
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
時が止まったままの父親の時間が、流れ出して欲しい。そのために、生まれ変わってきたのでしょう。思いが残るのは、執着。執着が世界をバグらせる。強い悲しみがあっても、日々の暮らしを充実させなければ、死んだ人が死にきれない。人に心配させるようなことはしてはいけない。 花まんま食べて、あの父親が、ごはん食べれるようになった、ということであって欲しい。 ともあれ、切なくて、号泣した。
0投稿日: 2025.11.22
powered by ブクログ昭和の懐かしさを感じた、私が育ってきた時代そのものであった 『花まんま』とは…子どもの頃、色々な花を摘んで詰め込んだ、ままごと遊びのお弁当だった 大阪の下町を舞台に言葉が飛び交う物語
0投稿日: 2025.11.19
powered by ブクログ昭和30年代頃の大阪を舞台にした、子ども目線の短編集。 「摩訶不思議」以外は全部切ない。 わたしは、「トカピの夜」と「妖精生物」が好き。
0投稿日: 2025.10.28
powered by ブクログ第133回直木賞受賞作。 ↑これは知らずに、鈴木亮平、有村架純の映画のCMを観て、読んでみたいなと、、 情報なく、読み始めたら、まさかの短編集、、。 それなりに興味深い話が続くものの、、 「摩訶不思議」でくすくす笑い、 やっと目的の「花まんま」に到着。 こんな短篇が1本の映画に?、、と期待薄で読み始めるも、、号泣。 花まんま。 そうか。タイトルの意味よ、、 兄、、亮平が演じるのね、、 破天荒な架純も、、と色んな想像で涙。 是非、映画も観たい。 小説では描いてなかった、それぞれが乗り越えたその後を観て安心したい。
0投稿日: 2025.10.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
昭和時代の大阪にタイムスリップしたような物語の書き方が印象深かった。 やはり映画化した「花まんま」ももちろん面白かったが、個人的には「トカビの夜」「送りん婆」の話が好きだった。 覚書用に一言ずつ感想を書いておこうと思う。 「トカビの夜」 チェンホが報われて良かった。 「妖精生物」 性的な魔物のような妖精生物にぞっとする。 「摩訶不思議」 大人の人間関係って子どもから見たらまさに摩訶不思議。 「花まんま」 繁田喜代美のお父さんが前を向けたらいいな。 「送りん婆」 死を自在にする力は人を外道に落としかねない。恐ろしい。 「凍蝶」 蝶のようなミワさん。幸せになってほしい。 「トカビの夜」は所謂ハッピーエンドのような終わり方だが、他の話は含みを持たせた終わり方が多かったように思う。 「妖精生物」「送りん婆」は主人公の心の隅の薄暗い部分の片鱗をみせて終わらせる、形容しがたいが夏の怪談のような生々しさがあり、「摩訶不思議」「花まんま」「凍蝶」は大人たちに振り回される子どもの無力感があったように思う。 昭和時代の煩雑な雰囲気と今より身近にあった性的な刺激や差別的な体験を読んでいて感じることができて面白かった。
1投稿日: 2025.10.23
powered by ブクログ昭和の大阪が舞台。差別的で怪しくて不思議でノスタルジック。全体的に物悲しい物語が多くて滅入ってる時に読むのはちょっ杜息苦しくなった。でもストーリーは凝っていて良かった。表題作の花まんま不思議で切ないお話。
0投稿日: 2025.10.20
powered by ブクログ朱川湊人さんの作品をこの頃よく読むのと、花まんまの映画に興味があっため読む。花まんまの話はその中のひとつで、この短さで映画にどうなったのか、今度観てみようと思う。昭和3,40年代の大阪を舞台の不思議な物語。トカビの夜が一番良かった。凍蝶もそうだが、部落差別とは大人が作ったが、もちもろんその子供達にまで影響したというのが、何とも言えなく嫌な気持ちになる。トカビ…は、そんな国籍差別での悲劇を、ほんの少し穏やかな気持ちにさせてくれた。
11投稿日: 2025.10.18
powered by ブクログ連休にプライムで映画を見たので。 昭和30~40年代の大阪の下町で小学生が体験した話の短編集。 大阪ではないけど近しい子供時代だったので、時代背景がめっちゃわかる~! 「トカビの夜」もう苦しくなくなって飛び回ってるなんてよかったね~!って思っちゃう 「妖精生物」いたいた~学校帰りにヒヨコとか売ってた人!そして正体がこわ!((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル 「摩訶不思議」女好きなおっちゃんの話。これは笑ったし、女たちが仲良くなるのもいい話だぁ~ 「花まんま」会いに行くエピソードが映画まんまで映像が蘇った 「送りん婆」呪文が途中まで読み上げられたところでまさかとは思うがもしホントだったら…とゾゾっとした(Audibleだったのでw) 「凍蝶」自分ではどうにもならない出自のせいで友達がいない子の忘れられない出逢い 小学生くらいだとこういった不思議なものやオカルトちっくなものに惹かれちゃうのよね~ 小学生の時の感覚をちょっと思い出した
13投稿日: 2025.10.16
powered by ブクログ414 audible 「トカビの夜」「妖精生物」「花まんま」を聞く。特にトカビの妖精生物は印象に残った。
4投稿日: 2025.10.12
powered by ブクログ映画の原作?と思って読んだのですが、違いましたね。 昔の大阪を舞台にした、短編集。 ちょうど大阪に住んでいるので、昔の雰囲気を味わえたことがまず良かったです。 そして、それぞれのお話もなんだろう、独得の雰囲気を醸し出していて、楽しく読みました。
0投稿日: 2025.10.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
差別されていた家の子供が病気で亡くなった後に現れて一緒に遊ぶ『トカビの夜』では、親の気持ちを思い涙ぐみ、不思議な生き物を飼う少女の話『妖精生物』では、ダメだよ!と思いながらも怖いもの見たさでドキドキし、遊び人だった叔父の葬式で霊柩車が動かなくなり愛人たちが呼ばれる『摩訶不思議』は笑い事ではないけれどなんだか笑ってしまい、生まれ変わる前の夢を見るという妹と前世での父親に会いに行く『花まんま』で、妹を思う兄や、娘を亡くした父親の姿に涙が溢れ、言葉で人をあの世に送る『送りん婆』では、この力で世界を平和にできるのではないかとの誘惑を感じ、仲間はずれにされていた少年が南の方から働きに来ていた若い女性と墓地で遊ぶ『凍蝶』で女性の幸せを強く願った。どの物語も少し不思議だけれど、描写が細やかなので映像を見ているように惹き込まれて、切なくなったりドキドキしたり、時に笑ったりしながら読み終えた。
1投稿日: 2025.09.21
powered by ブクログやや怖い不思議な話の短編集。 どの作品にも「死」のジメジメ感がある。 悪くはないけど、「すごくいいよ」とも私は言えない。
0投稿日: 2025.09.21
powered by ブクログ現代ホラー小説家を知るための100選に入っていたので読んだけど、これはホラーではないよね? 不思議な話の短編集だけど、ホラーと言うには怖さが足りない。とても読みやすい。どの話も面白かったし、印象深い。 花まんまは、映像化されていると言う事なので、これはみてみたいな。
1投稿日: 2025.09.16
powered by ブクログAmazonプライム視聴。 生まれ変わる前の記憶を持った妹と、賢明に妹を育ててきた兄。 結婚スピーチが良かった✨ 記憶とどう折り合って嫁ぐのか。 食事も喉を通らなかった前世の父へ届けられたもの。
14投稿日: 2025.08.31
powered by ブクログ6つの短編で構成されており、場所は大阪の下町。昭和30-40年代の頃であることは6つの話に共通していること。朝鮮人、貧困、女性の権利、言霊(シャーマン?)、部落問題など、今では大分薄れてしまった差別の数々が直接的に書かれていて、大阪の歴史的な背景を物語を通して知ることができる。どの物語も子どもの視点から書かれており、子どもたちが不思議な体験をする。書き手が自分の周りの世界を把握できない子どもだから、読み手は物語に引き込まれていくのかもしれない。物語そのものも面白いが、歴史的な視点から考えるとまた面白かった。
5投稿日: 2025.08.29
powered by ブクログえっ、ホラー!? 思ってたのと全然違った。 テレビで見た映画の予告や、本の帯から心温まる感動作なのかと思っていた。 いや、見方によってはそうなんだけども。 「花まんま」は、「月の満ち欠け」を観た人はみんな 重ねちゃうよね、どうしたって。 全体的に怖かったー。 「トカビの夜」は切なくもほっこりできたけど、「凍蝶」は怖すぎて後半はさーっと流し読み。心霊物は苦手だー。
