【感想】頭のいい人が問題解決をする前に考えていること

下村健寿 / アスコム
(2件のレビュー)

総合評価:

平均 3.0
0
0
1
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • Go Extreme

    Go Extreme

    頭のいい人が問題解決をする前に考えていること

    この「降ってきた! 」を得るために、偉人たちが「降りやすい状況」を意図的に作り出していたことが、近年の研究からわかってきています。

    人間の脳には、確率や統計だけでは捉えられない、私のような研究職にとっては馴染み深い「ひらめき」を筆頭に、偶発的に飛躍的な発展をする能力や応用力が備わっています。
    この" 人間ならではの能力" を引き出すためには、本やインターネットからの情報をただ頭に入れるだけでは引き出せません。

    序章 意識の高い人が陥りやすい時間術の罠

    「時間だけは神様が平等に与えてくださった。これをいかに有効に使うかはその人の才覚であつて、うまく利用した人がこの世の中の成功者なんだ」
    これはホンダ創業者の本田宗一郎の言葉です。

    時間を有効に使うということは、あくまでもあなたの「才覚」が前提なのです。では、才覚とはなんでしょう?それは、あなたの「脳のパフォーマンス」のことです。

    フラミンガム研究の結果は、ただでさえどんどん失われていく神経細胞が、50歳を過ぎるとまるで歯止めがきかなくなったように、急激に失われていくことを示しています。

    時間術を駆使して、無駄なく、効率的に時間を使ったとしても、それを使いこなす脳が十分なパフォーマンスを発揮できなければ、成果が得られないのは当然です。

    本田宗一郎の言葉のとおり、神様は我々に平等に時間を与えてはくれました。しかし、その与えられた時間とは、あなたが思っているより短いのです。

    すべての偉人たちが実践していた共通の「脳科学に基づくメソッド」に行きつくことができたのです。つまり、「脳の健康寿命を延伸する方法」といってもいいでしょう。

    1章 「問題解決力」についてはじめに知ってほしいふたつのこと

    人間の記憶とは、大ざっぱに記録されるようにできているのです。
    むしろ、正確すぎる記憶は邪魔なのです。
    情報はざっくり記憶することが大事であり、それをもとに考察することこそが、 脳に本来やってもらうべき働きなのです。


    シナプスを通じて神経細胞同士はお互いに連携し、細かく幾重にも複雑につながり合った回路をつくって霍気信号を伝え合うことで、脳は複雑な作業をこなしています。
    つまり、脳は巨大な電気回路なのです。

    脳が学習し、記憶する際のメカニズムについては、まだよくわからない部分も多く、いまなお世界中で熱心に研究が行われています。
    しかし、その基礎的な仕組みについてはわかっています。それは神経細胞同士のつながりと、 その強さにあります。
    つまり、すでに存在している神経細胞同士に「新しいつながり」をつくることで、新たな情報を記憶させているのです。

    シナプスを介した神経細胞同士のつながりがいくつもできて、やがて回路をつくります。
    この神経回路、あえて言い換えるなら「記憶回路」こそが、記憶の正体と考えられます。

    インプットされた情報は、脳のなかの「海馬」という埸所にまず保存されます。海馬は脳の奥深くに存在しています。つまり、それだけ重要な機能を担う部位といえます。
    この海馬に保存された情報は、情報として重要な部分が残るように適切な処理が行われたのち、一時的に保存されます。海馬に蓄えられる記憶は、あくまでも一時保存です。
    じつは、この状態のままだと、長くても1 カ月後には海馬から記憶が消去されてしまいます。
    つまり、何もしなければ、1 カ月後には思い出すことができなくなってしまうのです。

    この海馬に情報が一時的に蓄えられたあと、「重要な情報」と判断された場合には、その情報は海馬から取り出され、脳の表面にある側頭葉と呼ばれる部分などに、長期間、「記憶回路」として保存されます。

    なぜ記憶回路が脳のパフォーマンス向上に関係するのか。それは、この記憶回路が、問題の解決やアイデアを出すときにおいては、「知識のテンプレート」として応用が効くものになるからです。

    1力月後に「大切な情報」として残るように、海馬から側頭葉に記憶回路をつくらないと、「知識のテンプレー卜」も生まれません。つまり、海馬に一時保存された情報を、いかにして側頭葉に長期保存情報として移行できるか。これが、脳のパフォーマンスを上げるうえで重要なポイントになります。

