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アルフィアン・サアット, 藤井光 / ボイジャー (9件のレビュー)
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natsu
改めて、本って異文化に触れる入り口だとおもった。短編集だから、さらっと複数人のマレー人の生活を見てるような、一口にマレー人と言っても一括りにはできないような、一人一人の生活があるんだなと感じた。
投稿日:2024.06.23
あおつき
シンガポールってどんな国だろうという興味から読んでみました。 マレーの人々の宗教や習慣は私にとっては異文化で、最初は雲を掴むような感覚でしたが、読みすすめるうちに馴染んできます。 文化の違いはあって…も、生活の中で感じることはそう変わらない。 明るい未来が見えなくても、希望を持ちたいともがく人々の日常。 複雑だけど、難解ではない、まさに素描でした。 本棚に残しておきたい本。とても軽くて質感の良い紙が好き。続きを読む
投稿日:2024.05.03
淳水堂
作者はマレー系シンガポール人の詩人・劇作家・作家。 シンガポールは多民族国家で、3/4を中華系が占め、次にマレー系、インド系と続く。 公用語も英語、マレー語、中国語、タミル語と4つあるし、宗教は約半数…が仏教、続いてイスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教などで構成されている。 本書では短いものは1ページ弱、長くても10ページ程度の短編で、中華系が経済、学歴、風習でも主流を占めるシンガポールでのマレー系民族のアイデンティティなどを「素描」する。 ●中華系とマレー系の複雑な気持ちや関係 自分より成績が良かった中華系学友が働いて、自分は大学に行く。母は嬉しそうだけど、民族が入れ替わったって言いたいの?『浅いフォーカス』 中華系のボーイフレンドのジャスパーを庇って麻薬取締で逮捕されて刑務所に入っていたスハイリ。ジャスパーからはそれっきり返事もない。ここで読者に「実はジャスパーはスハイリ逮捕を機会に国を出て真面目に大企業で働くことになった」ことが明かされる。ジャスパーはたまにはスハイリのことを思い出して「神は天使を遣わして人生を然るべきに導いている」と言う『犠牲』 中華系ボスの運転手をしている父親がプライドから隠していたこと。息子のアミンはそんな父が守り続ける尊厳に自分も近づかなければな、と思う『朝の迎え』 中華系夫婦が、マレー系住み込み家政婦にムスリムには不浄とされる犬の世話をさせていることを聞き反発を覚えたマレー系女性が、その中華系夫婦の事情を知る『吠え声』 すっかり中華系の国になってしまったシンガポールでの就職は「標準中国語を話せること」。ムスリムを表す衣装で面接に行こうとする娘をついつい止めてしまう母親と、それでも自分を貫く娘の『引き出し』。これは爽快感があった。 ●シンガポールのマレー系の風習や生活を感じさせられる 政府に村(カンポン)から強制退去させられ、でも街でも住む家がない人たちのことが感じられる情景『泊まり』。 乳癌がわかった女性が、マレー人の怪談を思う『ハントゥ・テテクのお話』。 刑務所で死刑執行係の『送り出し』。 シンガポールは、イギリスの植民地であり、日本の占領地にもなった。そんな遍歴から教育や経済も大きく変わったことがみえる『同窓会』。 ●宗教のこと 結婚してムスリムになった華人のジェイソンは、その数カ月後上司から配属替えを言われる『改宗』。結婚式ではムスリムの風習に従うというジェイソンに対して、華人の彼がマレーの伝統衣装来たら目立ってしまうし…、とちょっと悩みがちな新婦ハワの心情も複雑。 2001年から2002年にかけて、シンガポール国内でテロを企てたとしてイスラム組織メンバーが拘束された。そんな夫をいつまで待てばよいのかという妻と、収容所担当官のやり取り『証拠』。 ●アイデンティティ、寄る辺なさ 交番に入ってくるが何も言わず立ち去る女『パシ・パンジャン 午後三時』 人種や宗教を「原因」にしないで、「自分らしくいれば良い」と気がつく『外国語』 マレー系だがマレー語の発音に自信がないことへのコンプレックス『床屋』 アメリカでなんと自己紹介すればよいか。シンガポールは中国の一地方ではなく、マレー人はマレーシアからの移民ではなく、ムスリムといっても中東のものとは違います。『お客』 表彰の場で大統領と握手できずに逃げた女子学生。だってマレー人ムスリムのしきたりでは異性と肌を触れてはいけないじゃない。それなのにみんなは「民族に恥をかかせた」なんていう。大統領に私達の風習を教えなければいけないって思ったけれど、そのことも止められて、『ふれあわない手』。 マレー人で医者になったラズミは、マレー人の若い未婚の妊婦に感じた苛立ち『冷ややかな慰め』続きを読む
投稿日:2023.10.24
680104
少し面白いものもあればそうでもないものもあり、でもそれも含めての味わい、みたいな、、 まさにスケッチという感じの短編集
投稿日:2023.02.21
文学ラジオ空飛び猫たち
文学ラジオ空飛び猫たち第83回紹介本 https://spotifyanchor-web.app.link/e/LTalERIXhwb 個人的にはとても信頼している翻訳家の藤井光さん訳だったので、外れ…はないだろうと思っていたが、めっちゃあたりの作品だった。こんな短い作品のなかで、読み手に確実に爪痕を残せる作家はすごいと思った。たくさんあるので全部が全部、同じ強度で覚えているわけではないが、ペラペラ捲ると、「こんな話あったな」と思って、にやっとする話や、再びはっとさせらるような話がある。続きを読む
投稿日:2023.01.03
たなか・ま
いわゆる「南洋物」が好きで、よく読む。なぜなのかはよく分からない。 この小説集は、シンガポールで活動するマレー系作家による短編集。 シンガポールは、一度だけ、トランジットで数時間立ち寄ったことがあ…る。巨大なホテルが立つ交差点に呆然と立ったことしか記憶にない。 短編というかショートショートに、中国文化に侵食されるマレー人、マレー文化の葛藤や戸惑いが主に描かれている。 『村のラジオ』という鳩にまつわる話、『日没後の礼拝のあとと』は公園の猫との触れ合いとかつて飼っていた猫の思い出。『吠え声』は隣家のムスリムのお手伝いさんの話で彼女は素手で犬の世話をしており、ムスリムの戒律に反する。好きだなと思った短編には全部、動物が出てくることに付箋のついたページをチェックして初めて気がついた。 #読書記録 続きを読む
投稿日:2022.02.12
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