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総合評価

520件)
4.1
169
176
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13
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    紅、朱、橙、黄 色とりどりの紅葉を目にする度、私はこの「錦繍」を思い出さずにはいられないだろう。 錦繍【きんしゅう】 1.錦(にしき)と刺繍(ししゅう)を施した織物 2.美しい織物や立派な衣服 3.美しい紅葉や花のたとえ 4.美しい字句や文章のたとえ 蔵王のドッコ沼へ向かうゴンドラの中で10年ぶりに偶然再会した元夫婦 勝沼亜紀と有馬靖明。そんな2人の往復書簡のみで綴られた小説。 別れて10年の歳月が過ぎたというのに、当時を振り返り相手のことを思い、いく枚もの便箋に何時間も何日もを費やして書かれた手紙。 時に冷たく突き放す有馬。しかし再びやり取りが始まると、そんな有馬からも品を感じる。 手紙の丁寧な文章にどんどんと引き込まれ、2人の思いが染み入るように伝わってくる。 あの時の本心。 伝えたかったこと。 ようやく気がついた相手の気持ち、自分の気持ち。 書くことで少しづつ整理されていく。 かつて7年もの間 本当に愛し合っていた2人だからこそ交わすことのできる心と心の答え合わせ。 そんな手紙を読みながら、どれだけお似合いの夫婦だったのだろう、と想像せずにはいられない。 あの日、あのことさえなければ2人は永遠に幸せだったのかもしれない。 この物語の主役は亜紀と有馬に違いない。けれど 有馬の不倫相手であった瀬尾由加子、有馬の同棲相手である令子、星島家のお手伝い育子さん、それに亜紀を含めた4人の色とりどりの女性の「錦繍」であるようにも思えた。 有馬は亜紀への手紙の中で令子のことを 「この厄介な男を大切にしてくれる気立の優しい女ですが、私は愛情を感じていません」と記している。 しかし有馬の手紙の内容は令子との今の暮らしや令子がどんな女かという事ばかりである。 有馬は亜紀への手紙を書くうちに令子の存在の大きさや 自分の令子への気持ちに気付いていくように見える。 一方 亜紀は有馬への消すことのできない愛情を曝けつつも、有馬からの手紙を読み 今まで見て見ぬふりをしてきた現在の夫とのこれからの関係について、あたり一面の「錦繍」を見ながら重大な決断を下す。 2人が手紙をきっかけによりを戻すのではなく、これまでの人生を整理し、また歩き始めるところに この物語の美しさがあるように思う。 手紙はメールやLINEのように一瞬では終わらない。 相手からの手紙を読み、その返事を書き終えるまでの数日感、何度も相手のことを思い浮かべ、文章を反芻し、一文字ずつ自分の手で書いていく。 返事を書く間にも、相手から届いたその手紙を何度か読み直すはずだ。 相手を思う気持ち、相手に費やす時間、その全てが 今よりも遥かに大きく真っ直ぐなものである。 テレビを見ながらとか、電車の中でとか、何かの隙間時間に、なんて返信できない。きちんと机に向かって真正面から取り組まなければならない。 そう思うと、いつから人は人と真剣に向き合わなくなってしまったのだろう。 相手のことだけを思い、机に向かい、ただただ手紙を書くだけの時間。 それがどれだけ愛おしい時間なのか。 2人の往復書簡もまた「錦繍」なのだ。 実際に手書きの往復書簡が冊子になれば、その字体から、心情や気持ちがありありと読み取れて、世界一の名作になるのではないか、なんて妄想をしてみる。 余談 この本を読むまで私の大好きな1冊は夏目漱石の「こころ」だった。 (「こころ」の第3章は先生からのとてつもなく長い手紙だ) でも、この「錦繍」を読んでその気持ちがグラグラとしている。 ただひとつはっきりしていることは、きっと私は人の手紙を盗み見るのが好きなのだ、ということ。 ➖➖➖➖➖➖ 備忘録 亜紀と有馬の手紙  1月16日 亜紀 1通目  3月 6日 有馬 1通目  3月20日 亜紀 2通目  4月 2日 有馬 2通目  6月16日 亜紀 3通目  7月16日 亜紀 4通目  7月31日 有馬 3通目  8月 3日 亜紀 5通目  8月 8日 有馬 4通目  8月18日 亜紀 6通目  9月10日 有馬 5通目  9月18日 亜紀 7通目 10月 3日 有馬 6通目 11月18日 亜紀 8通目

    1
    投稿日: 2026.01.16
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    宮本輝さん著「錦繍」 宮本輝作品の中でも人気上位の未読の作品をと思いこの作品を選んでみた。 作品は離婚した元夫婦関係にあった男女の手紙のやり取りだけで構成されている。 携帯電話が主流の今の時代、「手紙」でのやり取りという作風がとてもノスタルジックに感じられ、言葉の気品の高さもあいまって妙に味わい深い雰囲気を感じさせられる。 人が口を揃えて「名作」と位置付ける理由がよくわかる作品だった。 手軽で利便性に富んだ携帯電話。 今の時代では当たり前に電話、メール、ライン等でメッセージを送受信できる。 誰の生活にも無くてはならない必需品であり、また個人の一部といってもいい位の重要ツールでもある。 それがなかった時代では… この作品のように手紙をしたため、時間をかけながら何度も往復させながらのやり取りしたことだろう。 現代にはない、奥ゆかしさや知性が文面の手紙に込められているように感じられ、逆に斬新に感じられる不思議な感覚を得られる。手紙を書くという行為自体がとても清純に感じられ、自白していくその心をまるで写し取っていく行為に感じられた。 漂う気品の高さ、とても良い作品だった。

    101
    投稿日: 2026.01.13
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    山形文学紀行で紹介された本であるが、蔵王温泉は一場面しか出てこない。その場所で別れた夫婦が偶然に再開する。しかし、多くの場面は関西であり、大阪であり京都である。

    1
    投稿日: 2026.01.11
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    昔はこうして連連と手紙を書いたものでした。 本当は別れたくはなかった、本当は今も愛し愛されていることがわかった。でも一緒にはなれない現実もある。 女は、生きることと死ぬことは同じと感じ、その言葉に男は、己の為した全ての行為、心に抱いた思念は、死の世界へ移行した自分を打擲すると伝えた。 過去に囚われた苦しみが、希望に満ちてくる瞬間がある。その時、美しい錦の織物が紡がれたように感じました。 この人の作品は本当に素晴らしい!

    1
    投稿日: 2026.01.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

     離婚した元夫婦が偶然蔵王で再会し、一年弱、14通の手紙のやり取りを通じて、過去を乗り越え、再生する物語。  1985年の小説なので、令和の今読むと倫理観が崩壊している。浮気を開き直られても、とか、忘れられない女がいたことは墓場まで持っていく話でしょ!とか、今の女性とのやりとりをそんなに赤裸々に語られても、とか…色々、色々思った。けれどそれでも圧倒的だった。読後の力強さ、みなぎる感じが、やはり名作。2025最後の小説かな、と思いながら読み始めたけれど、一気読み!

