
総合評価
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powered by ブクログ私にとっては目からうろこの観点で日露戦争について詳しく書いてある。こういうのを労作というのではなかろうか。筆者は他の学者の研究に大きく依っているとあとがきで言っているが、電報や手紙からそのときに会話まで戦争の裏事情が生き生きと描かれている。それにしても、筆者も言っているが、明治の時代には優秀な人材がたくさんいたものだと感心する。まだ鎖国から開けて30数年しか経っていないのに、あの時代にすでにハーバードに留学して英語に堪能な人が複数いたとか、欧米の経済・金融の仕組みを深く理解して堂々とわたりあって交渉できた高橋是清をはじめとする政治家・財界人がいたとか、ぜんぜん知らなかった。それから、日露戦争で日本はびっくりするほどの幸運に恵まれていたのだということも初めて知った。これまで考えたこともなかったが、たしかに戦争するには莫大な戦費が必要になるわけで、財政的には博打と言ってもいいほどの無理をして借金で戦争していたこと、ロシアも事情は同じで、借金を背負った同志が戦って運よく欧米の世論を味方につけた日本が勝った。とはいえポーツマスではロシアのウィッテが人気を独り占めして講和を有利に進めたのだそうだ。歴史の教科書に書いてあることもすべて人間がやったことだということを、当たり前だが、あらためて認識した。公債については知識がないのでクーポンとかわからないところは飛ばして読んだが、株を勉強してきたので株関係の用語はわかってよかった。
0投稿日: 2025.09.11
powered by ブクログ戦争するのってめちゃくちゃお金がかかる。銃弾一発もタダではない。当時の日本は明らかに資金不足で戦争を続けるには外国からの外貨調達が必須だった。政府から命じられて欧米に向かった高橋是清氏と深井英五氏。日本の財政事情に止まらず、英ポンド中心の国際金融市場、ユダヤ人たちの思い、モルガン家の勃興など様々な視点から全く新たな日露戦争像を示す、金融版「坂の上の雲」。最後までドキドキしっぱなしで読み応え抜群の良書。
2投稿日: 2023.07.14
powered by ブクログ日露戦争の影の英雄、高橋是清による日露戦争開始後の苦難の資金調達の戦い。新興国日本というベンチャー企業の資金調達の物語としても読める。 日英同盟とはいうものの、商売は別ということ。その現実を飲み込みながら、英米の投資家から投資を受けるために、走り回る。 戦争遂行に戦費が必要なのは自明だが、ビジネスの側面がついて回り、投資家との駆け引きがなされる。英米の投資家の熟練が見てとれる。 また、日露戦争の時点においても、米国が英国から金融覇権を奪い取ろうと力を蓄えているのがわかる。
0投稿日: 2022.10.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
日露戦争の前後、戦争を始めると物資の調達が必要で、物資の一部は輸入に頼るために対外支払いが必要になる。当時は金本位制が採られていたので『じゃぁお金をたくさん刷りましょう』というわけにもいかず、金(gold)が必要になる。自力で急に外貨が獲得できるようになる訳でもないので、足りない分は借りて賄わなければならない。 借りる?誰が?誰に?という段で、特命を受けて欧米渡った人たちと、それを迎えた人たちの話。 目的は戦争遂行のためだし、借り手は極東の新興国、ロシアの行く末はヨーロッパの国々の均衡に影響が大で、差別や偏見なんて言葉があったかどうかも分からないくらい当たり前のように見下されている。こんな具合のとても政治的な借金の交渉記録を、1日単位で見て行く。 『契約調印日の朝にようやく米国側からOKの返事が来た』みたいな綱渡りの仕事を実生活でもしているためか、刻々と変わる状況を追体験しているような気分。卑近な話ですが。
0投稿日: 2021.06.12
powered by ブクログ面白い!文章・STORYが上手 1.国際金融-1900年鉄道投資に過半 新興国投資日本も 2.日露戦争の財政 伊藤博文だけが困難を認識 金子堅太郎は協力要請を断る ルーズベルト人脈 3.1902年日英同盟はロンドン市場を 1899年第二次ボーア戦争で余裕はない 4.NYヤコブ・シブ ロシアのユダヤ人迫害へ対抗 5.日本海海戦の衝撃 「サンクコスト」が日本国を滅ぼした 満州は20億の金と10万の命により獲得(小村寿太郎)
0投稿日: 2020.12.28
powered by ブクログ金融史を学びたく手に取った一冊だが、長編と言う事で読み始めるまでに時間がかかっていた。しかし、読み始めるととてつもなく面白く一気に読み切ってしまった。戦争をするためには資金が必要で、新興国日本が資金調達のため奔走し、日露戦争後には先進国の仲間入りを果たしていく姿は、明治と言う激動の時代を感じる。今ではなくなった金本位制が先進国の証だったり、国を超えた人とのリレーションが世界を動かして行くと言った世界観が日露戦争の裏側では存在していた。
