【感想】ビジネスケアラー 働きながら親の介護をする人たち

酒井穣 / ディスカヴァー・トゥエンティワン
(2件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • じゅんぺい (司法書士・中小企業診断士)

    じゅんぺい (司法書士・中小企業診断士)

    **勉強になった箇所**

    1. 日本においては2025年が介護問題の爆発の年となります。2025年問題、大介護時代の到来です。
    2. ビジネスケアラーとは、働きながら介護をする人、仕事と介護を両立している人という意味です。
    3. 東京商工リサーチが民間企業7391社に対して実施した調査では、これから介護離職が増えると回答した企業は5272社、71.3%にもなりました。企業はそれだけ危機感を持っており、介護離職を防止するための施策を考えて実装し始めています。
    4. 介護と育児は似ているようで全く違います。介護の方は先が見えません。職場でも相談ができません。
    5. 本書は、将来ビジネスケアラーとなる予備軍の方が仕事と介護をうまく両立させ、パフォーマンス低下及び介護離職のリスクを下げるためのノウハウ指針を提示することを目的として執筆されています。
    6. 例えば介護のために仕事を辞めてしまった場合、再就職までにかかる期間はどのくらいだと思いますか?この期間として統計的に最多となっているのは1年以上です。男性の38.5%、女性の52.2%。
    7. 2018年6月2日に放送されたNHKスペシャル「ミッシングワーカー、働くことを諦めた」では、介護離職などを理由として労働市場への再起ができなくなった人、「ミッシングワーカー」が当時の時点で100万人以上いるという衝撃の事実が明らかにされています。介護離職だけが理由ではない点には注意も必要です。
    8. リンゲルマン効果とは、特定の目標を共有する集団のサイズが大きくなるにつれて、集団の構成員1人当たりの能力発揮が劇的に低下するということです。介護の現場においてもこのリンゲルマン効果を観察することが可能です。介護は多くの人が本音では関わりたくないと考えているため、介護の現場におけるリンゲルマン効果は当たり前に見られる現象です。兄弟姉妹や親族の多い家族において、誰が親の介護をするのかという話はトラブルになりやすいテーマです。このテーマではだいたいにおいて特定の1人が主たる介護者として多くの介護負担を引き受けてしまいます。他の兄弟姉妹や親族は自分も介護に貢献すると口は主張したとしてもそこにリンゲルマン効果が起こりやすいことは明らかです。
    9. しかし、特に介護が必要になった親を自宅に迎え入れて同居した場合、介護離婚のリスクはかなり高くなります。特に同居している健康な家族がいる場合、生活援助サービス(掃除、洗濯、買い物、調理、病院への付き添いなど)が介護保険では原則として使えなくなることに注意しなければなりません。
    10. どうしても一人で同居しての介護をしなければならない場合は、息抜き(レスパイト)を心がける必要があります。上手にストレスを逃がすことができないとかなり危険だからです。ケアマネージャーにレスパイトとなる介護サービスを紹介してもらえば、アレンジしてもらえます。レスパイトは介護に苦しむ人のために、要介護者を一時的に預かってくれる介護サービスの総称です。
    11. すぐにわかると思いますが、仕事と介護を両立できているビジネスケアラーは、身体介護や家事を自分でやっていません。実際に訪問サービスとしての入浴解除は(必要な介護の度合いにもよりますが)男性も入れて3人係だったりします。しかもその3人はしっかりとトレーニングを受けたプロです。
