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総合評価

37件)
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    生殖医療はどこまで医学、科学が介入してよいものか。 自分の邪魔をするものには容赦がない岸川には、恐怖さえ感じる。 だが、いつか未来では本当に起こり得るような気がして興味深い。

    2
    投稿日: 2024.01.07
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    ーー手足を曲げ、身体の半分を占める大きな頭部を俯き加減にして身を縮めている。この姿勢を眼にするたび、岸川は祈りの形だと思う。いわばエンブリオは子宮の中にいる間、ずっと祈り続けているのだ。この世に無事に生まれ出ることをひたすら願っているのに違いない。(21)

    0
    投稿日: 2023.10.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    上巻よりは興味深く読めた。 なんだろう、、岸川先生、、結局医療ではない別の法を犯していたけど、すべてが完璧すぎてちょっと感服してしまった。。 もっと岸川先生のことが知りたいと思ったから続編?のインターセックスも読んでみようと思う。

    0
    投稿日: 2022.01.30
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    タブーのオンパレード。 不妊治療に悩む夫婦には、神様のような存在だが、 自分の研究を邪魔するものには容赦ない先生が怖い。でも実はどこかでこんな研究が進められているのかも知れないな。

    0
    投稿日: 2019.11.29
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    男性の妊娠を国際学会で発表した岸川。 アメリカの不妊治療ビジネス大手の企業が接近してくる。 ただ、その企業は岸川に罠をしかけようとしていた。 それに気付きた岸川もまた、驚きの対策をする。 不妊に悩む夫婦を助けながらも、卑劣な面を垣間見せる岸川。 衝撃的な展開に息を飲む。 2018.11.29

    0
    投稿日: 2018.11.29
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    「男性の妊娠」研究を国際学会で発表し、各国の賞賛を浴びた岸川。彼の高度な医療水準に、アメリカで不妊治療をビジネス展開する大企業が目をつける。最先端の技術と情報を盗むため、巨大組織が仕掛けた卑劣な罠。そして、それに対して岸川がとった恐るべき反撃策とは。岸川の持つ闇が徐々に暴走し始める…。

    0
    投稿日: 2018.06.16
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    倫理はともかく、現在の医学でこの本の内容のどの程度まで可能なのかわからないが、興味深かった。ちょっと長いのがマイナス。

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    投稿日: 2018.05.06
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    「男性の妊娠」研究を国際学会で発表し、各国の賞賛を浴びた岸川。彼の高度な医療水準に、アメリカで不妊治療をビジネス展開する大企業が目をつける。最先端の技術と情報を盗むため、巨大組織が仕掛けた卑劣な罠。そして、それに対して岸川がとった恐るべき反撃策とは。岸川の持つ闇が徐々に暴走し始める…。生殖医療の暗部を鋭くえぐり、進みすぎた生命科学が犯す罪を描き出した戦慄の長編小説。

    0
    投稿日: 2017.04.08
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     国際学会から帰国後、海外からの患者を受けいれることになった岸川。同じころ、研究の情報が外部に漏れている可能性が浮かび上がり岸川は調査を始める。  上巻で岸川の性格についてナルシストと思いましたが、ナルシスト以上にエゴイストなのかな、と読み終えて思いました。  患者や医療の未来のため、という自身の正義のためなら倫理を顧みない岸川の異常な性格が下巻では徐々に露わになってきます。  以前海堂尊さんの小説を読んだときにも感じたことなのですが、主人公に対し「お前は何様のつもりだ」と読んでいて感じてしまうんですよね。どちらも主人公は産婦人科医で患者のためという理念も共通しているのに、なぜ終盤になるとそうした主人公に対しこうした感情を抱くようになるのか…、  そこには科学の発展のためには犠牲や倫理の逸脱も致し方ないという彼らのエゴと、それに抵抗を感じる自分との埋められない溝というものがあるのか、と思います。  科学の力で何でもできるようになってくると、生命だとか人の倫理だとかがバカらしく、まどろっこしく感じてしまう時というのは確かにあるのかもしれません。  それでもなお、越えてはならない一線はあるのか、あるとしたらなぜその線を越えてはならないのか、また超える場合何を捨てなければならないのか、 こうした倫理についてないがしろにしたまま、突き進んでいくと人間はいつか倫理の歯止めのない科学の前になすすべもなくなってしまうように思います。  医療に限らず今、急激に科学や技術が進歩しつつある世界でそうしたことを考える重要性を、この小説は伝えているように思います。