3投稿日: 2020.05.20
powered by ブクログすげえ面白かった。日露戦争における資金調達の模様を、当時日銀副総裁としてロンドンで実際に調達に奔走した高橋是清の動きを中心に紐解いていく。当時の国際金融市場の様子、日本の立ち位置、いかにして絶望的な状況から資金調達に成功し日露戦争勝利へ向かっていくのか、証券価格の推移と戦況を絡めてリアリティのある考察がなされている。具体的なお金の動きが絡むとすごく物事がビビットになるんやなと思った。単純に現存する資料をまとめているに留まらず、時節筆者の鋭い推論が展開されてて歴史の解釈ってのはこういうもんなのかと感心した。一流の登場人物たちはそれぞれ魅力的だが、ユニークな経歴と高いリレーション能力で日本の土台(資金)を土壇場で支えた高橋是清にはもっと辿りたい興味が湧いた。
3投稿日: 2019.08.23
powered by ブクログ戦争するのにも先立つ金がいる。 国家同士が素手で殴りあうわけではないので当たり前な話なのだが、得てして忘れがちな事実、もしくは不当に無視されている視点ともいえます。 日露戦争の勝利は、まさに薄氷の勝利であり、勝利の影の立役者は困難とされた資金調達を可能にした2人の優秀な人材がいたからという内容は、知的興奮を味わえます。 昔の戦争は、勝てば超大国同士の話合いで賠償金や植民地がもらえ、戦争自体が国威発揚のビジネスそのものだったことが再確認できます。 現在では、経済戦争が主流ですが、いざとなれば軍事介入や開戦も辞さないわけで、そのためにもお金(国力や富)が不可欠です。 では、経済力の弱い国は大国の言いなりにならざるを得ないのか? 半分イエスですが、例外として北朝鮮のように一度核兵器を手にしてしまうと、とても効率よく軍事大国に早変わりできるという現実は注意する必要があります。 こうした核拡散の抜け駆けが当たり前になれば、軍事均衡という砂上の平和はもろくも崩れてしまいます。 軍事力の増強によって平和を維持するということ自体に既に自己矛盾を抱えているわけですが・・ 我々は日本国憲法で謳われるような善良な市民や国家ばかりではないという悲しい現実と嫌でも向き合わなければなりません。 板谷氏の文章力もあり、本書は掘り出し物です。
0投稿日: 2019.02.01
powered by ブクログ【由来】 ・amazonでロスチャイルドの関連本で。レビューを見るとえらく評価が高い。 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】
0投稿日: 2018.10.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
これはすごい本です。 日本人全員が歴史教育課程で読むべきです。 ドラマティックに語られる日本史において 常々抱いていた疑問、 「それ、誰が金を出してるの?」 日露戦争における、 その疑問を完璧にクリアにしてくれました。 副題の通り「高橋是清と欧米バンカーたち」の 活躍(暗躍?)が見事に描かれております。 他の著作も読んでいきたいと思う。
0投稿日: 2018.01.27
powered by ブクログめちゃくちゃ面白かった。そしてすごい勉強になった。日露戦争はホントに奥深い。 ・日露戦争近くの頃、ロシアのGDPは日本の3倍だったが、1人あたりGDPは日本と略同水準。 ・日本の金本位制導入後の初めての外債発行は失敗だった、IR不足、リスクプレミアムの不足、有力マーチャントバンクに頼ってなかったこと等。 ・東京、ロンドン、NY、何も金融は狭い所で営業していたが、昔は証券の受渡しが手渡しだったから。 ・19世紀のイギリス、シティではなくもっと狭い「ロンバード街」 ・19世紀のイギリスの発展は、中産階級の増加で民間資本が形成→銀行を通して産業資本として貸出に回った。 ・金本位制はデフレ、金の供給量が限られるから。 ・ヤコブ・シフ(クーンローブ商会)は、日露戦争の戦費調達で日本(高橋是清)の救世主。 ・日露戦争は、黄色人種且つ非キリスト教徒のアジアの国が白人キリスト教国と堂々と戦う初めて(?)の戦争 ・日露戦争当時、先進国は期待収益率が低下→新興国、日本は有力な投資対象先。 憲法と議会を持つ立憲君主制、金本位制、教育制度の急速な整備、産業が少し興りはじめた日本は良い投資対象国。 ・日露戦争が発生直後、ロシアの公債利回り下落/日本の公債利回り上昇→ロシアが勝つ予想。 ・日本は戦費調達の目処が立たないうちに開戦。 ・ロシアは当時、アレクサンドルⅢ世、ニコライ2世、国内の不満をそらす為にユダヤ人を迫害→多くのユダヤ人がアメリカに逃避(ポグロム)。 ・ロシアは開戦前にすでに多額の借金、42億ルーブル、うち3/4がフランスからの借入。 ・8億ルーブルの見積り。日本の国家予算3億ルーブル、ロシアの国家予算20億ルーブル。 ・陸軍の戦費は12.8億円、海軍の戦費は2.3億円 ・日露戦争の資金調達に協力した金融機関やバンカーには、勲一等〜勲三等瑞宝章等が与えられた。 ・血の日曜日事件は、日露戦争のなかでも特に大きなターニングポイント。 ・奉天会戦後、日本は資金調達ができるが、ロシアは困難となっていった。日本公債の利回り低下 ・仏と露は開戦前は関係良好だったが、奉天会戦後は、露へのファイナンスを仏がやめた。 ・奉天会戦後、公債利回り上昇、「東株」も軟化、但し戦争銘柄の日本郵船、鐘紡は上昇。 ・鉄道抵当法案成立し、兜町は外国語話せる外務員の需要高まる。 ・バルチック艦隊が勝つと、東株急上昇、日本公債の利回り急落。 ・ポーツマス条約、小村寿太郎-ウィッテ、日本は賠償金取れず、外交上では露の大勝利と報じられる。 ・日本は天候不順等で米が不作だと、外米を輸入→正貨流出の恐れがあった。 ・戦後の整理公債の発行条件が良くて4%.無担保、日本は一流国の末席に仲間入り。 ・南満州鉄道の株主は、ポーツマス条約で日本と清だけに限定。桂ハリマン覚書は破棄された。株主は実際、100%日本人。 ・日露戦後、東株はバブルに49円→318円 レベルストーク卿ベアリング商会、ボーア戦争、ノーザンパシフィック、クーンローブ商会ヤコブ・シフ、末松謙澄、金子謙太郎、クレディ・リヨネ、深井英五、血の日曜日事件、ポリシェヴィキ、マカロフ、ヘンリー・ラミー・ビートン、アーネスト・カッセル卿、黒木為禎、クロパトキン、奥保鞏、HSBCキャメロン卿、パーズ銀行、ハル事件、奉天会戦、大山巌、児玉源太郎、乃木希典、山縣有朋、マックス・ウォーバーグ(ドイツ)、ウィッテ、鈴木久五郎、呉錦堂、麦小鼓、ポチョムキン号、徳富蘇峰、桂ハリマン覚書、後藤新平、
1投稿日: 2016.04.26
powered by ブクログ最近読んだ「東京帝大叡古教授」にも、日露戦争は出てくるけれど、国内のそのような反発の裏側には、このようなドラマがあったとは。 また、最後に語られる満鉄の経営についても、歴史のifを強く思う。
0投稿日: 2015.10.21
powered by ブクログ日露戦争の資金調達に関して、初めて知ることができた。 高橋是清の活躍を恥ずかしながら知りもしなかった。 戦争には莫大な資金が必要で、その資金は自国では、 全くと言っていいほどにまかないきれない。 そこで、サポートしたのが、他国ではなく、一個人であるから驚きであった。 歴史を学ぶごとに日本人の偉人を知ることができる。 また、外交に魅力を感じるのであった。
0投稿日: 2015.08.13
powered by ブクログ久しぶりに読み応えのある本に出会えた。「日露戦争」といえば、司馬遼太郎の「坂の上の雲」が国民文学として有名で、その批判的本も数多く出版されているが、日露戦争の歴史的経緯や当時の政治情勢の推移をも詳細に扱っている点ではなんといっても「司馬遼本」は抜きん出ている。 本書は、その戦争の「資金調達」というもうひとつの戦いに焦点を絞っている点が実に面白く興味深い。 また「高橋是清」については、何冊もの本がでているが、「日露戦争時の活躍」に焦点を絞って取り上げた本は他に見当たらないのではないか。 「戦争」に必要な「補給」と「兵站」一つ取り上げても「資金」がなければ何一つできないことはわかるが「国家的資金供給」という別次元のジャンルをわかりやすく、しかも日露戦争の経緯と共に取り上げて詳細に解説している本書は高く評価できるのではないか。 このような本があるから、読書はやめられない。実に楽しいひと時を過ごすことができた、
0投稿日: 2015.01.24資金調達に成功し戦争にも勝った。しかしそれが満州にのめり込むきっかけになってしまう。
高橋是清自伝によると日露戦争開戦前の戦費の見積もりは4億5千万円だった。戦前の1903年の一般会計歳出は2億5千万円程度、当時の銀行預金残高は7億6千万円ほどである。日露戦争臨時軍事費特別会計の決算額収入17億余りの内外国債で6億9千万、内国債で4億3千万を調達している。金本位制度を守ることは外国で公債発行をするための必須条件であり、例え内国債の発効であっても裏付けとなる準備金つまり金かあるいは金と等価とされるポンドを持ってなければならない。日清戦争を例にとると戦費の1/3が外国に流出しているので同じ比率だと当初の見込みでも1億5千万が流出する。当時の日銀所有正貨は1億1700万円で開戦時に正貨として持てる余力は5200万従って流出分の不足1億円だけではなく準備金も必要になる。政府は開戦前にポンド建て外債2千万ポンド(2億円)の募集枠を閣議決定し、高橋をロンドンに派遣した。 1900年の国力の比較では人口、GDP、日露戦争当初予算のいずれもロシアは日本の3倍程度で、一人当たりGDPではほぼ並んでいた。ロシアとフランスが同盟関係でイギリスとドイツはロシアを警戒、日英同盟はあるが日露戦争に対してはイギリスは中立、アメリカと日本も当時は比較的良好な関係で英米は微妙だ。清朝の弱体化でロシアは沿海州を取得し、不凍港の旅順を租借し東清鉄道と南満州鉄道の敷設権を手に入れ沿線都市を植民地化していった。