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落日燃ゆ
落日燃ゆ
城山三郎/新潮社
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総合評価

258件)
4.3
119
87
29
6
0
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    不作為の罪に問われ処刑された広田弘毅の物語。 まるで一から作ったかのようか小説ではあるが、それは史実と史実の合間に補完される筆者の圧倒的想像力と言語力によるものと思慮する。 これにより、深みやリアリティを担保していて、非常に面白い。

    2
    投稿日: 2025.12.22
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    日中戦争直前の内閣総理大臣 広田弘毅を主人公とした作品。 内閣総理大臣として、外務大臣としての広田の努力とそれを破壊する陸軍の暴走から当時の様子が想像できた。 また、東京裁判の様子も非常に詳細に書かれており、勉強になった。

    18
    投稿日: 2025.11.01
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    「自ら計らわぬ」という生き方。 戦争を回避しようとした広田弘毅がなぜ処刑されたか。 当時の極東裁判のことが詳しく書いてあり学ぶことが多かった。

    11
    投稿日: 2025.10.21
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    東京裁判にて死刑を受けた、唯一軍人ではなかった元総理、元外相の広田弘毅の一生。 知らなかった。 外交官として戦争を始めないように努力した人物。 でも歴史は勝利したものによって書かれるとは正にこの事で。

    2
    投稿日: 2025.09.28
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    黙って自分の運命を受け入れる姿が印象的だった。 知ることができて良かった歴史の人であり、更に彼や極東裁判について学びたくなった。

    2
    投稿日: 2025.06.23
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    こんなにも歴史を面白いと感じたことはなかった。 最も難しい時期に首相を務めた広田弘毅の生涯を描いている。自身の正義を貫くことが人間にとっていかに難しいことか。国を率いる人間であれば尚更のことだろう。 戦後に行われた一連の裁判の展開は、それまでの広田氏の行動を知った後では耐え難いものがある。自身の無実を主張するよう説得に当たった人の気持ちがわかるし、裁判の不合理を嘆きたい気持ちにもなる。

    3
    投稿日: 2025.06.22
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    再読。良い小説。 広田弘毅の人生が軍部の暴走により決定づけられていったことは事実であろう。一方で広田の悲劇性がどこまで「描かれたもの」通りであるかは眉唾ものである。ここに描かれていることが間違っているという指摘ではないが、広田の真意がどうであるか考える余地を残したい。

    0
    投稿日: 2025.05.29
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    やっと読み終わった。難しかった。 『落日燃ゆ』(城山三郎 著)は、太平洋戦争終戦後にA級戦犯として処刑された広田弘毅を主人公に据え、その生涯と人間性を描いた歴史小説です。以下に感想を述べます。 この作品は、単なる歴史小説を超えて、「責任とは何か」「誠実とはどうあるべきか」を深く問いかけてきます。 城山三郎の筆致は重厚でありながら、感情に流されず、史実に基づいた静かな語り口が広田の誠実な生き様と響き合っています。戦争という巨大な悲劇の中で、「誠実であること」がどれほどの力を持つのか、またどれほどの代償を伴うのかを、読者に突きつけてくるような一冊です。

    0
    投稿日: 2025.04.13
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    太平洋戦争前という混迷の時期に外務大臣、内閣総理大臣という要職にあり、何かにつけ好戦的な軍部による横槍に煩わされながら国際協調で日本を守ろうとするも、戦後の東京裁判で戦争責任を問われ、軍人ではない文官としてはただ1人、A級戦犯として処刑された人物、広田弘毅の生涯にスポットをあてた伝記的な作品です。 源義経や石田三成のような、史上の悲劇の被害者に惹かれる人には、とっても刺さる作品だと思います。 ただしかれらを強い武勇や権力、指導力で集団を導いた剛のリーダーとするならば、広田は柔のリーダーシップの持ち主であると言えます。 この作品を読んで私は広田弘毅という人物ほど、<柔>の一字を象徴する人は、なかなかいないのではないかなと思いました。 まず話を聞いて受け止め、知識と状況判断力に基づいた決断を下すというリーダーシップ。 そして彼には<自ら計らわぬ><物来順応>というある意味受け身な人生観が根底にある。 過度に自分を売り出すことはしないし、不本意な場所に飛ばされるという処遇を受けてもこれをすんなりと受け容れ、そこで自分にできることをやる。 終盤の東京裁判においては、死を目前にしても決して抗わず、保身に走らず、責任をとろうとした。 リーダーとしてだけではなく、その人柄も、果ては死生観に至るまでも、すべてが柔。 受け身な人生観と評してしまったけれど、それでいて柔のなかに確固とした信念を内包しているような、そんな柔軟性と包容力の権化みたいな人物として描かれている広田弘毅に魅力を感じました。 いっぽうで優柔不断な一面が、軍部の発言権を強くするきっかけとなってしまった、それが平和主義者にもかかわらず、最終的には戦犯として、東條英機などの武官と同列の戦争責任を問われてしまった要因なのかもしれない。 たしかに結果だけ見れば大臣としての評価は必ずしも良くはないだろうし、調べてみると実際、彼に対する辛辣な意見も結構あります。 けれど、自己主張や保身にあふれた現代社会で生きている身からすれば、その対極の人生を貫いた広田弘毅は、めちゃくちゃカッコイイと思います。 言ってしまえば広田弘毅の人生とは、運命に翻弄された、自分はじっとしているのに大波の方から向かってくるような人生であって、そんな人生を描いたこの作品が、悲劇的ムードを帯びることは避けられないかもしれません。 それでも、自分を売り出すこと、自分だけを助けようとすること、そんなものとは無縁だった稀有な男の人生に触れることで、誇り高い大切なものに気づかされる作品でした。

    1
    投稿日: 2025.04.12
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    明治維新から突貫工事で近代化を進めた日本。 長州の作った憲法により、軍の統帥権が政府から独立した機構が作られる。 結果、本来、米英ではシビリアンコントロール下にあり、行政の一機関であるはずの軍が、大日本帝国では政府のコントロールが効かずに暴走。政府が軍事を政治の一手段として使うことが出来なかった結果、日本は壊滅的な敗戦に追い込まれる。 国家の体制も建築物と同様に、設計に欠陥があると長い年月で腐敗と疲労によりその欠陥部位から国家全体が崩壊する。 当時の日本という国の設計ミスに広田弘毅は官僚、閣僚、首相いずれの立場でも苦しめられた。 憲法9条の見直し気運が数十年前と比べると高まっているように感じる。自衛隊に対する国民のイメージも良くなってきていると思う。 これ自体に嫌悪感は感じてはいない。しかし自衛隊、つまり軍事力の増強を進めるのならば、必ず、それを政府(文民)が完全にコントロールできる仕組みを確立しておかなければならない。そして同時に国民が政府を自由な意思で選挙できる体制を堅持しなければならない。 過去と同じ失敗は避けたいものだ。 小説に話を戻すと、 広田弘毅は東京裁判では自らを弁明すれば、違う結果もあり得たと思う。 死をも恐れず己の生き様を貫く姿勢は、非常に感銘を受けるが、凡人の私には到底そのような覚悟を持って生きることはできないだろう。 名誉を守りたい、死を免れたいと凡人は思うところ。到底真似はできないが、純粋に彼の生き様は尊敬できる。また、国家体制の欠陥により苦しい人生を強いられた彼に同情している。

    3
    投稿日: 2024.12.29
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    やっと読めた、、、。難しい。とにかく難しい。ハンカチ→ハンケチと書かれている。時代を感じる作品。意味はわからなかったけど、とにかく読むことだけはやめず、意地で完読。分からないなりにも広田氏の人となりや、妻静子のこと、どの様な生き様だったのかはわかった(つもり)。決して読みにくい文章では無く、自分があまりにも無知だったために読むのに時間が掛かってしまったと言うオチ。A級戦犯。全く意味もわかっておらず1番悪いことをした=A級かと思っていた。恥ずかしい。自国で起こった出来事は日本人として知っておく必要がある。広田氏の生き様にマンザイをおくりたい。 そして、もっと日本が大好きな人が、自国愛が強い人が国のトップに立ってほしい!

    4
    投稿日: 2024.12.19
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    唯一の文官ながらA級戦犯にて死刑判決を受けたという広田弘毅という人物ついて深く知ることができ、それまでの見方と180度変わった。 外交官として長く手腕を振るって和平外交に注力し、また二二六事件で混乱している最中の内閣総理大臣となり、常に国のために奔走してきた生涯だったはずなのに、暴走する軍部と時勢に逆らえず最後はその彼らと共に戦犯の裁きを受けることとなったことに理不尽さを感じまた深く心を痛めた。 しかし最後まで一言も弁明をせず保身に走ることなく、責任を抱え込んで覚悟の中で死んでいった彼のことを思うと哀しみよりも敬意を表することが必要だと感じた。

    3
    投稿日: 2024.12.12
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    夫に面白いから読んでほしい!と言われ、重い腰を上げ読んでみることに。 (難しそうだけど読み切れるのか…とやや心配だった。) その心配は杞憂に終わり、のめり込むようにして読んでしまっていた。 ここ最近読んだ本の中でもダントツで面白かった…!!! 史実に基づいて丁寧に描かれています。 情景描写も好きだった。 読んでいて面白かったと同時に、自分がいかにこの辺りの歴史について無知であるかを知りました。 歴史の学び直しをするのもいいなと思った。 本当におすすめなのでぜひ読んでほしい一冊です。

    3
    投稿日: 2024.12.04
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    読んでみよ〜と思って読んで2ヶ月かかりました。 A級戦犯はすぐ処刑が行われたと思っていたが、行うまでの背景をしれた。 もう少し歳をとったらまた読もうと思った

    2
    投稿日: 2024.11.15
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    101代続く総理大臣のなかでお世辞にも有名とは言えない人物であり正直いって本書に触れるまで広田弘毅を知らなかったが一読で大ファンになれるほど、細やかな調査と強いリスペクトのもと、グズと言われた男を決して美化することなく書いており「自ら計らわず」の生き方を真似たいと思わせるほど、カッコいい。必読。

    0
    投稿日: 2024.08.05
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    戦前から戦後までの日本が描かれていた。 義務教育で学んだ時の印象とは全然違った。 日本も、欧州も。 もちろん、内容はどの立場かによって大きく変わるんだろうなと思う。けれども、広田さんの和平外交は少しでも今の日本を残した理由だと信じたいと思った。 軍の暴走は、誰が悪いとかではなくあの時代の完全に麻痺した考え方が全てを滅ぼしたんだろうなと思った。 2度と繰り返してはならない。 そう思いながらも、今の政治に不安を覚えたりした。