    12. 例えば、介護における寝具(布団、毛布、枕、マットレス)のクリーニングは、多くの自治体が無料から1000円程度の低価格で提供しているサービスです。また入院時には、パジャマや歯ブラシ、下着といった入院に必要となるものには入院する人の名前をペンで書いて病院に持っていく必要があります。遠方の病院だったりするとこれは大変な負担です。ですから、最近はこうした入院に必要になるものの手配を代行してもらえるサービスが広がってきています(1日あたり700から1000円程度で利用できます)。
    13. もう一つは、介護サービスに詳しい人(介護のプロ)に助けてもらうことです。そうした人に介護離職を避けるためにはどのような介護サービスを利用すれば良いのかを相談すれば、かなりの確率で介護離職を避けることに成功できます。具体的には、優秀なケアマネージャーや地域包括支援センターに相談することが必須となります。介護がいかに大変なものであるか、それについては多くの人が直感でも理解していることでしょう。しかし、客観的に見た要介護者の状態が似たようなものであっても、あなた主観的な負担感はあなたの知識の量、武器によって大きく異なるのです。
    14. 仕事と介護の両立についてどういう条件があれば従業員が両立しやすいと感じるかを調査(サンプル数594人)した論文があります。この調査では仕事と介護を両立させるために職場に求められるのは3つの要素であることがわかりました。1つ目の要素は意思決定権が分散されている職場であることです。2つ目の要素は自分の仕事をほとんど自分1人で関わることができて、同僚の仕事とは独立しているような職場です。3つ目の要素は目標を与えられていたとしても、それを達成するための中身については自由にして良いような職場であることです。
    15. さらに決定的なデータがあります。平日平均2時間以上、休日平均5時間以上を介護のために使ってしまう人は介護離職をするというものです。これは介護離職のボーダーラインであり、本人はもちろん、費用もまたしっかりと認識する必要があります。
    16. 最終章となる第3章では、介護そのものからは逃れられないことを覚悟しつつ、それと肯定的に向き合うための指針について考えていきたいと思います。
    17. 介護は自立支援である。しかし、自立とは依存先を増やしていくことであると理解すれば、この介護とは自立支援であるという定義もずっと頭に入ってくるはずです。省略。還元すれば、それは大人として自立してきた親をあなたの子供にしてしまうということです。こうして親子関係が逆転した先にあるのは広い意味での虐待です。これが親の幸福追求の邪魔になります。省略。繰り返しになりますが、自立の定義を間違えたまま介護に関わると必ず大きな不幸を生み出してしまいます。
    18. 私はこのAさんの実話に触れて、介護とは相手が生きていて良かったと感じられる瞬間の想像だと考えるようになりました。それに成功した時、介護をする側もまたとても幸せな気持ちになれることにも気づきました。
    19. 75歳以上の後期高齢者になると、急に介護を必要とする人が増えます。
    20. 優れた介護を実施するには、親の人生についてこの細かさ、解像度での情報が必要になります。可能であれば認知症になる前に、そうしたことを親から直接聞けていると理想的です。
    21. 残存能力活用の原則は、できないことをケアするのではなく、まだできることを認め評価するという考え方です。デンマークでは手を差し伸べるのではなく、背中に手を回すことが大切とされています。
    22. 現実的には介護が始まれば、介護職への道は一旦忘れ、仕事と介護が両立できる環境の整備に集中することも検討して見る必要があります。とにかく仕事だけは、何としても続けないと介護も続けられなくなります。オーディオ落とした退職は良い結果にはなりません。ビジネスケアラーの道を選ぶべきです。であれば介護の必要があるのなら、管理職としてのキャリアではなくむしろスペシャリストとしてのキャリアを考えていく必要もあるでしょう。
    23. 親の介護は、そんなまったりとした充実した日常をある日突然破壊してしまいます。漫然といつかは介護することになるのかな、などと納期に考えてきたことが一気にシビアな現実となります。

