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ニヒルな青年は、ひとつ大人になりました
**************************************************************************************************************** (あらすじ) ロシアのサンクトペテルブルグ住む貧乏青年ラスコーリニコフは、金貸しの老婆アリョーナの殺害を計画、実行する。法科大学の除籍にまで陥った金銭的困窮と精神の衰弱状態とが相まっての、言わばありきたりな動機と見える本犯行であったが、実はラスコーリニコフは“選ばれし者は殺人をも許される”という独自の理論を抱いており、自分にはその資格があるという固い信念をもっていた。 時同じくして、ラスコーリニコフの妹アヴドーチャが弁護士ルージンと婚約し、ペテルブルグに移り住むために母親のプリヘーリアと共に越してくるという旨の手紙が、ラスコーリニコフの元に届く。その手紙を受け取ったラスコーリニコフは、母と妹に施しされた振る舞いの様子から、ルージンという男が卑劣な人物である事を見抜く。 さらに、町を徘徊していたラスコーリニコフは、とある酒場で酔いどれの退職官史マルメラードフと出会う。マルメラードフは家族に病弱な妻カテリーナと、娼婦として家計を支える素直で実直な娘ソフィアと他3人の子供を抱えていた。 **************************************************************************************************************** 殺人犯となったラスコーリニコフと、彼を取り巻く人々に起こる13日間の出来事を描く。 主人公ラスコーリニコフの殺人犯としての犯罪心理、予審判事ポルフィーリとの心理戦、卑劣漢ルージンと婚約してしまった妹の問題、妹を追ってやって来た淫蕩な地主スヴィドリガイロフの不可解な行動、これら一つ一つのストーリーが丁寧に描かれ、また各々のストーリーが主にラスコーリニコフの心理状況という軸を通し、互いに関連もする、非常に内容の濃い作品でした。 物語が進むにつれて登場人物や問題が増えて行き、どんどんと大風呂敷を広げられていくような感覚がありましたが、見事に纏め上げられており、むしろ最終的にそれら全ての場面が必要最低限の事象として有効活用されている点には脱帽です。 総合小説として筆者自身の持論が織り込まれた、より難解な作品かとも思っていたのですが、その要素に関しては思っていた程でもなかったです。 文章構成として特徴的だったのは、各登場人物の台詞が非常に長く、まるで長台詞を演説のように喋る古典舞台の一幕を見ているようでした。部分的に飽きてしまいそうな一遍もありますが、一度物語が動き出すとその展開の意外性には目を見張るものがあり、表面的なエンターテイメント性にも欠けていません。 下巻は「マルメラードフの葬式」「ソフィアへの自白」「ポルフィーリの訪問」「スヴィドリガイロフの足取り」「ラスコーリニコフ最後の行動」「エピローグ:ソフィアへの愛の自覚と、未来への希望の芽生え」が主なプロットとなっています。各々のストーリーがクライマックスの様相を見せてきます。メインストリーでは、ラスコーリニコフが犯した罪に対する意識がどのように変わっていくのか、そして彼自身はどのような行動で終止符を打つのかに注目です。特に、心境の変化においては彼らしい結論を付けたと思いました。 エピローグでは、今まで全体を通してどことなく暗く寒い雰囲気を醸し出していた物語には似合わず、明るく暖かな終わり方となっていた事は予想外であり、また読んでいて救われた気分にもなりました。 ニヒルな青年は、ひとつ大人になりました。
0投稿日: 2013.10.30