63投稿日: 2025.08.17
powered by ブクログ少し昔の話。 情景や人の生き生きとした姿を想像しながら読み進めていきました。 どの場面にも人情、人の気持ちがたっぷりと盛り込まれていて、温かいなと思いながら読み終えました。 自分に前の人生があったならば、どれほど切なくて、苦しくて、愛おしく、今を感じられるだろうか。 生きていることに本当の意味で感謝して、あるがままの自分を大切に大切にしたいと思いました。
1投稿日: 2025.08.04
powered by ブクログ2005年第133回直木賞受賞 短編小説6編。 どれも大阪下町の懐かしさを感じられる。子ども目線で描かれ、子ども時代の気持ちを改めて思い出しジーンときます。 「トカビの夜」と「摩訶不思議」が特によかった!! トカビの夜 なんとも儚くも優しい少年同士の心温まる泣けるお話だった。 妖精生物 全然妖精ではなかった(笑)性描写⁈ 摩訶不思議 なんとも大阪らしいお話。クスクス笑えた。 「世の中、不思議なもんやなぁ」。から始まる。ほんとそう。何が起こるかわからない。女性もなんとも摩訶不思議な生き物。「人生はタコヤキ」。うん、いつかこの言葉思い出そう! 花まんま もし前世の記憶が残っていたら。誰かの生まれ変わりだとしたら。ほろっと泣けてくるお話でした。 凍蝶(いてちょう) 自分には何の責任もないところで蔑まれる存在として生を受けたら...。
131投稿日: 2025.07.12
powered by ブクログ鈴木亮平さん、有村架純さん出演で映画化、しかも直木賞受賞作ということで、これは読むしかないでしょうとなりました。朱川湊人さんは初めましての作者さんでしたが、怖温かいという不思議なジャンルの書き手さんでした。 怖温かいというのは、亡くなった友達が夜に遊びに来てくれる話とか、妖怪のような生き物を育てる話とか、戦後の復興の頃の古き良き日本の大阪の下町が舞台となっている、物暗い雰囲気の短編小説でした。 タイトルとなった「花まんま」はその中の一つの話で、前世の記憶を持った少女が記憶を辿って、亡くなる前の家族に会いにいく話でした。暖かく、優しい話の一面と不気味さとか不思議さ、そして、大阪下町の物暗い雰囲気がなんとも言えませんでした。爽やかな気持ちで話に入って行けるわけでもないし、登場人物の深層心理の描写に衝撃を受けるわけでもなく、自分的にはそこまでヒットした感じではありませんでした。 まあ、でも好き嫌いは別として、とてもインパクトのある一冊でした。
13投稿日: 2025.07.07
powered by ブクログ約40年前の大阪の下町を舞台にした、少し不思議な短編集。 どれも主人公は子供。貧しくて、差別蔓延る世の中と眩しく輝く子供たちの対比が際立つ。 不思議と懐かしく、切なくも煌めく物語でした。
1投稿日: 2025.07.06
powered by ブクログ6編の短編小説。どれも不思議な話し。40年代のまだ差別や偏見や貧困が顕著だった頃。突然亡くなったおじさんに関わった3人の女性が出てくる「摩訶不思議」が面白くて、結局3人がなかよしになっちゃうのが人間味があってよかった。
2投稿日: 2025.07.04
powered by ブクログ表題作 「花まんま」 読後心温まるお話でした 「凍蝶」 差別の原因は書かれてないのですが 彼の孤独を癒す存在の思い出 生まれる場所は選べないけど 主人公も彼女も幸せになっていて ほしいと思いました。。 初めて手にした作家さん 不思議な空気感の短編集でした
1投稿日: 2025.06.28
powered by ブクログ朱川湊人さん、初めて手に取りました! ホラーほどでもなく、「世にも奇妙な物語」ほどザワザワしない物語…(笑) いや、そんなことあるんやない…って話ばかりでした 昭和の大阪の時代背景もいいよね! 「花まんま」は 映画化ってことやったけど、短編集やったのね…びっくり! どんなふうに映画化されたんだ…って逆に気になったよ… 個人的には「花まんま」「トカビの夜」「送りん婆」がよかったですわ~
9投稿日: 2025.06.21
powered by ブクログ前情報を入れず読んだので短編集だということを知らなく、少しイメージが違った。 花まんまと凍蝶のお話が良かった。
2投稿日: 2025.06.03
powered by ブクログ読み終わって映画の予告編を観たら、原作にはないエピソードばかりでちょっとびっくり。そもそも、原作は”子供時代”の話なのに主演は鈴木亮平と有村架純、ということで。。 Wikiによると朱川さんは「原作の世界を膨らませてくれた」と前向きに受け止めているようですが、それにしてもここまで”拡張”するのは原作の世界観保持の観点からどうなんでしょう? いずれ配信が始まったら映画も観てみたいと思います。 2025/8/30(Sat)追記 アマプラで映画版を視聴。涙腺崩壊でした。
2投稿日: 2025.05.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
昭和の大阪下町、子供が主人公の短編。不思議でダークに終わる妖精生物が印象的だった。 ・トカビの夜 近所の朝鮮人チェンホが死に、トカビとして出現 ・妖精生物 妖精生物を飼う。母が若い男と逃げる。母にだけ幸せをもたらした生物(精液?)を殺す。嫌いな男に襲われ子を孕み結婚、主人公も逃げ出す? ・摩訶不思議 葬式でおっちゃんの霊柩車が火葬場の前で止まる。生前三人の彼女が集まり動く。何故か女達はその後仲良さそう。不思議なこともあるもんやなぁ ・花まんま 妹には前世の記憶が残っており、彦根の家族に会いに行く。娘を亡くした父はご飯を食べない。代わりに妹(娘)は花まんまを贈る。明日妹は結婚。映画ではこっそり妹が家族と交流を続けている。 ・送りん婆 呪文により苦しむ人を死なせる婆と跡継ぎ候補の私。 ・凍蝶 差別を受ける僕が出会ったのは飛田新地で働く女
3投稿日: 2025.05.20
powered by ブクログ映画の原作と思って読み始めたので 「んっ、なんか思ってたのと違う」 と思ったら短編だったのね 「花まんま」は ここで終わるのがベストと思ったけど 映画の予告では この先がありそうな感じだったので 少し気になった 黒まではいかない グレーくらいの短編で 漫画では味わえない 小説ならではの作品 個人的には好きな作品でした
6投稿日: 2025.05.19
powered by ブクログまさかの短編集だったけど、どれも良かった。 メインの?花まんまは、涙がリアルに出てくる素晴らしさだった。映画も観てみたい!
2投稿日: 2025.05.18
powered by ブクログ有村架純ちゃんで映画化ってことで急いでよみました!不思議な世界感ホラー?奇妙な短編集 小説では幼少期の話なんですね~これを膨らましに膨らまして感動の映画にしてるのかぁ~って思ったら、なんか全然違うやんって思えて来ちゃってさ、、、 逆に得体の知れない生物に触れたら、ビクンって変な気持ちになっちゃう話とか印象に残ったけど、全体的に差別やイジメそっちばっかりでモヤモヤ
27投稿日: 2025.05.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
昭和30〜40年代の大阪の下町を舞台に、当時子どもだった主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた全6篇。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー トカビになったチェンホ(トカビの夜) ピースマークの妖精(妖精生物) フォークのカツ子・カオル・ヤヨイ(摩訶不思議)フミ子と繁田喜代美(花まんま) 一度の外道(送りん婆) リュウキュウアサギマダラ(凍蝶) 花まんまが放映中で気になり本を購入。 (トカビの夜)と(送りん婆)がワクワクして読みすすめられました。子供のドキドキする気持ちや恐怖心をうまく表現出来ていて、そしてどこか懐かしくどっぷり本の世界へ引き込まれました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
3投稿日: 2025.05.13
powered by ブクログ朱川湊人は『かたみ歌』に次いで2冊目。かたみ歌で散々泣いて本作で心を揺さぶられる。パルナスのCMソングが出てくる件は、一気に子供時代にタイムスリップ、懐かしすぎる!