    2
    投稿日: 2024.06.30
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    日本の歴史を詳細に知ることができた。外交官としての活躍と、戦争回避のための努力と、戦後の裁判での潔さが淡々と描かれていて、逆に著者の熱量を感じた。 勉強になりました。

    1
    投稿日: 2024.06.13
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    広田弘毅の事は知らなかったが城山三郎の著書だったので拝読。非常に勉強になったし、広田弘毅の生き方にはリスペクト出来た。 東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元外務官僚、元総理、元外相まで勤めた広田弘毅。 戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人たちと共にA級戦犯として裁かれ、それを従容として受け入れた広田弘毅の潔い生涯を激動の昭和史と重ねながら克明にたどる。 福岡の石屋の倅として生まれ余りの優秀さゆえに進学。日清、日露戦争で戦争に買ったが外交で負けた日本を見て外交官を目指した。 どんな時も国際情勢を冷静に分析し誠意をもって外交を行う広田は、軍人に負けない強い信念と、粘り強さと、実行力を持つ数少ない人物として、外務省の役人から外務大臣となり総理大臣へ上り詰めた。 常に平和外交を目指して軍部、右傾の世論と冷静に戦い続けた広田だが最終的には太平洋戦争突入を止められなかった。統帥権独立の名の下に軍部は独走し、同じ軍部でも陸軍、海軍が対立。同じ陸軍内でも参謀本部と陸軍省が対立。関東軍の勝手気儘な独走によって事態は修復不能になってしまう。 史実に忠実に描かれた小説で、近代史を理解するのにこれ以上正しく歴史が描かれた小説は少ないと思う良書である。 太平洋戦争、第二次世界大戦について詳しく知らない人でも、飽きずにテンポよく読めるので歴史を知りたい人にもお勧めです。 丁寧な取材により小説化されているので脚色はほとんど無く外務省同期の佐分利貞男の死因を巡る陰謀についても一部、丁寧に描かれているが故に佐分利貞男の遺族より訴えられている。 この裁判は故人に対する名誉毀損が成立するかどうかと一時期大変話題となった。 個人的には、当時としては珍しかったであろう高級官僚であった広田が恋愛結婚を実らせた妻静子との仲にも真実と誠実さが垣間見れた。 静子は広田が巣鴨に収監されたのち、広田を楽にしてあげられる方法が一つあると言い残して思い出の鵠沼の別宅にて自殺している。享年62歳。 東條英機他の軍人A級戦犯達が、13階段に向かう前に万歳三唱を行った事に対して象徴的な皮肉のような冗談を言っている。万歳、万歳を叫び日の丸の旗を押し立てて行った果てに、何があったのか思い知ったはずなのに、ここに至っても、なお万歳と叫ぶのは、漫才ではないのか?

    3
    投稿日: 2024.02.10
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    大日本帝国は負けるべくして負けたと思わせる前半、そして広田弘毅の信念とも通じるような雰囲気が全体に感じられる。責任は免れ得ないとする潔さはよいが、才あるものが火の粉を払いのけないのはもったいない。

    1
    投稿日: 2023.12.24
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    清廉潔白に描き過ぎの感は否めないが、文官からみた太平洋戦争に突入する道程を描いていたことは勉強になり、また東京裁判の過程については知らないことも多かった。読んで損はなし。

    1
    投稿日: 2023.07.30
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    文官で唯一、東京裁判で絞首刑に処された、広田弘毅についての本作。 日本人として必ず読むべき作品だと感じた。 日本の教育って史学を世界史と日本史に分けている上に、理系だと高校以降史学をきちんと学ぶ機会がなかったりするので、日本がどういう風に戦争に向かったのか、きちんと頭で理解出来ていない人が多いのではないか。(大変恥ずかしながら、かくいう私もその一人だし、、、)特に私のような所謂ゆとり世代。 意欲がない人に学べというのは無理があるかもしれないからこそ、義務教育時点できちんと広田弘毅のような人について教えてほしいなあ、、、。

    3
    投稿日: 2023.07.16
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    A級戦犯として裁かれ、文官ととして唯一絞首刑となった元首相広田弘毅の話。心打たれるものがあり、日本人なら一度は読んで欲しい作品。

    1
    投稿日: 2023.06.22
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    極東裁判で天皇を守るために身を挺して責任を被り、門官で唯一絞首刑となった男の話。 小学生の時に読んで心を打たれた。 もっと世に知られるべき日本の隠れた偉人。

    1
    投稿日: 2023.05.07
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    平民宰相である広田弘毅の物語。外務官の広田は平和外交を主として活動するが軍部の暴走により戦争を止めることができなかった。長州の作った憲法により統帥権干犯問題を出され軍部は中国を侵略。極東軍事裁判では自ら証言に立つことなく責任を負い文官で唯一の死刑になる。行政が軍を制御できないとやはり戦争になるのか。広田と同期の吉田も大概な奴だ。紫綬褒章は広田かららしい、文化人にも日が当たるようにしたのだ

    1
    投稿日: 2023.03.26
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    1人の男の壮絶な人生の話だった。以前東京裁判のドラマを見た時は裁判官側の視点だったけど、この小説は逆で、何が正しいのかも曖昧になってしまった。 ただ、1人の文官の使命、行動、覚悟を見た時に、心を動かされずにはいられない、ある意味では清々しいしく真っ直ぐな話し。 ただただ感動した。

    1
    投稿日: 2023.03.21
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    歴史小説はシバシカンで成り立っているので他の歴史小説読んでもイマイチピンと来なかったのですが、この本は違いました。行動と他己評価で主人公を形作る筆致に感銘を受けました。城山三郎先生の本をもう少し読んでみようと思います。

    42
    投稿日: 2023.02.11
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    7人のA級戦犯のうち、ただひとり文官で処刑された広田弘毅の生涯を描いた毎日出版文化賞、吉川英治文学賞受賞作。 広田は福岡の貧しい石屋の子に生まれながら、苦学して外交官の道を選びます。その理由は純粋に日本が外交の力の必要なことを痛感したから。時代は大正、昭和の激動期。本書の前半は幣原喜重郎、松岡洋右、吉田茂といった外務省の一癖も二癖もある人物たちとの対比によって広田の「自ら計らわぬ」という超然とした行き方を浮き彫りにして、広田の人間としての面白さ、魅力を描いていきます。また、満州事変、支那事変の関東軍の暴走を懸命に食い止めようとする広田の外交官としての責任感、平和への希求が冷静に描かれます。 後半は戦犯として裁かれる東京裁判での広田の描写が中心となりますが、前半で広田の協和外交を見てきた読者は広田が被告となったことに驚くはずです。本書は東京裁判が非常に政治的なイベントであり、外交官として「戦争について自分には責任がある。無罪とはいえぬ」と自ら弁護を行わなかった広田の潔さを描き、広田が絞首刑になるまでの過程を淡々と記します。 激動の昭和史を描いた歴史小説ですが、広田と夫人、3男3女との交流も触れられ、小説に奥行きが生まれました。 広田弘毅は本書で悲劇の宰相として知られるようになりました。ただ、実際の広田に関する実際の評価は一定していないと理解しています。それでも、外交官としての広田の生涯を鮮明に描いた作品は本書だけではないでしょうか。とても面白い本であることは間違いなく、一気に読みました。昭和史を手っ取り早く俯瞰したいという方にもお勧めですが、他の本も読む必要はあると思います。

    2
    投稿日: 2022.09.14
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    日本が戦争に足を踏み入れないように、外交努力を重ね各国の大使からも信頼を得ていた広田弘毅さんの生涯を綴った作品。広田さんが重ねた努力は軍人の暴走、妨害により悉く潰されてきた。にもかかわらず東京裁判では、その軍人たちと共に処刑される。一切の弁解をしなかった広田弘毅さんの軌跡を学ぶことができる。 東京裁判の歪んだ構図も伝わってくる。 8月は、戦争に関する書籍を手にしたくなる。お勧めの一冊。

    2
    投稿日: 2022.08.18
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    日本史をほとんど勉強したことがないのと、一般教養不足なのもあり、誰のことを言っているのか、なんのことを言っているのか分からないことが多く、かなり読むのに苦戦した。登場した政治家の中ですぐ分かった者といえば吉田茂くらい、、それもこんな人物だとは全く知らず新鮮だった。 戦争という悲劇を招いたとはいえ、この時の政治家たちには、今の政治にはない政治家としての信念や熱意を感じた。政治家だけでなく会社でも、上役になることを拒む者が多く、今の日本は皆責任を追うことを避けたがる風潮があると思うが、当時はこんなにも皆自信を持ち、野心があり、生き生きしていたのかと、ある意味感動した。 印象的だったのは身内の死に対する広田の受け止め方。自分が広田の立場だったとすると、一生立ち直れないだろうと思った。広田がそれぞれの死を自分なりに解釈し、消化して、かなり前向きにとらえていてすごいな…と思いつつも、只者ではなかったというか、そういう人だからここまでのことができたのかと納得させられた気がする。 A級戦犯という言葉は知っていたが、何も知らなかったと痛感した。自国の歴史くらい、いい大人なんだからちゃんと知っておかねばと反省。