    2章 脳の「やる気」を引き出す3ステップ

    仕事のパフォーマンスを上げようと考えたとき、時間の効率的な使い方、つまり時間術をマスターすることから考える人が多いと聞きます。
    しかし、あなたのパフォーマンスを上げるのは、あくまでも脳です。
    脳をベストの状態に整えておくことで、 あなたは最高のパフォーマンスを発揮できることになります。

    ステップ1「90分単位の睡眠」で思考をクリアにする

    数時間ないし数分単位の生体リズムのことを「ウルトラディアン・リズム」といいます。

    脳と全身のパフォ—マンスを上げるためには、90分単位での睡眠をとることをすすめます。まずは寝る時間をしっかりと決め、毎日、決めた時刻にベッドに入ることが大切です。
    どれだけの長さの睡眠をとるにしても、90分単位での睡眠を実践すれば、脳と体のパフォーマンスを向上させる土凝をつくれるのです。

    ステップ2 レジスタンス運動でBDNFを増やす

    脳のなかには、BDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれる物質があります。
    このBDNFは、脳のパフォーマンスを向上させるカギとなる物質です。BDNFは、記憶を司る海馬において、神経細胞の新生を促していると考えられています。

    この物質、BDNFを脳内に増やすもっとも効果的な方法が、じつは運動であることがわかりました。運動の内容としては、軽く息が切れる程度の速足のウォーキング、またはジョギンクがよいとされています。
    習慣的に行うことによって脳内のBDNFが増え、ハイパフォーマンスを発揮する脳 の土台をつくることが できます。

    ステップ3 「快感回路」を刺激する

    ドーパミンは、脳に対して「欲求が満たされた」という感覚、つまり快感を生じさせます。
    結局のところ、脳がハイパフォーマンスを発揮しているときというのは、この「快感回路」が活性化されているときになります。

    この「快感」を求めて、人は、一生懸命物事に取り組みます。そして、一生懸命に取り組んでいるとき、脳はハイパフォーマンスを発揮しています。

    努力とは、「いやなことを我慢してがんばる」ことです。いやなことをがんばって続けても、残念ながらドーパミンは出ません。
    脳のやる気を引き出すためには、目標とすることを「好き」になる、またはその目標を達成することで快感が得られる方法を見つける必要があります。

    気が進まない仕事をするとき、求められている成果の1.2倍の成果を生むことを目標にしましょう。これによって、いやな仕事に対してハードルの高い目標が設定されるため、仕事に対する感情面に意識が向かず、「目標を達成すること」に意識が向きます。

    仕事術と時間術を考えて、やりたくないことを効率的に進めるためには、ワンランク高い目標をあえて自分で設定して、 その目標を達成することで感じる充実感(快感)を報酬にして一気に進めると効果的です。

    改めてパフォーマンスを高めるための脳の準備を整理します。
    ①決められた時間に就寝し、睡眠時間は90分の倍数。
    ②運動を習慣的に行う。ジョギングのような持久運動または筋トレのようなレジスタンス運動を毎日行う。
    ③やりたくない仕事をするときには、 あえて高い目標を自分で定めて、 仕事そのものの負荷を高め、 達成感を演出する。

    3章 問題解決力を上げる「脳内ライブラリー」
    のつくり方

    2016年に米カリフォルニア大学の研究者たちが行った検証によると、世の中で提唱されている速読法は、ほぼすべての方法が理解力において効果は薄いとされました。
    なぜ効果が薄いとされたかというと、文章を目で捉えて早い速度でインプットできても、脳が処理する速度がインプットされた文字情報に追いつかないからです。
    つまり、脳の処理速度を超えてインプットの速度を上げても、「内容が理解できていない」ことになるのです。

    しかし、カリフォルニア大学の研究チームが、数ある速読法のなかで唯一有効な速読法と判定したのが、「スキミング」といわれる方法です。
    スキミングは、本のペ—ジのなかから「有効な情報が書かれている部分」を読者が見つけ出し、その部分をきちんと読むことによって木のなかの大事な情報のみを脳に入力する方法です。
    この速読法に適している本は、ビジネスカテゴリーなどの実用書です。

    研究によれば、スキミングを効果的に使っている人は、文章の最初の一段落をしっかりと読み、そのあとに続く段落の最初の数文を読みます。そこから得られる情報から、その後の文章が重要な情報を含むか否かを判断し、読み飛ばすかきちんと読むかを効果的に決めている、と説明しています

    速読を行う際には、順番どおりに読み進めるのではなく、導入一結論一解説の順番で読みます。
    この方法を使うと、最初に結論を知って「理解した」ことを前提に解説を読み進めていくことができるので、情報のインプットにおいて、最速かつ最適な読み方になります。