2投稿日: 2025.05.09
powered by ブクログ映画を観る前に、と購入。町の書店や楽天では売り切れていたけど、Amazonで。観る前に表題作を先に読んで、映画はうまく膨らませてオチをつけてくれたのがよかった。観終わってから他の短編も読んだ。ほぼ同年代の作者なので、子供時代も時代の空気感がしっくりする。いきなりパルナスが出てきて、最近接することがあったので、シンクロに驚く。 朝鮮人への差別、部落差別、沖縄差別などが生活の中に染みこんでいた話、不思議な生き物の話、前世の記憶を持った子供、死んでなお彼女に執着したおじさんの話、、、。それぞれ繋がりはないけど、同じ時代のお話だった。
15投稿日: 2025.05.05
powered by ブクログスピリチュアルな要素もありましたが、王道の家族愛でしっかり泣きました。 有村架純はいつも通り可愛いというか美しいですが、ファーストサマーういかさんも綺麗でした。 キャスト良かったです。
4投稿日: 2025.05.04
powered by ブクログ短編集。6作品あり、そのうちのひとつが映画化された原作となっている。 どれもが、大阪の下町を舞台にしていて、元気に走り回っている少年少女たちが主役となる。 大阪に住んだ事がある違う地方の人間として、大阪独特の飾り気のない暖かで、どこか毒々しい世界は好きだ。どこか子どもの頃に戻れるような、ストレートな感情表現を素直にできる街だからかも知れない。 花まんまは良い、感動して泣いてしまった。摩訶不思議の世界観もいい。 この短編集に共通しているのが、死をテーマにしている事であるが、カラッとしていて、受け入れられる。
3投稿日: 2025.05.04
powered by ブクログ6話の短編集。 大阪が舞台で、大阪弁もなんかええなぁ。 一昔前の時代背景で、しみじみと。 全編不思議なお話。切なくて心に響く。 私は、「トカビの夜」と「花まんま」が良かった。 泣いてしまった。
4投稿日: 2025.05.03
powered by ブクログ昭和世代でなくても、子どもの頃に感じた少し怖くて不思議な感覚や、申し訳なさと悲しみをすごくリアルに思い出した。 本作のように死者の未練が生きている人間にここまではっきりと(温かさをもって)届く経験はあまり見聞きしないが、その想いそのものは確かにあるのだろうと思わされる、素敵な作品だった。
3投稿日: 2025.05.01
powered by ブクログ直木賞だなあ、映画化かと思いながら手にとる。昭和のノスタルジックな内容がスントはいる。(十分年取りましたな) 映画化される「花まんま」どこかで聞いたことのあるような。こんなこと嘘だよなあと思いながらときどき小さな子が不思議なことを話し出すことがあって。映画化は脚色も話の続きもあるようでどんな風になるのかな。興味ある。そんでこの本のこの物語はよい方に向かう意味で秀逸。 面白かったのは「摩訶不思議」(笑) 笑えました。やられました。いや、動かんことないやろとか、女3人仲良くならんやろ、遺産とかで揉めないんかい~と突っ込みました。 一番ズンとして目の当たりにして、胸が痛んだのは「トカビの夜」 うん。多分今でも、そしてこれから先もあるこの状況。みんな同じ。そしてどんな状況であれ家族は家族。みんな仲良くしよう。って子供の頃って難しいんだろけど。それは大人のせい。 心が痛むからこそ、いろんな人に読んで欲しい。
35投稿日: 2025.04.29
powered by ブクログ私が好きな俳優の鈴木亮平さんと有村架純さんが映画「花まんま」に出演していることもあり、気になって原作を読んでみた。 昭和40年代の大阪の下町が舞台の主人公の子どもの不思議な体験がノスタルジックに描かれている。「トカビの夜」「妖精生物」「摩訶不思議」「花まんま」「送りん婆」「凍蝶」の6つの短編集。どの作品も昭和の懐かしさが漂っていて、当時の子ども目線で描かれているので読みやすい。ここに出てくる子どもたちのように私も子どもの頃怖い話や不思議な話は大好きで、霊魂やネッシー、UFO、宇宙人の存在も超能力も信じていたことを思い出した。子どもの世界にもある差別や偏見に対する後悔や罪の意識、悲しみも描かれていて、切ない気持ちになった。個人的には、直木賞受賞で映画化された「花まんま」はもちろん、「トカビの夜」「凍蝶」がよかった。 短編の「花まんま」が映画ではどのように描かれているのか、映画も観てみたい。 心に残った言葉 ・外国籍の人間に対する差別と偏見は今でもあるが、三十年以上昔となれば、なおさらだ。戦前戦中の誤った認識を引きずっている人間はたくさんいたし、自分と異なるものをむやみに低く見て、安っぽい自尊心を満足させる精神の貧しさが、まだ社会のあちこちに横溢している時代だった。(「トカビの夜」) ・あの奇妙な生き物の話をしても、信じてもらえたためしがない。小さい頃はよく空想と現実を混同してしまうものだと一笑に付されるか、あるいは作り話と決め込まれ、意地の悪い目で見られるかのどちらかだ。(「妖精生物」) ・「コラッ、あんた、何しとんねん! みんなが困ってるやないか! 地獄でも極楽でも、とっとと行くとこ行かんかい!」(「摩訶不思議」) ・「ええか、俊樹。お前、今日から兄ちゃんになったんやで。どんな時でも、妹のことを守ってやらなあかん。それが兄ちゃんちゅうもんなんやからな」(「花まんま」) ・「実はな、世の中には、いろいろな呪文があるんや。雨を降らせる呪文、火をつける呪文、水をお湯にする呪文......言霊の力で、できないことはないんや」 ・人を苦しめて恥じない厚顔の連中、命のありがたみもわからない愚か者たちの耳元で、外道を承知の上で、そっと送り言葉を囁いてやりたくなる時があるのです。そうすれば私のようなおばちゃんにでも、少しは世の中を正すことができるのではないかとー。(「送りん婆」) ・自分には何の責任もないところで蔑まれる存在として生を受け、友だちもなく、毎日をつまらなく生きているー私は人目を避ける『鉄橋人間』であり、勘違いした冬の蝶だ。 ・人生には、五十年一緒にいるよりも、ずっと心に残る短い出会いもある。むしろ短いからこそ、その印象が深く鮮烈に心に刻まれるのかもしれない。 (「凍蝶」)
29投稿日: 2025.04.28
powered by ブクログ舞台は昭和30年代後半から40年代だろうか、大阪の下町が設定されている。 当時小学生だった少年少女たちが体験した出来事を、ノスタルジックな雰囲気を醸しながら描かれた短編6篇からなる。 2005年に第133回直木賞を受賞した作品だ。 『 花まんま 』の短編全6話は、もの悲しくもしみじみと心に染み入るような優しい物語だった。 第4話の「花まんま」が映画化され、4月25日から上映が始まったようだが、私は第6話の「凍蝶」が映画化されたらきっと映画館に馳参じると思う。 お気に入りの「凍蝶」を簡単に紹介すると⋯ 小学生2年のミチオは、唯一の友人マサヒロからも去られ、孤独だった。 そんな時、18歳ほどの女性ミワから声を掛けられ、毎水曜日に墓地で会話するようになる。 ミワはミチオに学校での出来事を話してくれと頼み、少年は彼女に嬉々として話す。 ミワは楽しそうに笑いながらミチオの話を聞いてくれたり、墓地で鬼ごっこもしてくれた。 しかしある日、季節外れの蝶が二人の前に飛んで来た時、ミワはその蝶が弟だと涙ながらに囁いた。
4投稿日: 2025.04.27
powered by ブクログうんうん、これこ朱川湊人だ。 読み始めてすぐにこの世界に戻っていけた。 ノスタルジックで不思議な、この世界に。 舞台となる時代と、主人公が子供なのが、またいいのだ。 映画化された「花まんま」は、中でも特に好き。 (映画化では、登場人物の年齢が変わっているようだけど、どう扱っているのか楽しみ。) タイトルの花まんまの意味が、とても美しい。 映画のサイドストーリーであるという『花のたましい』も楽しみ。
2投稿日: 2025.04.22
powered by ブクログ昭和30年〜40年頃の大阪の不思議な話を6編集めた短編集。映画化されると聞いて、購入したら短編集で拍子抜け。でもとっかかりやすい。私は表題作も好きでしたが『トカビの夜』『送りん婆』も好きでした。