    2
    投稿日: 2025.12.31
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    このレビューはネタバレを含みます。

    何故か解説の「書くことによってだけ辛うじて伝え得る悔恨を、哀惜を、思慕を綴ったような便り」の所で涙が出てしまいした。正にその通りです。

    2
    投稿日: 2025.12.28
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    別れた男と女の手紙のやり取りで話を進める。 まあ普通のカップルはこんな手紙のやり取りはしないだろうけど、 面白い書き方だと思う。 適当な性格な男と、なんとなくそのまま流されてしまうような女。 恋愛小説、こういった本、男の作家だと男の視線から、女の作家だったら女の視線から書かれるのが多いのだろうけど、この本もそうだと思う。 男と女はやっぱりちがうと考えさせられる、しかし一番共感を持てるのは最後のこの男を立ち直らせるきっかけをくれた別の女だ。 仏教的なものの見方、 関西の描写などが、たまらなく懐かしい。 

    0
    投稿日: 2025.12.26
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    ▼配架・貸出状況 https://opac.nittai.ac.jp/carinopaclink.htm?OAL=SB00560983

    0
    投稿日: 2025.12.10
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    初めは有馬に対する嫌悪感と不信感しかなかった。 でも、有馬さんからの手紙を読み進めていくうちに、彼の波瀾万丈な人生に寄り添い始めてしまう。 亜紀もしかり。 読み始めた時とは違う感情が最後には込み上げてきて、2人の再会とこれからの人生に美しさが見えた。

    12
    投稿日: 2025.12.08
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    人生ってほんと思う様にいかないし、伝えたいように伝えられないし、上手くいかないもんだ思った。愛しあっていたはずの夫婦が離婚して、手紙のやり取りをするようになる中、伝えられなかったものを伝え合い少し分かりあってそれぞれに歩みを進めていく。手紙のやり取りだけでお話が進んでいって面白かった。

    16
    投稿日: 2025.12.06
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    NHKラジオの朗読にて 石田ゆり子さんと松尾スズキさんによる朗読 夫の不貞によって別れざるを得なかった2人。 しかも相手の女性が心中を計り、夫のみ助かった。 思いがけないところで偶然再会したことにより、本当は今でもかつての夫を愛していることに気づく。 裕福な家で育ったあきさんの、でもあまり幸せではない人生が切ない。 往復書簡によって続くやり取りに、今では感じられない「間」があって、それがよかった。

    6
    投稿日: 2025.12.01
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    東京も紅葉がたけなわ、久しぶりに読みたくなりました。 往復書簡の形式。 互いに愛し合いながらも思いもよらぬ別れで傷つきなお生きてきた元夫婦が、 それぞれの人生で立ち直って生きていく話です。

    0
    投稿日: 2025.12.01
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    別れた元夫婦の偶然再会したことによる、手紙の往復書簡で物語が進む。愛し合っていたのに別れ…二人ともなかなかの波乱万丈な人生でした。 これからの人生も交わることがないのだとわかっているけれど…それでも愛し合っているのだなぁと感じ切ない物語でした。蔵王 ダリア園 ゴンドラ 知っているからなのか、郷愁を感じ読み進めました。

    0
    投稿日: 2025.12.01
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    電話の普及により手紙が減った 携帯電話の普及により電話が減った 未来に向けての元夫婦の書簡のやりとりが書かれている 手紙とは相手にそろそろ届いたかな?というワクワク感を 返事が来るかな?というドキドキ感を 時間がその感情を与えてくれている 今はタイパといって時間短縮を求められるが 書簡には相手に気持ちが良く伝わる・記憶に残る等デジタルには無い価値があると思う この小説は昭和に書かれたものであるが私自身に書簡の良さを再確認させてくれた

    1
    投稿日: 2025.11.30
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    書簡体小説といわれるものは、夏目漱石の「こころ」がはじめてでした。手紙は一方的なのですが、その人の感情が痛いほど感じとれるものだと思います。それを読んで泣いたのを覚えていますし、小説にはまったのもそれがきっかけだったような気がします。それほど強く衝撃を受けたものでした。 「こころ」は往復ではなく片道のたった一通の手紙でしたが、「錦繍」の手紙は男女でやりとりされる往復で、最初から最後まで手紙のみ。 昔夫婦だった二人が久しぶりに再会し、手紙のやり取りをはじめるのですが、1ページ目から心をぐっと掴まれます。読むのをやめることが出来なくなりました。 内容は男女の激しいものですが、書簡体なので印象としては文章が静かに流れていく感覚を覚えます。 とても好きな小説ですが、はたして人に勧められるかと問われると考えてしまいます。本当に本が好きであるだけでなく、酸いも甘いも経験した大人向けとでも言っておきましょうか。 でも決して破滅的な内容ではなく、あらすじにも書かれているとおり「再生」を強く感じた物語でした。

    4
    投稿日: 2025.11.28
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    別れた2人がばったり会ったことから手紙のやり取りが始まり、その手紙だけで物語が進みます。 2人の人生を手紙でなぞるのですが、2人ともなかなかの波瀾万丈ぶり。2人の人生を読み進め、他人事なのに自分事のようにしみじみしてしまいました。

    0
    投稿日: 2025.11.27
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    初めは女性も男性も好きになれなかったが、現在の話になっていくと、今の彼女も含め応援したい気持ちになっていた。だって男がひどい。礼子さんと亜希さんの気持ちが寄り添いあってて前向きになってちょっと嬉しい。全体的には好きではない恋愛背景だったけど。

    0
    投稿日: 2025.11.21
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    ものすごい読書家の方に選書して頂いた本 男女の手紙のやり取りだけとは思えないほどありありと情景が目に浮かび惹き込まれた。

    0
    投稿日: 2025.11.20
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    一時、宮本輝にハマった時期があって、少し離れてからまた読んだ作品。 「晩秋に読む本としておすすめ」って紹介されてたと思う。 確かに、再会の場所が紅葉真っ只中のところで、全体的に哀愁が漂っていて、もう巻き戻すことの出来ない時間を生きているのに手紙のやり取りで2人の愛や憎しみ、悲しみが色を取り戻す、という印象が晩秋を思わせた。 すごく薄い本なんだけど内容は濃いと思う。

    1
    投稿日: 2025.11.19
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    手紙のやり取りの形式は結構珍しいのではないかと思う。 途中で、手紙送りません からの やっぱり送りました みたいなのは面白かった。 人生経験少ないからか、あまりイメージできなかったので、繰り返し読みたいと思う。

    0
    投稿日: 2025.11.15
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    テレビで紹介されて読んでみたが、おもしろかった。手紙のやり取りだけで、これだけ想像することができるとは。 色々なことがあったとしても、毎日感謝して生きよう。

    1
    投稿日: 2025.11.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読む前 愛し合っていた2人が、ただすれ違って誤解してしまったがために離婚したけれど、手紙を通して再び相思相愛になる話 なのかなと勝手に思っていた でも読んでみたら、思っていたよりもちゃんと不倫していたし、有馬さんは思ってたよりもダメな男やった お勧めしてくれた方がこの本を読んだ感想として、「ちゃんと言葉にしないとすれ違う」というようなことを言っていたからこそ、そう思ってたのかも? その意味を、ただ「事実を伝えること」みたいな意味合いで受け取っていたのだけど、この小説を読んでみて、実際にあった出来事は受け止め方に差はあれど大きな変わりはなく。 でも「お互いがしっかりと本音を伝え合うこと」で、しっかりと過去に向かい合って、受け入れて、今を生きることができるようになった話やなと感じた。 だからこそ、言葉にしないとすれ違うというのは、自分の思い込みを正さないとというわけでなく、自分の気持ちや物事をきちんと受け止めるためにはちゃんと言葉にしてそのまんまを伝えることが大切やということかも。と思った。 あと、要所要所で、障がいのある息子を業だと言ったり、男の不倫は性だと言ったり、小さな、ん?って思うことはちらほらあった。 なんとなくやけど、時代錯誤やなという感じの違和感。 けれど。その小さな違和感になる要素がなければ、この手紙は本心ではないものだったし、2人は前を向けなかったような気がする。 めちゃくちゃ人間臭い2人が、めちゃくちゃ時間をかけて過去を受け入れて、ようやく今を生きることができるようになった話という感想 でも、手紙形式だったからか、「こう生きるべき」というよりは、「こういう人生がある」みたいな小説で、なんかわからんけど今の小説にはない感覚な気もした え、いいな、とてもいいな

    3
    投稿日: 2025.11.03
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    40年も前に書かれた作品なので、日々の描写も生活実感もとても深い。ネズミの食べられる様も今では実感を持っては無理で、頭で考え想像しなければ映像も結べないと思う。 主人公の男性も30代と読み進んで分かった。もっと熟年の男女の物語のように思えたので、なんて私達は幼稚な人間になっているのだろうと作品と離れた感慨を抱いた。