    1
    投稿日: 2015.03.22
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    上巻が主に岸川が行う医療内容やそれに対する周囲の反応だったのに比べ、此方は「岸川が如何にしてこの研究分野で独走するのか」という視点で書かれていた。 異常な処置や実験を行う医者、というイメージが、患者が満足できるように手を貸すだけ、と説明されることにより、 「あれ、やってることエグいけど岸川が正しいんじゃ」 とまで錯覚を抱きそうになる。 今後の生殖医療の展開が心なしか心配になる。

    0
    投稿日: 2015.02.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    1巻目が面白かったので続きを読んだが、なんだかラストにがっかり。結末というか、これで終わり?な感じでなんだか少しモヤモヤしている。

    0
    投稿日: 2014.11.13
  • 医療のみならず人としてのタブーも犯す岸川

    医学会の国際発表で「男性の妊娠」について発表をした岸川。その後に起こる自身の医療技術の流出問題。いったい誰が情報や技術を流しているのか・・・。この流出問題の対処でこの物語のクライマックスが訪れます。上巻で大きく述べられている岸川の医療の考えや行動を維持するために、人としてのタブーも平気で犯す岸川。医者としては、最高であっても、人としてはどうなのか・・・。後半はサスペンスものとしても楽しめました。

    0
    投稿日: 2013.09.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    彼が積み上げてきた研究に危機が訪れる 米国からのスパイ、裏切り者 愛していた恋人までも裏切られ・・・ そしてすべての邪魔がやみに葬られた エンブリオとともに・・・・

    0
    投稿日: 2013.04.27
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    医療ミステリー。患者に優しく優秀な医師の岸川。しかし、倫理を無視して暴走する彼の行き着く先は?  先に「インターセックス」を読んでいたのでいくつかの事件の詳細がわかっていて、それはそれで楽しめた。

    0
    投稿日: 2013.03.27
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     倫理を超えながらも、探究心、さらには冒険心で生殖医療に望む岸川。そのデーター、技術に巨額な金が動くことを見越しながらも、患者の要求に応えてこその医療といゆう信条が、この岸川医師を一刀両断に裁ききれないモヤモヤ感がある。  患者にとっての最高の医者。その社会評価と背中合わせに感じるこのエグさはなんなんだろう。脳が未成熟で何ら判断の持たないエンブリオならば如何様にも手を下しても、堕胎してもかまわない、社会に未認知の空白の時間。人類のすべての子供が恵まれた環境で歓迎された状態で生まれてきてはいない事実はわかっていても、この空白時間にまで手をだすことは、やはり許されないと思う。  医療がますますビジネス化し、人工子宮という技術もそう遠くない時代に生まれてくる気がする。あと10年後にこの本もう一度手にしてみたいと思う。

    1
    投稿日: 2013.03.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    残念。上巻からどうなるのか。楽しみに下巻に入りましたが。そりゃあ、みんな濡れ場は好きよ、けどね。そんなもんはどうでもいいんよ。せっかくのテーマにさらなる広がりはなかった残念。下巻の中心となるドタバタ劇も結構フツウwサプライズ的な事もないし。

    0
    投稿日: 2012.11.10
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    院長岸川の野心。それに疑問を抱きつつも、子に恵まれない夫婦には、何とかして子を授けてやりたいと、ディンクスの私は思わざるをえません。