7投稿日: 2025.04.13
powered by ブクログ『世にも奇妙な物語』を若干柔らかくした少し恐怖を感じる物語たち。それでも昭和30年から40年ごろの大阪の下町を舞台に人情あふれる物語がノスタルジーに溢れている。
1投稿日: 2025.04.09
powered by ブクログ表題作「花まんま」が映画化されるので、その前に読もうと思いました。 妹が10年前に亡くなった女性の生まれ変わり 私が好きだったのは、亡くなった女性の実家には一度しか行かなかったこと 妹がどのような気持ちでその後過ごしてきたか そこを読者の想像に委ねたところが、色々と思いを巡らせることができた 短編だったけど、長編で読んでみたかったなと思いました
12投稿日: 2025.03.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
トカビの夜 私 ユキオ。父が事業に失敗し、小学二年の春から四年歳の夏まで大阪で過ごした。 ナオユキ よく遊んだ同学年の子供。 チュンジ 私の二歳年上。 チェンホ 私の一歳年下。 妖精生物 私 世津子。十歳の少女。大阪の下町で生まれ育った。 物売りの男 父 小さな工務店を経営。 弟 信雄。三つ年下。 母 祖母 ジロウさん 父のもとで働いている若い職人。俊明。坂上二郎に似ている。 成田 秋田出身の老齢の職人。 大介 成田の親戚の子。 摩訶不思議 ツトムおっちゃん 父の弟。階段から転げ落ちて死んだ。 アキラ 父 母 カツ子 おっちゃんと一緒に暮らしていた女の人。労務者相手の安食堂で働いている。 ヒロミ 妹。 カオル おっちゃんのもう一人の恋人。駅向こうの小さなスナックで働いている。 ヒデオ 車の整備工場で働いている親戚。 ヤヨイ ダンゴ屋のお姉さん。 花まんま フミ子 俊樹の妹。 加藤俊樹 お父ちゃん フミ子が生まれた二年後、長距離トラックを運転中に、高速道路の玉突き事故に巻き込まれ、三十ちょっとの若さであっさり死んだ。 お母ちゃん 繁田喜代美 繁田仁 老人。 繁田房江 宏一の妹。婦人警官。 繁田宏一 送りん婆 私 みさ子。 父 親類が経営している運送屋でオート三輪の運転手をしていた。 母 父の親類が経営している運送屋で事務をいていた。 社長 社長の母 おじさん 私が八歳の頃に同じアパートに住んでいたおじさん。 キヨちゃん おじさんの娘。清子。 キヨちゃんのお母さん 春江。 凍蝶 ミチオ ミチオの兄 十九歳の夏、オートバイでガードレールに激突して他界。 マサヒロ 東京から来た転校生。 マサヒロの姉 ミワ 霊園で出会った。 テツヤ ミワの弟。
1投稿日: 2025.03.19
powered by ブクログ映画を観る予定なので先に!と思い読みました。 買ってきて読み始めたら…あら?短編集なんですね。この短い一編が2時間近く?の映画にどう肉付けされるのか楽しみです。 それにしても、この1冊全体的にイメージがセピア色。昭和の頃を思い出させる感じですね。 そして『差別』の世界が『ちゃんと、そこ、考えて!』と迫ってくるような話もありました。物語はセピア色に感じても現在も色褪せることがなく鮮やかな色で存在する問題なのでしょうね。
10投稿日: 2025.03.17
powered by ブクログ1冊まるごと「花まんま」かと思ったら短編集だった。各話、胸にチクッと来るような苦味やゾクッとする部分もあるが、最後はハッピーエンドとまではいかないが良い方向に向かって行くところが良かったかな。なかでも「花まんま」は最高!痩せ細った父が食べる真似をする描写は、フミ子、父兄妹の気持ちを考えると涙をこらえるのが大変。もう少し長編で読みたかったな。なので映画化楽しみです。 ただ、「妖精生物」だけはちょっと…
3投稿日: 2025.03.09
powered by ブクログ花まんまが映画化することを知って、原作を読んでみた。6話の短編集の中には主人公の辛くて悲しい物語も入っているため、共感するには難しいストーリー(「妖精生物」)もあったけど、私も田舎の生まれ育ちなので、物語の背景となっている閉鎖的で耐えることを強いられる人間関係の辛さは共感できた。その他の物語も不思議で奇妙なストーリーなのかと思ったら、ちょっとホラーも混じっていて怖い。
1投稿日: 2025.02.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2025/1/22 映画化とのことなので。 映画化のこれはまあいいけど、妖精生物なんなん。 胸糞悪すぎんか? 娘も連れてけよ。 ノスタルジックやけど現実で、私にはちょっと重いんや。 私もうフィクションのおいしいとこだけでええんや。 日常からは離れたい。
1投稿日: 2025.01.22
powered by ブクログ昭和を感じさせるノスタルジックな世界観の短編集。 どのお話も幻想と現実の間って感じなんだけど、読みやすくわかりやすい文章なのでサクサク読了。 ちょっと切なかったり、クスッと笑えたり、人の怖さを感じたり、それぞれ雰囲気の異なるお話で楽しく読めました、
1投稿日: 2024.12.01
powered by ブクログ人生の摩訶不思議な世界を誰もが一度は遭遇し、体験する。ここでは亡霊、奇妙な生物、死に別れ、生まれ変わり、死神・言霊、死の知らせなど世の中で決してないとは言えない事柄を思い出として記述した小説だ。特に「花まんま」(生まれ変わり)と言う内容は世界でも実例があり、人の魂は生まれ変わる(事も)という。現世に真っ当に生きれなかった魂があの世に行けず再び人間の現世に戻ってくるという話である。
10投稿日: 2024.11.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
目次 ・トカビの夜 ・妖精生物 ・摩訶不思議 ・花まんま ・送りん婆 ・凍蝶 初めて朱川湊人を読んだのは、ちょうど初めて恒川光太郎を読んだころ。 ちょっとノスタルジックでセンシティブなホラーなところが似ているなあと思ったものの、その後朱川湊人の方に手が伸びることはなかった。 それは多分、彼の描く子ども時代の思い出って、『三丁目の夕日』のような温かみのあるオレンジ色がかかっているから。 私にはそのような懐かしい子ども時代の思い出っていうのがほぼないので、そこがピンとこなかったのだと思う。 今回久しぶりに読んでみて、やっぱり子ども時代を懐かしむ気にはなれないけれど、時代に対するノスタルジーというのは少しわかるようになった。 個人商店の並ぶ道、ちょっと行くと雑草だらけの原っぱ、埃っぽい道。 日常に普通にあるそれらの中に、ふと見える死の影だったり、別れの切なさだったりが上手いと思う。 大阪の下町の風景というのは、この時代と多分合っているんだろうな。知らんけど。 大切な娘が事件に巻き込まれて命を失っていた時、何も知らないでうどんをすすっていた自分をゆるせない父親。 10年も自分を責め続けて、必要最低限の栄養しか取らない父親を案じて、生まれ変わった姿でそっと様子を見に来る娘。 姿は全く変わっているのに、一目で娘であることを見抜く父と兄姉。 表題作だけあって、切なさはひとしお。 生まれ変わった後の娘の兄は、そんな妹をただ見つめるしかなくて。 ”兄貴というものは、たぶん世界で一番損な役回りなのだから” いや、姉もつらいぞ。 子どもの時から一生押し付けられる損な枠回り。 だから私には懐かしむべき子ども時代がない。
1投稿日: 2024.11.07
powered by ブクログ直木賞を受賞した作品が映画化されるとのことで、期待して読んだ。 昭和の大阪下町を舞台にした、ちょっと不思議な6つの短編集。 う~ん、どれも、特に残るものもなく読み終えた。 読後感も、特に良くも悪くもない。 期待しすぎたのかな~。 表題作の「花まんま」は切ないお話なので、映画化には良いかな。 鈴木亮平と有村架純が兄妹役で初共演! 関西出身のお二人なので、自然体の関西弁でのやりとりが楽しみだな。
25投稿日: 2024.09.17