日本がロシアの満州権益を認める代わりにロシアは日本の朝鮮半島の権益を認めるよう申し入れるがロシアは相手にせず、アメリカとイギリスは満州権益の門戸開放を求めていた。元々の日露戦争の目的からするとすでに勢力化に置いていた朝鮮半島の確保だったはすで、欲を出して満州鉄道をロシアに成り代わり支配しようとしたことが後の第二次大戦につながっていく。満州人からするとロシアも日本も欧米も迷惑なことには変わりないが清朝はもはや力を持たない。 高橋は第一回の公債発行に苦慮していたがそれを助けたのがクーン・ローブ商会のヤコブ・シフでユダヤ人を迫害するロシアに対しこれまでロシアのファイナンスに協力してきたが一向に改善されずならば日本に協力してロシアを弱体化させる方がましだと開戦前に日本の公債引き受けを密かに決めている。それでも開戦直前の日本公債発行が実施できるかは危ぶまれており、ジャンク債同様だったのでシフも慈善活動をするつもりはない。日本が有利になりそうならそこで恩を売るというのがシフの計算だった様だ。3月31日に高橋がロンドンに到着後一旦公債発行を諦めた高橋が4月22日にイギリスの銀行家カッセル卿配下のビートンに合い「もしも日本が、海戦同様陸上戦でも敵を打ち負かす決心なら、その時まで待った方がいい、ただし待ってる間にもチャンスには備えておるべきだが」と言う手記を残している。4月30日に鴨緑江の戦いに日本軍が勝ち、フからすれば鴨緑江の勝利でようやく参加条件に見合う物になったと言える。そして3日に晩餐会で高橋はシフに引き合わされ翌日クーン・ローブ商会は公債参加表明する。 日本の公債利回りは3/31の6.43%からこの勝利で5%台にやや下がったがそれでもロシア公債の4.3%に対して1%以上のスプレッドがついており6/16に一旦0.76%と縮めたが203高地攻略に失敗した10月中旬には1.34%にまで拡がり、旅順要塞攻略に成功した12月末でもまだ0.74%ついている。欧米投資家にとっての日本はハイリスク商品のままだった。 ロシアが売られるきっかけはバルチック艦隊がイギリス近くの北海でにわとり艦隊というイギリスの漁船団を砲撃したハル事件から、日本の幻の水雷艇におびえ漁船1隻を撃沈ししかも誤爆により巡洋艦2隻が被弾した。ついでニコライ二世がデモ隊を武力鎮圧した血の日曜日事件でさらに売られ3月にはとうとうスプレッドがなくなった。3/10の奉天会戦に勝った後も日本国債は売られ投資家の興味はいつ講和するかに移っている。バルチック艦隊は10/15に出航してからわざわざ近海運行用で船足の遅い艦船を随伴させ、マダガスカルで2ヶ月カムラン湾でも3週間停泊し5月末の日本海海戦に現れた。艦隊行動をとるにも遅い艦に合わせることになり敵前回頭がなくてもバルチック艦隊に勝ち目は薄かった様だ。 後のデフレ退治でリフレ派がモデルとして讃える高橋是清だが日露戦争当時は財政均衡を重視している。高橋が調達した公債を返済したのは第一次世界大戦という神風だった。緊急時には禁じ手も辞さないでモラトリアムや金本位制からの脱退もやったがリフレ策の後は軍事費の削減に動いたのが原因で暗殺されてしまった。
0投稿日: 2014.09.13
powered by ブクログ高橋是清自伝によると日露戦争開戦前の戦費の見積もりは4億5千万円だった。戦前の1903年の一般会計歳出は2億5千万円程度、当時の銀行預金残高は7億6千万円ほどである。日露戦争臨時軍事費特別会計の決算額収入17億余りの内外国債で6億9千万、内国債で4億3千万を調達している。金本位制度を守ることは外国で公債発行をするための必須条件であり、例え内国債の発効であっても裏付けとなる準備金つまり金かあるいは金と等価とされるポンドを持ってなければならない。日清戦争を例にとると戦費の1/3が外国に流出しているので同じ比率だと当初の見込みでも1億5千万が流出する。当時の日銀所有正貨は1億1700万円で開戦時に正貨として持てる余力は5200万従って流出分の不足1億円だけではなく準備金も必要になる。政府は開戦前にポンド建て外債2千万ポンド(2億円)の募集枠を閣議決定し、高橋をロンドンに派遣した。 1900年の国力の比較では人口、GDP、日露戦争当初予算のいずれもロシアは日本の3倍程度で、一人当たりGDPではほぼ並んでいた。日露戦争に関わる諸国の実質GDP/一人当たりGDP(億$)はアメリカ3125/40、イギリス1849/45、ドイツ1623/30、フランス1167/29、ロシア1540/12、日本520/12、中国2182/5であり、ロシアとフランスが同盟関係でイギリスとドイツはロシアを警戒、日英同盟はあるが日露戦争に対してはイギリスは中立、アメリカと日本も当時は比較的良好な関係で英米は微妙だ。清朝の弱体化でロシアは沿海州を取得し、不凍港の旅順を租借し東清鉄道と南満州鉄道の敷設権を手に入れ沿線都市を植民地化していった。日本がロシアの満州権益を認める代わりにロシアは日本の朝鮮半島の権益を認めるよう申し入れるがロシアは相手にせず、アメリカとイギリスは満州権益の門戸開放を求めていた。