バブルの経済理論 低金利、長期停滞、金融劣化
櫻川昌哉(著)
/日本経済新聞出版
作品情報
■理論経済学者が、世界のバブルを分析、「バブル経済」の本質を歴史と理論から明らかにする。バブルを介して現代のマクロ経済を捉え直す。長期停滞に陥った現在の日本経済の謎を解き明かし、大胆な政策提案も示す、知的刺激に富む独創力にあふれた本格経済書。■バブルは流転する:日本、東アジア、アメリカ、中国と、1990年代以降、経済の主役の交代とともにバブルの重心は移動してきた。バブルは国家や地域を替えながら流転する。■バブルはつながっている:利子率が成長率を下回ればバブルは起きる。低金利の持続のもとで、国境、地域を越え、個々のバブルは、“つながり”を持つ。■バブルの本質は「経済の贈与化」:バブル経済とは、財とバブル=“霞(かすみ)”との不等価交換=贈与にほかならない。国債バブルの膨張により、経済の贈与化が進行、市場経済は縮小する。■長期停滞の本質:ゼロ金利が続く経済は、デフレと長期停滞が続くバブル経済そのものである。■バブルの経済理論: 資産バブルの頻発、長期化するデフレと流動性の罠、拡大する財政と低い国債利回り――。主流派経済学が解決できなかった問題を、バブルの経済理論は統一的に説明できる。
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商品情報
- 著者
- 櫻川昌哉
- 出版社
- 日経BP
- 掲載誌・レーベル
- 日本経済新聞出版
- 書籍発売日
- 2021.05.21
- Reader Store発売日
- 2021.05.21
- ファイルサイズ
- 149.7MB
- ページ数
- 504ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (4件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
一度途中で図書館に返却を余儀なくされ、苦節約1カ月でついに読了。頭の整理が追い付かないが、日本財政の状況は逼迫しているのだと認識を強固なものへ変容した。
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メディアで日本は自国で国債の90%程度保有しているから、過去のギリシャ財政破綻のようなデフォルトは発生しない、政府‐に日本銀行は親子の関係にあるから、政府が発行しているものを日本銀行で買い取りし自己完結しているから安全などの定説に改めて疑問を持ち始めた。
GDP比260%の債務残高は、金融の未熟さにより市場に資金提供を怠ることによって、企業の投資や設備検討などが沈静化される。また、頼りない銀行からの資金借り入れなんかを無視して自己資本のにて賄うという方針をとる。合わせて、長期的なデフレによって膨大なタンス預金がしっかりとした安全資産になってしまっており、投資や国債に配分されない、。そのため、国債の需要は高まらず国債金利は大量発行されても低水準のまま。その恩恵により、借り換えでどうにか財政が安定して回している不安定な状態。ここまで悪くなっていたのかという気づきで、日本の行く末が案じられます。
あとがきの日本人は賢くないという定言は、身につまされるものもあるし、本質と枝葉を区別できない頭でっかちな性質というのは自分の周りでも薄々感じている違和感でもある。ここまで明瞭に言語化されていて、腑に落ちる。
では、付箋を貼っていた箇所の抜粋。
名目利子率 =実質利子率+期待インフレ率の公式から、日本国民のデフレマインドが足かせとなって、異次元金融緩和で名目利子率を0固定を調整したのに、期待インフレが上がらずマイナス。「物価とは何か」(渡辺努)でも、国民の期待の重要性を説いていたな。
P380:日本銀行がやるべき仕事は、金利正常化化に向けて時間をかけて実現するという宣言をし、タンス預金の縮小に的を絞って、悪いゼロ金利から良いゼロ金利に経済を移行させることである。いずれは名目利子率をプラスにすると宣言して、引き上げ時期は必ずしも明示する必要はない。ただし、いったんゼロを解除したら、ゼロには二度と戻らないことを国民に信じさせる必要がある。
日本金融機関への警句
P402:利回りが低いからといって、国債は安全な資産ではない。政府にほぼされた金融機関や・・・、国債の受け皿機関として温存されたのである。
消費税増税と社会保障制度の維持はトレードオフ。懸念は、消費税増税がそのまま年金支給財源になるという気が、昨今の政府からは感じられないところの不満。上手に国民へ説明・理解を促すのが肝要。しかし、一番少ないシナリオでも2024年で20%付近まで消費税増税が必須等のは衝撃。
P426:消費税増税論議はで問われているのは、いったいどのような高齢化社会を構築し、そのためにどのような再配分政策を選択するかという社会的公正の観点から考えていくべき問題であり、短期の景気変動の問題に矮小化させてはいけない。投稿日:2023.01.13
主流派経済学が無視あるいは一過性のものとしてきたバブル。しかし、利子率<成長率となる主流派が想定しない「低金利の経済学」によってバブルが合理的・効率的であっても発生し、持続する。低金利の原因は金融仲介…機能の不完全性=「金融の劣化」である。金融劣化によって、バブルは経済成長と併せて拡大し一定の規模を持続できるため、バブル資産は株や不動産など代わる代わる対象を替えながらも繋がっていく。バブル資産の典型は貨幣ないし国債であり、今の日本は国債バブルにあるとする。
以上のバブルの理論の紹介は第3章までで論旨明快で興味深い一方で、残りの10章は日本や米国、欧州等におけるバブルの事例などが列挙されているだけで理論に沿った説明をしているわけでもなく冗長な印象。全体で450頁もあるが、200〜300頁ぐらいでまとめて新書で出した方が良い気がした。
本書の中で興味深かった点は、投資先が多いはずの新興国から成熟している先進国へ投資資金が流れるという経済理論では説明のつかない現象は、これも新興国の国内金融が未発達であることに帰着できるという話。新興国内で金融仲介が上手くいかないため、低収益であっても米国債などの先進国の資産を購入せざるを得ないということだ。
また、仮想通貨といった明らかなバブルがいつまでも弾けないのは、バブルは総和を維持しながら流転するという話を受ければ納得できることだった。続きを読む投稿日:2024.01.19
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