    1
    投稿日: 2025.11.01
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    2025.10.30 恥ずかしながら初めて宮本輝を読んだ。 まず、手紙のやりとりという設定に時代を感じる。20世紀に10代だった自分には、手紙やラブレターという設定はまだ理解できる。しかし、私の子ども世代にはそもそもの設定がもう通用しないのだろう。 本書で改めて考えた手紙の特徴はやはり「時間」だと思う。LINEやTwitterといった即時性の時代の反映しているから

    4
    投稿日: 2025.10.30
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    テレビで紹介されていたので読んでみた。興味深い視点で、手紙の持つ不思議な言葉の力を感じた。最近では手紙で言葉を交わすという行為は全くと言っていいほど無い。訳あって友人と3年ほど手紙でのやり取りをしていた経験があるが、手紙でしか伝えられない言葉があると思う。深層心理のような、精神論のような、口に出すと恥ずかしいことも言えてしまう感覚。 この作品にはその感覚を思い出させる手紙のやり取り、感情のこもった言葉や描写が物語を作っていて手紙の内容である事を時々忘れてしまうほどだった。 未来へ向けてお互いが自身の人生に向き合い、決意する最後の手紙にはモノトーンだった過去の描写に対してカラーが入っていく感覚で晴れやかだった。

    2
    投稿日: 2025.10.26
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    錦繍とは、錦(美しい織物)のように鮮やかで美しいさまを指します。転じて、美しい紅葉の比喩。 元夫婦二人の手紙のやり取りによる、過去、現在、そして選択される未来。 過去の話は湿っぽい感じ。だけど、令子さんが出てきてからが本当に爽やかで素敵だった。 一番好きなところは、令子が手紙を読んで、この女の人が好きだと言うところ。愛だねありゃ。 お父さんと亜紀のやり取りもとても好きだった。やり手の社長が不器用に娘の背中を押すのが良い。 どうして錦繍と題名につけたんだろうと考えた。私の答えはね、生きている中で訪れるターニングポイントで出会う美しいもののことだと思う。まさにこの手紙たちのこと。モーツァルトのこと。息子の成長のこと。。。 あぁ良かった!良い話だった!良い本だった!

    11
    投稿日: 2025.10.17
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    10年前に離婚した亜紀と靖明が、蔵王のゴンドラで再開する。心中事件を起こして離婚した靖明に、再婚して障害児を持つ亜紀が手紙を書く。刃物で刺されるという凄惨な事件で別れた元妻と夫が、相見えることなく文字だけのやりとりをはじめ、繰り返す。二人が出会う前のこと、二人でいたときにその影であったこと、二人が別れてその後のこと、すべてが見事な文章で綴られていく。別れていた時間、書いてから届くまでの時間、返事をまつ時間、そばにいて言葉を交わすのとは違った時間の流れを思うだけで胸がつまる。書いている間にも相手の時間は流れ、待つ間にも二人の時間は流れ続ける。

    1
    投稿日: 2025.10.17
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    評価の高いこちらの作品をやっと手に取りました。 初めての宮本輝さん。 元々夫婦だった男女の手紙のやりとり。 ただそれだけなのに、どうしてこんなに読み終わり鳥肌が立ったのか。 自分でもよくわかっていませんが、長い往復書簡だけでも2人の人生を読者に感じさせる作者はすごいのだろうなと… こんな浅はかな感想しか今は出てこないけど、読んでよかった、出会えてよかった作品でした。

    2
    投稿日: 2025.10.06
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    秋に読んでとても好きになった作品。 お互いが幸せになるための人生をそれぞれ歩んでいるが、過去の夫婦生活が特別なものであったのには変わりない。 相手の幸せを願ってはいるけれど、どこか哀しく寂しさを感じる作品でした。 非常に文章が美しく、日本語って素晴らしいなと改めて感じました。

    2
    投稿日: 2025.10.06
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    手紙でのやりとりがとても興味深かかった。ただ、主人公のふたりとも、自己中な感じを受けたのは私だけだろうか。時間を置いて、もう一度読み直してみたい。

    1
    投稿日: 2025.10.06
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     私にとって秋の訪れは「錦繍」を読むことから始まります。今年も、そろそろ…と思っていた矢先、NHKラジオの朗読の時間で「錦繍」が始まりました(全40回)。  “NHKらじるらじる”で、石田ゆり子さんの朗読とともに情景を思い浮かべながら、ページを繰ることに決めました。いつもと違う読み方で、楽しみたいです。  「前略  蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした。」  このフレーズで始まる往復書簡。  手紙を何枚も綴る思い、返信が届くまでの長い日々、届いた手紙の封を開ける瞬間のドキドキ、、、  メールやLINEで瞬間にやり取りできる現代とは対照的な時間の流れの中で、手紙が織りなす二人の過去や気持ちが、切ないほどに深く沁みてきます。  「もしもあの時〇〇を選んでいたら…」というような偶然の積み重ねで今があるけれど、それらは決して偶然ではないんだと思えてきます。

    32
    投稿日: 2025.10.03
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    最初にページを開いて読み始めた時の印象を裏切って、夢中になって一気に読んでしまった。手紙のやりとりだけで進んでいく本で、それがまた時代を感じさせる。 再会したことで手紙のやりとりが始まり、過去を打ち明け、今までわかり得なかった事を知る。現在の自分を語り、これからの別々の人生を歩んでいく。 なにかすごいストーリー展開、とかでもなく淡々としているけど、人間の心の中を繊細に描いていた。

    4
    投稿日: 2025.10.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    夫を巻き込んだ心中事件をきっかけに離婚した元夫婦が、10年後に偶然再会したことから始まる手紙のやりとりを通して、人生の孤独と愛の再生を描く作品。 作品全体が往復書簡形式となっており、とてもすらすら読める。 また、手紙の中で登場人物の内面が深く掘り下げられ、読者は二人の心の動きをより細やかに感じ取れるようになっている。 しかし、手紙にしては文章が美しすぎるので、途中から登場人物の心理に感情移入しきれなくなってしまった。 たった14通の手紙だけで、人が再生していく様子を描ききった点は評価できるものの、個人的にはあまり好みではなかった。 ただし、どの登場人物の描き方もとても丁寧で、作品としての完成度が高すぎることは間違いない。人を選ぶ作品だと思う。

    0
    投稿日: 2025.10.01
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    □読んだきっかけ nhkの朝番組の視聴者アンケートで、おすすめする人が一番多かった作品として紹介されていたそうです。かなり前になるけれど、知り合いでこの作品をきっかけに文通を始めた人がいた事も思い出して、気になって読んでみました。 □感想 期待していたせいか、あまり良さが分からず。確かに今にはない言葉の丁寧さ等はあるのですが。どうしても手紙をやり取りする2人が、年の割に幼稚に感じてしまいます。今とは環境も物の見方も違うと言うことなんでしょうか。 きっと今とは異なる雰囲気もあり、刺さる人には刺さる作品なのだろうとは思います。

    2
    投稿日: 2025.09.30
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    蔵王温泉のゴンドラリフトで再会を果たし、そこから始まる男女の文通。 文通で書き起こす過去の知られざる物語が生々しく、どれだけ近くにいてもどれだけ愛し合っていても、秘密を抱え合う彼らの生き様が人間臭い。 この物語の良かった点は、過去のあらゆる出来事を「誰かの責任」として押し付けることなく、そのときどきの「綾」と捉えているところ。あのときデパートの寝具売り場に行ってしまったこと、娘の離婚や再婚を半ば強引に進めたこと、息子の障害を元夫の恨みに転嫁したこと。それぞれの立場でその場面に出くわすと違和感を覚えない判断だと感じるが、彼らなりに悔やむところは悔やみ、文通と会話を通して相手に伝える。喪失したものを埋め合わせるのではなく、喪失を認めることで再生の道を探る。そんな多くの人たちに語る物語だと思った。

