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夜のある町で
夜のある町で
荒川洋治/みすず書房
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総合評価

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  • 文学は実学である。

    現代詩作家である荒川洋治が98年に出した初エッセイ集。 当時書店で見た時、本書の帯には”エッセイ革命”とあった。 本書が講談社エッセイ賞を受賞し、著者は以後たくさんのエッセイ集を出している。 その出版点となった本書は、荒川洋治のエッセンスが凝縮されている。 詩人である、ということを抜きにして一介の本好き、読書好きとして、 荒川は言葉のちからを信じ、可能性を信じ、人間が人間であるために言葉が必要であると考えている。 「言葉は呪縛ではない。人間のために、目の前にあるものをいとおしむためにある」 「この国が失っているものは心である前に、まずは言葉なのだということがはっきりしている」 だから荒川は文学を実学だという。 人は、言葉で考え、言葉で行動と心象を表現し、言葉で人間をつくる。 文学は実学である、とスッパリ言われると本好きとしては、頗る気持ちがいい。 良い文章とは、知識や情報が書かれたものではない。 では、いい文章とはなんだろうか。

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    投稿日: 2015.11.18
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    荒川洋治の詩は、正直言うとよくわからない。 詩は難しい。 けれど、このエッセイ集は大好きです。 忘れられている、人との繋がり、言葉の重み、作家たち。文章はとても分かりやすく、視点に温かみがあります。

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    投稿日: 2012.04.13
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    ぼくには友だちは三、四人しかいない。 こちらが思っているだけだからニ、三人だろうか。 また、我が家へ人を招くのは 一年に一度あるかどうか。 友だちも客も少ない人生を 選んでいるのである。

    0
    投稿日: 2005.12.02
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    「本を読むのが遅いんです」そういう人に、このエッセイ集を薦めたいと思っている。  作者は荒川洋治という詩人である。だから自然と、詩や文学についての話が多くなる。けれど、困ったことがある。そこであげられた作家のほとんどを私は知らなかったのだ。  彼が口にするのは、忘れられた作家なのである。文学史にも残らない、皆に忘れられた人々。荒川はそういう作家の小さな声を聴き取ってゆく。こんなひとがいたそうですよ、あんなひともいたそうですよ、荒川洋治はそう語る。  本書には何かを「教えてやろう」という気配もないし「主張するぞ」という意気込みもない。ただ静かに、荒川洋治は語っている。  冒頭に「読むのが遅い」人に薦めたいと書いた。それはなぜかというと、この文の"調子"を味わって欲しいからである。読むのが遅い人というのは、きっと考えながら読んだり、あるいは一字一句飛ばさずに丁寧に読んでいる人だろう。荒川の文章は、そういう読み方にこそふさわしいのだと思う。ほんとうにきもちのよい流れだった。  ときに、彼の言っていることは攻撃的になったりもする。なのに、ふしぎとやさしさだけは失われない。まさに"語り口"の魅力があるからだろう。(けー) (追記)この本棚にある山田詠美『4U』のいくつかの作品を、荒川さんはとても誉めていた。『4U』もいつか読んでみたい。

    1
    投稿日: 2005.08.10