    0
    投稿日: 2012.10.03
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    なるほど。こちらを先に読んでいれば、『インターセックス』で一部なぞとなっている部分は、なぞでも何でも無かったのですね。 知らずに逆の順序で読んだことで、実は『インターセックス』をちょっと多めに楽しむ事が出来たのかもしれませんし、こちらで岸川の性格、やり方が分かっていたら違った視点から読めたのかもと。。。 しかし、驚いたのは、年間に生まれる子供と堕胎される子供の数が同じくらいであること。もしかして少子化の原因には堕胎のリスクが昔よりも少なくなり、一昔前なら生まれたかもしれない命が、避妊意外にもこういった方法で盛んにBirth Controlが行えてしまっていることも含まれるのではと邪推せずには入られません。 本書は、不妊治療、生まれ来る命と既存の命、現代の神の領域に近くなりつつある医療のあり方色々考えさせられることが満載ですが、ストーリーとしても楽しめるので、お得な感じです。

    0
    投稿日: 2012.08.17
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    事の善悪や生命倫理はおいておくとして、これほどの先端医療に関わり、次々と新たな治験を試み、生殖医療や再生医療の最新技術を切り拓いていけるとなれば、もはやとどまるところを知らず虜になってしまうに違いない。 あくなき探究心、進みすぎた医療、そして実際にそれらの技術がよそでは救えなかった患者を救えるという事実。おそらくこの小説は決して未来の話ではなく、今やすでにこのような研究開発は行われているのではないかと思う。「患者のため」という免罪符をもって猛進する科学や医療を、どのような現実的なラインで線引きし、特に不妊治療や再生、移植などの方針を国が定めていくのか、明らかに国の方針が立ち遅れている感がありありと描かれる。おりしも6歳以下の子供の脳死移植が行われた時期でもあり、実際にこのような分野がこれからどの方向に向かっていくのかとても興味深い。 天才産婦人科医岸川は、普通に考えれば「悪」なのかもしれないけれど、ここまで徹底した自分の主義主張があるならばむしろ爽快。

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    投稿日: 2012.06.20
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    男性を妊娠させたり胎児を品物のように扱う岸川に反感を持ちました。また、自分を利用しようとした相手に反撃するシーンは恐怖感でいっぱいでした。

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    投稿日: 2012.04.08
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    ああ、やっぱり春奈殺されてたのか。「患者のため」を、盾に行われる医療行為は果たして正義なのか?を問われる

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    投稿日: 2012.03.20
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    医学ぜんぜんわからんけどおもしろかった 善し悪しはわからんけど あくなき探究心はすごい 終わり方がすごくよかった!

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    投稿日: 2011.11.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    色んなものを犠牲&実験として使用する。。 でも、医療のためと。。。結構傲慢かつナルシストな感じ。 でも私は好きです。

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    投稿日: 2011.10.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「インターセックス」で触れていた病院関係者の連続死の真相が明らかになった。なるほど、こう繋がっていたのだ、と。 これを読んだ後もう一度「インターセックス」のほうを読むのも良いかもしれない。 それにしても現実世界でも似たようなことが起こっているのか。すでにそこまで進んでいるのか?? そうした場合、倫理の問題は?いずれはそういった倫理が問われる時が来ると著者は語っているようだった。 この一連の作品で帚木のファンになった。

    0
    投稿日: 2011.10.09
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    借本。 上巻程サクサク読めず、躓きっぱなしでした。 読んでて気分が悪くなるような感じ。 個人的に、内容だけに考えすぎたのかもしれない。