    1
    投稿日: 2022.02.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    東京裁判の結果、A級戦犯としてただ一人文官でありながら処刑された広田弘毅。 名前は知っていたけれど、どういう人物であったのか、この本を読むまで知りませんでした。 貧しい石屋の長男に生まれ、勉強は好きだしよくできたけれども家の後を継ぐことしか考えられなかった少年時代、彼の才能を惜しんで進学を強く勧めてくれた人がいたおかげで 東大まで進む。 そして日清・日露戦争後の国際情勢を見て、軍隊だけでは国際社会で勝ち残ることはできないと、外交官を目指すのです。 戦争で得ることのできなかった国益を、外交の力で得る。 そのためには多くの国とうまくやっていく力がないとだめだ、と。 しかし時代はどんどんきな臭くなり、天皇のため・お国のためを振りかざす陸軍が、政府の言うことも参謀本部の言うことも天皇の言うことすら聞かずに独断専行することになります。 ”軍中央は、事変の不拡大を関東軍に指示した。それが天皇の命令であり、統帥といわれることなのに、関東軍は、統帥の独立をうたいながら、統帥に背いて独走した。” *関東軍:中華民国の関東州に派兵された大日本帝国陸軍の部隊 *統帥権:大日本帝国憲法下における軍隊の最高指揮権 広田は割と早いうちに陸軍の暴走に対して「長州の作った憲法が日本を滅ぼすことになる」と言うのですが、その憲法すら踏みにじって陸軍が暴走してしまうわけです。 このあたり、偽勅を振りかざして天皇をないがしろにした長州のやり口に似てる。 明治維新も昭和維新も同じだな。 そして、平和外交こそが日本が国際的に生きる道と信じている広田のもとで、外務省官僚すら軍に同調していきます。 「目先ばかり見て、勢いのいいところにつこうとする。ああいう軽率な連中に国事を任せては、日本はどこへ行くかわからん」 大きなことを成し遂げて名をあげようとする輩が多くいるなか、広田は最初から最後まで「外交官としては、決して表に出るような仕事をして満足すべきものではなくして、言われぬ仕事をすることが外交官の任務だ」という。 外交官だけでなく、公務員ってそういうものだと私は思って仕事をしていますが。 どんな時も国際情勢を分析し、誠意をもって外交を行う広田は、とうとう大臣に迎えられます。 軍人に負けない強い信念と、粘り強さと、論理を持つ数少ない人物として。 外務大臣から総理大臣へ。 政治家となると、途端にいろいろなものがいろんな人から送られてくるようになりますが、広田はそれを孤児院や日雇い労働者にまわします。 そんな彼を「人気取り」と書く新聞もありましたが、「いつの世にも、下積みで苦しんでいる人々がある。そういう人々に眼を向けるのが、政治ではないのか。政治は理想ではないのだ」とつぶやく。 なんとか陸軍の暴走を食い止めようと手を打ちますが、常に一歩軍の暴走が先んじてしまい、とうとう戦争が始まってしまいました。 東條英機の独裁下で、満足に御前会議を開くことさえできないなか、それでも平和への努力を惜しまなかった広田が、どういう運命なのか軍人たちと一緒にA級戦犯として処断されます。 「あの時はどうしようもなかったんだ」「そういうつもりじゃなかったんだ」「前線が勝手に暴走したんだ」 見苦しく言い訳をする軍人たちのそばで、広田はついに自己弁護をしなかったのだそうです。 「善き戦争はなく、悪しき平和というものもない。外交官として、政治家として、戦争そのものを防止すべきである」 それができなかった自分を、彼は決して言い訳することなく、刑に臨みました。 東京裁判が多分に政治的な裁判であり、最初からバランスとして文官を入れたいという、答えが先に決まっている茶番でした。 近衛文麿が自殺しなかったら、広田にお鉢が回ることはなかったのではないでしょうか。 それでも、外交官時代の広田を知る各国の大使たちが助命嘆願してくれてもよかったんじゃないの?なんて思ってしまいますが、どうなんでしょう。 私としてはパール判事が広田についてどのように語ったのかを知りたいところです。 *パール判事:戦勝国が敗戦国を裁くのは事後法で、罪刑法定主義に反するとしてA級戦犯全員を無罪とした

    1
    投稿日: 2022.01.27
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    A級戦犯とは「平和に対する罪」で訴追された者を指し、B級戦犯、C級戦犯はそれぞれ「通例の戦争犯罪」、「人道に対する罪」であるようだ。では「平和に対する罪」とは何なのかというと、「侵略戦争を計画、準備、遂行し、共同謀議を行なったかど」とのこと。 日本では極東国際軍事裁判にて28名がA級戦犯で訴追され、そのうち以下の7名が絞首刑に処せられた。 土肥原賢二:陸軍大将 板垣征四郎:陸軍大将 木村兵太郎:陸軍大将 松井石根:陸軍大将 武藤章:陸軍中将 東條英機:陸軍大将 広田弘毅:文官 ただ一人の文官、広田弘毅。外交官から二・二六事件後の首相となり、後に外務大臣として戦争防止に努めた人物。その生涯を描く本書は、吉川英治文学賞受賞の長篇です。 広田弘毅は、外務大臣として国際協調路線を貫き、とにかく戦争回避に奮闘します。一方で、現実的な判断を兼ね備え、うまく軍部と渡り合おうとしたようにも感じました。統帥権の独立と帷幄上奏権の濫用が軍の暴走に繋がったと認識していますが、そのような状況下、すべて軍部に反対していては、そもそも何もできないか暗殺されるかのどちらかですので、文官としてできることを模索していたように思えます。 とはいえ、何かとタイミングが悪い時期に重職に就いているな、との印象。例えば、二・二六事件後の首相時代は「軍部大臣現役武官制」を採択しています。軍部大臣就任資格を現役の陸海軍大将あるいは中将に限定した制度ですが、これがために軍部の政治的進出が強化されます。そして、近衛文麿内閣における外務大臣時代に盧溝橋事件が勃発し、日中戦争に拡大。南京大虐殺が引き起こされます。日中戦争を始めたことや、南京大虐殺を止める有効な手立てを講じなかったことが罪状となり、起訴されたようですので、広田弘毅自身の本意ではないところで処せられるという、悲しい結末です。広田弘毅の処刑にはさまざまな憶測があるようですが(例えば早々に自決した近衛文麿の身代わり)、いずれにせよ、戦争反対に努めた者に対する処置としては、あまりに皮肉。 ちなみに、不作為の罪という言葉のとおり、何もしないことも罪だと見方もあるようですが、本書を読む限りにおいては、広田弘毅は全く何もしなかったわけではないので、その見方も一方的だな、と思う次第。 激動の昭和史を描く小説は何かと暗い気持ちになりがちですが、広田弘毅という偉大な人物が存在したということを知れたことは大きな勉強でした。

    1
    投稿日: 2022.01.08
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    ドキュメンタリーに近い感じ。小説的に物語的に楽しみたかったので、そこは違った。風が吹いたら風車は回り続けなければいけない。

    0
    投稿日: 2021.11.06
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    極東軍事裁判で死刑判決となった7人中6人は軍人で、判事団の票は7対4で死刑だったのに対し、残り1人は文官である広田弘毅で評決は6対5の僅か1票差。オランダ代表判事の意見書では「文官政府は軍部に対しほとんど無力であった」中で広田は十分な努力をしたとして全ての起訴事実について無罪を主張した他、フランス代表判事も、一人の主要な発起人である天皇の責任が追及されない裁判は不平等であり被告人達は不当な責任を訴追されているとの意見を出しており、また検事団にとっても広田の死刑は意外で、主席検事キーナンは「なんというバカげた判決か、どんな重くても、終身刑までではないか」と憤慨していた。 そもそも極東裁判は、合衆国の命令系統下にある最高司令官に支配されるにもかかわらず、最高司令官は合衆国の立法や司法の手続きを取らずに裁判所条例を設け新しい犯罪を規定して刑を宣告しているのは米国憲法に違反している、とかつて広田の弁護に当たっていたスミス弁護士が願い出たり、減刑を望む署名運動が起こったりで、その判決の不当さが際立つ中で、広田本人が不服として騒ぎ立てる様な態度を全く見せない。 外交官や首相として暴走する軍部に対して一貫して平和に向けた努力をし続けた彼が、何とかして止めようとした相手である軍人達と同日に処刑されるという理不尽さ、自分の様な常人にはとても消化出来ない。

    0
    投稿日: 2021.11.04
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    首相や外相の立場で何度も何度も戦争を止めようとしたが、軍部の暴走に翻弄され、責任を問われて東京裁判でA級戦犯として死刑となった広田弘毅の一生を描いたノンフィクション。 この話を読んでいると当時の軍部の行動が非常に無謀で短絡的なように思える。 広田に焦点は当てられているものの、作品の範囲が、戦前、戦時中、敗戦後の裁判に及んでいて、あまり整理されていないため、もともと知識が無いのもあって少し分かりにくかった。

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    投稿日: 2021.09.10
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    日本が第二次世界大戦に向かうまでとその後についてが描かれているが、いかに軍部が暴走していったのかや、外交が蔑ろにされてきたのかが描かれており、また違った歴史の一面を知れた。

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    投稿日: 2021.06.19
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    教科書では語られない人間ドラマ。どうしようもない不条理が続いても、自分の信念を貫き続けた男の物語。開戦前夜から終戦後の軍事裁判に至るまで、抑えた表現で淡々と事実を述べていく。歴史事実と広田の個人的なエピソードを対照的に描くことで、広田の人間味が際立っていた。映画「日本のいちばん長い日」「東京裁判」を観たくなった。

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    投稿日: 2021.05.23
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    ●企業人になった頃に、城山三郎さんの本をたくさん読みました。城山さんは某小説賞の席で、金で左右されるような賞の審査員は辞退すると、席を立ったそうです。そうした言行一致の姿勢が好きです。 ●この本は広田弘毅の人生について書かれました。ただ一人の文官として、処刑された広田の思いに感動しました。

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    投稿日: 2021.05.17
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    歴史上、表に出ない話にスポットライトを当てており、非常に興味深く考えさせられる一冊だった。 自分の考え・生き方を貫くのは凄いなと思った。

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    投稿日: 2021.05.05
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    まず広田弘毅という首相・外相がいたことを知らない。そして極東裁判でA級戦犯として絞首刑になった7名のうち、ただの一人の文官であったことも知らない。太平洋戦争は軍人の戦いとして様々な作品になっているが、その陰で、戦争に転落する日本を食い止めようとした文官の戦いがあった。 広田の述懐として「この戦争の何よりの責任者は、個人よりも、統帥権の独立を許した構造そのものに在る。」と語られる。 広田弘毅がマイナーなのは統帥権に阻まれ何も出来なかった首相・外相であったからだ。実際政治家としての評価は高くないようだ。広田が戦争回避のために行った外交努力は凄まじいものだったが、結果として何もできなかった政治家として、戦争責任を認め、自己正当化することなく東条や土肥原ら軍人被告とともに処刑されていく。 本作では真珠湾から敗戦の戦争物語はほとんど語られず、戦争前の文官の戦いと戦後の人間模様が語られる。統帥権に阻まれ次から次へと瓦解していく内閣の軽さ、常に外交と戦争が紙一重で展開される国民国家の危うさ。システムに飲み込まれた文官の絶望的な戦いを通じて、現代の我々も知っておかなければならない歴史があると感じた。 なお戦後の宰相として権勢を振るった吉田茂は広田の同期で同じ外交官。戦犯として処刑された広田とは対照的に、戦後の政界は欧米にコネクションがある外交官出身政治家が勢力をのばしたという。運命の皮肉か。