powered by ブクログ昭和30年あたりの大阪の下町を舞台に、 少し不思議な設定で人の生死を描いた作品。 数年大阪に住んでたので場所が割とわかるのが楽しかった 反面、先日母の余命宣告があったので、 生死に関する話を読むのは少しきつくもあった。 トカビの夜 凍蝶 の2作品が好き。 死が絡むので憂いのある作品が多かった。 いざ、近しい人の死を目の前にすると、そんなこと感じる余裕もないのだが……………
14投稿日: 2023.12.15
powered by ブクログどこまで思い出として記憶として脳に残るんだろうなと思った章。時代は変わっても差別はつきものだと思った章。
3投稿日: 2023.07.30
powered by ブクログ6話の短編集 どのお話の時代や場所について、自分は生きていないのだけど、「トカビの夜」の話ではない、この感情何か知ってるような感覚に陥る 差別が顕著だった頃の話は、間接的に体験するしかないが、あからさますぎてゾッとした
3投稿日: 2023.05.19
powered by ブクログ絶対にありえない話だけど、あってもおかしくないような話。短編集ながら昭和の色濃い時代の子供が主人公で1つの世界を描いている、そして「花まんま」では涙も誘う。
4投稿日: 2023.03.27
powered by ブクログノスタルジックな雰囲気が漂う短編集。 昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、当時子どもだった主人公たちの不思議な体験が描かれる。 育った時代も地域も違うけど、私はこの感情を知っている。 子どもの頃を懐かしむ気持ち。それは、ほろ苦がったり、甘酸っぱかったり、いろんな感情が入り交じる。 そして、もう二度とあの頃には戻れないんだなぁっていう、切なさにも似た気持ち。 読むと、そういったものが絡みあい、大きなひとつの感情として蘇ってくる。 朱川さんの作品が記憶に残るのは、読んだときの感情が印象的だからではないか。 読むほどに味わいがあるのもそのせいかもしれない。 幽霊とか、生まれ変わりとか、不確かなものを通して人間の心を描く様が見事だった。 後味がよいのは「トカビの夜」「花まんま」「凍蝶」。 「妖精生物」はイヤミス、「摩訶不思議」「送りん婆」は変わり種かな。
27投稿日: 2022.11.22
powered by ブクログはじめて読んだ朱川湊人作品 こどもの頃に体験した不思議物語短編集 「妖精生物」の少女が婆さんに向ける無垢な残酷さがよかった どの作品も、小学校高学年の教科書にありそうな雰囲気でぜったいに載せられないお伽話 この点数は、おもしろくなかったとかではなくて、自分の趣味趣向に合っていなかっただけです
1投稿日: 2022.09.28
powered by ブクログ朱川さんの作品を読むのは、「かたみ歌」に続き2冊目。 昭和30〜40年代の大阪の下町が舞台となっている。 私は関西人ではないのだけど、懐かしい雰囲気が全編通して漂っており、大阪弁が心地良く、するっと、その時代と場所に入り込めるのが不思議。 6編からなる短編集で、どれも死や霊、前世などを扱った、不思議でゾクッとする物語。 差別や偏見が、今よりずっと色濃く社会を支配している時代。 そんな世の中を生きる子供たちが主人公となっている。 “子供に差別心を植え付けるのは、いつも大人たちだ” と朱川さんは書いている。 令和の現代も同じですね。 私が好きなのは… 4.“花まんま” 前世の記憶を持つ幼い妹が、その前世家族に会いに行くお話。 悲しいけれど、読後は温かい。 6.“凍蝶” 孤独な少年が霊園で若い女性と出会う。そのミワという女性は、いったい何者なのか? そして、ちょっとコメディっぽくて、他とは印象が違うのは… 3.“摩訶不思議” 死んでも女好きなおっちゃんの話。 ホラー要素もあるけど、最後はほっこり? と、結局どれも全部、良いのです。 解説は重松清さんで、朱川さんと同い年なんですね。 最後まで楽しめました!
48投稿日: 2022.08.02
powered by ブクログ昭和40から50年代辺りの大阪下町が舞台。現世とあちらとの境目を描いたノスタルジア。直木賞作品ですが、ちょっとホラーテイスト。 「トカビの夜」在日朝鮮人への差別を子供心に後悔する少年。その懺悔の気持ちの表現が心に残る。そして、トカビ(幽霊)になった子供の恨みのない純真さに哀惜がある。 「妖精生物」魔法使いが作った生物を手に入れた少女。幸せを運ぶどころか。少女から大人になる危うい心情。 「摩訶不思議」遊び人のおじの葬式での出来事。コミカルで、遊び人は死んでも遊び人。 「花まんま」妹の前世の記憶を辿る兄妹。前世家族との悲しくて優しい“花まんま” 「送り婆」条件を満たす安楽死(今風に言えば)を操る言葉を受け継ぐ女性たち。婆が一度だけ掟を破った送り言葉が悲しい。 「凍蝶」部落差別を受ける少年と、弟の治療費を得るため身を売る女性の、儚い友情と別れ。 短編6作全て読後感が良く、それぞれの登場人物の影の部分に哀愁があり、短編ですが、読み応えがありました。
39投稿日: 2022.07.05
powered by ブクログ昭和の大阪を舞台にしたちょっと不思議でちょっと寂しい物語でした。 この時代を生きてきたわけではないけれど、懐かしい気持ちになりました。 みんな必死に生きていたんだなと思います。 人間関係が希薄になった、ネットのせいで差別が助長されていると言われていますが 人との繋がりが濃かった分、この時代の孤独感は今より大きかったんじゃないかなと思いました。
2投稿日: 2022.06.20
powered by ブクログ心温まるホラーだったり救いようがないホラーもある6連の短編集 「妖精生物」がおすすめ 甘美な感覚の虜になった主人公、この生物がいると幸せになると信じ育てていくが...。
1投稿日: 2022.03.21
powered by ブクログ昭和30年~40年代の大阪の下町が舞台になった1冊。 全然、年代でも大阪に住んだ事もないのに懐かしく感じてしまう。 ちょっと切なくて色んな意味で怖いのに心が少し温まる短編集。 少し泣ける話も。 ☆トカビの夜 ☆妖精生物 ☆摩訶不思議 ☆花まんま ☆送りん婆 ☆凍蝶
1投稿日: 2022.01.02
powered by ブクログパルナスのCMソング。ゴム跳びという遊び。「じゃりン子チエ」が住んでいるような大阪のゴタゴタした町にいる、仕事もせずブラブラと陽気に昼間から遊んだり飲んだりしている“おっちゃん”。しかもそんなおっちゃんが結構な割合でいる、大阪のある下町。貧乏で開けっ広げで人情深い人たちがひしめき合って暮らしているのだが、そんな中にも生まれた家によっては生まれつき差別される人間もいる厳しい時代。 この本には6編の短編が収められているが、何れも昭和40年代、50年代に大阪の新世界界隈で子供時代を過ごした主人公がいる。 私は大阪ではないのだが、関西でその頃子供時代を送った。その頃のテレビ番組や遊び、それに子供が多く、大人も必死で働いていたあの時代の子供心に感じた“キツさ”。そんなものが今となってはノスタルジーを感じさせる。 この短編集に収められた主人公の子供達は、そんななかなか“キツい”町で、大人の事情を冷静に見つめている子や生まれながらに差別を受けているがそのことを受け入れ、自分なりに居場所を見つけようとしている子。その子たちと“霊”との関わりを描いた短編集である。 “霊”は怖いとは限らない。生前、差別され病弱であまり遊べなかった子供が、亡くなってから自由になった体で夜な夜な近所の屋根屋根を楽しそうに跳び歩く話。親戚の厄介者だったおっちゃんが歩道橋の階段から呆気なく死んでしまい、お葬式には三人の愛人が揃うまで、霊柩車にエンストを起こさせて火葬場に向かわせなかったという話。二十歳そこそこで亡くなった娘が生まれ変わった姿で元の家族に会いにいく話。何れも亡くなった人がこんなふうにメッセージを送ってくれたらいいのにと思える話だった。 ゾクゾクする話もあった。「送りん婆」という話は怖かった。死にそうでなかなか死ねない人を楽に死なせてあげる仕事。あの世に送り届けるために「人を殺す呪文」を耳元で唱える。その呪文は勿論門外不出だ。主人公の女の子は叔母である“送りん婆”に跡継ぎとして見込まれ、その叔母が亡くなるときにその呪文を書いた紙を託されたが、結局跡は継がなかった。その女の子や“送りん婆”が住んでいた大阪の繁華街の横丁が高速道路建設と共に無くなってしまったのと同時に、“送りん婆”という仕事も無くなってしまったという書き方にぞくぞくさせられると同時に哀しさも感じた。 癖になる味わいがあった。
