
総合評価
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powered by ブクログ吉村昭の作品の深さは分かっていたつもりですが、この作品の凄さは破格です。ほんの少し前の日本の多くの村々で営まれていた過酷な日常。これがムラで生きていた原点なのかと今更ながらに唸ってしまう。
1投稿日: 2014.02.11
powered by ブクログ全体を読んだ後の一番の感想は、「暗い」である。 ただ、それは、結末が不幸に終わっていることに引きずられている面もあると思う。 読み返すと、主人公の伊作や村人がどのような手段であれ懸命に生きようとしていること、そして、伊作自身の成長がテーマなのではないかと感じた。
2投稿日: 2013.12.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
お菓子とか食べながら読むと、心から申し訳なくなる。 リアリズムに徹した描写が厳しい生活を営む彼等を、写実のごとく淡々と描写する。 その描写こそが、生きる、それだけが生活の目的である村人たちを的確に表している。 因果応報という言葉を、思い出した。
2投稿日: 2013.09.30
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唐突に読んだことの無い作者に手を出してみました。 暗い。終始、真っ黒な荒削りの木版画の印象。そこへ、赤色の布が鮮やかに翻り、悲しい結末へと導かれる。感情を抑制した文面。貧しい小さな小さな漁村での少年の成長・心の内と村の移り変わりを淡々と記す。 最後まで、救いはない。というかこのような環境で生きてきた者にとっては、救いがあるもないも、当たり前、仕方のないことなのだろう。あまりの貧困さ故、体の動く家族は年季奉公にいって、お金を得る。そして、あえて気候の悪い夜に塩釜で火を焚き、船を座礁させ、積み荷を奪う。そうしなければ生きていけないから。良い悪いではなく、否、悪いことだとわかっていても、生きるために、昔から連綿と続けてきたこと。そして、罰が当たったというのが妥当なのかわからないが、2年続けてきた御船さまは天然痘を運び込んできた・・・ 最後、伊作が帰ってきた父親の元へと船を漕ぐシーン。母と弟・妹を亡くしてしまったことだけではない、3年間の想いがごちゃ混ぜになり感極まる。 孤立した村の閉ざされた因習。輪廻観も村独自の考えが浸透しており、伊作が時折死生観を回想するのも、独創的というか、閉じた世界ではそれがすべてなのだな、と。 さて、小説にはエンターテイメントいうか楽しさ、感動とかを求める性質の私としては、面白い本とは言い難い。が、淡々と書き進められ、ノンフィクションかと思わせる描き方はスゴイと思った。
2投稿日: 2013.08.25
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弟オススメで一気に読めた。 内容は江戸時代の小さな漁村が冬の夜の海を航海する船を火でおびき寄せて座礁され、その積荷や船の木材を回収し、乗組員を殺すというもの。ただ、その「お船様」という行為は特に悪いものとして描かれておらず、むしろそれが無いと家族が飢え死にしたり奉公に出されてしまうという意味で神からの贈り物として描かれている。 心が辛くなることもあったが、これがいわゆる村社会(日本社会)の仕組みなのだと感じた。人が知らず知らずのうちに作り上げていく判断基準となる宗教観や価値観というものが如何ほどのものかを知ることができる。 これは憐れむ話では全然ない。むしろ自分たちの存在がその村のおかげで輪廻していて救われている分、現代よりも満たされている部分もある。 これを読むと今までの自分の人生がどう規定されているのかを知ることができるかもしれない。誰だってこの村に生まれ育てば「お船様」を願うことになるからだ。
1投稿日: 2013.06.24
powered by ブクログ吉村昭の9作目。今回の作品が最も何が起こるのか分からないまま後半まで話が進んでいった。結末は悲惨。こういうおどろおどろしい文章を淡々と書き進める作風はいつ読んでも良い。また新しいものに手を出したくなる。次は何にしようかな。
1投稿日: 2013.05.08