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    投稿日: 2021.01.25
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    文官としては唯一A級戦犯で処刑された広田弘毅の伝記です。 外交官として地位を築き、望まない戦争に巻き込まれていく広田弘毅をえがいています。 読み終わった後、広田弘毅の生き方のファンに慣れるような本です。

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    投稿日: 2021.01.01
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    広田弘毅贔屓の物語だったので、そこは少し割り引かないといけないとは思ったが、広田弘毅の人生なり考え方はとても勉強になった。 生き切った人生だったのではないかと思う。

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    投稿日: 2020.12.04
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    参考文献の多さが著者の実証主義的な哲学を物語っていますね。 主観を排除して淡々と進むストーリーの中に、広田弘毅という人間の泰然とした人間性が滲み出ます。 なぜ日本は戦争に向かったのか、東京裁判とは何だったのか……広田弘毅という一人の人間を描くことで、近現代史の重要命題に鋭く切り込む傑作です。

    0
    投稿日: 2020.10.24
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    広田弘毅の生涯を描いた伝記小説。「自らは計らわぬ」という信念に基づき、唯一文官としてA級戦犯に問われ、一切の弁明を避け処刑を受け入れた。現代、これ程の覚悟と責任感をもって国政にあたっている政治家が果たして居るのだろうか?他国から靖國参拝に対する中傷があろうと断固として拒絶し、せめて御霊を拝する気概を持つべきである。

    0
    投稿日: 2020.10.22
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    東京裁判で東条英機らとともに絞首刑を言い渡されたA級戦犯7人中唯一の文官であった広田弘毅。元総理であり外相を3期務め、戦前戦中の「名門」「軍人」が占める重臣の中にあって「背広」組として卓越した外交手腕を基に戦争回避に奔走した人物である。 戦中における政府中枢機関における責や極東国際軍事裁判の是非などは一先ず問わない。軍部の指揮命令系統が瓦解し統帥権独立の名のもとに陸軍暴走する様は恐怖であり愚かである。しかしその軍部の暴走を少なくとも開戦までは支持し賞賛したのは国民であったのも事実。そうしたなかで冷静な眼でブレずに外交交渉に尽力する広田の胆力の強さをひしひしと感じる。史料や証言も少ない中で広田の人物評をこれだけ魅力的かつ多面的に描く城山三郎の筆力にただただ恐れ入る。 「自ら計らわぬ」の精神ゆえ自己弁護も最低限の主張さえせず宣告を受け入れた広田の落日とは如何がであったか。「A級戦犯」というレッテルを外したうえで日本を守ろうと奔走した偉大な人物の生き様を捉えておくべきであろう。

    1
    投稿日: 2020.07.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    戦後の東京裁判で文官でありながら唯一A級戦犯とされ 処刑された広田弘毅。 彼の戦前から戦後までを追ったノンフィクション。 著者の主観が入っているとはいえ 歴史教育では語られない人物です。 戦争回避のために内外含めて交渉を重ね 最終的には軍部の暴走に敗れる。 次は軍部として、そうせざるを得なかった 部分を勉強したい。

    0
    投稿日: 2020.06.15
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    東京裁判で絞首刑になった7人の中で、唯一軍人では無かった人物・元総理広田弘毅の生涯を書いた作品。 常に戦争へ向かわないようにしていた人が何故最後に戦争を推し進めた軍人達と同じ末路になったのか… 『自ら計らわぬ。』を生涯貫き通した生き様を感じました。。。 https://amzn.to/3bS7n5n

    3
    投稿日: 2020.05.20
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    昔外交官を目指していたので、この本の存在は知っていた。しかし、広田弘毅に良い印象がなかったため、敬遠していた。 時はたち、本屋で見かけた時に当時を懐かしみ、手に取り迎え入れたところ、良い意味で裏切られた。 生島ヒロシの帯にもあるが、広田の生き方には他力の潔さがある。自ら計らうことはないが、その結果は自分で負う。しかし信念がないかと言えば、それは違う。表には出さずとも、裏には強固な意思がある。 時代が違えば、きっと活躍出来た人だと思う。背中で語り、現代に生きるヒントを与えてくれる存在だと感じた。

    1
    投稿日: 2020.05.16
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    日本が太平洋戦争へと踏み込んで行った経緯がよくわかる。決して一枚岩で戦争に突き進んだのではなく、天皇、首相、外務省、様々な立場が時に平和主義者として振る舞い、ある行動が戦争を促進に繋がったり。軍部の暴走に牽引された、大きなうねりにとなって戦争に陥入って行った歴史が紡がれる。 その、大きなうねりの中で、翻弄されながらも個人として、平和への志を失わずに、働き続け、死んで行った広田弘毅という人物の人生が静謐な筆致で描かれる。物来順応、自ら計らわぬ生きかた。決して真似することができないし、何故、他者にあれだけ邪魔をされても、自らの命を賭けてまでも、戦犯という汚名を着せられても、その様に在ることができたのか。全く理解ができないが、責任を果たすということ、意志を強く持つ人の姿にこの書を通じて触れることができたことは、自身の駄弱さを痛感し自らの来し方を省みる上で、僥倖なのかもしれない。

    3
    投稿日: 2020.05.12
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    第二次世界大戦後、唯一の文官として処刑された広田弘毅の話。 A級戦犯がどのように処刑されていったのかが、淡々とした口調で語られていく。 所々に城山の私見も入っているけど、フィクションにさせない描写力が素晴らしい。 自ら計らわない生き方は賛否両論あるし、個人的には好きではないかな。それでも読後感は悪くなく、壮大な絵を見たかのような感じが残った。

    3
    投稿日: 2020.03.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    3.5 東京裁判で絞首刑となった7人のA級戦犯のうち、唯一の文官であった元総理、外相広田弘毅。戦争防止に努めながらも、それに邪魔し続けた軍人達と共に処刑宣告され、それを一切の弁解をせずに受容した。その生涯を描いた伝記小説。このような人物がいたのかと考えさせられる内容。なかなか面白い。「自ら計らわぬ」「風車、風の吹くまで昼寝かな」。吉田茂の同期であり誰もよりも先んじて外相・首相となった。文官の中では、近衛首相をはじめ多くが自殺等で死んでいたため、広田が何の処置もとらなかった式に、不作為の罪を問われる形となった。巣鴨刑務所でも一切の不満や愚痴、言い訳を言わず、全責任は自分にあるとした。13階段の前に、東条らが万歳三唱をしていたが、次の組だった広田は、マンザイをやっているのかといい、ここに来ても万歳といえるのかという最後の痛烈な冗談とのこと。自らはやらずに刑場に入った。この逸話は真偽不明のよう。 質素で華やかな社交なども苦手で、妻静子も夜会嫌い。海外でも単身赴任。 福岡県庁付近の水鏡神社の南の鳥居の「天満宮」は、無名だが字のうまかった小学生の広田が書いたものらしい。丈太郎が最初の名前だったが、中学卒業と同時に、好きな論語の1節「士は弘毅ならざるべからず」からとり広田弘毅に。親のつけた名前を捨てるのは辛く当時改名は僧籍に入る必要があり、そこまでして変えた。おとなしいが、思い込んだら徹底してやる性格。外交官1年目の北京では、外交官の集まりではなく、駐在の特派員、銀行員、商社員、軍人などの若手の集まり。中国政策についての話し合いであり、声高にいうのではなく吸収に努めた。当時の外務省政務局長であった山座から、外交の中心は、志那とロシヤだと聞かされその情報を究めていた。 オランダからの帰国時、ロシヤだけでなくインドネシアを見たかった広田は、部会の大鷹に託した。「熱帯を制するものは世界を制する。オランダの植民地だったが、日本が進出すれば国際紛争になるため経済面での進出が可能か見てくる」また、広田はオランダ時代は、読書に明け暮れた。小国ながら世界を制覇したことがあるオランダの発展の秘密や工夫、知恵を学びたいと考えた。他の外交官のように英語版だけでなく、オランダ語の新聞雑誌資料を読むためにオランダ外務省を退職した老人を雇い翻訳させ読書をした。一日の読書の終わりには論語を読むのが日課。陸軍大臣の候補者推進方法に関して取り決めをなした。一角の人物を不遇にしておくとかえって策謀をめぐらし悪影響を及ぼすが、むしろ責任ある地位につけることで自重して軽挙妄動しないという見方。

    0
    投稿日: 2020.01.05
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    外務省同期の広田弘毅と吉田茂。平和主義者の広田弘毅が戦犯で絞首刑となり、武断派の吉田茂が戦時中拘留された事実を免罪符に戦後に宰相となるとは何という皮肉。 広田弘毅が一切の自己弁護をしなかった理由のひとつとして、「文官の自分が極刑となることで天皇陛下を無罪とすること」とあったのが事実かどうかは何せ本人の釈明が一切無いのでよく分からないけれど、保身に狂奔する他の被告人とすごく対照的で、えらくカッコいい。 広田弘毅のことは、この本を読む迄殆ど何も知らなかったが、令和即位パレードの日に読み終えて、何だかよい節目となった。

    2
    投稿日: 2019.11.11
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    ずしん、とくる本だった。 高校生で日本史を学んだとき、昭和史の政治家や軍部、大政翼賛会などなど、登場するすべての人たちが悪いんだと思ってた。 政府が扇動して戦争を引き起こしたんだと思ってたし、A級戦犯で裁かれた人たちのせいで何万人が亡くなったんだろうといつも非難の気持ちを持ってた。 でもこの本を読んで、何が戦争を引き起こしたのか、いかに軍の武力のもとで対話・協調を重視した政治が無力だったかを初めて知った。 広田弘毅も、A級戦犯で裁かれた唯一の文官ということで、民間人なのに余程悪いことをしたんだろうな…と思ってた。だから本を読み進めるに当たって、なんて誤解をしてたんだろうとやるせない思いでいっぱいになった。 あくまで協調外交、外交交渉による話し合いで和平の道を探ったこと、そして「自ら計らぬ」として必要とされれば全力をかけて使命を全うし、極東裁判のときも「自分が首相だったのだから」と一切弁解をせずに、自分の意に反して起こってしまった全ての責任を負ったこと。 立派な人だと思う。 個人的なことを言えば、その姿勢に密かに父が重なる。 だから余計にやるせない気持ち。どうにもならなかったんだろうか。 そして最後の一文。これは筆者からの大事なメッセージ。 「『日本を滅ぼした長州の憲法』の終焉を告げる総選挙でもあった。」 ---軍部の暴走を許し、戦争へ導いた大きな要因の1つが大日本帝国憲法だったこと。 あらためて、憲法って大事なんだと思う。 今の若者は改憲支持が多数で、「時代に合わせて変えたらいい」、そう言いたい気持ちもよくわかる。 でも、国民主権、基本的人権、平和主義の3原則が揃っている現憲法は、終戦後の希望の光だったという。 だから世間に流されて改憲支持を唱えるのではなく、一度この本を読んでから自分の意見を考えてほしい。 今の若い人たちをはじめ、後世に読み継がれていってほしい本。(高校生の課題図書にしてほしいくらい!) 戦争を経験した世代が少なくなり、史実が学ばれなくなっていく世の中で、 二度と戦争をしたくない戦争経験世代からの大事な教訓が得られると思います。

