【感想】バブルの経済理論 低金利、長期停滞、金融劣化

櫻川昌哉 / 日本経済新聞出版
(4件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • まりも

    まりも

    主流派経済学が無視あるいは一過性のものとしてきたバブル。しかし、利子率<成長率となる主流派が想定しない「低金利の経済学」によってバブルが合理的・効率的であっても発生し、持続する。低金利の原因は金融仲介機能の不完全性=「金融の劣化」である。金融劣化によって、バブルは経済成長と併せて拡大し一定の規模を持続できるため、バブル資産は株や不動産など代わる代わる対象を替えながらも繋がっていく。バブル資産の典型は貨幣ないし国債であり、今の日本は国債バブルにあるとする。
    以上のバブルの理論の紹介は第3章までで論旨明快で興味深い一方で、残りの10章は日本や米国、欧州等におけるバブルの事例などが列挙されているだけで理論に沿った説明をしているわけでもなく冗長な印象。全体で450頁もあるが、200〜300頁ぐらいでまとめて新書で出した方が良い気がした。

    本書の中で興味深かった点は、投資先が多いはずの新興国から成熟している先進国へ投資資金が流れるという経済理論では説明のつかない現象は、これも新興国の国内金融が未発達であることに帰着できるという話。新興国内で金融仲介が上手くいかないため、低収益であっても米国債などの先進国の資産を購入せざるを得ないということだ。
    また、仮想通貨といった明らかなバブルがいつまでも弾けないのは、バブルは総和を維持しながら流転するという話を受ければ納得できることだった。
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    投稿日:2024.01.19

  • 5b97dcde86eba497

    5b97dcde86eba497

    第8章にはいったところで図書館に返却しなきゃならなくなってしまったが、アジア通貨経済危機、リーマンショック、日本のバブル崩壊など、これまでのバブルを俯瞰することが出来て勉強になった。

    投稿日:2023.09.25

  • D-Rinn

    D-Rinn

    このレビューはネタバレを含みます

    一度途中で図書館に返却を余儀なくされ、苦節約1カ月でついに読了。頭の整理が追い付かないが、日本財政の状況は逼迫しているのだと認識を強固なものへ変容した。
    メディアで日本は自国で国債の90%程度保有しているから、過去のギリシャ財政破綻のようなデフォルトは発生しない、政府‐に日本銀行は親子の関係にあるから、政府が発行しているものを日本銀行で買い取りし自己完結しているから安全などの定説に改めて疑問を持ち始めた。

    GDP比260%の債務残高は、金融の未熟さにより市場に資金提供を怠ることによって、企業の投資や設備検討などが沈静化される。また、頼りない銀行からの資金借り入れなんかを無視して自己資本のにて賄うという方針をとる。合わせて、長期的なデフレによって膨大なタンス預金がしっかりとした安全資産になってしまっており、投資や国債に配分されない、。そのため、国債の需要は高まらず国債金利は大量発行されても低水準のまま。その恩恵により、借り換えでどうにか財政が安定して回している不安定な状態。ここまで悪くなっていたのかという気づきで、日本の行く末が案じられます。

    あとがきの日本人は賢くないという定言は、身につまされるものもあるし、本質と枝葉を区別できない頭でっかちな性質というのは自分の周りでも薄々感じている違和感でもある。ここまで明瞭に言語化されていて、腑に落ちる。

    では、付箋を貼っていた箇所の抜粋。
    名目利子率 =実質利子率+期待インフレ率の公式から、日本国民のデフレマインドが足かせとなって、異次元金融緩和で名目利子率を0固定を調整したのに、期待インフレが上がらずマイナス。「物価とは何か」(渡辺努)でも、国民の期待の重要性を説いていたな。
    P380:日本銀行がやるべき仕事は、金利正常化化に向けて時間をかけて実現するという宣言をし、タンス預金の縮小に的を絞って、悪いゼロ金利から良いゼロ金利に経済を移行させることである。いずれは名目利子率をプラスにすると宣言して、引き上げ時期は必ずしも明示する必要はない。ただし、いったんゼロを解除したら、ゼロには二度と戻らないことを国民に信じさせる必要がある。

    日本金融機関への警句
    P402:利回りが低いからといって、国債は安全な資産ではない。政府にほぼされた金融機関や・・・、国債の受け皿機関として温存されたのである。

    消費税増税と社会保障制度の維持はトレードオフ。懸念は、消費税増税がそのまま年金支給財源になるという気が、昨今の政府からは感じられないところの不満。上手に国民へ説明・理解を促すのが肝要。しかし、一番少ないシナリオでも2024年で20%付近まで消費税増税が必須等のは衝撃。
    P426:消費税増税論議はで問われているのは、いったいどのような高齢化社会を構築し、そのためにどのような再配分政策を選択するかという社会的公正の観点から考えていくべき問題であり、短期の景気変動の問題に矮小化させてはいけない。

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    投稿日:2023.01.13

  • koukou92

    koukou92

    日本のみならず世界のバブル経済についての考察についてまとめられた本。
    経済的知識がない私にとっては少し学術的で難しい部分もあったが、
    平易に説明しようとしてくださっていることもあり、概略はすっと理解できた。

    日本の分析の部分だけにおいても、
    最近はやり?のMMTに対する考察、バブル後の失われた20年の考察、財政健全化について、なぜゼロ金利政策がうまくいかないのか等
    勉強になる部分は多かった。経済理論について日本バージョンとして当てはめていくことが肝要というのはまさにいうとおりだと思った。


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    投稿日:2022.05.02

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