
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
紀元前から現代までの人類史を海図の励起を通して、振り返った本、 庁舎は高校の教師を経て大学の教授となった宮崎正勝氏、2000年以上にわたる人類の通史を海図を通してえがくという視点が面白かった。 地図は自国を大きく捉えがちであったり、あるいは逆に未知の大陸が(未知故に)大きく描画されたりいろいろと本当の地形図を知る我々からは面白く歪められてきた。 そのなかでプトレマイオスの世界地図は正確なところも不正確なところも含めて後世に与えた影響が甚大であったことがわかる。 大航海時代に欧米はアジアに進出してきたが、あくまでの財をなすためであったことがよくわかる。 イスラム勢力が貿易を担っていたときは非人間的なことはあまりおこらなかったのに、スペイン、ポルトガル、オランダ、イギリス、フランス、アメリカが影響力を持つと。大虐殺、植民地化、奴隷、支配、などパンドラの箱が開かれたようにこの世の災厄が人類に降りかかる。 これは香辛料、貴金属、砂糖などの商品が換金制が高く、保存性があり、比較的軽いという理由によるのだろう。 話は面白いのだが、掲載されている地図が不鮮明でいまひとつ。本の値段が高くなっても大きな地図を載せてもらいたかった。
0投稿日: 2022.05.24
powered by ブクログ世界史の見地から国家覇権の変遷についての記述は詳しいが、海図との関連性はうすい。海図について述べているというよりは、海洋への冒険の歴史、あるいは海洋覇権の変遷についての本といえる。なぜ、いにしえの時代の人が、正確な地図を描けなかったのかに焦点を当てず、海図が正確でなかったがためにビジネスがうまくいかなかったと記すのはいかがなものか。正確な時計がない限りは正確な海図は作れないのである。発明されていない事項を理由として結論づけ、論理を展開しても意味がないであろう。そもそも、航海学の基礎すらわかっていない。正確な時間が必要なのは航続時間を計測するためではなく、天体観測をした時、地球の自転による現在位置補正をするためである。地球は自転しているから、4分の誤差のある時計は、経度で1°の誤差を生み、これが赤道上であれば60海里、すなわち100km以上の誤差が生ずるのである。著者は、なぜ正確な時間がわからなければ経度が計測できないのかがわかっていない。航続時間の誤差なら、経度のみならず緯度にも影響するではないか。航海学の発展や技術の推移に焦点を当てることなく海図について語っても深みのある研究にはならない。また、地名について現代名や解説がなく、また人名も一般的呼称と違うなど、素人にはわかりづらかった。 ちょっと期待はずれの本であった。
0投稿日: 2018.11.04
powered by ブクログ地図の本は読まねば、ということで・・・ 地図はMapであるが、海図はChart。 Chartは「二つ以上の対象の相互関係や変化の状態を図形的に表現したもの」と言う事でChartで示されるのは方位と距離である。海図の歴史は航路開発の歴史でもある。そして本格的な遠洋航海はこの方位と距離がいかに正確に測れるかという技術の進歩とともにあった。 本書は、ヨーロッパの列強がアジアへの海路、新大陸への航路、そこから太平洋を越えて世界を繋ぐ航路の開発とその目的である交易そこから派生する植民政策の拡大の歴史を描いている。 本書の欠点は図版が少ないことである。電子書籍だから図版を省略しているのかと思ったが、人様のレビューをみても判りにくいと言う意見が散見され、どうも書籍版の方にも図版はあまり無いようだ。地図を文章で説明されてもピントこないのである。 面白いと思ったのは、古代ギリシャの時代から地球は丸いと言うことが天体観測の結果として判っていたと言う事である。いつの間に世界の果てでは水が瀧のように落ちているという世界観が出てきたのだろうか。
0投稿日: 2015.03.25もっと海図の復元があれば