元々の日露戦争の目的からするとすでに勢力化に置いていた朝鮮半島の確保だったはすで、欲を出して満州鉄道をロシアに成り代わり支配しようとしたことが後の第二次大戦につながっていく。満州人からするとロシアも日本も欧米も迷惑なことには変わりないが清朝はもはや力を持たない。 ちなみに支出の裏付けでは陸軍が12億8300万円に対し海軍2億2500万円となっていて陸軍が進出するほど財政的には破綻が近づく。公債価格の動きは戦争継続で売り、短期講和で買いとなっていて日本の局地戦の勝利はあまり影響していない。ただしロシア公債価格は下がっていく。 高橋は第一回の公債発行に苦慮していたがそれを助けたのがクーン・ローブ商会のヤコブ・シフでユダヤ人を迫害するロシアに対しこれまでロシアのファイナンスに協力してきたが一向に改善されずならば日本に協力してロシアを弱体化させる方がましだと開戦前に日本の公債引き受けを密かに決めている。それでも開戦直前の日本公債発行が実施できるかは危ぶまれており、ジャンク債同様だったのでシフも慈善活動をするつもりはない。日本が有利になりそうならそこで恩を売るというのがシフの計算だった様だ。3月31日に高橋がロンドンに到着後一旦公債発行を諦めた高橋が4月22日にイギリスの銀行家カッセル卿配下のビートンに合い「もしも日本が、海戦同様陸上戦でも敵を打ち負かす決心なら、その時まで待った方がいい、ただし待ってる間にもチャンスには備えておるべきだが」と言う手記を残している。公債発行の目論見書準備には時間がかかる。そして24日に公債発行を決意し、26日に銀行団が6%、償還7年、1000万ポンドの部分発行という案を提出しよく27日に政府に打電した。4月30日に鴨緑江の戦いに日本軍が勝ち、政府からは5月2日に条件改善要求が届く。そして3日に晩餐会で高橋はシフに引き合わされた。クーン・ローブ商会の公債参加表明が翌4日なので、シフからすれば鴨緑江の勝利でようやく参加条件に見合う物になったと言える。 日本の公債利回りは3/31の6.43%からこの勝利で5%台にやや下がったがそれでもロシア公債の4.3%に対して1%以上のスプレッドがついており6/16に一旦0.76%と縮めたが203高地攻略に失敗した10月中旬には1.34%にまで拡がり、旅順要塞攻略に成功した12月末でもまだ0.74%ついている。スプレッドをオッズに例えるとロシアの人気の方がまだ高く、欧米投資家にとっての日本はハイリスク商品のままだった。 ロシアが売られるきっかけはバルチック艦隊がイギリス近くの北海でにわとり艦隊というイギリスの漁船団を砲撃したハル事件から、日本の幻の水雷艇におびえ戦艦アリョールだけで500発の砲弾を発射し漁船1隻を撃沈し5艘が中破で2名が死亡し6名が負傷した。またこの時誤爆により巡洋艦2隻が被弾し1名が死亡し、数名の負傷者を出している。ついでニコライ二世がデモ隊を武力鎮圧した血の日曜日事件でさらに売られ3月にはとうとうスプレッドがなくなった。3/10の奉天会戦に勝った後も日本国債は売られ投資家の興味はいつ講和するかに移っている。バルチック艦隊は10/15に出航してからわざわざ近海運行用で船足の遅い艦船を随伴させ、マダガスカルで2ヶ月カムラン湾でも3週間停泊し5月末の日本海海戦に現れた。艦隊行動をとるにも遅い艦に合わせることになり敵前回頭がなくてもバルチック艦隊に勝ち目は薄かった様だ。 ポーツマス講和については「歴史を変えた外交交渉」に詳しく描かれておりロシアのウィッテの見事な交渉と小村寿太郎の決断で賠償金請求と占領していた樺太の北半分を放棄したが戦争の当初目標は全て達成している。しかし旅順攻略の犠牲と多額の戦費をかけたことが満州鉄道で元を取るという発想につながってしまう。高橋はアメリカの鉄道王ハリマンを満州鉄道の経営に引き込むつもりだったが果たされず、ハリマンの娘婿ウィラード・ストレイトが働きかけ桂・タフト密約(アメリカが朝鮮権益を認める代わりに日本はフィリピンには手を出さない)は事実上反古にされる。ポーツマス講和を主導したローズヴェルト大統領はパナマ運河完成までは太平洋で日本を事を構えるつもりはなく満州の門戸開放がされていればまた違った歴史になっていたかも知れない。この辺りは「日米衝突の萌芽」に詳しく描かれている。 後のデフレ退治でリフレ派がモデルとして讃える高橋是清だが日露戦争当時は財政均衡を重視している。緊急時には禁じ手も辞さないでモラトリアムや金本位制からの脱退もやったがリフレ策の後は軍事費の削減に動いたのが原因で暗殺されてしまった。日露戦争後の軍事費と国債費は一般会計歳出のそれぞれ30%で6割が固定されている。平成22年の国債費は約21兆円、社会保障費が約27兆と一般会計92兆の半分を占める。それでも日露戦争後の政府債務のGDP比率は60%ほどと1995年くらいの水準で第一次大戦の輸出ブームで解決した。第二次大戦後のGDP比率は350%を超えたがこれは厳しいインフレによって解消された。2014年の対GDP比は230%を超えた。これを日本国民の貯金だという人がいるがどうだろう?
