけがわからないながらも楽しめる。「象られた力」の短編は、わからない!というだけの作品もあったけれど、「グラン・ヴァカンス」は基本構造が「蜘蛛」達との攻防戦なので、そこが分かりやすい分読みやすい。 飛浩隆「グラン・ヴァカンス」読了。後半あたりの展開で、自分の想像力が追っつかない。。。前半は普通に攻防戦だから楽しく読めるのだけれど。同じく飛氏の「象られた力」でも同じような感覚があったなぁ。 夏の区画への侵入者が、読者の立場の暗喩になっているとか、解説読んで始めて知ったよw 私はどうにも、メタファーがどうのとかを理解して読める読者ではないのだ。この作品を味わい尽くせるだけの感覚を持ち合わせていない。。。 とはいえ、鉱泉ホテルを巡っての攻防戦などは十分に楽しめる。残酷かつ美しい描写にも引き込まれるものがあった。そして、世界観については一部しか明らかになっていないので、続編も読みたくなるのは確か。 ってか、設定的には一番面白そうな部分の謎が明かされてないんだよなー。実はそこが一番不満なんじゃないか俺。もっと世界観が明らかになって欲しかった。「ラキッド・ガール」も読めってことか。

    0
    投稿日: 2010.10.13
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    2013 再読 9/28 AIなのにビルドゥングスロマンを成り立たせたところに凄みと意義を感じる。 ただし、「苦痛」の描写がかえって痛みを中和してしまった印象を受けた。 適度な読みやすさを確保するためには仕方のないことかもしれない。

    0
    投稿日: 2010.09.29
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    センスオブワンダーに満ちたアイデアももちろんのことだが、飛浩隆は極めて優れた情景描写力の持ち主なんだと思う。途方もない世界観の広さもさながら、ほとんど戦闘描写だけでこんな圧倒的傑作を生んでしまうなんて。決して難解な表現を使わないのに、そこらの純文学作家よりも上質で精緻な文体。にしても、遅筆な著者が専業作家になれるくらい売れてくれないかな。早く続きが読みた過ぎる。グロいのが苦手な人にはオススメできないけど、個人的評価は★6。

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    投稿日: 2010.08.26
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    SFというカテゴライズだが、ファンタジー的内容。 ラスト二章は楽しめたが、それまではあまり乗り切れなかった。世界観や文章は綺麗で良かったのだが、人物に感情移入が出来なかった為であると思う。

    0
    投稿日: 2010.08.10
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    最高!!。1000年放棄された仮想リゾートを舞台にしたSF。永遠に続く夏という舞台設定がもうたまらない。魅力的なAIたちと蜘蛛との攻防を描写する残酷で、儚くも美しいイメージの奔流に圧倒される。大満足です!!。

    0
    投稿日: 2010.08.03
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    著者があとがきで書いているとおり、残酷で美しい物語でした。 AIたちは人間に虐待されるために「生きて」いて、彼らの苦痛が物語のキーなのです。 なんだかすごく痛そうなのです。エロスな部分も痛みにつながっていて、悲しいとか切ないとか言うより、痛くて残酷な気がしました。 夏の海辺のキラキラしたかんじ、「視体」や硝子、雪片の透き通った、綺麗だけれどどこか虚ろなイメージ、そういうのがデジタルの明滅とリンクしているようでした。 個人的にはあんまり好きな部類ではない(痛すぎる)のですが、なかなか面白かったです。 結局「天使」や「罠」の行き先などはわからずじまいだったのですが、補足するようなお話が出ているようです。 2010/6/5 読了 あらすじ的なもの ヴァーチャルのリゾート世界「夏の区界」に住むAIたちは、もう千年もゲスト(=人間)を迎えていなかった。 そんなある日、突如として「夏の区界」に異変が起こる。 無数の「蜘蛛」が現れ、AIたちを、世界を食い始めたのだ。 生き残ったAIたちは「鉱泉ホテル」に立てこもり、蜘蛛たちを撃退すべく罠をしかけ戦いに挑むが…。

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    投稿日: 2010.06.06
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    端正な文章だな、というのが読み始めての感想でした。夏のきらきらしたものを切り取ってきてそれを文章に変換したような最初の部分が段々と陰惨な崩壊へ繋がっていく過程が面白かった。でも、その崩壊が凄くグロテスクで異様なものであるのにも関わらず、良く作りこまれた微細な細工を丹念に壊すような、神経質な端正さを感じて新鮮でした。 閉じた本の中で、ログアウトしたゲームの中で、一体キャラクタたちはどう生きているのだろう? 彼らは自己を認識しているのかしら? そういうことを考えたことがある人は、屹度楽しくこの本を読めるのではないかなぁと思います。