    ただスキミンクにも限界があります。
    ほかの読書法に比べれば膨大な量の情報が脳にいったんインプットされるものの、極めて速く本を読んでいるため、入力した膨大な情報を「使える情報」として統合できていません。

    スキミングでは、読んでいる際の「理解した」という感覚は强いのですが、読み終わったときにインプットされた情報が、個々の独立した情報として脳に残ってしまい、それらの情報がお互いに強くは結びついていないのです。

    個々の情報は、互いに強く結びつくことでこそ、初めて「使える悄報」となり
    ます。
    「使える情報」の蓄積こそが、 ハイパフォーマンス脳をつくり上.ける源です。

    読んでいる最中に気づいた注目すべき情報や覚えておきたい情報、読みながら思ったことを「ノ —卜に記録すること」です。スキミングでインプットした情報をノートに記録して、脳に対して「これは重要な情報である」と印象づけることが大切なのです。
    スキミングを補完する、 いうなれば「スキミングノ —卜」をとることで、脳に「使える情報」としてインプットされるのです。

    脳に「使える情報」としてインプットするためには、手書きで行う必要があります。
    人間の脳は、手で書くことによって情報をインプットできるように進化し、適応してきたと考えられます。この視点からも、手書きで入力された情報は、脳に定着しやすいことになります。

    スキミングノートをとるときに心がけてもらいたいのは、 文章ではなく「図でノートをとる」ことです。なぜそんなことをするかというと、そもそも人間の脳は「イメ—ジで物事を捉えるようにできている」からです。

    スキミングノートをつくるときにもうひとつ大事なのは、課題や分野ごとに別々のノートをつくるのではなく、1冊のノートにあらゆる分野の情報を「時系列で」記録することです。

    「情報は海馬に、時系列で一時保存される特性がある」ということです。したがって、スキミングで取得した情報を、「時系列」でノートに記せば、海馬の情報処理の仕方と同じ記録方法なので、インプットした情報が記憶に残りやすくなるわけです。

    このことは、あなたも体験的に知っています。
    ためしに昨日起きた出来事を思い出してみてください。朝から順々に思い出そうとするはずです。
    これは、海馬が昨日の出来事を時系列で記憶しているからです。

    情報番組は、情報を伝えることを目的に製作されています。したがって、みなさんが内容をきちんと理解している限り、早送りで視聴しても情報を認識することはできます。
    ただし、やはり倍速で見ると、脳の処理速度が追いつかずに印象に残りにくいので、スキミングノートを使って、もし視聴中に心にひっかかる内容や表現、思うことなどがあれば、動画を一時停止してノートに記載してください。

    現代を生き抜くために必要とされる「脳カ」は、解答など存在しない問題に、「自分だけの」解答を導かなければなりません。
    そのために必要なのは、あらゆる問題に応用可能な、高性能で質の高い脳内ライブラリ—の構築です。
    質の高い脳内ライブラリーに蓄積される質の高い情報とは、縦割り式ではなく、横断的に使える情報です。

    どうすれば質の高い情報を脳内ライブラリーに.インプットさせることができるのでしょうか。
    そのためには、学科ごとに縦割りとして勉強するのではなく、学科を超えて横断的に勉強し、 考える習慣をつける必要があります。

    人間は、自分の考え方に合致した情報を、好んで取り入れようとする傾向があります。
    しかしその場合、非常に偏った情報だけがインプットされることになり、脳内ライブラリーの多様性が失われ、柔軟な発想が生まれにくくなります。
    このような脳の状態に陥らないためには、情報をインプットするときに「フレー厶シフト」という方法を使うことがとても有効です。

    このときにフレームシフトを起こして、別の位置のフレームから見た情報の姿も脳にインプットすることで、より多角的視点に基づく質の高い情報となつて、 脳のパフォーマンスの向上に貢献します。
    情報に接したときは、視点のフレ—厶を移動させる「フレー厶シフト」を心がけることが、 質の高い情報をインプットするために重要です。

    4章 質の高い知識を絶対に忘れない記憶にするコツ

    ステップ1 情報を海馬から新皮質に移す

    寝始めて最初の数時間の睡眠の質を高めることが、情報を長期保存するためにはとても大切なのです。心がけるべきことは、
    ① いつも決まった時間に寝ることで、 脳のリズムと腫眠のリズムを同期させる。
    ②寝る前に携帯電話などを操作して光刺激を脳に入れない(光の刺激は、脳のなかで朝日の薊滋と間違えられて、 陲服のリズムを痛します) 。
    ③寝る前に、 食べたりお酒を飲んだりしない
    この3 点を守ることが大切になります。

