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演歌の虫
演歌の虫
山口洋子/文藝春秋
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総合評価

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    男女間の駆け引きとしがらみを描いた短編4つ。思っていたのとは違い、なかなか重みのある作品群。 表題作は、仕事の腐れ縁というか同朋による、仕事の楽しさと苦しさを描く。演歌歌手のディレクター(プロデューサーか?)、作詞家、作曲家が業界の不満と3人でそれを打破する夢を語り、心を通わせるが、実は温度差が有ったことが、室さんが亡くなったときにわかってくる…。 あとの3作は、男女の関係が不倫やら二股で首が回らなくなっていく話。ショーモナイと言われればそうだけど、筆致の癖もあり、なかなか重くて読み応えがある。 全体に、最後の「演歌の虫」ではないが、演歌(艶歌)の歌詞を読むような、不思議なねっとり絡みつくような文章が印象的。普通の文が会話だったり、その中に「そうね。」なんて文章になっていない単語が入ってきたりして、他の作家ならイライラするようなポイントが、この人の場合はいい感じのリズムになっている。 初読だったのもあり、最近の作家かな?艶歌っていうのは、ハズシのネタかな?なんて錯覚して読み始めたものの、実際には昭和50年代だった。だったのだが、十分に今でも楽しめる話だ。 未来に置いても、古典として残っていく価値の有る作品ではないかと思う。 あとからわかったが、本人の体験(作詞家、銀座のママ、スポーツ記者)的なものが多く含まれている、私小説の部分が多いのだな。そう言われると重みのあるのも納得行く。

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    投稿日: 2018.03.15
  • この人にしか書けない、まさに会心の短編集

     短編集なのでありますが、下手な長編よりも、読みごたえもあり、また読後の満足感も半端ではありません。四つの短篇が掲載されていますが、いずれも、酸いも甘いもかみ分けた、それでいて業界にも詳しい作者ならではの視点が光ります。直木賞受賞作となった「演歌の虫」と「老梅」もすばらしいですが、「貢ぐ女」も「弥次郎兵衛」も、どうしようもない人間の性、あるいは業のようなものが描かれています。  それぞれモデルとなる人がいるのかな?と思わせつつも虚実混交でありまして、「愛するということは、自分と相手の人生をいとおしく感じ、大事と願うことです」などという、山田洋次監督のコトバが、さらりと引用されていたりします。  タイトルが「演歌の虫」とあるので、そのイメージから演歌のような世界観を想像されるかもしれませんが、プロデュースした音楽のジャンルが演歌というだけであって、その内容は、一つの仕事に打ち込んできた男の喜びと悲哀が綴られたものです。これは、懸命に働いている人すべてに、当てはまるものでしょう。  総じて言えることは、これは大人の小説と言うことです。私もこういう世界をしみじみ味わえるようになったと言うことは、それなりに歳をとったということかもしれません。

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    投稿日: 2016.07.23