powered by ブクログ冬が近づいてくると、身ごもった女性が船にのり海へ出てお船様がきますようにと祈祷する。 冬になると、お船様の目印になるように、夜を通して浜辺で炎を焚く。お船様は、海や山のように村に恵みをもたらし、お船様がくると村からは歓声が噴き上り、狂ったように体をはずませ、中には今までの飢えにおびえつづけた生活の苦しみと悲しみがよみがえり、肩を波打たせ激しく泣く者もいる。 お船様にある死体は、村の風習にしたがい火葬する。生き残っていた者も殺害し、同じく火葬する。 積み荷を降ろして家に運び入れた後、痕跡が残らぬようお船様を木片にまで解体し、山中にばらまく。積み荷が村全体に配られたのち、その恵みをありがたくいただく。 漁村に古くから伝わる過酷な風習を書きながら、生きるために寄り集まる村という共同体の有様を詳細に書く。生きるために集うという、根源的な共同体の様子を記録文学として歴史に残す。
1投稿日: 2013.04.15
powered by ブクログ2012年11月20日読了。貧しい海辺の漁村、時折訪れる難破船を「お船様」と呼び、その積荷・木材などの供給を頼りに厳しい環境を乗り切って性買うとしていたが・・・。ひょんなことで友人Kより送られた本、著者の名前だけ知っていて読むのは初めてだったがなんとも濃密なリアリティ・迫力が感じられ大変面白かった・・・こういう作品を書く人だったのか。苛酷な環境でサバイブする人々の葛藤を写実的に描くあたり「蟹工船」などにも通じる感覚があるような気もするが、文章力とへんな政治的イデオロギーが感じられない分はるかにこちらの方が上に感じる。これほどまでにして、人々がこの村に執着する理由は何なのだろう・・・?とも思うが。出稼ぎから帰った男たちのエピソードなどに希望とも絶望ともつかない重いものを感じる。薄い文庫本だが、実に濃密だった。
1投稿日: 2012.11.20
powered by ブクログ食物も少なく、貧しい漁村。 その漁村では、毎年とある行事が行われていた・・・・・。 貧しい漁村に生きる人々の暮らしや葛藤、貧しさ故の悲劇を淡々と、丁寧に綴った小説。村に住む少年の目線から物語が語られます。 季節折々の風景や情景描写が素晴らしく、映画を見ているようにその光景が目に浮かびます。 明るい話ではないし、重く物悲しくい作品ですが、深い印象を残す作品です。 重くて悲しいけれど、鬱々じめじめと引きずるような暗さではなく、もっともっと心の奥深くに響くというか。 神保町の本屋で "裏・夏の100冊" として売られていて、何となく惹かれて購入した作品ですが、まさに"大人の為の夏の課題図書"っていう感じがします。 ある程度の経験を経て大人になったからこそ、重さ・暗さを超えた部分を感じられるようになったのかなあ、と思いました。 数年前までは、ハッピーエンド以外の本は意識的に避けていたのですが、ここ1年ほどはようやくこうした重さからも逃げないようになってきました。
1投稿日: 2012.02.18
powered by ブクログ父の本棚から拝借して、初めて読んだのが中学生の時。一気に読み切り、その夜は恐怖で眠れなかった。 今でも繰り返し読み返す、吉村昭の「破船」 徹底した取材と情報収集を下地に、静謐でいて鋭く写実的な筆致を誇る、ノンフィクションの帝王、吉村昭。 「破船」は江戸時代、とある漁村の因習が産み出した村の崩壊までの物語。 この小説に限っては多分フィクションだろうと思うが、どこかモデルになった地域があるのだろう。吉村昭の緻密な文章はまるでその現場に、その時代に居合わせた様なリアリティを持って立ち上がってくる。 とにかく怖い。恐怖というより戦慄を感じる。 自分達が生きるために行っていた日常の営みが、実は大きな別の意味を持つ行動であり「ムラ」という閉じられたコミュニティの無知が、集団の暴走が、村人達全員を破滅へと押しやっていくまでの感覚が、状況が、全て詳細に語られるからこそ怖い。 そんじょそこらのホラー小説では味わえない「人間の愚かさ」が生み出した恐怖をとことん味わいたければ、間違いない。この本しかない。
1投稿日: 2012.01.24