1投稿日: 2014.09.13
powered by ブクログこの本は、日露戦争というテーマを軸に展開している点で、日本と列強各国の歴史が結びついて理解できる。 また資金調達が話のメインであることから、1900年代における日本の金融市場がどのような雰囲気であったかも垣間見ることができる。 当時の日本国債は、内国発行と同時に、海外発行(ポンド建て)も主力な資金調達手段だった。日露戦争時における海外発行を通じて、国際金融市場へのアクセスの礎を築く。 また根回しの大切さを学ぶこともできる一品。
0投稿日: 2014.01.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
・学校の教科書で習った「日露戦争」。司馬遼太郎『坂の上の雲』で描かれる英雄的な明治期の日本人たちの雄姿は記憶に新しい。本書は華やかな戦物語の裏で戦費調達の使命を帯び欧米に向かった高橋是清と深井英五を中心に、当時の金本位制を元に為替レートを安定させた20世紀初頭の国際金融市場の動きを追う。二人は、当時二流以下の扱いだった日本国債発行をいかにして可能にしたのか?この物語は資金調達に奔走した人々の軌跡、金融版「坂の上の雲」だ。 ・当時、日露のGDP/人は大体同じ水準だった(しかし人口や国土の広さ等国力のその他要素はロシアのほうが上)というのが意外だった。 ・この本を読んでユダヤ資本(JPモルガン等)や貨幣制度について興味が湧いた。
0投稿日: 2013.11.28
powered by ブクログ日露戦争の際の資金調達に関して、当時日銀副総裁であった高橋是清とそれに随行した深井英五の活躍は多くの人が知るところだが、『是清自伝』などの記述には曖昧で不明な部分も多い。とくに高橋とユダヤ人資本家ヤコブ・シフとの関係はよくわかっていなかった。 本書は先行研究に依拠しながらも、シフをはじめとする欧米のバンカー達の立ち位置や考え方にも多く言及し、当時の国際的金融市場の中でこの日露戦費調達がどのような形でおこなわれたのか、またそれが日本にとってどのような意味を持ったのかを丁寧に、かつスリリングに叙述している。複雑でわかりにくい部分も図表を多用しながら解説しているので、初心者にもとっつきやすいのではないだろうか。 今さらながらオススメである。
1投稿日: 2013.10.27単なる美談としてではなく
もし高橋是清の外債公募ツアー回顧だけならば、ちょっと面白い歴史物に過ぎないでしょう。また、日露戦争当時の世界経済・ファイナンス概論だけならば勉強にはなっても無味乾燥でしょう。両者をうまく組み合わせることで、面白く読める上に、知的興奮のある読み物になっています。 舞台となる20世紀初頭は、産業革命が世界にひととおり浸透して経済・金融がグローバル化した時期です。ヴィクトリア朝は終わっていますがまだ英国が世界のリーダー的地位にあり、太平洋に達した新興勢力米国の勢いはすさまじく、極東の島国日本がようやく世界に向かって本格的に開かれ、ロシアでは革命の予兆が漂っています。 当時のロシアの人口は日本の3倍、GDP(購買力平価ベース)も同じく3倍。 あれ?一人当たりGDPは日露で同等だったんですね。ロシアはヨーロッパの後進国とは言え、この事実は個人的には意外でした。 こういったデータの積み重ねで、当時の日本が置かれていた状況、さらには、高橋らがどんな判断でどう行動したかが伝わるようになっています。また、ロンドン公債市場や東京株式取引所の相場が、戦況の報道を受けて上下する様も丁寧に追われており興味深いです。
3投稿日: 2013.09.27
powered by ブクログ130824 中央図書館 明治時代には、国際社会で堂々と渡り合える見識・胆力と責任感を持つ人材が多士済済であったことがわかる。 また、現在の国債残高積み上がりは、日露戦争のときの借金レベルに匹敵しているという指摘も重要である。近い将来には外債によって国の運営費用を賄わなければならないかもしれない。しかし我が国には、世界のリスクを管理し、利用し、それでいて国益を損なわないだけのスキルとパワーがありえるのだろうか。国内のトラブルでさえ右往左往しているのに。国際的なことにもっと目を向ける国民的教育が必須だろう。現政権の方向性はかならずしもそうでなく、経済以外の意識レベルは狭い日本に閉じ込める少国民を育成するというマインドばかり勝っているような気がする。
0投稿日: 2013.08.24