    1
    投稿日: 2019.09.11
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    毎年8月になると、第二次世界大戦に出征し亡くなった母方の祖父のことを思い出します。多くの日本人が歴史の大きなうねりに飲み込まれるように命を落とした時代のように感じています。 外交官として協和外交に尽くし首相まで務めた広田弘毅は、文民としてただ一人A級戦犯として死刑に処されます。そこに至る過程で、保身のために抗弁することもできたのですが、従容として運命に身を委ねたような印象を受けました。 内閣総理大臣として軍部の暴走を食い止めることができなかった責任を引き受けたのでしょうか。当時の情勢や政治環境では、それが困難であったことが容易に想像できます。 私は、広田が当時の戦争で亡くなった余多の市井の日本人の一人として、死を受け入れたのではないかと思いました。城山氏の描く広田の人物像は、背広の似合う、庶民的な人柄を感じさせます。多くの人たちが生を全うすることなく、大きな流れに抗えずに命を落としていった時代の一人としての最期を、自ら選択したのではないでしょうか。

    2
    投稿日: 2019.08.24
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    (06.08.2019) 広田弘毅、実にカッコいい男だと思った。最後まで何の言い訳も悪あがきもせず、軍部や国の責任を認め、その責任一切を負う。運命は本当に残酷だなとつくづく感じた。こういう人が今の時代に生きていたら、国はどう動いていただろうか。

    1
    投稿日: 2019.06.23
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    落日燃ゆ 城山三郎 外交官を志す者、華やかさに憧れてとは言わないが、華やかな社交生活の魅力をどこかに感ぜぬはずはない。モーニングやタキシードぎらいでは外交官は務まらぬ。広田のような弱音を吐くのは、例外であり、論外というべきかもしれない。こうした男が外交官になり、しかも、吉田茂をはじめ同期の誰にも先んじて外相から首相にまで階段をのぼりつめ、そして最後は、軍部指導者たちと一緒に米軍捕虜服を着せられ、死の十三階段の上に立たされた。 広田の人生の軌跡は、同時代に生きた数千万の国民の運命にかかわってくる。国民は運命に巻き込まれた。 だが、広田もまた、巻き込まれまいとして、不本意に巻き添えにされた背広の男の一人に他ならなかった。 冒頭の文章から引き込まれるこの小説は、東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯のうち、ただ一人文官であった元総理・広田弘毅の話である。自分は正直、この小説に触れるまで、広田という男について深く知らなかった。しかし、この本を読んで、戦前の日本に磔にされながらも、自分の主義や、責任感を全うした男がいたことに強い感銘を受けた。と同時に、本書はいかにして戦前日本が戦争へと突き進んでしまったのかを詳細に記載している歴史書として読んでも面白い。広田、ひいては外務省の敵は、常に軍部であり、対外的にいかに友好的な外交政策を行ったとしても、統帥権の独立を持ち出し、抑えの利かなくなった軍部がそれを破壊してしまう。こうして、血気盛んな軍人たちの熱気の中に、ずるずるべったりと日本は戦争に巻き込まれていったのである。 城山氏は、戦前から戦中への歴史の結節点を1938年の近衛文麿の政府声明に置く。この事件に対する「所要の措置」を執ることを発表したこの声明であったが、閣僚内では、これは最悪の場合に備える準備のさらに準備の心づもりであるという旨を強調すること含みで陸軍と外務省の間を取る形で決定したものであった。しかし、スタンドプレイを好む、名門中の名門の人柄の近衛首相による、国民の期待に応えることを優先してしまったこの声明によって、奇しくも歴史は作られ、騙された広田外相は後に罪を問われることとなる。 その後、敗戦し、東京裁判が始まる。広田も例にもれず、東京裁判にかけられる。広田の人生のスタンスである自然に生きて自然に死ぬという生き方の中で、一言も弁明することなく、絞首刑に処される。自分の言うことを一言も聞かず、沈みゆく船を進め続け、最後には大惨事にまでした人々に対し、憎むでもなく、戦争を止められなかった自分の責任を憂うのである。城山は、最後に東条英機をはじめとする6人の死刑囚について、こう書いていいる もちろん、ここではすでに6人とも憎めない男に帰っていた。ある者は気の優しい男であり、ある者は腕白坊主のように無邪気なところのある男である。軍服を着込み権勢を極めていた日々のことが嘘のようにさえ思えてくる。だが、統帥権独立を認めた「長州のつくった憲法」のおかげで、彼らは確かに猛威を振るい、その結果として、いま、確かに死の獄につながれていた。背広の男広田という付録までつけて。

    1
    投稿日: 2019.06.16
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    福岡藩出身、元総理で外相、外交官。 物来順応。自ら計らわぬ。最後まで運命を従容として受け入れた広田弘毅の人生を辿る魂の一冊。是非は別。生き方か

    1
    投稿日: 2019.05.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    A級戦犯でただ一人軍人以外で絞首刑になった、広田弘毅の話。 たぶんこれを最初に発売するにあたって 絶対賛否両論あったんだろうな~と思って調べたら出てくる出てくるいろんな意見。 まぁでもいろんな意見があるにせよ このご時世に庶民の出でよく首相にもなったし外交官にもなったよな~と思う 他はだいたい政略的に無名だった人がある程度の地位に這い上がるのに対して 広田はどこ吹く風。 あとこんなにも軍の暴走、いや軍どころか 官僚も含めみんなバラバラ。 戦前も、判決が言い渡される前も 罪を少しでも軽くしたがために、揚げ足は取るし邪魔はするしでめちゃくちゃだなと心から思った。 この本の影響ですごく広田信者(と言っていいのかどうなのか)が増えたことで いや、そうじゃないこうだといういろんな意見があってもいいと思う。 当時広田に対しての署名運動が起きたり、絞首刑という重い刑が言い渡されたとき 沢山の物議があったのはすごくわかる。 あの時、もっと強く言えてたら、もっと無理難題を跳ね除けてたら…と考える。 それにしても読んでよかった

    3
    投稿日: 2019.05.23
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    学生の時読んで終わりに泣きながら感動してた。今の日本はこうした人の歴史の上にある。 外交官を目指すならこういう本を読んでほしいと思った一冊。

    2
    投稿日: 2019.04.21
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    「二つの祖国」で東京裁判が出てきますが その東京裁判での広田弘毅の物語です。 歴史ではなかなか出てこない人ですが尊敬しますね。 でも真っ白な生き方も生き辛いのでそんな生き方はでけへんなあとも思います。 城山さんの作品の中では一番好きです。

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    投稿日: 2019.04.17
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    A級戦犯はおかしい。軍部の独走を許さず動いたのに。軍部大臣現役武官制だけでこの結果は昭和の歴史に愕然とします。敗戦国は仕方がないでは済ませたくない。

    1
    投稿日: 2019.01.17
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    城山三郎『落日燃ゆ』新潮文庫 読了。唯一文官でありながら処刑された広田弘毅。統帥権独立の名の下に軍部が独走し政治がそれにひきずられる中で、国際協調に尽力するも結実せず、皮肉にもその軍人らと最期の運命を共にする。小説ゆえ脚色はあるにしても、戦後四半世紀で再評価を試みた意義は大きい。 2016/01/11

    1
    投稿日: 2018.11.06
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    戦前戦後で言えば近衛、東条、吉田、幣原あたりは知っていたが広田総理なんて全く知らなかった。平和外交をことごとく軍部に邪魔された挙句、最期は軍部と同罪で裁かれるという皮肉すぎる運命。いたたまれなくなるが、終盤の裁判で全く語らない精神力も凄すぎる

    2
    投稿日: 2018.08.08
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    軍の暴走→戦争→東京裁判 の流れなら、軍人でない広田弘毅は A級戦犯として 裁かれるべきでなかった。著者は 法律の執行の危うさ を伝えたかった と思う 日本人だけでなく、アメリカ人弁護士、判事まで 不当裁判として、広田弘毅の刑執行を 避けようとしたことを 初めて知った

    1
    投稿日: 2018.06.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    第2次世界大戦前後の断片的に聞いたことがある人名や事件を、広田弘毅を通して通して知ることができた。この混乱の中で広田は平和外交をめざして、あきらめない心で奮闘していた。外務省時代から最後まで自分の信念に正直に粘り強い姿勢が心に残った。 ・広田は早くから先輩や仲間と交わりを深め、互いに啓発し情報を吸収しあって生きていこうと努めていた。読書だけでなく耳学問も大切にした。 ・外交官としては、決して表に出るような仕事をして満足すべきものではなくして、言われぬ仕事をすることが外交官の任務 ・各地へ赴任する前に、できる限りその地の情報を得られるように努力した。 ・主流の仕事を外されても、それを不満にも思わず、それならそれで勉強に励もうとつとめた。 ・誠意を尽くして応じようとする態度。 ・自分の役目は何か?起きた事変は事変として、戦火や波紋をそれ以上広げないこととして、自分の役目を感じた。 ・広田は派手に相手をやりこめるタイプではない。じわじわと理を尽くし肚を割って話そうとする。 ・それでもまだ広田はあきらめない。 ・広田はそのまま突っぱねるのではなく、不可侵条約はえられなくとも実質的にその実を上げようと国境紛争処理委員会の設置を提案した。 ・君の答えは欧米局員としての答えだろう、きみが最後の責任者として外務大臣として考えなくてはだめだ。そのためには欧米局だけでなく他の局へきている電報まで目を通すのだ。 ・広田は慎重だった。できるだけ多方面の情報を集め、バランスを考え、極端に他の方面を刺激したり、強い反対を引き起こすようなものは、実際には力になりえないという考え方であった。 ・あらためて中国側の受諾できる停戦協定の作成にとりかからせた。「従来の行掛りを棄て」という言葉が繰り返し記された。