地中海とエリュトラー海を含むプトレマイオスの海図にはアレキサンドリアに集積された地図や海図の集大成であり1世紀にはモロッコから中国までの俯瞰的な世界を描き出していた。ここで言うエラトリュー海=赤い海は紅海、アラビア海、ベンガル湾、インド洋までをひとまとまりの海とした言葉である。モンゴルの海上航路や明の鄭和の大艦隊など東方世界の方が進んでいた時期はあるが明の海禁策によって古代の海図が失われたために、この本では地中海世界から拡がっていく世界史と海図という捉え方をしている。ミクロネシアでもイースター島までの航路が実はあったらしいのだが海図のない世界はほとんど触れられていない。 始まりはマケドニア王アレクサンドロスの東方遠征、これにより商業はギリシア人が主導し、二つの海を結ぶ要所のアレクサンドロスは海上路の起点となった。ローマ時代には地中海は内海の航路が発達したが沿岸のガレー船が主流となり、一方エラトリュー海ではモンスーンを利用した沖合航法がとられた。プトレマイオスの海図は円錐投影法を用いており当時の知識でも緯度や地球の半径はかなり正確に測れたが経度については18世紀まで正確な測定が出来なかった。これが後にヨーロッパで西回り航路を探すモチベーションになっていた。アメリカ大陸をアジアの一部と思うほど近い所だと考えられていたのだ。 プトレマイオスの海図はイスラーム世界を経て、元にも伝えられている。モンゴル帝国は外国商人を登用し、明に引き継がれるまでこの影響は見て取れる。1378年の大明混一図には伝統的な中華世界にインド洋、アラビア半島からアフリカまでが描かれている。アフリカ遠征をした明の鄭和もイスラーム商人の宦官でありここで中国の伝統的なコンパスを使う海域とイスラームの天体航法を使う海域を書き分けた海図が用いられていた。しかし明は宦官を敵視した官僚により海禁政策をとり海図を焼き払い、勘合貿易の世界に閉じこもる。 十字軍の時期から少しずつヨーロッパにイスラーム文明、中国文明が流れ込む。地中海交易の制海権がイタリアに戻ったことからヴェネチア、ジェノバ、ピサなどの商人が台頭していく。逆風で走れる三角帆はダウ船から、コンパスは中国から測天儀はイスラーム世界からもたらされ火薬や大砲、印刷術などが伝わり大航海時代の下地が徐々に出来上がる。コンパスと沖合航法により新たな海図が生まれた。ポルトラーノ海図は複数のコンパス・ローズが書き込まれており主要航路が固定されていった。 マルコポーロのジパング伝説に踊らされ、イスラーム商人を避けてアジアとの交易をめざし大航海時代が始まった。まずポルトガルのエンリケ航海王子がアフリカ沖のカナリア諸島の航路定め、ついで喜望峰へ到達する。バスコ・ダ・ガマのインド洋航海の海図はポルトガル王家により秘匿され次にカブラル船団がカナリア諸島から北東モンスーンを背にブラジルへ向かう航路を開拓した。そのまま南に下り今度は偏西風を背に受け喜望峰をこせばインド洋に出られる。16世紀にはインド航路が固まった。 海図は徐々にスペイン、オランダ、イギリスにも拡がっていく。リスボンからカナリア海流と偏西風によって東大西洋を周回する航路が出来たことが後にコロンブスのカリブ海進出のベースとなったのだが、その海上交通の要所となったカナリア諸島の征圧に成功したのがカスティリャにやとわれたフランス人だった。ポルトガルが砂糖の生産で大きな利益を上げており砂糖貿易をするジェノバ商人に雇われたのがコロンブスだったが、カナリア諸島をベースにすれば簡単にアジアに到達できると信じるようになっていた。しかし実際にはコロンブスは実際には海図のないリスクだらけの航海をし幸運にも大西洋の対岸にたどり着いたのだった。コロンブスが作ったとされる海図は、現在ほとんど残されていない。財産として管理され、航海と探検が進む中で時代遅れの海図として廃棄されてしまったのだろうと考えられている。 マゼラン、キャプテン・クックなどが新たな航路を開拓していくがアメリカ大陸とアジアの交易はなかなか進まなかった。アジアからアメリカに戻る航路がウルダーネタにより発見されたのが16世紀で、その時既に知られていたメキシコ湾流にのってヨーロッパに戻るのと同じような航路が太平洋にもあると考えたのだ。ウルダーネタは黒潮に乗って日本列島東岸を北上し偏西風にのってカリフォルニアに戻る航路を発見した。コロンブスに匹敵するウルダーネタの偉業だがあまりにも知られていないように思える。 せっかくの面白いテーマなのに肝心の海図が通常のものしかないのがやや残念。復元した海図を載せてくれれば当時の世界観がイメージとしてつかみやすいのに。