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    投稿日:2024.04.26

  • japapizza

    japapizza

    第1章 ビジネスケアラーの新・常識
    常識1:介護で仕事を辞めたら、再就職できず、再就職できても年収は男性4割、女性5割減少
    常識2:介護の負担額は平均月7万~8万円、想定している介護期間は平均14年
    常識3:介護を理由に仕事を辞めたとしても、介護の負担は逆に増える
    常識4:「介護離職は親孝行」ではない、「ビジネスケアラーは親不孝」でもない
    常識5:離職前に「誰にも相談しなかった」が約半数、離職する人は介護に関する知識不足
    常識6:仕事がうまくいっていないときに「親の介護」を言い訳に離職するのは危険
    常識7:親と同居で「離婚」「認知症」のリスク増。同居すると受けられない介護サービスも
    常識8:介護で虐待しやすいのは息子か夫で、同居するなど常時接触のパターンが多い
    常識9:身体介護をしなければ仕事と両立できる可能性が高まる
    常識10:介護は1人で抱え込まず、チームでやるのが原則

     ある介護の研究を行う研究者によれば「介護とは、家族と介護サービスのプロによるチーム戦」とのことです。ビジネスケアラーとして仕事と介護の両立に成功している15名のケースの追跡からわかったのは、優れたマネジャーは、仕事で培ったその能力を用いて、上手に介護の負担を分散していたというのです。
     実際にこの研究者が観察したのは、次のようなことでした。
    (1)介護者は、家族と介護サービスで構成されたチームのマネジャーであるという意識を持つこと。現実に、日々のビジネスにおいて、マネジメント経験がある人のほうが「仕事と介護の両立」に成功している。逆に言えば、介護経験は、マネジメントのトレーニングにもなる。
    (2)介護とはマネジメントであると理解し、介護に関わる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を把握し、それぞれの資源を成長させること。「ヒト」であれば、介護を支えるための新たな人脈を築き、それを効率的に維持・活用すること。「モノ」であれば、介護負担を軽減させる商品・サービスなどを活用すること。「カネ」であれば、様々な介護の制度を理解して無駄な出費をおさえ、必要なサービスをよりうまく使うこと。そして「情報」は、介護全体を俯瞰して考えられるような良質なものにアクセスし、学ぶこと。
    (3)企業のサポートが必要。企業が、働く介護者のニーズを把握すること。介護に関して相談できる職場の雰囲気を醸成していくこと。ただし、ビジネスパーソンにとって、自分が介護役割を担っている現実はカミングアウトしにくいことを理解する必要がある。デリケートな課題であり、ここに対応するには、介護の専門家としての旧来の介護相談窓口では不十分。仕事と介護の両立を支援できる、外部の両立支援アドバイザーなどが必要。


    第2章 仕事と介護はこう両立させる
    方法1:介護職(介護のプロ)に人脈を作る
    方法2:家族会に参加する
    方法3:職場の支援制度と仕事環境の改善に参加する

    第3章 介護と肯定的に向き合う
    指針1:介護とは何かを問い続ける
     まず、自立とは、誰にも頼ることなく生きられる状態のことではありません。これが人間を不幸にする決定的な誤解です。
     東京大学准教授の熊谷晋一郎氏(小児科医)は、ご自身の障害とともに生きる人生を通して、真の自立とは、その人が依存する先が複数に分散されており、ただ一つの依存先に隷属(奴隷化)している状態から自由であることだと述べています。

     しかし介護には、周辺症状をコントロールするという大事な命題が残されています。高齢者にもなると、何らかの病を抱えることも多くなってきます。そうした場面では、中核症状に向かう医療よりもむしろ、周辺症状を扱う介護こそが重要になってくるのです。

    指針2:親と自分についての理解を深める
    ▪️BPSD(Behavioral and Psychorogical Symptoms of Dementia)認知症が原因である行動上の障害
    ①易刺激性:ちょっとしたこと(刺激)で、不機嫌になる
    ②精神障害の症状の要素が加わる
    ③不安、同じ質問の繰り返し、うつ病など感情障害が関わる
    ④感情がなくなる、食行動異常など、アパシーと呼ばれる症状

    指針3:人生に選択肢がある状態を維持する
     身寄りのない高齢者であっても、介護を受けながら、自分らしく暮らしている人も少なからずいる
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    投稿日:2024.03.16

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