    2
    投稿日: 2025.09.27
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    手紙だけで構成される文体、現在ではあまり使われなさそうな丁寧過ぎる敬語でのやり取りなど、時代を感じさせる。 家庭環境に恵まれず地味な暮らしをしてきた令子に薄幸という印象を抱くが、有馬に尽くし捧げる一方ではなく、手綱を握って上手く操っている感じがして、今後の2人に幸多かれ、と応援したくなる。 それにしても、男はみんな結婚しても浮気するものなんだな…

    5
    投稿日: 2025.09.27
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    「言葉の綾」ということばがある。それ以外にこの作品を現す言語が見当たらないのだ。 これは言葉のあやから始まった言葉の『綾』、想いの『綾』の物語。酷暑が涼の季節に変わり、紅葉が咲き誇る今にぴったりくる。 美しいものはすべからく哀しく、あたたかく心を撫でてゆくのだ。名著中の名著。太鼓判を押したい。

    6
    投稿日: 2025.09.26
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    元夫婦の勝沼亜紀と有馬靖明の間に交わされる往復書簡で構成される恋愛小説。文体からも内容からも昭和の時代を感じさせるが、丁寧な言葉遣いに相手を慮り、敬い、愛おしく想う気持ちが溢れ出る。 別れることになったいきさつ、別れてからの苦悩、それぞれの道での苦難や心の動きなどを手紙で相手にどのように伝えるか、伝えたい気持ちと伝わってほしくない気持ちの揺れ動きにもしみじみとさせられる。 古い文体だからと言ってけっしてわかりにくいことはなく、すんなりと心に響くのは自分が昭和の人間ってだからこそだろうが。これは昭和を代表する男優、女優の語りで聞いてみたい。

    29
    投稿日: 2025.09.24
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    おそらく若い頃に読んでいたら、不幸な終わり方と捉えたかもしれない。でも、中年の今は、辛い過去もしっかりと受け止めることで、今を生きることができる、強く生きるとはこういうことなのだろうと思う。 よい時期があれば、わるい時期もある。重ねた月日が、自分の考え方を変えた気がする。

    11
    投稿日: 2025.09.24
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    『金閣寺』『錦繍』は美しい文体の小説の最上位に君臨する。そんな書き込みを読んで、宮本輝さんの小説を手に取った。 別れた夫婦、靖明と亜紀が十年ぶりに再会し、そこから始まる往復書簡。二人が別れるきっかけになった事件の真相、夫婦の心模様が丁寧に時間をかけて綴られている。ふたりの手紙に込められた想いが織りなす錦繍(色鮮やかで最高級の織物)はたおやかな美しさ。分厚い手紙の中には二人の互いへの想いがそこかしこに残り、追想から昇華へとゆっくり熟成されていく。 二人の書簡に出てくる人物達も魅力的だ。 亜紀が通い詰めたモーツァルトの音楽しかかけない喫茶『モーツァルト』。亜紀の、「生きていることと死んでいることとは、もしかしたら同じことなのかもしれません」という言葉がマスターの心を揺さぶる。マスターのおすすめは交響曲第39番。「十六分音符の奇跡」だと。読み終わった後、このシンフォニーを聴きたくて、夜の散歩のお供に連れて行った。 でも、何より惹かれるのは謎の女性、由加子。彼女が願っていたことは何だったのか。それがこの小説の主題でないにせよ、心にいつまでも引っ掛かる。 宮本輝さんの小説。これから本棚に増えていきそう。

    98
    投稿日: 2025.09.21
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    宮本輝さん、昔よく読んだ作家さんだったので、何十年かぶりに読んでみました。 生きると言う事は、なんと大変なことか、、

    2
    投稿日: 2025.09.15
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    手に取ったきっかけはGeminiが勧めてくれたから。 あれやこれや愚痴やらなんやらをAIに聞いてもらいながら「そんな私に面白い小説を教えて」と言ったらこの本が挙がった。 そしてまんまと手に取り、あっという間に読了し、感想を書いている。 短い小説の割には、往復書簡で触れられる時代は幅広く、それなりの数の登場人物が出てくる。のに読みやすくて良い。 元夫婦のやりとりで物語が展開される中で、夫からの書簡はちょっと、、、詳らかにあれやこれや書きすぎでは?と思ったけど、あれやこれや書いてくれたから、夫を取り囲んできた人たちの魅力が伝わってきた。そしてきっと、書簡の向こうの生活では虚勢を張っていたせいで、亜紀さんへのお手紙では少しナヨっとしてしまったのかなと思うと、愛しく思って、しまわなくもない。かな。 両人共に言葉が綺麗で、品がある。それに触れられるだけでもこの本を読んでよかったし、解説にもあったけど、通信手段が充実している現代で敢えて手紙を用いることは、それが手紙であることにより意味を与えるというのは非常に同感。 きっと、もうこんな綺麗な言葉でお手紙を書く方は少ないんでしょうね。そんなことを思うと少し寂しい。

    5
    投稿日: 2025.09.13
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    男女の往復書簡で書き綴られている小説。 学生の頃読んで印象に残っていたので、改めて読んでみたら内容を全く忘れていてこんなに悲しくて寂しい内容だったのかと思いました 昭和な感じがします

    2
    投稿日: 2025.09.02
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    恋人や夫婦でなくても、この世界のどこかに自分のことをとてもわかってくれている人がいて欲しいものだと思う。

    2
    投稿日: 2025.07.20
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    手紙のやり取りを通して、夫婦であった2人が過去と向き合い、またこれまでの人生を振り返り、未来へと目を向けていく様子が描かれていて、晴れやかな気分で読み終わることができました。 手紙を書くという行為は、自分と向き合うということなのかなと思います。

    4
    投稿日: 2025.06.28
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    人って愚かな生き物だなぁってつくづく思う。ほんの一瞬の小さな決断が小さな傷を生みその傷は癒えるどころか大きくひろがりやがて人を思いもよらないほどいたみつけていく。有馬が由香子の職場に会いに行ってしまったことが有馬の人生を大きく変えてしまった。あの日、由香子が有休でも取っていれば有馬が落ちて行くこともなかったのにと残念でならない。いや、有馬が弱かったのた。愚かな男。けれど有馬はいいヤツなのだ。亜紀も愛らしい人。二人の何でもない日常生活が見たかったな。 ずっと泥々と暗い地を這うようなストーリーだが小説の最後は明るい。ラスト近くの新しい登場人物によって有馬の本当の良さ、いや、今まで本人ですら知らなかったような新たな一面出てきて、そのことで亜紀までつられて明るくなっている。そして読んでいる私にもなんだかわけのわからない希望が湧いてきて、幾分優しくなれた気がする。気がするだけですけど。いつも私の本棚の一番手に取りやすいところに置いてある大好きな小説のひとつです。

    4
    投稿日: 2025.06.15
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    外的要因に対して因果を結びつけるのは不可能だ。 自分の納得のいく理由や意味を探したって、それが正解という訳ではない。 それでも考えずにはいられない。 そうでないと苦しい世界で生きられないから。

    1
    投稿日: 2025.06.09
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    お勧めされて読んでみた。 離婚した2人が再会したことから手紙でのやりとりが始まる。 本来はダメ男の話だし、再婚した奥様も障害のある子供を産んでたりであかるい話ではないけれど、全てが書簡でのやりとりのせいか、言葉遣いも綺麗でなんか好きな本になりました。

    3
    投稿日: 2025.05.10
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    ドライで仕事一筋と思っていたお父さんが、最後に有馬さんの字を読んで「懐かしい」と言ったことで心が揺さぶられた。 モーツァルトでの店主夫妻との触れ合いで、離婚の痛みから立ち直っていく姿も感慨深かった。

    3
    投稿日: 2025.04.23
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    あまりにも好きすぎて初めてレビューを書く。 この本を読むと、今まで自分が関わってきた人たちの顔が浮かぶ。もう二度と会えないけど、幸せになってほしいと思う。 運命に抗おうとするんじゃなく、いいことも悪いことも、すべてが自分の業であるという捉え方に共感した。 究極の恋愛小説であり、なにかの節目には必ず読み返すであろう一冊。

    8
    投稿日: 2025.03.29
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    元カノ、元カレ踏ん切りつけれてますか? 終盤主人公が前向きに切り替えた途端色の描写がたくさん入ってきた。