    1
    投稿日: 2018.04.28
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    広田弘毅とい人は正直記憶してませんでした。 表舞台にあまり出てこない、教科書ではピックアップされない人物なのでしょう。(私の記憶が不確かなのかもしれませんが) 城山三郎氏の感情を抑えた名文で語られた、彼の生き方は、興味深く、共感できる生き方だと思います。 その時の自分の立場で出来ることをやる。 求められれば全力でとりくむ。 自らはからず。 自然に生きて自然に死ぬ。 私は長生きしたいです。 ですが十分な役割を果たせたなら、、、。 いつ死んでもいいように自分がやるべきことを全力で取り組みたいと思います。

    1
    投稿日: 2018.03.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

     外務大臣、首相を努め、唯一、背広組のA級戦犯で絞首刑となった広田弘毅の話である。日清戦争では、日本は勝ちはしたが、三国干渉という、ロシア、ドイツ、フランス三国の強硬な申し入れに押し切られ、日本は講和会議で獲得したばかりの遼東半島を条約の批准直後に清国へ還付しなければならなかった。戦争には勝ったが、外交に負けた形であった。広田は、情けなかった。周りには軍人になろうとする若者は多いが、軍人ばかりでは日本は守れないし、血を流すだけである。必要なのは優れた外交官である。軍人ほど華やかな働きの出来るものではないが、広田は自分には似合っているとおもったのであろう。  外交上の危機というものは、一回限りで考えるべきではなく、再三再四繰り返すうちにはじめて相互の理解に達する。一度談判が行き詰ったからといって、直ちに開戦すべきではない。また、万々一開戦したとしても、戦争そのものの遂行よりも、出来る限り早く平和交渉の機会を捉えるべきだ、というのが広田の考えであり、またそのように努めた。広田は粘り強く、交渉の機会をつかみ、また、つくってきたが、その交渉の意志を、軍部の突出、また妨害でいつも踏み砕かれた。軍部は戦意が主で、交渉が従であった。和平の道はいくつもあったのにと、いつも思う広田であり、戦意よりも、あくまでも交渉を主に、と外交官として努めてきた。  こういった広田の交渉態度などは、中国やアメリカ、ロシアには伝わっており、また、広田ならきちんとした交渉が進められると、外国も思っていたはずなのに、終戦をむかえ、巣鴨拘置所に捕らわれの身となった。検事団は文官からの犠牲者も求めていたのだ。その白羽の矢が、元総理であり、三度も外相を努めた広田に向けられた。広田自身もそれを感じ、また、避けもしなかった。天皇に累を及ぼすのは自分の段階で食い止めなければならないと感じていた。  ナチスドイツの場合、たしかに統一された国家意思と機構があり、共同謀議の形で戦争やユダヤ人殺害が進められた。だが、日本は統帥権独立の名の下に、天皇の意に反して軍部が暴走し、外交や行政は振り回され、あるいは跳ね飛ばされた。また、同じ軍部内でも陸軍と海軍は対立し、陸軍部内でも参謀本部と陸軍省は対立していた。ただ、広田は自分を弁護するような発言はせず、弁護人も広田の協力が得られないことから、2人もやめてしまった。広田は、自分が発言することで、だれかがその非をかぶらなければならないのはわかっていたし、そうしたとしても、自分は必ず裁かれると感じていたから、常に寡黙に裁判に臨んだ。最期、東条、松井など軍部関係の者達が絞首台に向う前に、天皇陛下万歳、大日本帝国万歳、と三唱し、刑場へ向ったが、広田は一人、それをとなえなかった。それは、天皇陛下や日本を思わなかったからというわけではなく、万歳、万歳の声が、協和外交を次々と突き崩していき、若い者を戦場へ散らしていった寒気のする言葉であり、忌むべき言葉であったからだろう。  本書で少し気になるのは、南京の記載である。南京で日本軍が大量虐殺をしたといった書き振りとなっている。それは間違いであり、本書を読んでも、読者は鵜呑みにしないようにして欲しい。有名な著者がなぜ、きちんと調べもせずにこのような記述をするのか、少し残念だった。

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    投稿日: 2018.02.17
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    「外交の相手は軍部である」とした広田弘毅。全てが正義だと言うつもりはないが、それを時代だと片付けたくもない。それにしても東京裁判とは、いったい何だったのだろう。

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    投稿日: 2018.02.14
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    第二次世界大戦後の極東国際軍事裁判のA級戦犯で死刑となった7人中唯一の文官である広田弘毅の人生が描かれた作品。 広田は必死に戦争を喰い止めようと軍部と戦っていた一人であるにもかかわらず、政治的裁判によって死刑判決を下された。 広田がどんな人物で、どういう気持ちで政治に携わってきたのかが伝わってきて、戦犯だから戦争に加担した悪人なんだろうという単純な思考だった自分を恥ずかしく思った。 「外交の相手は日本の軍部だ」と言う広田の言葉どおり暴走していく軍の尻拭いしながら、平和への望みを捨てずに諸外国との停戦交渉を頑張り続けていたが、なぜこんなにも自分の身を犠牲にして国のために頑張れるのか不思議だった。 「自ら計らわぬ」を信条に相手のために頑張る姿勢を死ぬまで貫き通す姿が格好良かった。

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    投稿日: 2018.02.02
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    最近は友達におすすめ本を推薦してもらうことが多くて、この本もそのひとつ。 その人に熱くおすすめしてもらった時、「でも、事態を何一つ収拾できなかった人でしょ?」と私は言った。つまり、文官政治家としてあの泥沼に何もなすすべなく、何もしなかった人だと思っていたのだ。読んだところ、私にもいくつか間違って認識したところがあった。例えば、広田は政治家であったという認識だったけど、この本ではあくまで外交官として、与えられた任務をやり尽くすという信条に則して生きていたというふうに描かれている。 昭和史、特に戦前/戦中史は私にとってあまりに遠く、どこか別の国で別の思考回路や性質のもとで暴走したような印象がある。多分義務教育で教えられる歴史は、あの時は間違っていた、バグのようなもので検証に値するものではないという気持ちのもとで編集されたものではないかと思ってしまう。 黙して語らず、文官としてやるべきことをやってきた広田を描く筆致は冷えているが、余韻は熱い。

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    投稿日: 2017.12.06
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    やや広田を美化しすぎの感はあるが、時代に翻弄された外交官が巧みな筆致で描かれている。面白かった。城山三郎は本当に文章がうまい。

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    投稿日: 2017.10.14
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     外交官から総理大臣になった広田弘毅は元来平和主義者であり開戦に反対であったにもかかわらず、東京裁判ではA級戦犯となり処刑された。この話を知って非常に残念な気がした。いったい東京裁判とはどういう裁判であったのか、その真実を知りたくなった。

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    投稿日: 2017.09.02
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    実際に生きていた生身の人間の物語は興味深い。不幸な時は不幸な人間の話を読むと心が楽になる。日本人は桜のように潔く散る人間を好むが、私は昔からあの桜が気持ち悪い。美しいとは思うけれど。 仕事とは何か?トップに立つ人間とはどうあるべきか?とても考えさせられる。吉田茂との対比も鮮やかだ。吉田は当然知っているが、広田の事は全く知らなかった。 全ての人が全てに納得して生きている訳ではない。実現はしなくとも、広田にはやれるだけ手を尽くす能力があった事を羨ましくも思う。私にはやれるのだろうか?最期に全てを受け容れてしまえる程に生ききる事が出来るのだろうか? 何もかもが不足している。 この身体で、この能力で出来る限りをやってみよう。 終戦記念日

    1
    投稿日: 2017.08.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    A級戦犯として処刑された広田弘毅の生涯を描いた、読み応えのある作品だった。広田弘毅という人間がいて、平和のために力を尽くしたにもかかわらず戦犯として政治的に処刑されたということを全く知らなかったため勉強になった。同時に、東京裁判について改めて考えさせられた。 確かに日本は侵略戦争を仕掛けたかもしれない。 では、原爆を落として大量殺人した某国は一切裁かれないのか?なぜ広田が処刑されなくてはならなかったのか。 ラスト、広田が処刑されるまでを描いたシーンでは思わず涙が込み上げてきた。人が人を死に追いやる戦争はなにがあっても止めなければならない。強く思った。

    1
    投稿日: 2017.08.05
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    太平洋戦争で死刑を宣告されたA級戦犯のうち、ただ一人の文官(軍人ではない)、広田弘毅の物語。この本を読んで、日本はなぜ戦争をしてしまったんだろう、なぜ止められなかったんだろうと強く思った。そして国が国を裁く難しさ。アメリカ人には理解できないことがたくさんあっただろう。誰が加害者で誰が被害者なのだろう。

    1
    投稿日: 2017.07.25
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    東京裁判で死刑になった元総理大臣広田弘毅の人生を描いた小説です。前半は淡々としてつまらなかったが終盤になると広田氏の生や死への信念の強さが際立ってきました。

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    投稿日: 2017.05.09
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    戦争のはじまる瞬間を淡々と描いているけど、こんな、事務的に進むのか、と非常に興味深い。 これが史実というものか。。

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    投稿日: 2017.05.07
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    いろいろ調べると、必ずしもこの作品のとおりではないようだが、広田弘毅という人物がものすごく好人物に描かれている。 戦争に抵抗した外交官として、ということもあるが、なにより組織人としての在り方が美しく描かれている。自らはからわないという生き方、ひとつ公務員の理想像のような形で読めるなぁと思った。 陸軍の愚かさというものがどうしても前面に出てしまうが、そして歴史の教科書でも、東京裁判の結果でもそういう結論になっているが、本当にそうだろうか。決して陸軍を賛美するわけでも正当化するつもりもないのだが、あの戦争に突き進んだ原動力は大衆、一人ひとりの国民ではなく、姿形のぼんやりとした「大衆」という生き物の意思だったのではなかったか。個人としては反対だが、世間体を気にしたときには賛成になるという「日本人」ではなかったか。 情報が操作されていた、国民はだまされていたという意見があるかもしれない。だが、これだけ情報社会になったところで状況は変わっただろうか。賢い大衆で満ちあふれているだろうか。もう100年も前にガセットが指摘しているとおり、大衆は見たいものしか見ない。その責任を誰か数人に押しつけてしまうのは、なんともやるせない。それでチャラにはやっぱりならんのでしょう。