    0
    投稿日: 2010.10.24
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    「男性の妊娠」研究を国際学会で発表し、各国の賞賛を浴びた岸川。彼の高度な医療水準に、アメリカで不妊治療をビジネス展開する大企業が目をつける。最先端の技術と情報を盗むため、巨大組織が仕掛けた卑劣な罠。そして、それに対して岸川がとった恐るべき反撃策とは。岸川の持つ闇が徐々に暴走し始める…。生殖医療の暗部を鋭くえぐり、進みすぎた生命科学が犯す罪を描き出した戦慄の長編小説。 重いテーマを扱っているのに、何故か暖かいのが、帚木さんのすごいところ。やっぱり好きだなあ。 最後まで岸川先生の人物像がイメージできないのは私の未熟さゆえだろうか・・・

    0
    投稿日: 2010.07.24
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    天才産婦人科医師の話。 天才ゆえに極端な研究へ進んでしまい、人を助ける為に人を殺してしまう主人公。 そんな彼は正しいのか間違っているのか。 読み進めるうちに生命とは何なのか分からなくなってしまった。 不妊に悩み人工授精を行う人もいれば簡単に堕胎する人もいる。 色々と考えさせられる作品。

    0
    投稿日: 2010.06.10
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     年間120万人の新生児が誕生する日本だが、堕胎は同じ数、またはそれ以上にあるらしい。相反して、出産を望む夫婦の10組に1組は、赤ちゃんが授からず産婦人科に足しげく通う。その費用は保険も利用できず、若い夫婦にはものすごく負担になる。  障害も持たず、出産した我が子を虐待死させる親が世の中を騒がせる。その親にとっては出産があまりにも当然と考え、お手軽なものだったからなのだと、作者は岸川を通して語らせる。小説としてはいまいちだったが、実に多くの事を考えさせるテーマだ。

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    投稿日: 2010.04.14
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    インターセックスから読んでしまったので、スターウォーズ的な感じになりました。 岸川の技術で人生が救われる人もいれば、簡単に命をとられてしまう胎児。 これは簡単に善悪の判断ができないなーと思った。僕の意見は学会に来ていた日本人の医師たちに似ていると思った。倫理とかを話合うべきなのではと。 まだ子供を持ちたいと思ったことないし、身近に想像できないガキだからそう思うのかな。身近な問題の人にとって話合いなんて待ってられないだろうな。 親と見ていたテレビの番組で、先天的な治療しないと命にかかわる難病にかかった幼児が、痛みで泣きじゃくっている姿を見た自分の親が、 「あんなに苦しい思いをさせるくらいなら、寿命だと思った方がいいんじゃないか」 俺がもしそうだったら簡単に見捨てるのかな~と思ってしまった。 悲しくなったからこの問題を自分の中でどう解釈すればいいのか余計わからなくなった。 みんながどう感じているのか話し合ってみたい、そんな気持ちにさせてくれる本でした。

    0
    投稿日: 2009.12.29
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    まずミステリーとして見るならば、全体を貫くストーリーや様々な仕掛けと呼ぶに値する伏線などは秀逸だと思うし、早く先の展開を読み進めたくなる気持ちははやるばかりなんだけど、肝心なところの多くが明かされぬまま、おそらくは意図的に曖昧なまま置いて小説は閉幕しているので、何だかかゆいところに手が届かないような、指に刺さった棘がなかなか抜けないようなモヤーっとしたものが残る。 ただ、あえてそんな不満点から述べてしまったけれど、この小説の最大にして唯一のテーマはそういった類のものではないので、謎の多くが明文化して示されていないというモヤモヤ感を打ち消して余りある満足を読後は得ることができた。 じゃあそのテーマとは一体何なのかと問われても一言では言い表せられないのがもどかしくもあり、自分の知識、語彙の至らなさが嘆かわしくもあるのだが、とにかく、21世紀の最先端生殖医療とはここまでのものなのか、と素直に驚いたし、また非常に陳腐で月並みな表現なんだけど、生命発生のメカニズムというものに人の手を加えることについての是非なんかに関しても、どんな読者だってこれを読めば少なからず考えを及ばさざるをえない、そんな圧倒的で根源的な問い掛けを大いに感じた。 「自然」という言葉は、たとえば木の枝を集めて巣を作るビーヴァーにも、山を削り木を伐ってビルディングを建てる人間にも等しく用いられるべきである、という考えを私は持っているんだけど、その延長線上、とまで言えるのかどうかは分からないが、作中に登場する“生殖活動に人為的に手を加えることを背徳的というのならば、自然な生命の終焉を阻害するすべての医療行為はあまねく認められないことになる”という主旨の表現には強く共感を覚える。 本当にそうだと思う。 できる限り病や怪我や死というものを遠ざけよう遠ざけようとしているすべての医療行為は、広義で言えば“神の意志”に反している。 癌を早期発見して外科手術によって根治させるのは推奨するけれど、たとえ患者の望みであっても受精のメカニズムをいたずらに人の手が左右することはあってはならない、と勝手にどこかでラインを引いてしまい、あたかも人間が神の意志を代弁しているかのように振る舞うことこそが、最も背徳的なのかもしれない。 それにしたってこの作品の主人公のように、一方では不特定の患者たちの幸福を実現するためという信念で以って既成の倫理を無視する先端治療を行い、他方では邪魔になった人間の命を虫けらのごとく消し去るなどという完全乖離したアイデンティティの持ち主なんているわけないよ、それ以外の部分では極めて常識的かつ聡明な人格と知性を備えながらさあ、と読者に思わせてしまうところがほんの少しだけ残念。