    2
    投稿日: 2025.03.27
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    (2022年9月読了) 手紙のやり取りで進む本。三浦しをん『ののはな通信』、湊かなえ『往復書簡』、夢野久作「瓶詰地獄」等々、書簡体小説が好きなんだと思う。余白を想像できるから。どんな字で書かれているんだろう、どんな状況で、どんな心境で書いたんだろうって。 『錦繍』を理解できる、ちゃんと消化できるのは今(※当時19歳でした)じゃないなと読んでみて思った。もしかしたら一生理解できないかもしれないけど、いつかまた読み直したい。 以下、2025年3月追記 1年半前に宮本輝の全集を読んだとき、『錦繍』読者からのお手紙の返信があった。 「お手紙、ありがとうございました。私の小説を御愛読下さっている由、ありがたく感謝申し上げます。 「錦繍」は、昭和五十三年の秋に想を起こし、昭和五十六年の初冬に書き終えることが出来ました。全篇手紙のやりとりだけで構成された作品を書くことは中学生のときにドストエフスキーの「貧しき人々」を読んで以来の夢でしたが、実際に書き始めてると、私の乏しい能力にはとても手に負えぬ代物で、原稿用紙でわずか三百三十枚の作品を完成させるのに三年以上もかかってしまったことになります。  その間、病気のために一年余り療養生活をおくりましたが、かりにそういう事態がなかったとしても、「錦繍」を創りあげるのに、私にはそれだけの年月が必要であったと思います。けれども、このお返事をしたためながら、いや、あるいは自分は病に臥したればこそ、たった三年間で「錦繍」を書けたのかもしれないとも考えてります。しかし〈生と死〉の問題が、私の小説の基調になっているのは、なにも私が結核病棟での生活を強いられたからだけではありません。  それよりずっと以前、小説家を志す以前から〈生と死〉は常に私の中にありました。この人間界では、多くの観念が発見されては消えていき、多くのイデオロギーが構築されてはついえ去っていきました。現在世界を二分するふたつのイデオロギーですら〈生と死〉の命題に対して、何と無力なことでありましょう。  私は二十二歳のときに、父を精神病院で喪いました。父は何も悪いことをしなかった。それどころか、人の世話を焼き、あげくそれらの人たちには裏切られて事業に敗れた。そんな父の最期が、なぜこんなにも悲惨でなくてはならぬのか。その思いがいつしか私の心を、生きるとは何か、死とは何か、という問題に向けさせていったのだと思われます。そんな下地に立って物を書くようになってから、こんどは私自身が結核病棟での生活を体験するはめになりました。  ちょうど入院した日に、生まれつき重度の小児マヒで四十数年間を寝たきりで生きてきた人が結核で亡くなられました。私はその方が息をひきとる二時間ほど前、自分の病室だと錯覚してその人の部屋に入ってしまいました。私とその人とは、しばらく無言で見つめ合っていました。私は生涯、その人の目を忘れることはないでしょう。  私はしあわせになりたいと強く思いました。生きたいと思いました。だがどれだけ幸福に生きたとしても、行手には必ず〈死〉が待ち受けています。しからば〈死〉とはいったい何であるのか。それこそまず先に人間が学んでおかなければならない思想ではないでしょうか。〈生と死〉の問題こそ究極であることを、私は思い知ったのです。究極に到れば、他事は自ずと解決されていくことでしょう。  紙数が尽きました。御質問の、生き物の描き方が残酷過ぎるという御指摘に簡略なお答えを付して擱筆させていただきます。私はその小説にとって必要とあらば、子供に人殺しでも何でもさせてしまいます。」 私は、この最後の「小説にとって必要とあらば、子供に人殺しでも何だもさせてしまいます」が好きで、卒論で扱おうとしたくらい一時期ずっと誦じていた。もっともっと時が経ってから読み直したい。

    5
    投稿日: 2025.03.25
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    人間臭ささがすごい、とてもいい意味で。離婚した二人の手紙のやりとりを体にとった書簡体小説。 昨今の世間的な価値観でいうと、元夫のやっていることはかなりずれているかもしれない。でもそれは重要なポイントではないと思う。離婚した原因となった事件を振り返り、それが現在のお互いの話になり、未来へと繋がっていくのだという二人の生の物語。 特に感動したポイントは元妻の「今」に対する受け止め方だった。自分に降り掛かった不幸を恨んだり誰かのせいなのだと思っていたが、そうではない、これは私の業でもある。という「今」をちゃんと生きていかなくてはならないのだという場面だった。良い小説だった。

    21
    投稿日: 2025.02.23
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    宮本輝は好きな作家の一人。気がつけば遠ざかっていた。夏の文庫フェアに名を連ねていることは視界の片隅に入ってはいたがようやく手に取った。ああもっと早く読んでいればよかったと思ったし、今読んでちょうどよかったとも思った。かつて夫婦だった二人が別れ、返事を期待せずに出した一通の手紙から始まる往復書簡。バブルがはじけるかはじけないかぐらいの時代。まだ父親の威厳があって、娘といえども父の許しを得て結婚なりなんなりしていたような時代。袖振り合うも他生の縁とはうまくいったもので、どんな形であれ、縁は縁なんだ。

    0
    投稿日: 2025.02.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    かつて夫婦であった男女の文通。綺麗な文章でありつつも、それぞれの感情などがしっかりと伝わる内容だった。「生きていることと、死んでいることは同じかもしれない」という言葉。 まさに生きているということは死ぬということで、常に着実に死に向かって生きている。その人生の中で、宇宙や生命の不思議なからくり中で、「みらい」に向かって進むことの覚悟みたいなものをどちらの文通の最後に感じた。おもしろかったです。

    2
    投稿日: 2025.02.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    感情がこもり過ぎて、痛かった。 p190「しかし私は、必ず清高いを、たとえ完全でなくとも、出来うる限り普通の人と同じ能力にまで近づけさせ、ちゃんと自分で働ける人間に育ててみせます。お茶汲みしか出来ない人間でもかまいません。何かの製品をダンボール箱に詰めていく作業しか出来ない人間でもかまいません。私は清高を、ひとりの人間として、ちゃんと働いて、たとえわずかのお給金であっても、堂々と貰って来ることが出来る人間にしてみせます。」

    1
    投稿日: 2025.01.15
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    何年も前の事ですが雑誌で宮本輝さんがご自分が不安神経症であるということを話していらっしゃいました。その症状が当時の自分と全く同じで、初めて自分の病名を知りました。 同時に宮本輝という作家も初めて知ったので読んでみようとこの小説を手に取りました。そしたら案の定(?)面白かったのです。雷に打たれたようでした。本を読んでそんなふうに感じたのは初めてでした。大切な一冊です。

    0
    投稿日: 2024.12.30
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    「この人生には、死ななければ理解出来ない事柄がたくさん隠されているに違いありません」 死んでしまってから理解も何もないだなんて、そんなこと言ってたらキリがない。なにも自分自身が「死ななければ」とは限らない。残された者だからこそ「理解出来る事柄」だって、きっとたくさんあるだろうから。 思いを伝えること。もどかしくてたまらない。ましてや手紙なのだから。間に挟まる時間と空間、言いっぱなし、書きっぱなし、解釈の不可避と危うさ。直接会って話すことが許されず、あえて危険な橋を渡らざるを得ない。そのくせ、どこか長閑さすら見受けられ、矛盾のようなものが焦ったい往復書簡による物語だったけれど、殺伐としたやりとりに終始し消耗してしまうよりは、むしろ、その“長閑さ”によって救われたことのほうが多かったかもしれない。いい歳した大人同士、だからこその思いやりすら感じられた。 石田ゆり子さんの愛読書ということで手にした一冊。彼女は若い頃から何度も読んでいるという。読後、なぜか彼女の人生にまで思いを馳せてしまって、もどかしさやら、何やら悶々と…まったく大きなお世話ということですな。