powered by ブクログ日露戦争と言えば坂の上の雲のイメージしか持ってない人は読んでおかないとダメといえるテーマ。 戦争といえば兵隊の話ばかりが目立つがお金がないと話は始まらない。近代戦は以前より格段にお金が重要になるのだが、当時の日本は生産力も資源も不足していたので外貨がなければ戦争どころか国家の維持すら困難。そんな日本政府(高橋是清)が金融面でどのように立ち回っていたのかを当時の資料や状況を調べて書かれている本でした。 特に当時の国際金融市場の変動から国際社会は日露戦争の行方をどのように見ていたのかを推察しているのは興味深かったです。 明らかに国力を越えた借り入れをしているのだが、それを公表してしまうと必要な借り入れが行えないので民衆の加熱を抑えることが出来なかったジレンマが和平交渉での失態とあいまってgdgdになる様などを思うと歴史をいろいろな視点から学ぶ必要性をあらためて感じる。
1投稿日: 2013.06.19
powered by ブクログ高橋是清が日露戦争時にそのような働きをしたということを本書で初めて知った。 手元にあった山川の日本史教科書(詳説日本史)では、高橋是清の名前は原首相刺殺後のp.301「立憲政友会の高橋是清は後継内閣を組織したが短命に終わり、」と二・二六事件のp.327「斎藤実内大臣・高橋是清蔵相・渡辺錠太郎教育総監らを殺害し、」の二箇所のみであり、日露戦争p.272-273の項では触れられていない。 当時の世界情勢、金融の様相、日露戦争の経緯を知れるのみならず、近代社会の成立を捉える上で金融を知ることが肝要であり、金融史を知ることで動的な世界の歴史がわかるということを実感させた一冊だった。
0投稿日: 2013.05.12
powered by ブクログ■ 日露戦争を始め戦史モノは兎角、軍事面を中心に語られるのが主流の中で、戦争を遂行するための資金調達に焦点を当てるのは、新しい視座に富んでおり、内容も含め名作と言える1冊。 「坂の上の雲」はあくまでも小説だということ。 ・各戦役におけるマーケットについての意外な反応。 ・ロシア帝国の20世紀初頭における立ち位置 ・血の日曜日事件そのものの内容以上にマーケットに与えた影響の大きさ。 ・新資料発見におけるロジェストウエンスキー提督の再評価。
0投稿日: 2013.04.30
powered by ブクログ【「坂の上」までの物入り】日本にとっては文字通りの総力を費やすこととなった日露戦争。しかし、工業化も道半ばの日本にとって、もっとも重要な「金」の工面の見通しが立たなかったことから、高橋是清と深井英五は欧米バンカーとの交渉を通じて日本国債の発行を行うよう政府から指令を受ける。いかにして彼らは魅力に乏しかった日本国債の市場を開拓していったのか。金融という新鮮な観点から、日露戦争を鋭く切り取った話題の一冊です。著者は、投資顧問会社を2006年に設立した板谷敏彦。 名著。戦地からはほど遠い国債金融市場を舞台として繰り広げられたもう一つの熱い(されど極めて静かな)戦いに、読者の知的好奇心がぐらぐら揺さぶられること間違いなし。しっかりと20世紀初頭の国債金融がどのような状況にあったかまでも記述されていますので、読んでいて置いてけぼりを喰らうようなこともないかと。かなりの大著ですが、その厚みが120%意味を持つものですので、ぜひ手に取って読んでいただきたい作品です。 著者が高橋是清の公債募集談から汲み取った3点の教訓はまことに明確でありながら、同時に見落とされがちな点として顧みておく必要が十分にあるものだと思います(この教訓は本書を読み進めると本当になるほどと思わざるを得ません)。歴史についての新たな視点が獲得でき、国債金融に関する知識も身に付く、それでいて単純に面白い人間ドラマも味わえるというのですから、こういう本を名著と言わずしてなんと呼べばいいのでしょう。 〜東京市場での株式の暴騰ぶりとロンドン市場での公債価格の変化を比べれば、日本国民の戦勝に対する価値判断が欧州の金融市場と少し乖離し始めた状態が見てとれる。これまでバルチック艦隊に圧迫されていた日本の世論が明らかに増長し始めていたのである。〜 ☆10があれば☆10にしたい☆5つ
2投稿日: 2013.04.27
powered by ブクログ日露戦争を金融の観点からみた本。 著者が業界の人なので、マーケット関連のとこは良く書かれてた。 ただ、歴史家ではないので、内容がどこまで正しいのかわからないけど。 ファイナンスの帰趨が戦争の勝敗を左右するが、戦況の方もファイナンスの是非を変えるので、複雑だなと思った。