1投稿日: 2015.03.24
powered by ブクログどうしても西洋史に偏りがちなのは仕方ないか、でも第二次大戦は宣戦したのはアメリカではないのでそこは訂正されたい。 海図とともに世界観がどう形成され、世界が繫がり歴史が織り成されてきたかってとこで自分にとっては新しくて面白い視点だった。ギリシャ人のプトレマイオスの世界図、これが人々の世界観に影響を与え続けたこと。その中でポルトラーノになり開拓されていく海。大航海時代の探検。少ない誤差で大洋を渡るために生み出されたメルカトル図法。英海軍による世界の測量、そして海を通して繋がる世界。
0投稿日: 2014.01.26
powered by ブクログSLBA選定図書 2012年度 第3期 Bセットから 新大陸発見、産業革命、資本主義の誕生、世界大戦・・・ 世界史の陰にはいつも1枚の「海図」があった。 海からの視点で描く新しい通史。 分類 557/ミ
0投稿日: 2013.03.22
powered by ブクログ地中海・大西洋、インド洋、太平洋をそれぞれ第一、第二、第三の海として、ヨーロッパの航海者の行動範囲が時代とともに広がっていく様子を海という視点からまとめ上げた歴史書。 膨大な資料に基づく興味深い逸話が数多く盛り込まれているにも関わらず、全体の構成がしっかりしていて散漫になることなく、最後まで興味深く読むことができた。 西洋史の視点に偏っている点、著者の専門外と思われる現代の海図に関する記載がやや貧弱な点は気になった。
0投稿日: 2013.01.26
powered by ブクログ世界最古~現代(GPS)に至るまで、水路誌・海図の歴史をカバー。さまざまな文明圏の商人、探検家、国家が、間違った水路誌・海図に騙されて超ヒドイ目にあわされながらも、これを訂正し相互接続して、世界の全体像を描き出してきた歴史が生き生きと描かれる。近代史好きでポルトガル・スペイン萌え、オランダ萌え、イギリス萌えの方にはオススメ。時空間情報系の方は、ソーシャルマッピングの歴史(原点)として楽しめる。
0投稿日: 2012.12.31
powered by ブクログ本書は、航海や海運に関する歴史を概観しつつ、地理的な発見がどのように海図に反映され、各時代の人々の地理観・世界観がどのようなものだったかを明らかにしていく。古代についても丁寧に説明されているが、やはり、バスコ・ダ・ガマ、マゼラン、コロンブスなど大航海時代が中心になる。彼らが行った新たな航路や大陸の発見のほか、帆船時代に大洋を航行する方法であるモンスーンや偏西風を利用した航路についても詳しく記載されており、なかなか興味深かった。 著者は、ユーラシア・アフリカとインド洋を「第一の世界」、南北アメリカと大西洋を「第二の世界」、太平洋を「第三の世界」と位置付け、この3つの世界が「海上の道路」により結び付けられる過程を描こうとし、従来の世界史については、第一の世界の歴史を中心に、南北アメリカ、サハラ以南のアフリカ、太平洋地域を付け足す傾向にあったとしている。ただ、本書が果たして著者の主張するような世界史として描けているかというと、疑問が残る。つまり、本書においても、第一の世界、特にヨーロッパ中心の歴史となっているように思われる。ただ、それは仕方がないのかもしれない。というのは、3つの世界の結び付きを主導したのは第一の世界の人間であり、アメリカ原住民が大西洋を渡ってヨーロッパに到来したわけではないという歴史的事実が存在するからである。 それはさておき、領土を持つ「国」の興亡という観点からの世界史に慣らされた身には、海洋史は新鮮であった。
0投稿日: 2012.12.27