    10
    投稿日: 2024.11.18
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    始まり方がもう好き。亜紀と靖明、2人の書く文章は胸の詰まるような美しさがあり(同じ作家さんが書いてるからそれはそうなのだけど)、限りある期間であったとしてもこの文通を難なくこなす2人はやはりかつて間違いなく愛し合ったのだろうと思った。靖明さんは少しクズ感があり現代で言うメンヘラ製造機のような気が終始したけど、「あなたは魅力的な女性でした」なんて書かれた文章で部外者の私もウッと心を掴まれてしまう。2人が再会したのもきっと、導かれるような運命だったのだろう。

    1
    投稿日: 2024.11.16
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    亜紀のエピソードが長く、相手を責める感じがムズムズしてしまってしばらく置いておいた本だったけど、再開したら最後までだんだん明るくなってくるところに引き込まれて一瞬で読んだ。「生きていることと死んでいることは紙一重」。人選どんなにどん底があっても、そこから流れる月日を経て上向きに生きれるようになるんだなと思った。

    0
    投稿日: 2024.11.04
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    作品に出てくる様々な情景描写がありありと頭の中で再現され、美しい世界観に浸るとともに、人生における生と死の考え方について熟考できた作品でした。 手紙のやりとりも、まるで過去を昇華させているようで、2人の未来が明るいものであるようにと願わざるを得ませんでした。

    0
    投稿日: 2024.10.26
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     タイトル・表紙装画・内容とも、"美しい"の一語に尽きる一冊です。美しい織物や紅葉を例える「錦繍」‥これからの季節にピッタリです。  2人の男女の往復書簡だけで構成され、木々の葉が何色もの色糸で織りなすような、美しくも切ない大人の物語です。1982年刊行の古い作品ですが、時代を超越した名作と感じ入りました。  10年前に離婚した亜紀と靖明が、蔵王のゴンドラで偶然に再会します。靖明が謎の女・由加子との無理心中?自殺?事件の果ての離婚でした。  この再会以来、薄れていた記憶や想いがもたげてきて、亜紀は二人が別れる原因になった事件の真実や靖明のその後と近況も気になり、自分の本心と10年の来し方を靖明に宛てて手紙を書く、というところから物語が始まります。  およそ1年に亘る、14通(亜紀から8通、靖明から6通)の手紙は、明らかに時間をかけ考え抜いて綴られ、返信までの"間"もゆったりとした時間を挟み、現代のSNSとは天地の差です。手紙を媒体にして、2人の退廃・情念思考が浄化され再生していきます。読み手にも深い余韻を残してくれます。  離婚した夫婦間で、こんな古くさい往復書簡はあり得ないとか、文学的で格調高い長文手紙は無理とか、今の夫婦間の障害にならないのかとか、種々指摘し詮索するのは野暮というものでしょう。  綴られる手紙の文章からあふれる人の心の機微、色彩や温度が伝わる情景描写に、素直に酔いしれてみてはいかがでしょう‥。

    96
    投稿日: 2024.10.18
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    多少、時代を感じる部分があったけど、キレイな文章で、ゆっくりと噛みしめながら読んだ。 過去から、今、そして未来へ… じんわりと心に刺さりました。

    0
    投稿日: 2024.10.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    蔵王のゴンドラに子供となった女性が出会ったのは、ある理由が原因で別れた男性であった。女性は男性に手紙を送り、それがきっかけにふたりの往復書簡が始まる。 物語すべてが二人の手紙だけの構成。はじめはお互いの境遇や別れる原因となった出来事に関するやり取りが中心であるが、次第に現在の生活に話題が移り、手紙をやり取りする二人にも心境の変化が表れてくる。 手紙は相手への連絡が目的ではあるが、同時に自分の気持ちを整理し気づいていなかった思いを掘り起こす意味があるのだと問う。 それにしても、この男性は女性と比べるとあまりにもだらしなく不甲斐なく感じてしまうのは気のせいだろうか。

    1
    投稿日: 2024.09.29
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    全編が手紙のやりとりで進んでいくから、二人だけの秘密を覗き見ているような背徳感がある。 お互いが特別な感情を持った相手に手紙を書いてるわけで、愛情も憎しみも寂しさも自分でもよくわかっていない感情も全部詰め込んだ言葉を手紙に綴っていて、一文一文に無駄が無い。 密度が高い綺麗な小説だった。

    16
    投稿日: 2024.09.17
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    とんでもない事件をきっかけに離婚した男女が、偶然再会を果たしたことをきっかけに、手紙のやり取りが始まった。 本書はその手紙だけで構成される書簡体の恋愛小説だ。 1980年代に書かれた本書には、当然現在のような通信手段や娯楽は存在しない。そして、手紙という通信手段を使わなくなった私達が、手紙を書くという力も同時に失ってしまったのだと痛感した。手紙に綴られる内容を事実だけ書き連ねれば、ただのドロドロの不倫劇なのだが、その日本語の文体の美しさ、出来事のとらえ方に引き込まれる。 物語以外にも楽しむ要素のある小説だった。

    1
    投稿日: 2024.09.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    内容はさておき、確かに皆さんが言うように 文章が美しいと言うのはなんとなくわかる気がします。 文章の美しさについては説明できませんが、 物語が静かに、しっとり?進んでいく感覚がありました。(語彙力。笑) ですが、私はやっぱり感情移入はできませんでした。 元旦那が元妻宛ての手紙にて、 愛人がいかに美しかったかや、忘れられない甘美な思い出など綴ったりするとこなど、特に。笑 (こんな手紙読んでよく返そうと思ったな。元奥さん。笑笑笑笑) 元旦那に対しては終始、嫌悪感しかありません。笑 でも、 モーツァルト喫茶店のくだりは心温まって、 とても好きです♪

    5
    投稿日: 2024.08.24
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    1年足らずの手紙のやり取りからなる物語。 語られる過去は壮絶だった。 登場人物それぞれに乗り越えてきた過去があり、今があり、未来がある。 年配の男女の話かと思いきや主人公はまだ30代。 それぞれの生きる理由を胸に明るい未来が待っていたらいいなと願わずにはいられない。

    2
    投稿日: 2024.08.18
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    宮本輝の代表作の一つである恋愛抒情小説。元夫婦である男女の文通という形式をとりながら描かれるピュアな風情に包まれている作品。かつての円満な夫婦生活は、夫が元恋人に無理心中を図られるという悲劇的な事件によって幕を閉じてしまった。しかし、数年後に山形の蔵王のロープウェイの中で運命的な再会を果たし、2人は運命の悪戯を確かめるように文通を始め、それぞれの新しい人生の門出を確認し合っていく。純粋な文学小説の側面を持ちつつ、大人の男女の切ない思い合いを鮮やかに描き出す中短編小説。

    1
    投稿日: 2024.08.15
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    職場の人から宮本輝をおすすめされて読んでみた小説。初めて手をつけてみましたがとても面白い。恋愛小説ですが、お互いの手紙やりとりを通じて物語が描かれています。その手紙のやりとりが情緒たっぷりで素晴らしい。

    3
    投稿日: 2024.08.07
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    夫婦だった男女2人の手紙のやり取りで 哀しい過去から進んでいく物語ですが  逸品。 人の内的な葛藤や昇華、成長を描いたとつとつとした話。この先何回か読み直すたびに、新たに見えてくる物があるだろうなぁ。

    3
    投稿日: 2024.07.28
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    宮本輝さんにはまったのは、大学生の頃。 この本もたしか、20歳過ぎくらいに読んだ。 まずは往復書簡形式の美しい文体が魅力。 そして、過去の出来事から受けた傷を持ちながら生きていく大人の姿。 印象に残っているのは、モーツァルトのレコードをかけてくれる喫茶店。 「木やから、よう燃えよる」 人生について、色々考えさせられた。