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    投稿日: 2017.04.01
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    東京裁判で唯一、文官で有罪となった広田弘毅の生涯を描いた作品。自ら計らず、の人。 流れに身をまかせる、その信条に首尾一貫してはいる。が、責任ある立場の人として、それはどうなんだろうと思う。

    0
    投稿日: 2017.03.20
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    東京裁判で軍人以外で死刑になった政治家、広田弘毅を描いた城山三郎の代表作。 このような人物が過去に居たのかと大変興味深く、その深遠を探りたい衝動に駆られる作品である。 東京裁判について、裁判とは名ばかりであり、政治的パフォーマンスの様相を呈していた内容に関しては、日本人として知っておくべき内容であろうと思う次第。

    1
    投稿日: 2017.02.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

     文官で唯一、A級戦犯として東京裁判で死刑判決を受けた外相広田弘毅の伝記的小説。  本書は「広田、哀れなり」との視点で書かれ、読破当時はそういう印象にあったが、色々なノンフィクションをあたった後となっては、東条らは勿論のこと、近衛自死後の広田に対するあの判決は止むを得なかったのでは、という気がしないではない。  また弁解ではなく、事実が本人の口から語られなかったのも疑問が残る。  ただ、本書は、著者の思いの詰まった小説としては「あり」なのは確か。  なお、広田氏妻及びその家族の、軍人らとは一線を画すという矜持には感銘を受けた。  ところで、日中戦争開始時の首相、近衛は戦後自決。当時の外相が広田だ。また、陸軍大臣杉山元も終戦一ヶ月内(降伏文書調印の時期くらい)で自決。  なお、杉山の後の陸軍大臣板垣征四郎は東京裁判で死刑判決。

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    投稿日: 2016.12.29
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    東京裁判でA級戦犯として絞首刑を宣告された外相広田弘毅を主人公とする歴史小説。吉田茂と広田弘毅の対比が多く、とても対照的。自ら図らない気骨、権力に屈しないところにはとても好感が持てる。

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    投稿日: 2016.12.25
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    主人公たる広田弘毅が首相ということもあるけど、歴代首相が順番に登場して、ちょっとした日本史の再勉強をしている気持ちになった。それが不愉快ってことではなく、広田を軸にしつつそれとの関わり合いで語られるから、物語として自然の流れの中で登場している感じ。受験生時代、時間が無くて駆け足で流された近代史。当時は面倒なだけだったけど、やっぱりその時代を知らなきゃ始まらんでしょってことで、今は寧ろ自分の中での関心は高まっているくらい。そういう意味でも興味深く読み進められました。ただ、一番強い印象を残したのは、奥さんが死を決意した場面でした。静かな盛り上がりではあるけど、逆に痛いほど伝わってくるその心境に涙。

    1
    投稿日: 2016.11.21
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    東京裁判で死刑判決を受けた七名のA級戦犯の中、唯一の文官だった広田弘毅について綴られた一冊。 八月は、戦争に関する本を読むことにしている。 その中で選んだ一冊が「落日燃ゆ」。 不勉強なので、処刑されたA級戦犯というとまず浮かぶのは東条英機、松井石根、このふたりしか知らなかった。 表紙写真に写る広田弘毅の顔を見ても、こんな感じのひともいたかなあという程度。 石屋の息子として生まれた広田弘毅(改名前、丈太郎)は篤志家の援助もあり石屋を継ぐのではなく、勉学に勤しむ。外交官となり、質実剛健な広田は着実に仕事をこなし信頼を得ていく。 広田が首相となったときもそれ以外のときも、広田が日本を憂い考えたことを妨げてきた軍部の人間と等しく戦犯とされ、処刑されることは、口にはしなくともどれだけ口惜しかっただろうと思わされる。 権利を声高に振りかざし、責任は負わない政治家の多い中、真剣に日本のことを考える広田弘毅のような人間もいたことを知ることができた。 松岡洋右、近衛文麿、幣原喜重郎、山本五十六など戦争を扱うときにしばしば目にする人物も多く描かれている。 広田は『自ら計らわぬ』生き方を心がけていた。 外交官は自分の行ったことで、後のひとに判断してもらう。それについて弁解めいたことはしないものだ。 こういった外交官の矜恃を持つ広田のような人間が、現代の政治家に果たしているだろうか。 広田弘毅のような人物が、今これまでにない程不安定で危険な方向へと向かいつつあるように感じる日本には、必ではないだろうか。 広田弘毅は今の日本と世界の有り様を、どんな思いで見つめているだろう。

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    投稿日: 2016.09.23
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    登場人物が多くて、同作者の「毎日が日曜日」より大分時間がかかった。広田弘毅を通し戦争や東京裁判について描かれている。日本が一枚岩ではなかった、それどころか軍部も一枚岩ではなかった。それぞれが違う主義主張を持って正しいと信じる方向に突進していった。広田弘毅の「自ら計らわず」という美学は、個人個人にいたずらに「夢を持て」という今の価値観より私には馴染みやすい。

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    投稿日: 2016.09.13
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    皆が指摘する通り、陸軍がひたすら悪役であり、広田が「悲劇のヒーロー」のように描かれている。しかし、この作品はここに注目することではないように感じます。 この時代、名門でもなんでもない「背広の似合う男」が世界を見て学び、平和がどうして大切なのかを考えながら首相にまでなり、戦争のない日本を作ろうとした広田の生きざまは凄すぎて言葉にできない。 死ぬまで、死んでからも絆を結び続ける広田夫妻。 「自ら計らぬ」というポリシーの下に、平和を唱え続ける外交。そして戦犯にかけられても、これが外交官としての広田が自分自身の中で掲げてきたものを一切歪めず「責任を負う」という言動。 今の政治家に求めても無理な部分はあるのかもしれないが、広田をはじめとするあの時代の政治家、外交官が平和を唱え続けてきたこと、戦争が何も生まないということは少なからずわかっているはずだと思う。憲法を変えること、戦争を正当化しようとしている日本の今の政治家にもう一度考え直してほしいと改めて思いました。 最後に、やはり日本の女性は非常に強い!そして「愛」を感じます。広田の妻「静子」の最後を決める場面は胸が熱くなりました。

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    投稿日: 2016.09.04
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    広田弘毅をして、軍部の暴走を止められなかったとしたら、軍関係者以外に、誰が止められたのだろう?と感じた。 計らず、という言葉に、共感を覚えつつも、残された家族のことを思うと、計っても良かった(=弁明しても良かった)のではないかと…。 清々しさはなく、やるせなさが残りました。 軍部大臣現役武官制の復活は、確かに誤った判断だったかもしれない、その以前から既に軍部は暴走しており、軍部大臣現役武官制はそれに拍車をかけてしまったのかも。 しかし、広田弘毅の終生を通して戦争を見ることは、自分の視野を広げることにも繋がったと思います。 伝記小説として、広田弘毅の人物像に迫り、時代背景も分かりやすかったです。広田弘毅のやったことについては、世間様で賛否両論あるようですが、僕はこの小説は素晴らしい小説だと思います。

    1
    投稿日: 2016.08.14
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    城山三郎氏つながりで読むことにした一冊。 A級戦犯。 知っているようで知らなかったことを思い知りました。 自ら計らわず。 すごいことです。

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    投稿日: 2016.08.12
  • その生き様、どの言葉にも代えがたく。

    政治家というのは、全く、このような人ばかりであれば、多少は世界もマシになるものを。 さて、吉田茂の同期にして、極東国際軍事裁判において唯一文官での刑死者となった男である。 歴史の巨大な転換点で外相となり、その平和的・協調的信念を基に世情の形成に努めた彼は、5・15から2・26に至るまでの、時代そのものの圧力たる軍事政争に巻き込まれる。 中国・ロシア・英米と対立を避け、粘り強く交渉し勝ち得た諸外国からの信頼も、自らの仲間たる関東軍らに踏みつけられ忘れられていく。何と悲劇的な外相・宰相であろうか。 軍事裁判でも全く証言をせず、黙々と責任を受け入れるその姿勢は、読んでいて苛立ちを覚えるほどであったが、 それほどの意識を持って職責を果たせる人間が何人いるのだろうか? 物來順応とは、まさに境地の至りであったに違いない。 世間的にはもしかしたら、軍部に逆らえぬ外相・宰相という言葉があるかもしれないが、 むしろ5・15から2・26が平然と起きた時代を考えれば、十分すぎるほどに妥協と論争を繰り広げていたと私は思う。 暴力に対するその姿勢を非難することは、実際問題、誰でも出来ることなので、その「逆らえぬ」批判事態、無意味ではなかろうか。 近衛から声が掛からず、あのまま鵠沼の地で一生を終えられたのならばと考えるが、それでも彼は人から乞われるままに政界へと戻っていたに違いない。 勝海舟が書いた、西南戦争に担ぎ出され敗れた西郷隆盛に向けた歌を思い出す生き様に感じる。 「濡れぎぬを ほさんともせず子どもらの なすがまにまに果てし君かな」。覚悟をもって生きるとは、難しいものである。

    0
    投稿日: 2016.08.07
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    東京裁判でA級戦犯となり、絞首刑を宣告された広田弘毅は、唯一の軍人ではない、文官だった。平和外交で戦争回避に努めてきたが、統帥権独立(シビリアンコントロールではなく、軍の統制は天皇の権限)を認めた「長州のつくった憲法」(P432)で、軍は猛威をふるい、暴走した。あくまで立憲君主制で天皇は軍の暴走を暗に認めていたことになる。その代償はあまりに大きかった。そして広田は南京大虐殺などを止められなかったとして有罪となった。軍の暴走に水を差された文官は、世の中を冷静に見れる存在がこの時代は必要と死刑執行前に話している。家族には外国語ができるといいとさしている。家族思いの広田の人柄も伝わる文体は城山三郎の硬派な小説の魅了でもある。 「日本を滅ぼした長州の憲法」の終焉を告げた。という城山三郎のフレーズも象徴的で、今の日本は犠牲を払って手にした憲法を手放そうとしている。そこには首相のシビリアンコントロールとはいえ、軍事化を進めたい首相の下では、自衛隊の暴走の可能性も秘めている。極めて危険な状況に向かおうとしている。 現代への警鐘を鳴らすための一冊でもある。

