【感想】保身 積水ハウス、クーデターの深層

藤岡雅 / 角川書店単行本
(13件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • keikouto

    keikouto

    地面師事件に端を発した積水ハウスの内部紛争の顛末を記した一冊。クーデターを起こした側が取材を基本的に受け付けていないので、見方が偏っている可能性もあるが、とても迫真に迫る出来栄えであった。ここまで書かれても反論等をしなかったり取材に応じないということは、書いてあることが相当に事実に近いということになるのか。そうであれば社員は本当にかわいそうだと思うし、これでは誇りをもって働くことなどはできないのではないかと思うけど、大きな会社だから、どこか遠いところで起こった出来事という感覚なのかな。
    前半は事件や会社内部の動きがリアルで面白く、後半はコーポレートガバナンスのくだりがとても印象的だった。これまでコーポレートガバナンスというのは、この本の登場人物も言っている通り、インナーコントロールと勘違いしていたかもしれず、本当の意味に近いところが本書で理解できたように思う。個人的にはコーポレートガバナンスをもっと深ぼって学んでいきたいと思った。
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    投稿日:2023.12.06

  • haruyato

    haruyato

    五反田にある謎の廃墟「海喜館」をめぐる積水ハウスの詐欺事件とそれから起こるクーデター。
    調べれば調べるほど「なぜ騙されたか?」と疑問に思うほどのずさんな地面師の手口と、社長案件だからと無理筋決裁に進めて行く当時の積水ハウス経営陣。
    社長を譴責→追放しようとした会長を逆に解任してしまい、自らの失策の責任を取らないままに被害者として事件を隠蔽する経営陣を追及する各種取材。
    オリンパスと何も変わらない日本の大企業の暗部を改めて白日の下に晒した一冊。
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    投稿日:2023.02.16

  • しゃおいえ

    しゃおいえ

    クーデターとは、革新派が保守派を倒す構造なのかと思っていたが、こんなパターンもあるのか。

    欧米式株主至上主義には全く賛同できないが、日本式経営家族主義も闇は深い…。

    経営の新しいカタチを生み出せないものだろうか。
    組織の統治は構成員の納得感と信頼感に支えられている、か…。
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    投稿日:2022.06.02

  • キュリレンコ

    キュリレンコ

    積水ハウスが55億円の詐欺被害にあった地面師事件に絡み、社長の責任を追求しようとした会長が逆に辞任に追い込まれたクーデターから3年近く経ち、事件の裁判や株主提案を経た2021年5月に刊行された本。

    「事実は小説より奇なり」と言うけど地面師事件そのものは面白いけど小説どころか「絶対やっちゃアカン取引」啓発ビデオくらいにしかならなそうなお粗末なもの。対して、失脚させられた会長はじめ老兵たちが真のガバナンスを求め米国関係者を巻き込み捨て身の株主提案を行うまでの流れは胸が熱くなる。

    クーデターにまつわる実際のところは一方からではわからない。が、裁判時の提出資料などをもとに書かれていて信憑性はある程度担保されているし、何より後半での真のコーポレート・ガバナンスとは何か、そして日本でそれを実現しようとするのがいかに難しいかについてが面白くて魅力のある良書でした。
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    投稿日:2022.04.15

  • touxia

    touxia

    『保身 積水ハウス、クーデターの深層』 藤岡雅 (著)
    2017年6月1日に積水ハウスは地面師に騙され、取引総額70億円、55億5900万円を支払った。
    事件の舞台は、東京都品川区の山手線五反田駅から徒歩3分の立地にある旅館「海喜館」の旅館敷地600坪。そんなことがあるのだと思った。森功の『地面師』を読んで、地面師の手口は実に巧妙で用意周到なのだ。地面師チームは、役割分担がきちんとされる。一番肝要なことは、地主になりすます人をどうリクルートするかにある。地主への徹底したリサーチとそれに基づいた偽地主の作り方と証明書の偽造。まさに、職人技が発揮される。
    本書は、積水ハウスの会長が辞任したということから、それは解任であり、なぜ解任されるクーデターが起こったのか?を執拗に追求していく。
    2018年1月24日の取締役会では、和田が「詐欺事件について責任を明確化する」として、地面師に積極的に関わった阿部の社長解任動議を出したものの否決される。その後、阿部が「新しいガバナンス体制を構築する」として、和田を解任する動議を出したところ、和田が解任させられた。和田は阿部の責任を追及したはずが、返り討ちにあった内紛劇があった。まるで、映画のようなことが日本で起こっている。土地購入の承認を得るための稟議書承認の際、4名の回議者が飛び越され、予め現地視察をしていた社長が先に承認した。回議者全員が押印したのは手付金支払後だった。
    やはり、社長の判断がこの事件を引き起こした。社長はそのことを隠蔽しようとする。騙された上に、隠蔽するから、事件はややこしくなる。「日本人はウソを言うと怒りますけど、隠すことには抵抗がない」と指摘する。
    経営トップの不正を監視して、制御する機能は日本にはないと言う。
    著者は、法務局が本人確認せず、司法書士などの書類が揃って居れば認めるという登記の問題を指摘する。また、そのお金は振り込みでなく、小切手だった。それを扱った銀行が三菱UFJ銀行。支払われた会社は、ペーパーカンパニーだった。銀行には責任がないと言えるか?
    本来なら騙されるはずのない事件。日本の土地登記のシステムとそれに関わる銀行の安易さ、会社のトップの判断ミスを指摘できない仕組みなど、地面師が暗躍できる空間があることを、見事に浮き彫りにした作品だった。
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    投稿日:2022.04.05

  • シウ

    シウ

    「女帝小池百合子」を読んだ時も思ったが、こんな丹念な取材をして本にしてくれる人が居る、ということが少しホッとする。そして資本主義社会は限界に近いのだろうなあ、とも思った。

    投稿日:2021.12.31

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