    ステップ2 情報を寝かせる

    時間が経過すれば、脳内ライブラリー内に情報がきちんと刻み込まれ、安定した記憶回路ができあがります。
    そして、脳内ライブラリー内の記憶回路がしっかりとできあがると、海馬との紐づけは消えてしまいます。

    インプットした情報を脳内ライブラリーに新たに記憶回路化するために、あえて1カ月、寝かせることが重要になってきます。

    ステップ3 

    脳のパフォーマンスを上げる、質の高い長期記憶情報の記憶回路として脳内ライブラリーのなかに登録されるためには、さらに頑丈で固い結びつきの記憶回路にレベルアップする必要があります。

    どうすれば結びつきをもっと頑丈にできるのでしょうか?それは、同じ情報の刺激を繰り返し脳内ライブラリーにインプットしていくことです。
    一時保存された情報が消えかかったところで、もうひと刺激与えます。つまり、もう一度、海馬に向かって同じ情報をインプットし直します。

    1カ月後にこのノートを開きます。
    そこには、あなたが1力月前に読んだ本や情報番組、さらには映画の感想などが図や模式図で記されています。
    この図や模式図を見ながら、学習した内容を思い出してください。そして今度は、1 カ月前に書いたメモの内容を、何も知らない小学生に教えるつもりで、改めて右側のページに文章として記載していくのです。文章にするという行為は、「自分の言葉で1 力月前に学習した内容を改めて説明する」ことになります

    1カ月前に学習してノートにとったときには当たり前に思っていたことを、じつはよく理解していなかったことに気づくことがあります。
    つまり、理解したと思っていた事柄に穴があったことに気づけるのです。その場合には、改めて調べて、自分の知識の「穴」を埋めるようにしてください。

    5章 「メンタル・タイムトラベル」で問題を明確にする

    メンタル・タイムトラベルについて説明します。
    これは記憶研究の世界的権威である、トロント大学教授のエンデル・タルビングが提唱したものです。
    タルビングはまず、記憶には「意味記憶」と「エピソ—ド記憶」があるということに気づきました。意味記憶とは、いわゆる知識のことだと考えて問題ありません。本書でいうところの「脳内ライブラリ—にインプットされた情報」のことです。

    もう一方のエピソード記憶とは、脳に情報が入力されたときの時間や場所、そのときの感情などと一緒に保存されているタイプの記憶です。つまり、経験に基づく記憶といえばいいでしょうか。

    タルビングは、人がエピソード記憶を思い出しているとき、脳のなかでは、その経験を体験したときと同じように脳が活性化しており、それはまさに個のなかで起きている時間旅行だと考え、「メンタル・タイムトラベル」という概念を提唱しました。

    タルビングが指摘したとおり、過去のエピソ—ド記憶を思い出しているとき、 人の脳はそれを体験しているかのように活性化していることがわかりました。
    それだけでなく、非常に興味深いことに、心的時間旅行は、過去だけでなく未来にも行けることがわかったのです。
    メンタル・タイムトラベルを使いこなすと、脳のなかで過去と未来を行き来することができるということです。

    「有利な未来の選択」をもっと大きなスケールで実行し、人生の選択を有利にする方法として、才—クランド大学とソルボンヌ大学の脳科学者たちによって提唱されたのが、「メンタル・タイムトラベルプラットホームに基づく時間劇場」という方法です。
    複雑な名称なので、ここでは「時間劇場法」と呼ぶことにします。
    この方法は、現在の自分の置かれた状況の問題点を明確にして、最適な解決策を選択することを可能にする極めて有効な方法です。

    ステップ1 現在の状況をドラマ化しよう

    脳における過去へのタイムトラベルを問題解決に用いるには、「過去の経験」という情報を正確に分析することが大切です。そこで時間劇場法では、過去の経験をまず正確に再現することから始めます。
    この過去の経験を再現する場所を「プラットホー厶」といいます。このプラットホームに効率的に過去の状況を再現するために、「経験情報を劇のようにして再現する」という方法をとります。
    つまり、あなたが舞台監督となって、自らの経験を舞台劇としてドラマ化するわけです。このドラマが展開されるプラットホームが「時間劇場」です。