    1
    投稿日: 2016.06.27
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    戦前から戦後にかけて日本を守るために奮闘した広田弘毅の小説です。 統帥権の独立の名の下、軍部が独走して陸軍のみならず天皇陛下ですら止めることができなかったシステムがなにか今の日本人を見ていても何か感じるものがあります。 けして軍部だけが暴走したのではなく国民が賠償金に目が眩みそれを煽ったマスコミがあるのだと思います。 それも軍部が肥大してしまってからは誰も手がつけられなくなり敗戦に向かって走り続けたのかなあと思いました。 テクニカルな本よりも今の役人はこういう本を読んで期するところを持つべきかと思います。

    1
    投稿日: 2016.04.26
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    とても面白かった。 文官のA級戦犯として東京裁判にて死刑を宣告された広田弘毅の半生を描いた物語。 著者が実際にかなりの取材を重ねて描いたものだとは容易に想像できるが、日中戦争〜太平洋戦争間の日本政府の中で外相と首相として国政を行っていた方が主人公なので、完全なノンフィクションとして読むにはどうかと感じる。(作中では広田は悲劇の主人公という描かれ方をしている。) しかしこの本が読み物として面白いのは広田が行った仕事の結果ではなく「自ら計らわず」を貫いた広田の生き様であると思う。 特に東京裁判中では外相や首相時代に何度も邪魔をされた軍部の被告者と同等に扱われながら、しかしそれでも自ら供述することはほぼなかったというところに自己の尊厳よりも自己の立場とその責任を全うしようとする姿勢にあまりにも大きな人としての器と覚悟をみた。 人の上に立つ人間としての大切な生き方をこの本を通じて教えられた気がした。

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    投稿日: 2016.02.17
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    羽田空港で搭乗中の読み物として購入。ようやく読み終わる。 戦前の軍部は傲慢で戦争に突っ走っていたのかもしれないが、広田弘毅をあまりに同情的に描きすぎているせいか、内容に深みが感じられなかった。

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    投稿日: 2015.11.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

     昭和初期から終戦まで、外交官~総理大臣、外務大臣を歴任した広田弘毅の生涯。  いかにも、清廉潔白な外交官の広田。軍部が中国等で独走して、問題を起こす中、自分のできることを最大限行い、戦争を回避しようとした。  しかしながら、終戦後、東京裁判で、戦争を引き起こした罪で文官として唯一の死刑を言い渡される。  今の時代より確実に死が身近にあったのを感じる。弘毅の母、息子、嫁がいずれも自殺で死んでしまう中、自分の行動を説明することは、他人を貶めることになるとして、決して自分から弁護を行わず、死刑となる。 なんとも無骨というかある意味頑固というか。 結構な長編で、途中別の本に言ったりして、都合4ヶ月くらいで読みきった。なかなかすがすがしい。

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    投稿日: 2015.11.23
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    広田弘毅の生き様の高潔さは素晴らしいが,こと裁判となったのなら黙して語らずではなく,何があったかを詳らかにすることが,後世のためになると思う.不当な裁判ではあったが,その片棒を担いだのも広田であったのだ.それがとても残念だ.そして第二次大戦に至る外交のあれこれも,とてもよくわかって面白かった.それにしても吉田茂,ちょっとばかし軽くないでしょうか?

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    投稿日: 2015.09.29
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    唯一、文官でA級戦犯として処刑された広田弘毅。平和を望み、「わたしの在任中、断じて戦争はない」と語った広田が、なぜA級戦犯として処刑されることになったのか。その生涯と裁判の様子が淡々と描かれている。広田が平和のために尽力しているのに、軍は邪魔ばかりしてきて、読んでいて腹立たしかった。よりによって戦争を引き起こしたとして軍人と一緒に処刑されることになるだなんて、やりきれない。

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    投稿日: 2015.09.27
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    今年読んだ本で一番良かった。 A級戦犯として連合国に裁判にかけられ処刑された、元外交官であり元総理大臣の広田弘毅の伝記小説。著者の城山三郎がこの本を書くにあたり、たくさんの参考文献を読んだことが巻末で分かる。つまり、かなり忠実に史実に基づいて書かれたと思われる。東京裁判の詳細な内容や誰が処刑されたのか良く知らなかったので、経緯を知りいろいろ考えさせられた。 作者の、広田への深い思慕が感じられる一方、文章は落ち着いて淡々としており、ドラマティックな内容を鎮めつつ、読者の心に染み渡る。 広田は、家系が良い人が大半を占める政治家や官僚の中でやや変わった存在であった。平和を愛し、交渉によって中国やロシアとの関係を良くしようと尽力した。しかし、暴走する軍部を抑えきれなくなってしまった。賢く立ち回る官僚や同僚のなかで、広田は自分の運命に対しては常に受身の態勢だった。そして戦争を起こしてしまった罪をかぶり、軍人達とともに処刑を受ける。 夫婦や家族の愛情にも感銘を受けた。 戦犯の裁判が、こんなにも徹底的に、長年にわたって外国人の判事や弁護士によって行われたことを初めて知った。読んでよかった。

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    投稿日: 2015.09.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    落日燃ゆ 城山三郎 文官でありながら、A級戦犯として処刑された広田弘毅の一生を描いた自伝的小説。彼の生い立ちを追っていくとまず幼少時代の勤勉さに目を見張る。 「広田の特徴の一つは早くから、先輩や仲間たちと関わりを深め、お互いに啓発し、知恵や情報を吸収しあって生きていこうと勤めたことである。人と人との生身の触れ合いや耳学問を大切にし、ただの読書家に終わらなかった」 このような姿勢がのちのち外務大臣や首相として政務に役立ってきたのだなと思う。  優秀な広田であったが、外務省内ではエリートコースを常に歩んでいたわけではなかった。山路といういい上司に大学時代から目を配ってもらっていたが、山路は途中で亡くなってしまう。広田とは対照的に、ライバルである同期の佐分利が幣原喜重郎に気に入られエリートコースを歩んでいく。オランダへ左遷された時に語った 「風車、風の吹くまで昼寝かな」 という言葉の中に自分に時勢の風が吹いてくるまでゆっくり社会を見てくるかという気持ちが込められていた。  不遇の身でいた広田であったが斎藤内閣でついに外務大臣として表舞台にでることになる。しかし、そこに待っていたのは軍部の暴挙であった。統帥権の独立を盾に軍に一切の関与をさせない、陸海軍。軍事と外交は政治の両翼であるにもかかわらず、常に軍部の機嫌をとりながら地道に交渉を続けていった広田の苦心が小説の中にあ随所に描かれている。 「長州のつくった憲法が日本を滅ぼすことになる」 と統帥権の問題を気づいていた点は身を見張る。  部下の育て方についてもなるほどと思えた箇所がある。部下に対して常に君はどう思う。どうしてそう思う。と質問を畳み掛ける。ポジショントークではなく、君が最終責任者であると思って考えてなければダメだと部下を叱責するシーンは参考になる。そうしたマクロに物事を考えるには目の前の書類だけでなく、他局の書類にも目を通せとその方法まで伝授した。部下の使い方に関しても 「人間短所だけ見たらどんな人間だってだめだ。逆に、長所をみて使うのようにすれば使えない人間なんていないんだ」 とどんな人間にもチャンスを与える器のでかい人間だった。こうした器の大きさは学生時代の様々な人々との関わりからもたらされたと思われる。 目先のことだけを考えるのではなく、何十年先を見据えた外交をと広田は考えていた。 二二六事件の後首相は任された広田。この事件は現代のアナロジーとしてみることはできないだろうか。二二六事件は東北の農村が壊滅的で身売りがなどが始終起こっている状態で見るに見かねた将校たちが決起した事件である。貧困率が先進国の中でも上位に入り、停滞した空気は1940年代前後と同じ空気を醸し出しているかもしれない。平民を代表して広田は内閣をつくった。広田の政治姿勢はこの言葉に集約されているのではないか 「いつの世の中にも、下積みで苦しんでいる人々がある。そういう人々に目を向けるのが政治ではないか。政治はりそうではないのだ」 山本五十六とのハガキの中で花なら今が見頃と書いてあったのをみて広田は 「山本はそれでいいかもしれんが、国はどうなる、国家というものは長く続くことが大事なんだ。君が代にも、さざれ石の巌となりてこけのむすまでとあるじゃないか。それなのに……..」 と苦心した姿が描写されている。  戦局がだんだんと苦しくなっていく中、広田はなんとか和平を模索するが、それはとうとう実現できなかった。終戦後、戦争の責任者たちは続々と自殺していった。そして残ったのは広田たちであった 。戦争を止めようとしていたのにもかかわらず、和平を常に模索しようとしていたのにもかかわらず、広田は戦争の責任をとって死を選んだ。誰かが責任をとって死ななければならない。だったら俺が死のうと。死を前に広田は自然い生きて自然に死ぬといった。裁判の証言台でも自分からは何も証言しなかった。そのような姿勢は山路から教わった外交官としての姿勢が生きていると言える。外交官は自分のおこなったことで後の人に判断してもらう。それについて弁解めいたことはしないものだ。と物来順応の態度に私は常に惹かれた。 戦争の責任について一切自己弁解はせず、恐々と裁判の結果を受け止めた広田の行動や言動は今の政治家にも見習ってほしい物だ。そのぐらい器が大きく、文官でも武士らしく生きた政治家であり、外交官は今の世の中にはいないのでないか。もし広田が処刑されず生きていたら、今の日本国はどうなっていただろうと勝手に思索を膨らませてしまう。

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    投稿日: 2015.09.12
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    物来順応 自ら計らわぬ 公の人として仕事をして以来、自分のやったことが残っているから、今さら別に申し加えることはない 真似できないと思いつつこの覚悟で仕事に取り組まなければと思わされる。戦争を知ろうと思って読み始めた本で仕事への姿勢を学ぶ。 そうだ、俺も背広を着る人なのだ!

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    投稿日: 2015.08.24
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    広田弘毅ってそんなに有名だっけ?と思いつつこの本を読み始めた。高校で昭和史のところで少し登場したな、くらいの印象。 決定的だったのは広田が詠んだ「風車、風の吹くまで昼寝かな」の句。外交に対する姿勢は勿論、一人の人間として好感を抱いた。本を閉じて、布団の中で「自分もこんな生き方ができるだろうか」と考えた。 広田が奔走した時代の出来事を、もっと客観的な目で知り、学んで行きたい。

    1
    投稿日: 2015.08.21
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    本著の主人公である広田弘毅は、東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった。「自ら計らわない」ことを信条とした広田が、日本が、軍部の暴走により戦争へと飲み込まれていく悲劇を描いた作品。 かなり広田に同情的に描かれているが、じっさいのところ広田とはどんな人物だったのだろうか。

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    投稿日: 2015.08.03