42投稿日: 2021.12.11
powered by ブクログ’21年9月1日、読了。朱川湊人さんの小説、3作目。 やられた…打ちのめされました。素晴らしい!今作も含め読んだ3冊、どれも素晴らしかった!僕の好みにバチッと合う作家さん、です。 6篇…どれも捨てがたいですが、僕は表題作「花まんま」と「凍蝶」が、大好きです! 特に、「花まんま」が…泣けた༎ຶ‿༎ຶ「花まんま」って、そういう意味、だったんですね!(考えりゃ、わかりそうですけど┐( ˘_˘)┌) 辛さも、幸せも、涙もろとも、両方、受け取りました。 「凍蝶」も…主人公の男の子の辛さ、苦しさに、顔を歪めて読みましたが…美しい出会いと、哀しい別れに、涙しながら…ラストに満足! 朱川さんに、ハマりそう…でも、こういうのを連続して読むと、心が(・o・;)
9投稿日: 2021.09.01
powered by ブクログ同級生に薦められて読みました。自分自身が過ごした昭和の古き良きアナログな時代を思い浮かべて身近におこりそうな不思議な話に引き込まれました。6篇とも淡く優しくそして哀しみもあるストーリーです。中でも表題となっている花まんまは秀逸です。朱川さんの他の作品も読んでみたくなりました。
3投稿日: 2021.08.29
powered by ブクログ直木賞受賞の傑作短篇集。 「トカピの夜」「妖精生物」「摩か不思議」 「花まんま」表題作「送りん婆」「凍蝶(いてちょう)」 大阪に住んだことはなくても、感じるのは懐かしさ。 昔、子供の目から見たり感じたりした似たような空気感。 不思議な事も、怖い事も友達や家族に対する気持ちが 自分も通ってきた子供という共通視点だからこそ 懐かしく感じるんだなぁ~と思いました。 「トカピの夜」と「花まんま」が好きです。
3投稿日: 2021.08.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
④のような小説がまた読みたいと思い文庫本を購入したら、②の悪趣味話や③の笑い話がついてきてびっくり。僕の特に好きなのは④と⑤。解説は、朱川さんと一見似ているようで実は全く違った視点から子どもを描く重松清さん。いい感じ。 ①トカビの夜 早世した子供の悲しい話だが読み終えるとなぜか微笑んでしまうかわいい短編。 ②妖精生物 悪趣味、淫猥。よく子供を主にこれが書けるな。嫌悪感がないのはホラーのためか。 ③摩訶不思議 子供板挟みの修羅場コメディ。僕は好きだし笑えるが、何やねん!思う人も多い筈。 ④花まんま 朱川湊人と出会った作品。初めは読む度泣いたが、今は抑制の効いた良作と感じる。 ⑤送りん婆(おくりんばぁ) 祈禱師や「ツナグ」を連想させる。実際にありそうな感じ。 ⑥凍蝶(いてちょう) ギリギリ、怖い話にならなかった感じ。友情の復活は僕にも経験あるような。
10投稿日: 2021.07.26
powered by ブクログ昭和の大阪を知らなくても情景が思い描ける程、没入できる作品。あとがきの重松清さんの話も勉強になりました。
1投稿日: 2021.02.19
powered by ブクログ全部で6つの話が入った短編集 タイトルにもなってる「花まんま」と「送りん婆」が面白かった。 印象に残ってるのは「トカビの夜」と「凍蝶」 どちらも差別について書かれてる部分がある。 読んでて差別はすごく理不尽!って思った。怒! 相手を低く見ることによって、自分が優位に立ちたいんだと思う。 昭和という時代設定だが、今でももちろん差別はあるし、きっと自分の中にもあからさまではないにしろ、差別してしまう心の弱さがどこかに潜んでそう。 こーゆー話をとおして、自分を律せれたら◎。
2投稿日: 2021.01.23
powered by ブクログ都市伝説セピアを呼んでずっと気になっていた朱川さん。安定した懐かしい匂いと、少し不思議な世界とのつながり。 短編ながらもどこかに相通じる仄暗さと落ち着きが底辺を流れていて、ファンタジーとホラーと人間臭さが相重なる。 妖精生物、凍蝶が個人的には良かった。
1投稿日: 2020.12.12
powered by ブクログ何年か前の直木賞受賞作品です。 夫が購入しましたが、私自身は読んでいなくて積読モノとしてストックしていました。。 昭和の時代の、大阪の下町が舞台の少しホラーでいかがわしい雰囲気を纏った不思議な話の短編集です。 当時を回想するという設定が多く、子供目線で描かれているせいで昭和を過ごした自分の子供時代と重なり、ノスタルジックな気分に包まれながら一気読みしてしまいました。 私の子供の頃って、怪しげな露天商が怪しげなものを売っていたり、自宅での葬儀がまだ多かったため死が身近だったり、不可思議なホラーを信じていたり(口裂け女とか)、差別が露骨だったり、そんな時代の雰囲気がよく表れていて、郷愁感満載です。 基本的に短編は好みではないのですが、短いながらもよく練られた作品だと感じました。 著者の長編読んでみたいなあ。
1投稿日: 2020.05.13
powered by ブクログ著者の大阪物は好み。当時の雰囲気が伝わってくる描写で読者を引き込む。実際に住んでいないと書けない雰囲気が生かされている。
3投稿日: 2019.05.05
powered by ブクログ作者と同年代だからだろうか、文章から想像する情景が妙に懐かしい。話の舞台は大阪で、東京育ちの私が知った場所ではないが、その年代に対するノスタルジーということなのかな。 表題作が一番良かったけれど、短編集のどのお話も現実さを帯びたファンタジーでそれぞれが良かった。 『かたみ歌』を読んで以来の朱川作品、他のも読みたくなった。
3投稿日: 2018.10.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
子どもの頃、不思議なものに心を奪われ、好奇心でいっぱいだった時の気持ちが蘇るようだった。 誰しもこういう思い出があるかもと、懐かしい感じがした。同時にトラウマを抉られるような話も中にはあり、多感な時期の様々な感情が良くも悪くも掘り起こされる。
2投稿日: 2018.08.07
powered by ブクログ大阪の下町を舞台にした短編集。 朱川さんのほかの作品と同様、生と死にまつわる不思議な話。 死についての話だが、怖さではなく、「懐かしさ」「切なさ」「優しさ」に溢れる内容。 回顧録として語られるスタイルはまさに芸術の域であり、気づいたら自然と物語の時代へと入り込んでいるのがわかる。
3投稿日: 2018.07.23
powered by ブクログほのぼの~した話なのかと思ったら、 2話目くらいまでは、ドス黒い部分が展開して なんじゃこらーと意表をつかれた。 だんだんほのぼの~路線に展開していくような気がするが 最初のインパクトが強くて、ホラー?という印象が残った。 ほのぼのホラー(でもないけど)って感じ。 面白いっす。
2投稿日: 2018.04.10
powered by ブクログ全体的に作者独特の雰囲気を持った作品。 すべて主人公が関西弁だったのは作者が関西の人なのかな? 結構好き嫌い分かれそうな作品。 ちなみに私はそんなに好きではないかもしれないです。
1投稿日: 2018.01.16
powered by ブクログ直木賞受賞の短編集。大阪の下町を舞台にしたノスタルジックで少し不思議な短編集。 いい短編集だと思いますが、個人的にはイマイチでした。
1投稿日: 2017.12.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