    ステップ2 理想形の物語を構築する

    このプロセスにおいて、現実と異なる過去であっても、脳のなかでは本当の記憶を思い出しているときと同じ部位が活動していることが確認されています。
    つまり、書き換えられた理想の過去を、脳は体験していることになります。

    ステップ3 問題点を浮き彫りにする

    脳は、人生の岐路に立ったときに自動的に過去と同じ部位が活性化して、同じ「間違った選択肢」を選んでしまうことになるのです。
    しかし、このチャートをつくることで、あなたが行動するうえでの思考とターンの短所を浮き彫りにすることができます。

    6章 質の高い解決策を引き出す方法

    カナダのブリティッシュ・コロンビア大学心理学研究室のガボラらは、問題解決などに重要な思考や創造性を生み出す方法は2種類、「分析的思考法」と「連想的思考法」があると説明しています。

    脳のパフォーマンスを上げて情報を最適なかたちでアウトプットするということは、脳のなかに保存されている記憶回路を使いこなすことです。
    つまり、いかにこの神経回路のつながり方、パタ—ンを使いこなすかです。

    良質な問題解決策をアウトプットさせるために重
    要なのは、脳内ライブラリーに蓄積された情報のパターンの多さです。つまり、脳内ライブラリI に蓄積された記憶回路の種類が多彩なほど、 さまざまな問題に対応できるわけです。

    このとき大切なのは、いま抱えている問題にパターンを見出すことです。直面している問題のパターンが見出せないと、脳内ライブラリーのなかにある類似のパターンを見出すことができません。
    直面した問題に対してそこにパターンを見出す能力には個人差があるといわれ、直感的に問題のパターンを見出せる人は、「問題解決能力が高い」と一般的にいわれる傾向があります。

    「分析的思考法」すなわち「アレンジ・アクション」は直感に頼ることなく、意図的に問題のパターンを見出して、脳内ライブラリーのなかに蓄積されているパターンと比較し、ステップを踏んで答えを導き出す方法です。

    あのスティーブ・ジョブズは、ピカソの言葉を引用して「優れた芸術家は真似る。偉大な芸術家は盗む」という言葉を遺しています。
    ジョブズは文字どおり「盗む」と言っているのではなく、すでに存在するもののなかから価値を見出してビジネスに活用するということを意図しています。つまり、すでに存在した過去の解決策を応用するということです。

    日本を代表する映画監督の黒澤明の作品は、この手法を使って数々の傑作を生み出しています。
    黒澤監督の代表的作品である「蜘蛛巣城」「乱」は、シェイクスピアの戯曲に日本独特の能の美学を取り入れて構成したものです。
    「蜘蛛巣城」や「乱」は、原作がシェイクスピアの『マクベス』と『リア王』であることは一目瞭然ですが、黒澤監督の現代劇の代表作である「生きる」も、物語構成のパタ— ンを分析すると、じつはゲーテの『ファウスト』をアレンジ・アクションで組み直したことがわかります

    アレンジ・アクションは、ビジネスの現場でも、クリエイターが作品を創造する場合でも極めて有効な方法です。きちんとした手順を踏めば、誰でも使いこなすことができます。
    ここで改めてその手順を整理しておきましょう。
    ①睡眠や運動を通じて、脳の状態を整える。
    ②速読法や動画の早送りを駆使して、インプットする情報を増やす。
    ③ノ —卜術を使い、 長期記憶として脳内ライブラリ—に確実に情報を保存する。
    ④メンタル・タイムトラベルを駆使して問題点を見極める。
    ⑤アレンジ・アクションを駆使して問題を解決する。
    以上の手法を駆使すれば、脳のパフォ— マンスを上げて、効率的かつ効果的に問題を解決することが可能になります。

    7章 誰も思いつかなかった解決策を引き出す方法

    ダリといえば、シュルレアリスムを代表する画家で、その絵画は独特性においても突出しています。
    この、誰も真似することのできない絵画のイメージを、ダリがどのようにして得ていたのかというと、これまた、「うたた寝をするときに手に鍵を握っていた」というのです。
    発明家と画家という異なる分野の偉人が同様の方法をとっていたということは、この方法が、分野を超えて「ひらめき」を得るのに有効であることを示しています。

    脳の活性化には、「大規模ネットワーク」と呼ばれる、脳の異なる部位がつながるパターンがあります。
    これは、神経回路をさらに大きくしたイメージです。
    神経回路とは神経細胞と神経細胞のつながりのことですから、ミクロ単位のつながりです。