    0
    投稿日: 2009.12.23
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    下巻に入ると、モナコ学会での成功に目をつけたアメリカの企業からの魔の手が伸びてくるなどして事件が多発。テンポもあがって一気読みです。主人公・岸川院長の考えは全くぶれず、基本的に「患者のため」「患者の要望を叶える」。その姿勢は正しいが、「患者のため」を理由に何をしてもいいのかというと、当然そんなことはない。岸川院長の評価が難しいのは、通常の小説やドラマなら、悪役の医者は自分の利権(主にお金、名誉)を追い求めるので分かりやすいのだが、岸川院長は単純な利権にしがみついているわけではないところだ。上巻からずっと主人公視点で書かれているのでずっと読んでいると、正しいことをしているような感覚になる。やはり岸川院長は神に近づきすぎたのではないだろうか。やっていることは明らかに人間の領分を超えていると思う。実際の産婦人科医学がどの程度なのか知らないが、もしかしたら大部分は夢や想像の世界ではなく、この本に書かれているようなことが現実に実現しているのかもしれない。そう思うと恐ろしくもあり、ひとりひとりが考えておく課題のような気がする。

    1
    投稿日: 2009.08.14
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    もし、全て医療とは自然の摂理に反する行為だと割り切ってしまうのであれば、そこに限界など存在しないことになる。 しかし、仮に医療とは自然の摂理に反するものではないというのであれば、その根拠と限界を示さなければならない。それは非常に困難な作業だろう。ただ、その困難さを乗り越えないかぎり、最先端医学の暴走を止めることはできない。 「暴走」と決めつけること自体、ひとつのとらわれた思考ではある。ただ、暴走でないと言い切る勇気は自分にはない。 結論は見えない。考え続けることしか、今はできない。 現代の最先端医療を舞台にした『ペスト』といったところか。 最後のシーンは、作者のただものではない部分を思い知らされる。

    0
    投稿日: 2008.11.19
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    サンビーチ病院院長の岸川。不妊治療によって200人を超える自分の子供を 人工授精児として作り出し一方では胎児を利用しつくす。 中絶、不妊、移植、再生医療、における本質的問題を真正面から取り上げて科学の進歩と社会の変化についていけない政府の無策ぶりを鋭くつく。

    0
    投稿日: 2008.07.30
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    ミステリーではないですね。 これは、現代の生殖医療はこんなことまでできますよっていう小説です。 うーん、微妙。