    5
    投稿日: 2024.06.21
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    『錦繍』 著者:宮本輝 / 出版:新潮社 ---------------- 2024年現在で1番没頭して読めた本『錦繍』 昭和60年に発行された本書は、古いながらも 男と女の恋愛観や貞操感をみごとに表現しています。 ざっくりとした内容。離婚した男女が10年振りに 奇跡的にであい、そこから文通がはじまります。 最初は過去を精算するための内容ですが 後半は、自分らしく生きるために自分の 今の境遇や本音を綴り合い、過去の呪縛と 決別し、未来を生きていくお話。 今も昔も恋愛の本質は変わらない。そして、自分と 向き合う方法も変わらない。それは書くということ。 手紙でもメモでも、殴り書きでもいい。 自分と向き合うことが、相手と向き合うことなんだと 改めて、気づくことができた学びの1冊。

    1
    投稿日: 2024.06.14
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    なんという読み応えのあるお話なのでしょう。読み終わった後の心の充実感が半端ない上に、二人の生きる強さに圧倒される。亜紀と年齢が同じなだけに、経験の深さと人物の醸成のされ方が凄いと思ってしまった。10年以上歳が離れてるように思う。 あの事件の真相は何だったのか、という単純な話じゃなかった。 あの事件あったけど、その後あなたはどう生きて何を思って来て、今はどうしてるのか。そしてこれからはどう生きるのか。ということを2人が些細なことから壮大な考察を経てに答えを出していった過程が圧倒的だった。モーツァルトのくだりはやばい。シンフォニー聴きたくなるやろ。 あと令子ちゃんの「あんたの奥さんだった人、私好きやわ」の一言に泣いた。なんか、それで亜紀が報われた気がした。 結ばれなかったけど、結ばれてる人っているのね。

    2
    投稿日: 2024.06.13
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    すごく久しぶりに読み返してみた。 最初に読んだのは中高生の頃だったと思う。 大人になって、妻になって、母になって読み返してみると感じ方が変わる。  思い合っていたのに衝撃的な事件をきっかけに離婚した靖明とと亜紀。離婚から10年後に偶然再会する。亜紀から始めた手紙のやり取りによって離婚の原因となった事件の真相や現在の様子がわかってくる。  亜紀は靖明と離婚した後再婚してるんだけど、その相手にも裏切られてて、、、2回の結婚でどちらの相手にも不倫されるって可哀想だなって思ってたけど、亜紀が(正確には亜紀のお父さんが)そうさせてしまってるんじゃないかと思い始めました。もちろん不倫する方が悪いんだけど、旦那さん達は家で心地良く過ごせたのかな?亜紀はどれくらい心を開いてたんだろう?  亜紀のお父さんは会社社長で、一人娘の亜紀を可愛がり、良かれと思って先回りして守ってきた。結婚相手もお父さんが選んだ人達で、1人目はお父さんの会社の社員、2人目は大学の助教授。どちらの結婚も亜紀の実家で同居。何不自由ない生活でも旦那さんからしたら息が詰まるし、プライドが傷付くかもしれないし、奥さんは世間知らずだしね。同じような境遇の人を選ぶか、お父さんから距離を置かない限り何回結婚しても同じ結果になりそうな気がする。対等じゃない関係って続かないよね。  久々の宮本輝さん。面白かったです。 『夢見通りの人々』『泥の河』辺りも読み返してみようかな?

    16
    投稿日: 2024.06.11
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    最初から最後まで手紙の内容しか書かれてないのに色んな人の想いが錯綜する不思議。 カフェ店主やパパや今カノが良い人なんだわ…

    6
    投稿日: 2024.05.03
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    美しい。 静かに 決して穏やかではない内容の手紙のやり取りが 静かに続いていく。 暗い中に光はあった。 しかしどうも好きになれない男たち。 人の世 人の心は美しいものばかりではないと 分かっている。 でもここまで包み隠さず それも美しい日本語で書かれると 感情の整理が追いつかなくなる。 それでも最後まで引き込まれた。 おもしろいおもしろくないじゃなく ぶっ飛んでる本の記憶に仲間入り。

    8
    投稿日: 2024.03.12
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    過去が今を作り、今でさえ未来の何かを担っている 宇宙のカラクリ 人の業とは?を考えた。 どの主人公の顔も姿も街並みもリアルに感じ取ることができる一気読み系の作品だった。 哀しい出来事、進む時間、 自分の気持ちと向き合うにも時間が必要だなとも思わされた

    2
    投稿日: 2024.03.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    往復書簡という形式の小説。 SNSやメールと違って、手紙はすぐに届かず、届いてもすぐに読む必要もすぐに返事を書く必要もない。だからこそ、自分の気持ちを整理すること、そして冷静に相手の言葉に耳を傾けることができる。そのようなことに改めて気づかせてくれた作品。 あらすじの中の「男女」「愛」というワードから勝手に想像していた話とは全く違っていた。もっと苦くて痛くて辛い物語だった。 2人のその後は想像することしかできない。しかし、根拠はないが2人ともそれぞれなんとかやっているのだろうと信じることができる、そのような物語の終わり方だった。 各手紙の最後に日付が入っていて、2人がどのようなタイミング・ペースで手紙を書いていたかがわかる。私がそのことに気づいたのは最後の手紙を読んだ時だったので、再読する際には日付に気をつけて読もうと思う。 【再読後の感想】 日常の何気ない会話や見た景色など、私たちは様々なことに影響を受けて、考えたり行動したりしているのだなと思った。作中で言われている通り、過去と今は繋がっている。 往復書簡という形式の小説だったから、2人の心のうちを交互に覗くことができた。とはいえ、手紙は人に読んでもらうのを前提に書かれたものだから、きっと完全に素直に書いたわけではないのだろう。そう思うと、この小説がより一層奥行きのある作品であると感じられた。

    8
    投稿日: 2024.02.24
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    開成中高の国語教諭が中学生時に同校国語教諭から勧められた、という話から手に取ったもの。 あらすじを見て期待出来ないと思っていたが、やられた。昭和の小説らしい文章の美しさに。言葉選びのセンスと両者の奥ゆかしさが、か弱く心に響く。 宮本輝氏の舞台はいつも自分に身近なところであり、風景が重なっていく中で、錦繍の映える秋が決めてになる。 他方、昭和の作品にいつも感じる男達の身勝手さ。それを受け入れて振り回される健気な女性という偶像化が、男の身勝手さを倍増させる。この時代が今を作ってきた。未だに変われていないところも多々ある。大いなる反省が男達には必要だ。

    1
    投稿日: 2024.02.17
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    素晴らしかった。有名な往復書簡の小説。 かつての夫と、蔵王のゴンドラの中で偶然再会をし、長文の手紙のやり取りが始まる。 10年前になぜ離婚しなければならなかったか?  納得しないまま別れることになったある事件。 その真相と、10年間の空白を手紙が埋めていく。 お互いに過去を見つめ直し、呼び起こし、伝え合う。辛いことも怒りも悔恨も。 そして「今」に至り、お互いに生きる理由と糧を見出していく。 蔵王のゴンドラからの錦繍と、締めくくりの錦繍が2人の背中を押している。 人の業とは何なのだろうか。 粋な遊び心?亜紀と靖明…秋。

    18
    投稿日: 2024.02.16
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     究極の恋愛もの、というふれこみをどこかで見たので楽しみに読み始めたら前半は不穏な空気で、ちょっと思ってたのと違う?と思ったけれども…  亜紀は有馬と別れたくなかったのに。瀬尾由加子との関係はなんだったの?なぜ私の子どもは障害を持つ子なの?私は何も悪いことをしていないのに?ずっと理不尽さを燻らせていて、その気持ちを押し殺して、それでも清高を立派に育て上げようと努力していた時に有馬と再会してしまった。  瀬尾由加子との経緯を知り、憎んだ相手も苦悩していたことがわかった。有馬は確かに自分のことを愛していた、不倫はしたが彼も別れたくなかったのだ、ということもわかった。ようやく過去に折り合いをつけることができた。そして、それぞれの未来に向けてエールを送ることができた。あぁ、大人の恋愛だな、と思った。  時代的に仕方がないのかもしれないが、障害や人種差別的な表現があるところが気になった。  