6つの短編から。 解説重松清氏。 パルナスのCMとはどんなものなのだろう。。?? 作者は大阪生まれなのか。 大人なのに子供の気持ちを表現しきっている箇所が凄い、と思うと同時に 大人になって子供時代を振り返る時の感情も共感する箇所があって 凄いと思う。 『トカビの夜』 →『昨日公園』のように、子供時代の気持ちを忘れず、否定しない大人になりたい。。 『妖精生物』 →性に関する後ろめたさや、母親が女である事に気づいたり 朱川氏の描くタッチがソフトだけれど その後が悲惨だったりと、ラスト、彼女が何故穏やかなのか…と思ったところ、ページをめくって まさかの一行。。辛い。。 『摩訶不思議』 →コントで見たい。 『花まんま』 →姉妹だったら、22歳を迎えて、色々聞いたりすると思うけれど 兄というのは、さほど会話をしないのだろうか。 『送りん婆』 →おばさんのように殊勝な心がけを忘れないようにしたい。。自分がその立場だったら。。と思うと尊敬する。 『凍蝶』 →「彼女」のお仕事、そうかもしれないと思ってはいたが、判明するのが物語の悲しさ。 仮にお金が要らなくなっても、故郷には戻れない。 若しそういう人がいたら、理由等きくことなく 自分も偏見の目をもって接してしまうかもしれない。 朱川氏の物語の周辺の人について読むとき、自分だったらどの人だろうか、と 考えされられる。
2投稿日: 2017.12.06
powered by ブクログ短編集。 前回読んだ「憑きびと」の作者紹介から、まだ読んでいない気になった作家だったので借りてきた。 「世にも奇妙な物語」的な話も直木賞をとるのね。 すべて映像化したら面白そう。
1投稿日: 2017.10.27
powered by ブクログ「どこかであった不思議なお話」という感じ。ちょっと身内に不幸があってから、死というワードやそれにまつわる諸々がとても苦手になってしまっていたので、ちょっと読むのしんどかったです。作品としてはどれも素晴らしかった。表題作の「花まんま」と最初に入ってる「トカビの夜」がわたしは好きだったかな。「摩訶不思議」も軽く読めてよかったと思います。わたしは大阪の土地名からきしなので一部しかわからなかったんですけど、解説にもあった通り、その時代そこで生きていた人には「あったあった」何だろうな。大阪のことは全くわかりませんが、わたしですら不思議な懐かしさを覚えました。とてもよかったのですが、どうしても重い気持ちになってしまったので星は3。
1投稿日: 2017.08.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
昭和40年代の大阪の下町を舞台にした少年少女の短編集。 読んでみると私の子供時代より少し上の世代で、当時のことを知らないはずなのに、何故かとても懐かしい。 じわりじわり胸に染み込み、その頃にタイムスリップした感じ。 懐かしさと切なさと、少し背筋が寒くなる怖さをあわせ持つちょっと不思議な物語。 表題の「花まんま」が一番印象に残った。 妹思いの兄の言動に泣けた。 「摩訶不思議」は人生はタコヤキやで、と甥に向かって二本楊枝の持論を語る往生際の悪いおっちゃんに笑った。 こんなに大阪弁を優しく感じたことないな。
5投稿日: 2017.08.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
全6編の短編集。すべての時代背景が高度成長期の日本。どの話にも共通して、ファンタジックな要素が盛り込まれている。「花まんま」はそのうちの一作品で、ある一人の少女が前世の記憶をたよりに、その家族に会いに行くという話。いい意味で抑揚もなく、すんなり頭に入ってくる文章はとても清々しさを感じた。
1投稿日: 2017.08.05
powered by ブクログノスタルジックなホラー6編から成る短編集。いずれも昭和30~40年代の大阪の下町が舞台です。 1つめは「トカピの夜」。コの字型に並んだ長屋式賃貸住宅の一軒に暮らす小学生、ユキオ。袋小路の一番奥に住む朝鮮人兄弟とだけは、誰もがなんとなく距離を置いていたが、兄弟の母親に請われて、ユキオは病弱な弟チェンホと遊ぶようになる。ある日、チェンホが死に、朝鮮の幽霊トカピとなって長屋に現れる。 2つめは「妖精生物」。国電の高架下にいた男から、クラゲに似た奇妙な生き物を買った少女、世津子。時折ガラス壜から出して触れてみると、未知の快感に襲われる。やがて、小さな工務店を経営する父親が雇った若い男性、大介に恋心を抱き、彼にはこの生き物の秘密を明かしてしまう。 3つめは「摩訶不思議」。遊び人の叔父、ツトムおっちゃんがあっけなく亡くなる。おっちゃんには内縁の妻のほかに愛人がいたことを知っている小学生のアキラ。火葬場へ向かった霊柩車が急に停車、うんともすんとも言わなくなり、おっちゃんが愛人にもこの場に来てほしがっているのだとアキラは考える。 4つめは「花まんま」。無邪気な妹フミ子の様子が、ある日を境におかしくなる。亡き父から何があっても妹を守れと言われていた俊樹は、フミ子が自分は誰かの生まれ変わりだと思っていることを知る。俊樹とフミ子は、彼女が前世を生きたと言う彦根へと向かう。 5つめは「送りん婆」。親戚のおばさんは、言霊の力を使って、いまわの際で苦しむ人をあの世に送る。そのおばさんに見込まれて、それを手伝うことになった少女、みさ子。 6つめは「凍蝶」。まだ幼い自分にはわからない理由で差別を受けている少年、ミチオ。せっかく仲良くなった転校生からもいつしか避けられるように。墓地へ足を運んだところ、若い女性と出会う。 イニシャル表記された地名は、大阪人であれば見当がつく場所ばかり。庄内、天満に扇町公園、飛田新地。それだけでもワクワクします。 1つめ、3つめの話が特に好きでした。3つめは人生をタコヤキに例える言葉が可笑しい。冷めたらいっこもうまくない、アツアツすぎたら大やけど。熱すぎてもあかん、冷めてもあかんっちゅうこっちゃ。 映画の感想はこちら→https://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/8c027c302ed7f068bfc071c96a80f436
2投稿日: 2017.04.23
powered by ブクログ関西人にぜひ読んで欲しい!という、 書店の方のおすすめにしたがい、 松尾たい子さんの装丁だったせいもあり購入。 作者と同年代のため、 随所になつかしさを感じるアイテムが散りばめられていた。 パルナスの歌詞が全部わかって感激。 子ども時代って、わからないところは 適当に歌ってたんだなぁ。 お話の方は、 なんとも不思議な感じで、 心地よい、というよりは ちょっと怖いというか、ざわざわする感じ。 短編だけど、しっかり重みのあるお話を 読んだ気分。
2投稿日: 2017.04.10
powered by ブクログ短編集。 昭和…近いようで遠い過去。 その時代を懐かしんでか、それとも古き良き時代を忘れないためか、昭和を背景にした物語は多い。 残念ながらこの物語に登場する、たとえばメンコというものを手にしたことが一度もない。 見知らぬ日本、といった感じがしてしまうのはそのせいかもしれない。 外国人に対する差別と偏見は、程度の差こそあれ今でもあるだろう。 あからさまに排除するか、陰にまわって疎んじるかの違いはあるだろうけれど。 「トカビの夜」に登場する朝鮮人の二人の兄弟は、そんな時代の影響をまともに受けた年代なのかもしれない。 高校生のときにずいぶんと年上の朝鮮人の女性と知り合ったことがあった。 たぶん国籍は日本だったのではないだろうか。 最初はもちろん相手がどんな素性かも知らずに話すようになったのだが、日本語のアクセントが微妙に違っていたので「あれ?」とは思っていた。 彼女の父親はとても大きな声で笑う人で、彼女の微妙なアクセントを倍にしたような話し方をする人だった。 「子どもの頃にしみついた話し方ってなかなか抜けないんだよね」と、責任は父親にあると言いたげにしていたことを覚えている。 話してみれば当たり前のことだけれど普通の人たちで、両親はともかく(独自の文化をまだ守っている部分があったようだ)彼女自身はまったく日本人と変わらないように感じた。 時代とともに人の感覚も変わっていくのだろう。 彼女と付き合いのあった間、一度も朝鮮人であることを意識したことはない。 単純に「日本人じゃないんだ」と思っただけだ。 別に彼女が何人であっても、犬が好きで、アイドルが好きで、よく笑う優しい人だったことに変わりはない。 もしかしたら私の知らないところでは辛いこともあったのかもしれないけれど、一切そんなことは言わなかったし見せなかった。 辛い時代を背景にした物語を読むたびに、彼女を思い出す。 どの物語も子どもの視点で描かれている。 子どもにだっていろいろな感情がある。 抱えきれないほどの喜怒哀楽が小さな体には詰まっているのだ。 人の「死」を通して浮き彫りになっていく「生きる」ということ。 幼いながらもそれぞれのエピソードを経験することで、何かを学んでいく子どもたち。 あたたかな余韻の残る物語ばかりだった。 中でも「花まんま」が一番よかった。 頭では理解しても感情がついていかない。ただ、妹を守りたいという気持ちだけが「僕」を支えている。 兄である「僕」の複雑な思い、生まれ変わりである妹の過去の家族への思い、そして亡くなってしまった娘への後悔だけを胸に生きてきた老いた父。 「花まんま」というアイテムが伝えてくれる想い。 切なさの中にも優しさがあふれている物語だった。