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極貧の漁村で伝わる闇夜で火を炊く「塩焼き」と呼ばれる風習。 成人した主人公は、それが遭難した船をおびき寄せ座礁させるためのものだとはじめて知る。破船となった「お舟様」から運び出された積荷は村人に分配され、船員は全員殺される。 「お舟様」は、村に恵みをもたらす慶事であった。 しかし、ある年の「お舟様」は村に厄をもたらすことになる。 食えない時代の人々が、生きていくために受け入れる数々の不条理。これほどまでに陰鬱で絶望的な物語をかつて読んだことがありません。
1投稿日: 2012.01.22
powered by ブクログ貧しい漁村の人びとが難破船に追剥行為をはたらき、生活を潤すという奇習がもたらした災いはまさに因果応報といえるんだけど、それだけでは済まされないもの悲しさ。
1投稿日: 2011.12.09
powered by ブクログ生きる事は食べる事。食べる為に働く。働けない物に与える食べ物はない。座礁した「お船様」の積荷を奪って最低限の生活のギリギリのところで生きている村人たち。 村を存続させるために行ってきた事によって、村が消えてしまうかもしれない危機に陥ってしまい、希望が見えない話でした。 とても迫力のある物語でした。
1投稿日: 2011.11.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
恐ろしいものを,読んでしまった。 読み終えた数日後の私はそんな意識に支配されていました。 後悔に似た,満足感。 読了直後は,ああ,面白い本だった!最高!という気持ちだったものの,翌日,翌々日になってもその余韻は引かず,思い返すうちに,恐ろしい本だったな,と。なんというものを読んでしまったんだろう,という気持ちと,こんな本を読めてよかったという二つの気持ちがふつふつと沸いてきました。 一応はフィクションのようですが,作者のこれまでの作風を鑑みると,恐らくこの話も一部は事実に基づいているのでしょう。 座礁した難破船を襲い,荷物を奪い取る「お船様」という行事によって,なんとか飢えを凌いで生きている村民たち。 この行為自体,村ぐるみの犯罪。でもそれをしないと常に飢えと隣あわせのため,難破船が来ることを祈る行事すらあるという。 この事実にまずゾッとしたのですが,貧困にあえぐ生活ならばこういう行事が行われることも致し方ないのかもしれません。 例の船が座礁してからはもう,恐ろしく,先を読みたくない,と思いながらも読む手は止まらない。アッと言う間に詠み切ってしまいました。 生々しくて,リアルで,胸がつまり,苦しいけれど,これが現実。 事件そのものもさることながら,当時の民俗習慣的なものにとても興味を持ちました。今の時代では考えられないような思想も,当時は正しいものとして受け入れられており,それが普通であった世の中。 うーん、、、興味深い。それによって悲劇がもたらされることもあったようです・・・。 この本は特にラストシーンが印象に残りました。よく考えると,ラストが印象に残るものって私が読んだ本ではあまり多くはありません。 主人公の気持ちが手にとるようにわかり,そしてその父親のことを思うと胸が詰まりました。 全体的に暗い話ではあるんですが,本当に面白かったです。 是非色々な人に読んでいただきたい作品。 それにしても医学の発展・・・特に種痘を生み出したジェンナーwはすばらしい。天然痘怖すぎ。
1投稿日: 2011.11.13
powered by ブクログ貧しい漁村に、おそろしいコミュニティの一面があった。それが「お船さま」を迎えること。 しかし、それも、村人が生きてゆくために考えられた掟。
1投稿日: 2011.10.29
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2011.9.14~27 何とも言えないもの哀しさが残る読後感。ほんの100年位前までは貧しい漁村でのありふれた光景だったのだろう。何も道具がない生活においても生き残りのための知恵と工夫があったこと、そして現代に至る飛躍的な日本人の生活向上スピードにあらためて感心。こんな国は世界のどこにもないだろうが、その根源に興味が湧く。
0投稿日: 2011.09.16