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    投稿日: 2007.12.16
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    イロイロと考えながら。印象的だったのが、主人公の彼のスタンス。ただ優越感を感じていたいだけなのだろうかとか考えてみたり。しかしこういう病院が本当に存在すれば、救われる女性はとても多いだろうと思う。

    0
    投稿日: 2007.12.09
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    私の読書感想文を読んでくださる方がいらっしゃるとしたら、おそらく、こんな感想を抱くのではないでしょうか・・しかし、何でもあり、だなぁ・・・って。 結構、多岐に渡って、色んなジャンルに興味があります。 本屋さんでも題名や過去に読んだ作家さんモノ、ただなんとなく惹かれる系、など手に取る本は様々です。 なので、今回の本のような内容も、ある意味SFチックで興味がある分野とも言えます。 もっとも神へと近づいた医師。 患者に人気の天才産婦人科医・岸川は、その裏で異常な試みを進めていた。男性の妊娠実験、培養した胎児からの臓器移植…彼が目指すものは何なのか。医療の極限を描く問題作。 (Amazonのレビューより) この本は以前に読んだマリアプロジェクトと似た恐怖を感じさせます。 楡 周平 マリア・プロジェクト ともに生まれる前の胎児がキーワードとして出てきます。 なので、お身内に妊婦さんのいらっしゃる方、ご自身が妊婦さんの方は、もっとずっと後に読まれた方がいいでしょう。 世の中、需要があるから供給がある。 その需要にいくらでもお金を費やせる人がいるから、アンダーグラウンドな商売が成り立つ。 その陰で、無下に葬られる命があったりする。 人の価値は同じはずなのに、その価値にランクが出来る。 求めれば得られる人、求めたくても得られない人・・・ 以前に、ある作家さんの本を読んだ。 その作家さんの半ば自伝的な”愛”の物語が話題を呼び、映画化までされた。 私はその本を読んで、ああ、間違った・・と思いつつ読了した。 文中に、愛する人の病を助ける為に、ありとあらゆるコネを使った。そして遠くアメリカの医療を受けさせるに及ぶ、とあった。 最後、病の人は亡くなるのだけど、新しく宿った命に対して3人の名前をプレゼントする。この3人が自分の代わりに、守ってくれるだろう、と・・・ 世の中には”特権”と云う言葉がある。 地位のある人、お金のある人、知名度のある人などが持ちがちだ。 が、この特権は表沙汰にしてはいけない、と言うルールがあると思う。 何故なら、誰でも出来るもの、得られるものではないから・・ 特権を使って出来たことは、御簾の陰の出来事ではないだろうか・・・ ある時、新聞紙上で知名度の高いある人の、同じような思いを感じさせる”愛”の物語を読んだ。 病に臥せる妻を介護する闘病記だ。 彼も特権のある人だ。 彼だから得られた助力を紙上掲載されて、一般の同じ病を持つお身内がどのような気持ちで読むか、考えないのだろうか・・と思ってしまった。 得られた助力に対する彼の感謝や、それでいかに妻が心地良い環境を得られたかはわかった。 だけど、それは●●と言う本は▲▲書店に売っています、と言う情報とは違う。 読者に”あれがあれば、愛する人の命をたすけられるのに”と言う無念を残すだけなのではないだろうか・・と懸念してしまった。 一言、嫌なら読まなければいい、と云う問題なのだろうか・・・・ 私は作り物の小説が好きだ。

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    投稿日: 2006.06.28
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    2005/11/13 読了(小説) とびぬけた技術と知識を要する産婦人科医・岸川が人の生死にも関わる異常な医療行為を行っていく小説の下巻。 上巻からの勢いが続き、下巻の中盤まではぐいぐい引き込まれたけれど、後半にかかると若干読者を引き込む勢いがなくなった感はある。実話でなく小説なのであれば、もう少し最後をぴしっと決めるか、その後をもっとイメージさせるような終わり方をしてもらいたかったかなぁ。でも作者の他の本をもっと読んでみたいと思いました。

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    投稿日: 2005.11.14