    これに対して大規模ネットワークは、脳のなかの大きな部分(領域)同士のつながりになります。
    神経回路そのものは、物事を記憶しています。
    しかし、この神経回路がいくつも重なって領域ができて、これがつながることでマクロな回路(ネットワーク)ができあがり、記憶パタ— ンを超えた「ひらめき」や「発想」、「創造性」を生み出します。

    睡眠に入ると、まず浅い睡眠であるレム睡眠が出現します。このレム睡眠のあとに、ごく短時間出現するのが「ステージ1」と呼ばれる睡眠状態です。このごく短いステージ1のときに、3 つの大規模ネツトワークが協同的に活性化し、ひらめきを創出することに貢献していると考えられています
    つまり、エジソンやダリのとった方法は、この「ステージ1 の状態で脳を覚醒させる方法」だったといえるわけです。偉人たちは、現代の脳科学でも通用する方法でひらめきを誘発して、とても効果的なアウトプットを行っていたのです。

    「ひらめき」は、 寝ている時間に夢というかたちで訪れることが多いのです。
    同様にして、「起きてすぐ」の時間帯も、「ひらめき」のうえで重要です。
    あのビートルズのポール・マッカートニーは、「イエスタディ」のメロディを、彼女の家で朝起きたときに思いついたと語っています。つまり、睡眠は「ひらめき」を誘発するカギといえます。

    問題に直面したときや解決策を考え続けているときには、「ひらめき」は訪れにくいことがわかっています。
    しかし、考え続けたあと、気分転換となるコネクト・アクションをしたときに「ひらめき」が生まれやすくなることも確認されています。
    直面した問題のことを考え続けていて、すっと別のことをしたとたん、ドミノ倒しのようにパ— ツと答えが現れるわけです。
    先人たちの経験を見てみると、どうやら散歩や歩き回るといったコネクト・アクションが有効なようです。

    ウォーキングがアウトプットの質を上げるために有効なコネクト・アクションであることがわかります。そして、歴史に名を残した天才たちは、この効能を本能的に知っていて利用していたことになります。
    また、ウォーキングなどの運動は、脳内BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質を増やすことが確認されています。BDNFが増加すると、認知機能が改善することも確認されています。
    つまり、加齢に伴う脳機能の低下を改善する効果が期待できることになります。

    本章では、最高の脳パフォーマンスにあたる「ひらめき」を導くコネクト・アクションを紹介しました。しかし、この方法は、前提として脳内ライブラリ—が充実していることが重要となります。
    脳内ライブラリーのなかにたくさんの情報神経回路パタ— ンがあって、初めて大規模ネットワークのつながりが最高のパフォーマンスとアウトプットを促してくれることになります。
    まとめると、
    ①普段からインプットを心がけ、脳の情報ライブラリ—を充実させる。
    ②エジソンやダリの方法を使って、うたた寝の寝入った瞬間を逃さない。
    ③ベッドのすぐそばにノ—卜を置いて、 夢が与えるひらめきを逃さない。
    ④毎日、ウォ—キング程度の運動を心がける。
    この4 つを意識した生活をすることで、「ひらめき」という最大級のアウトプットが可能になるのです。

    近年、不可逆的に進行したと思われていた認知症患者において、パラドキシカル・ルシディティと呼ばれる現象が報告されています。
    これは、進行した認知症を患って、もう回復の見込みがないと思われていた患者が、死の直前に突然認知機能を回復し、認知症を患っていなかつたかのように普通にふるまい始める現象のことです

    まだ不明なことが多いのですが、現時点で明確にいえることは、脳には無限の力があるということです。そして、その脳は、あなたの頭のなかにも存在しています。
    続きを読む

    投稿日:2023.09.25

  • かるちゃん

    かるちゃん

    このレビューはネタバレを含みます

    タイトルは「頭のいい人が〜考えていること」です。しかし本書の主軸は、考えるためのhow toでした。

    その中でも、科学的知見から睡眠のメカニズムや問題解決手法、テクニックなどを記載されておりましたので、高い信憑性を感じます。

    私が最も記憶に残ったのは、多角的に情報をインプットすることで問題解決に複数のアプローチが可能になることでした。

    一方で著者が現役医師であるため、脳の機能や解剖学的科学的に脳の仕組みに触れている部分が多いです。医療業界にいるため理解できましたが、脳の解剖学を知らない方には「??」と感じる部分が多いように感じました。
    そしてその解剖学、生理学に基づいて記載されているので、本書のタイトルからズレを感じたと推察します。

    読み返しはないかな、、と感じた本でした。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.08.23

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。