powered by ブクログ久しぶりに吉村昭 およそ8ヶ月ぶりの吉村昭。1982年の作品。 淡々と進むタッチはいつもの通り。しかし今回はすごい。色やにおいが浮かんでくる感じがする。 まさに、目の前で物語が進んでいるような、そんな迫力ある筆遣いだ。 貧しい漁村にとって、難破した船の積荷は宝。難破を誘うが最初の冬は何もなく、次の冬は仕組まれた難破でたくさんの宝が(非合法的に)村に入り、3回目の冬では逆に村民が天然痘ウィルスに冒されてしまう。 当時は不治の病である天然痘患者を船に乗せて送り出すと言うことが行われていたのだろうか。たぶんそうなんだろう。その船が漁村の近傍で難破したことが漁村の不幸だ。偶然なんだが、それが村の生死を決めてしまう。 宝を得ることもあれば、不幸を得ることもある。本作ではぎりぎりの貧しさの中で暮らす漁村の風景が赤裸々に描かれている。それとともに、不条理な世界がそこに立ちはだかっている。 不条理が不条理でないような世界、虚構のようで虚構ではなくれっきとした真実の世界。不思議な世界だ。それをこれほど目の前に展開する吉村昭の力は本当にすばらしい。久しぶりに文学に感動した作品だ。吉村作品の中で私のベスト3に入るな、これ。
1投稿日: 2011.09.15
powered by ブクログ『三陸海岸大津波』に続いて、吉村昭作品。 冬には雪が積もる、リアス式海岸の漁村が舞台。 ワタクシ思わず、東日本大震災の津波被災地を連想してしまいました。 貧しさ故に、周囲を山に囲まれて孤立し、貧しさ故に、他人の不幸(座礁船)を神様扱いしていた村が、逆に罰が受けるというお話。 今の日本みたいに豊かだったら、このような悲劇は無かったでしょうけど。 他人の不幸を喜ぶのは悲劇だし、罰を受けるのも悲劇ですね。 余計な表現の無い、抑揚を抑えた、客観的で簡潔な文体も、この小説にピッタシでした。 感動したっ!以上!!(毎度お馴染み、小泉元総理のパクリ)
0投稿日: 2011.05.20
powered by ブクログ面白くてその日の夜のうちに読んでしまいました。と言っても暗く悲惨な救われない話です。昔の日本の貧しい農村・漁村の暗く、閉鎖的で淫靡で猟奇的?な人々の生活、風習、祭事に興味のある方にはオススメです。
0投稿日: 2011.03.05
powered by ブクログ相変わらず吉村昭は面白い! 特にこの本は淡々とした吉村昭の文体が非常に話しとマッチしてていつも以上にあっという間に読みきれた。 この本を楽しむにはAmazonの書評にもあったけど、事前に裏表紙のあらすじも呼んじゃダメで、なんの前情報もない方がより楽しめると思うです。
0投稿日: 2011.01.10
powered by ブクログ貧しい海岸沿いの村 獲れる魚貝類は少なく、農作物も育たない 飢えを凌ぐもっとも容易な方法は、家族が身を売ること 妊娠した女性による箱膳の蹴り上げ 悪天候の時に行われる塩焼き お船様という難破船 サンマの手づかみ漁は佐渡島で行われていたらしい もともとは能登方面から伝わったもの いずれにしてもここら辺が舞台なのだろう
0投稿日: 2011.01.06
powered by ブクログホラーと見まごう怖さ。ラストシーンが切なすぎる。 フィクションだが、淡々と綴られる寒村の日常に、「ただ生きる」と言うことが難しい時代というものが日本にもあったんだな、と思った。
0投稿日: 2010.08.29
powered by ブクログ一家の主でさえも身を売る、極貧の村。 お船様と呼ばれる難破船は村にとてつもない恵を与えてくれる。 船を難破させるために冬の夜に浜で塩を焼き、お船様を待つ。 しかし、ある冬、お船様が積んでいたのはとてつもない厄災だった。 死者はまた村に戻ってくる。村を出て死んだ者の魂は永遠にさまよう。 そう信じて、厳しい村の生活を父不在の後を守る10歳の少年。 怖いけど、ぐいぐい引き込まれて一気に読んでしまいました。
0投稿日: 2010.03.04
powered by ブクログうわあああああ・・・・・!!! リアルに怖い!怖すぎる!!!! あんまり淡々とした語り口で、史実のような気すらする。 生き延びるために必死で日々働き続けて、大人の男すら身売りをして食いつなぐ、極度に貧しい村には、「お船様」が富を運んできてくれるという信仰があった。それは難破船を誘導して待ちつづけ、その荷を奪い食いつなぐこと。「お船様」に人が乗っていた場合は皆殺し。村人だけが知っている恐ろしいサバイバル的土着信仰であった。しかし、ある「お船様」が来てから、村に恐ろしい事態が起こる・・・・生き延びるためにはかくも人間は恐ろしくなるのか。悲しい。
0投稿日: 2007.01.02