    0
    投稿日: 2010.05.17
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    すごい。 五感が万華鏡のように花開く。そう云う傑作、と云うか、怪作? ダイナミズム、集約してゆく力、ギリギリの線で保たれる均衡と、それを突き破る潮流。 この本が、私にとっての硝視体のようです。

    0
    投稿日: 2010.05.10
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    うーむ。。。 絶賛されている人が多かったけれど、自分には合わなかった(´・ω・`;) AIというものをどう認識するべきなのかがわからない。 誰の立場に立ち、何をどう感じるべきなのか・・ そして突然起こる崩壊と痛みと・・・救いがどこにあるのかわからない残酷な世界です。 シリィズものなので最後まで読んでようやく、なんでしょうが、続きをてにとろうという気にあまりなりませんでした><

    0
    投稿日: 2010.05.03
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    美しく、残酷。 引き込まれるストーリーと魅力的に描かれるキャラクタ。 人に勧めるのはすこし気が引けるけれど(主に性的や生理的嫌悪感を喚起する描写)、読み応えのある良い作品でした。 明日続きを買ってきます。

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    投稿日: 2010.04.12
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    「鳴き砂の浜に硝視体(グラス・アイ)を拾いにいこう」 冒頭の一文である。 造語満載の本格SFかと思わず身構えてしまい、少し寝かせていた本作。 みごとに、期待を裏切って、午後11時から午前2時までノンストップで読んでしまう作品だった。 ジェットコースターのような興奮する読み口ではない、続きが気になって読み止められないのではない。 そうした心の動きの作用ではなく、読んでいること自体のストレスや疲れがほとんどないから、長時間一気に読めてしまうのだ。 「完璧な小説」と解説は語るが、それはこの一息入れたいと思うほどの疲れさえも感じさせない小説の構成と文体に圧倒的に表れる。 中だるみさえない。 そうした心地よさとは真逆に、語るところは美しく残酷である。 この作品の主人公たちは、AIであり架空のキャラクタであり 彼らは、自我を持ちながら、存在意義として「人間」に奉仕するようにプログラミングされている。 物語が続くうち、じわじわと「人間」とAIとの加害/被害関係が明らかにされていく。 それは、そうした事実を「読んで」いる読者=私へもそっくり投影され、はねかえる。 読みつつ途中から、なんともいえない、加害意識、サディスティックな感情がわき起こってくるのだ。 それは悲劇と分かっていつつ、その本を読むとき、あるいは映画を見るときの感情である。 例えば、私たちは、キャラクタに感情移入し、悲劇を嘆きながらもどこかで、サディスティックにおもしろがりながらみている。 美しい悲劇のカタルシスの裏に隠された、加害性。 今まで気付かずにいた、物語を読むということの暴力性、加害性を引き出された。 それでもなお、この作品の描き出す、「純粋な苦痛」「美しい残酷」には心を動かされてしまうのである。 文句なく、最高レベルの小説であると思う。

    0
    投稿日: 2008.05.07
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    まさに「ただ、清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ」これに尽きる。安定して、不安で残酷な、そして今にも壊れそうなユートピア。

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    投稿日: 2008.01.24
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    作者がSFの定義としている「清新であること、残酷であること、美しくあること」というのは私にとっても真理。そしてこれは正にSF。言葉の持つ力というものを、充分すぎるくらい味わえます。

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    投稿日: 2007.09.01
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    仮想リゾート“数値海岸”の一区画“夏の区界”。南欧の港町を模したそこで は、ゲストである人間の訪問が途絶えてから1000年、取り残されたAIたちが 永遠に続く夏を過ごしていた。だが、それは突如として終焉のときを迎える。 謎の存在“蜘蛛”の大群が、街のすべてを無化しはじめたのだ。わずかに生き 残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦が幕を開ける

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    投稿日: 2007.06.07
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    飛浩隆にはまった最初の作品。 人間に放置されて1000年後の仮想リゾートで暮らし続けるAIたちの物語。

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    投稿日: 2007.04.30
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    多くの謎を孕みつつストーリーが展開していくSF「廃園の天使」シリーズの第1弾。著者の飛浩隆氏が巻末に記した「ノート」にはこう書かれている。『ここにあるのはもしかしたら古いSFである。ただ、清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。』まさに、この言葉の通りの小説。面白い。登場人物は「人物」ではなく、「AI」つまりプログラムに過ぎないが、つい感情移入してしまう。まあ、小説とはそもそもヴァーチャル世界であるわけだが・・・。オススメ。

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    投稿日: 2007.02.17
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    作者ノートにあるとおり、「清新であること、残酷であること、美しくあること」、そのような姿を「導きの星」として彫琢された、すばらしいSF作品。続編も楽しみだが、文庫化を待つことにする。

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    投稿日: 2007.02.06