1投稿日: 2017.03.19
powered by ブクログ昭和の大阪の空気を感じます。綺麗ごとだけですますのではなく、差別や偏見も溢れています。そんな中で子供達が主役のファンタジーが6編。気持ち悪いのもあれば、ちょっとうるっとくるのまでバラエティに富んでます。個人的には表題作と送りん婆とトカピの夜が好きです。妖精生物はなんとなくクリオネをイメージしてましたが、結末を読むとそんな可愛いものでも無さそうです。
1投稿日: 2017.03.14
powered by ブクログ「花まんま」朱川湊人 人は誰しも一つは小説を書けるという。 自分の人生がそれだという。 確かにどんな平凡な人の人生も当人にとっては波乱に富んだ様々の事件を抱えて悩み、喜び、涙を流してきたかけがえの無い他人には真似のできない小説になる。 ただ、その小説の読者がその人生に共感したり涙したりする事は難しい事だろう。 「花まんま」に収められた7つの短編にはどこにでもいる人の人生の、けれども他の人間には感じられない思いが書き綴られている。 そして朱川さんの文章は読者の私にそのどれもがあたかも自分の心の動きであるように読ませてくれるのです。 少し悲しく、けれど自分の人生もこういう落ち着きどころなんだなと思える作品集でした。
1投稿日: 2016.12.18
powered by ブクログ昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、当時子どもだった主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた全6篇。 直木賞受賞の傑作短篇集。 子供時代の「不思議な体験」や「秘密」の話で、懐かしくて切ない気持ちになる本でした。話の情景が浮かんできて、どの話も引き込まれました。 何よりも読んでいて自分の子供時代のさまざまな風景を思い出しました。
1投稿日: 2016.08.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
うちの親が好きそう。 作者が年齢・出身が近いようで納得 妖精生物、生物自体だけでなく 結末もなんともぬぐいきれない不快感。 冒頭のお話がいまいちだったので 合わなかったかなと思ったのだけど なんやかんやで読んでしまった 他も読んでみたいかも
1投稿日: 2016.06.21
powered by ブクログ昭和40年代大阪下町が舞台。ガサツだが人情味のある関西気質と関西弁、昭和の"アノ頃"の雰囲気が見事なまでに物語を演出している。世代の違う人々もまるで思い出アルバムを開いたかの様にノスタルジックな雰囲気に呑み込まれる事必至。洗練された良作短編集は切なく哀しくアホらしく、そしてちょっぴりヒヤッと怖い。毎作品ラストは針でチョンと刺された様な感覚が余韻として残る。差別や人の温かさの中生き抜く深みのある人間像も堪らなくいい。僕の中では完全にコノ人はお気に入り作家となり、優しさも一杯詰まったコノ直木賞作品は特別なものとなった。
1投稿日: 2016.02.29
powered by ブクログ昭和の懐かしさと下町の人情を感じさせてくれる素敵な作品でした。どの短編もハズレなく、すべて面白かった。 あらすじ(背表紙より) 母と二人で大切にしてきた幼い妹が、ある日突然、大人びた言動を取り始める。それには、信じられないような理由があった…(表題作)。昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、当時子どもだった主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた全6篇。直木賞受賞の傑作短篇集。
2投稿日: 2016.01.16
powered by ブクログ昭和40年代、その時代に少年期の読者には、なんだかタイムスリップして、自分が少年に戻ったような、ビビッドな記憶がよみがえるはずだ。 その当時考えていたような、根拠のないでも、その当時はそれが当然だと信じることができたような日々の記憶の連続に驚かされる。 良書だと思う。 トカピの夜 妖精生物 摩訶不思議 花まんま 送りん婆 凍蝶 の6編。 解説:重松清
1投稿日: 2015.12.29
powered by ブクログレトロな舞台で少し背筋寒くなる話といい話が少し。妖精生物は後味悪いのでちょっと注意。花まんまとトカビの夜はうるっとします。
1投稿日: 2015.12.26
powered by ブクログちょっと夢物語のような雰囲気の6編を収めた短編集。 トカビの夜、花まんまが良かった。 妖精生物のインパクトも良い。 昭和40年代の大阪の町の混沌が目に浮かび、また関西弁のリズムも心地よい。
1投稿日: 2015.12.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
作者得意のノスタルジックでちょっとホラーでちょっとファンタジーな短編小説を6編収録。初期の作品集だけあって少々ギコチないところはあるものの、その後の朱川さんを想像させる物語を十分楽しめた。 舞台は大阪のちょっと場末な住宅地、西成だったり今里だったり中崎町あたりだったり大正や九条界隈だったり… 同和だったり在日だったり障害だったり貧乏だったり公害だったり…人間ってのはつくづく差別のネタを見つけてくるのが得意で、どーしようもないなぁと思ってしまう。自分に直接危害や損害が加えられないなら、人のやることはほっとけばいいのに、違和感を見つけては眉を顰めあう…。 この物語の舞台になってる頃よりはマシになってるんだろうけど、今でもそういうの残ってるよなぁ~。人と違うのが良くないってのは、社会を構成しようとするモノの怠慢な考え方。多様性を切り捨てたら進化は止まる、自分と違う価値観は認めつつ、自分の価値観を大切にする。その匙加減って本当に難しい…
1投稿日: 2015.10.24
powered by ブクログかたみ歌でもほんのりとホラーだった。こちらもしみじみと味わい深いホラーテイストで、昭和情緒あふれる作品でした。自分が子供のころにあったこととも被るものがあって、胸がチクリとしました。
1投稿日: 2015.10.01
powered by ブクログ昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、当時子どもだった主人公が体験した不思議な出来事を、ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた直木賞受賞の傑作短篇集。トカビの夜/妖精生物/摩訶不思議/花まんま/送りん婆/凍蝶。
1投稿日: 2015.06.08
powered by ブクログどの話も奇妙なのは確か。 昭和の大阪を知らない私は、情景描写はさらっと流し読み。 トカビ、摩訶不思議、送りん婆は誰が読んでも楽しめそう。 花まんまは、兄妹愛にホッコリ。 凍蝶は、なんでミツオが虐げられてたのか気になる。普通は読んだらわかるものなのかな? 妖精は主人公があまりにも不幸。けど1番強烈に頭に残っている作品。
1投稿日: 2014.11.30