    2
    投稿日: 2024.02.04
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    一度別れた夫婦が偶然再会。 過去に起きたある事件を中心に書簡形式で話が進んでいく。 終始男に振り回されっぱなしな女たちには理解できずいらついたけど、古典的な男女の手紙のやり取りは可愛くはあった。

    0
    投稿日: 2024.02.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    本当に、 素晴らしい本でした。 今も、読後の余韻に浸っています。 素晴らしい本でした。 最初は、ストーリーが、興味深く、 面白いなあ、 と読み進めていたのですが、 終盤は、 本当の意味の、 生きる強さを、感じることが、 できました。 私も、 自分にできることを、 精一杯、 生きていこうと思いました。 素晴らしい本との出会いに感謝。

    1
    投稿日: 2024.01.27
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    古典的な物語は強い。audible に最適な作品。太平洋戦争の指導者について祖母が語る場面は説得力があった。

    1
    投稿日: 2024.01.20
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    はじめて書簡体小説を読んだ。現代では随分と廃れてしまった手紙のやりとりは、生まれた時から携帯電話のある20代半ばの私にとって、まどろっこしくて、愉快で、粋だった。わたしは誰かのために綴った文章が好きだと改めて感じさせられた一冊でした。何ヶ月にもわたって何枚にも及ぶ想いを綴ることを、その返事をまた長い時間をかけて待つことを、もう私は二度と経験することができないんだろうなと思う。恋愛のあれやこれやに纏わる小説はいくつも読んできたけれど、一度結婚して、離別した男女が再会を果たすところからはじまる物語は新鮮だった。次々と明らかになっていくお互いの過去のこと、会わなかった日々のこと。それを徐々に追い越していく「現在」のこと。もう2度と会えなくなったとしても、互いの存在を思いあってまた別の道を歩んでいくことは彼等なりの愛だったと思う。

    1
    投稿日: 2024.01.09
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    なにを思ったか約20年ぶりに読み返した。 いつのまにか自分が主人公たちと同じ年になっていた。 手紙形式で話は進み、とにかく言葉が美しい。 ああ、生きるとはなんと辛いのだろう。 話は決してハッピーエンドではないけれどそれでもお互いがそれぞれの人生を意を決して進みはじめる場面で終わる。 それは希望に満ちた場面とも読み取れる。 亜紀の父の「懐かしい字やった」。 ここが私の感涙ポイントでした。 人生は思い通りにいかない。それでも生きていく。 それを思い知らされる本だった。

    5
    投稿日: 2023.12.30
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    昔の独特の話し言葉 タイトル通り、二人が織りなす手紙の中の語りかけが美しかった。 今だとLINEでのやりとりになって もっともっと返事をせっついて、 なんなら話した方が早いねって電話したりして、 結局、またモトサヤになったりして…。 手紙だからゆっくりと、冷静に、 流されずに、話し合いができるのかな。 今だったら手紙のやりとりは、 男性はすごく嫌がりそう…w ただすごく思うのは、 大事な人ひとり、 どうして大事にできないのか。 守りきれないのか。 簡単に手放すのか。 傷つけたら癒せよ。 壊したら治せよ。 それが責任をとるということではないの? 愛する人とはどこまでも、一緒にいてなんぼと 私は思うから。 愛する人なんて人生で、そうそう出会えるものでもないから。 さようならって、なるべくしてだとしても、私ならしたくない。

    2
    投稿日: 2023.11.29
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    Go有田さん 生まれもった境遇や才能の差を受け入れて、どう生きるか、出会う人たちとどう関わるか、ということを考えさせられた小説

    0
    投稿日: 2023.11.10
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    宮本輝という小説家の、最も脂の乗った作品が『錦繍』だと思います。 蔵王の鮮やかな紅葉の描写ばかり記憶に残っていましたが、久々に読み返してみると最後の手紙のやりとりが凄く良かったですね。 過去を打ち明け、清算し、前に進もうとするふたりの姿と、それを支える家族の存在。温かさしかないです。 星島照孝氏の「懐かしい字やった」という一言に、この小説のすべてが現れているような気がします。 衒いがなく等身大で、なおかつこれほど美しいストーリーを生み出せる作家は、宮本輝以外にはいないと思っています。

    1
    投稿日: 2023.11.09
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    宮本輝さんの文章のきれいさ。もっと読みたい。先に進みたいという読者欲を持ちながら、読み進めた。手紙だけのやり取りはまるで、東野圭吾の『手紙』を思い出したが、愛し合っていたが故に、離婚せざるを得なかった2人がどこまでも切なく、でも前に進もうとする希望を感じることができた。亜紀の周りにいる父や喫茶店〈モーツァルト〉のご夫婦、有馬の一緒に住んでいる令子。昭和を感じながら、秋という季節に読めた嬉しさ。色んなことが重なって、とても楽しい読書となった。2023.10.18

    2
    投稿日: 2023.10.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    かつては夫婦であったが、壮絶な出来事により離婚した男女、有馬と亜紀。 秋の紅葉深まる蔵王で偶然再会し、手紙のやりとりが始まる。 最初は謎が多く、それぞれの性格を探りながら読む形となるが、次第に離婚の事情とその後辿ってきた厳しい人生が明かされていく。 生きていても虚無の中で生活していた亜紀。 「生きていることと、死んでいることとは、 もしかしたら同じことかもしれない。」 亜紀の苦しい心情に共感し、何とか立ち直って欲しいと願う一方で、破れかぶれに生きている有馬には、甘さを感じ怒りすら抱く。 手紙のやりとりを通じて、お互いの過去の事実を知り、今を見直し、未来を変えていく事になる。交わる事のない2人だが、思いは通じた気がした。女性の方が強く逞しい。 手紙だけで物語が成立する珍しい小説。 四季折々の美しい文章で綴られた手紙が、雰囲気を作り素晴らしかった。現代のSNSも便利だが、手紙もこれまた味わいがあり、良いもんだなぁと感じた。

    20
    投稿日: 2023.10.14
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    読み終えてから余韻が凄くて誰かとこの感情をシェアしたい気分です。 なぜ愛情があるのに裏切るのか、また別れなければいけないのか。女として許せない気持ちも分かるし、それでも愛してるなら自分の気持ちに従って欲しい気もします。別れたから愛し続けられるのかもしれません。そばにいたら許すことはできないのかも。

    1
    投稿日: 2023.09.28
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    往復書簡ですすんでいく物語。最初女性の文章が冗長だなと思ったのですが、双方のその後の人生が徐々に明らかになりひきこまれました。

    4
    投稿日: 2023.09.11
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    この小説を読んでみて‥最初はあまり パッとしなくて読んでいくにつれて 人間の生命や憎しみなど分かってきた。

    1
    投稿日: 2023.09.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    死生観の話が色濃く出ているこの作品。生きていることと死んでいることが同じであるという話に納得できるほどまだ自分は歳も経験も重ねていないため、全体的に刺さらなかった。 自分の業は何なのだろうと思う。 何十年後かに読んだらまた変わるかも。

    1
    投稿日: 2023.09.06
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    往復書簡で綴られるこの物語は、始めは暗いけれど次第に未来に向かって再生されていく。日本語ってなんて美しいんだろう〜って感じた!

    1
    投稿日: 2023.08.23
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    情景が目に浮かぶ こんなに綺麗な文章を久しぶりに読んだ気がする。小説なのに、映像が目に浮かび、登場人物の心のヒダみたいな部分まで読み手に感じさせる、読んで良かったと心から思える一冊。

    0
    投稿日: 2023.08.12
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    書簡体で読みやすい。 石田ゆり子さんのおすすめとあり、恋愛小説というふうに説明されていたけれど、この恋愛に 私は少しも共感できず、素敵とも思えなかった。

    0
    投稿日: 2023.08.12
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    別れた夫婦の文通… 別れたのにそんか素敵な関係になれるお二人の人柄は読んでいてせつなくなります。 それぞれの人生をそれぞれの立場と視点から一緒に読み進めていけるのは新鮮でした。

    4
    投稿日: 2023.08.06