0投稿日: 2013.03.16
powered by ブクログ日露戦争における外債発行の裏側、高橋是清の役割など、これまでと違った視点で分析している。クーンローブ商会とシフ。モルガン、ロスチャイルドの役割、当時の国際関係が垣間見ええる。良書。
0投稿日: 2013.01.12
powered by ブクログ大掃除の合間になんとか読み終わった。 日露戦争時、日本は大幅に足りない戦費を外債によって賄ったわけだが、この本では、そのいきさつを詳細に描いている。日露戦争といえば、奉天会戦や日本海海戦が思い浮かぶが、本書では、派手なドンパチの描写は一切ない。 全編を通じて印象深いのは、100年前の国際金融市場が、現代から見ても違和感ないほど高度に発達しているということと、その市場で、高橋是清が驚くべきセンスを発揮し、資金調達を成し遂げたこと。また、実はロシアも資金調達に悩み、ギリギリの線で戦争をしていた事実は、僕の従来の日露戦争感に修正を与えてくれる。 それにしても、涙ぐましいまでの繊細さで世界に相対していた日本が、わずか40年後に対米戦争で破滅してしまうとは。司馬遼太郎が述べていたように「信じがたいこと」だ。 ちなみに大掃除はまだ終わっていない。
0投稿日: 2012.12.31
powered by ブクログ高橋是清による日露戦争時の海外公債発行の模様について、当人の自叙伝や世の中に広まった「通説」によらず、複数の資料を基に、著者が真実と考えるところが書かれている。高橋の苦労話だけでなく、当時のファイナンスの中心であるロンドンやニューヨークの金融プレイヤーの実態なども分かりやすく紹介されていて、興味深い。 それにしても、国を運営するというのは大変だ。今よりもずっと非民主的だと思われる明治時代においても、正貨が足りないから悪条件でも起債しなければならないのに、新聞には条件が悪いと書かれ、だからといって、資金不足の実態をさらけ出せば、ますます資金が集まらなくなって条件が悪化したり、戦争を止められなかったりする。そんな国民の不満を浴びながら、国の置かれた条件の下でベストを尽くすという明治の男は、高橋にしろ、小村寿太郎にしろ、みんな偉いなと改めて思う。 また、本書のメインではないが、あの児玉源太郎が、満州に関しては満鉄を使った植民地経営を志向し、「国民の血を流して獲得した」との理由で欧米資本を排除して、後の戦争の遠因を作ったという著者の指摘も、中々興味深く、人物に対する色々な評価があり得ることを思い知らされた。 高橋是清の自伝など、読みたくなる本が増えるという点でも、読んでよかった一冊。
1投稿日: 2012.06.07
powered by ブクログ日露戦争を資金調達という視点から見た本。 国際利回りという視点からみた当時の日露に対する評価や、資金調達を行った高橋是清のリレーションの範囲・深さ等、興味深い内容だった。 当時の国債発行市場や主要な投資銀行の情報なども楽しめた。 現代の日本への教訓にも富んだ本であると思う。 筆者があげている教訓としては以下の3つである。 1.公債の発行は増税の先送りでしかない。 2.市場へのアクセス、流通市場でなく発行市場へのアクセスは別個であるということ。 3.インベスター・リレーションの重要性、投資先・調達先の分散によるリスク回避が重要であるということ。
1投稿日: 2012.05.31
powered by ブクログ歴史モノは苦手だけど、比較的仕事に近い金融の視点で日露戦争を読み解くとのことで読んでみたら、すげー面白い。公債の金利・値段は新聞や一般大衆以上に情勢を把握・反映しているものなんだなぁ。調達にあたって、国際的な金融資本に翻弄されるが、回を重ねるごとにうまくこなしていく高橋是清も見事。
0投稿日: 2012.05.05
powered by ブクログ個人的に日露戦争にまつわる日本の動きに関する本を多く読んできた。その多くは歴史や世相に関するものだが、この本は「資金調達」に焦点を合わせた本であるが、逆に歴史の解釈に新たな切り口を垣間見せてくれたという点で優れた論考だと思う。私が「日露戦争」に惹かれるには、今の日本において決定的にかけている「資本政策、資金調達、外交戦略、パワーバランス、そしてそれらを背景とした軍事戦略・戦術」が、明治維新後わずか30年余りの間に高度に成立させた当時の日本の成長に、素朴に驚嘆しているからである。この歴史から学べることは、まだまだ、ある。
0投稿日: 2012.05.04
