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福間良明 / 岩波新書 (17件のレビュー)
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こーせー
ノンエリート層の「教養」について、戦後〜1970年代までを主な射程に、青年学級・定時制・人生雑誌への眼差しをまとめた本。おそらく資料収集に相当力を注いだのではないか。その苦労は察せられるが、引用とまと…めが繰り返され、やや冗長に感じた。最後の歴史趣味への論考や、高度成長以降、ノンエリート層から「教養」が如何に見放されたのか、もう少し読みたかった。続きを読む
投稿日:2022.11.05
yuuyom
教養って何だろう?って思って読んだのだけれど、その質問についての答えは見つけられなかった。戦後、兵士たちが農村に戻り、その後、都市に就職しという背景での勤労青年の生活。彼らが、青年学級や定時制高校に期…待した教養。でも、私には何をもって教養とするのかがよくわからないので、空回りしているように見えるし、実際に、みんなが不幸だったように思える。ただ、貧困が原因の勤労青年という問題は、現在、隠れた形で残っていると思うので、過去の話として終わらせちゃいけないとも思う。続きを読む
投稿日:2021.11.05
三鷹牛蔵
定時制高校へ進んだ動機について、53.6%が「できるだけ教養を高める」と答え、「高校卒の資格を得る」の18.7%を大きく上回ったという(1960年のある調査)。 昭和20~30年代において、高校に進学…せず就職・就農した「勤労青年」たちが「実利を超えた教養」を求め、農村では青年学級、都市部では定時制高校、時間・空間の制約がある者は「人生雑誌」という場に集っていた。そうしたコミュニティの成立と消滅についてまとめた一冊。 同時代において学歴エリートの間にも教養主義があった(そして、同じように昭和40年代以降に衰退した)が、非エリート層の大衆教養主義には違った背景もあったことが指摘されている。 高校進学率が低い時代において、経済的な事情で進学できず鬱屈、葛藤を抱えた成績優秀者の代償行為という面もある。 また、定時制高校を卒業しても転職活動において高校卒とみなされない中で「高校卒の資格を得る」ために定時制高校に進んだとは、口にできない・したくない心理もあったのだと思われる(本書ではそこまで踏み込んだ推測はしていないが)。 「人生雑誌」というものの存在を私は知らなかったのだが、『葦』『人生手帖』といった「勤労青年」層を対象にした雑誌があって最盛期には10万部に近い発行部数だったという。 青年学級や定時制高校に通うことが困難(地理的な問題のほか、奉公先の明示的・暗示的な妨害を受ける)な人々が隠れ読むような雑誌で、似たような境遇の人々の投稿を読んで共感するなどしたという。 1960年代後半には高校進学率の上昇という理由もあって「人生雑誌」は退潮に向かい(青年学級も消えつつあり、定時制高校は「全日制に行く学力がない人の学校」とみなされるように変質しつつあった)、雑誌という形での継続的なコミュニティは失われたという。 しかし、かつての「勤労青年」たちは、「人生雑誌」のような大衆教養主義の雑誌ではなく大衆歴史ブームに居場所を移したというのが著者の分析である。彼らが中高年層となって昭和50年代に『歴史読本』『歴史と旅』『プレジデント』などを支える中核となっていたとする。 ちなみに、いまの『プレジデント』しか知らないとピンとこないと思うが、昭和50年代には徳川家康とか山本五十六とかをやたら特集している雑誌だった。 なぜ大衆歴史ブームかというと 「実証史学であれば、古文書を読みこなし、地道に史料批判を重ねる作業が求められるものだが、歴史読み物にふれるだけであれば、そうした労苦を経ることなしに、史的な流れや歴史人物の思考(と思しきもの)を味読することができる。」 と、参入障壁が低いからだという。そしてそこには反知性的知性主義の萌芽があると。 著者はこんなことを書いてはいないが、定年後にネットを見始めて陰謀論を説くようになった高齢者像が目に浮かぶようだ。 著者は「勤労青年」世代の置かれていた状況を振り返っていて、その同情すべき事情も書いているが、それでも対象に対して客観的である。なのでその論考を進めるとこうなってしまうわけで…。 ちなみに本書は世代に注目しているので雑誌メディアにおける「勤労青年」の場がなくなって単行本に移行した後のことは追跡していない。 その点は牧野智和『自己啓発の時代』が述べている。単行本メディアである「自己啓発本」の初期は哲学者や作家が比較的漠然と「生き方」を説いていたが、徐々に実利にシフトしていく様を追っている。続きを読む
投稿日:2021.09.20
カワウソの祭り
人文学系の罪深さに、深いため息を付きたくなる内容。 Amazon Primeでみた『青い山脈(吉永小百合 主演篇)』が、ほのぼの青春映画じゃなくて、実はホラーだったんじゃねぇかと思うほどのインパクト…ですね。続きを読む
投稿日:2021.06.13
Takahashi Ryota
この本は20世紀半ばから後半にかけて、勤労青年たちにとって「教養」にはどんな意味があったのか、なぜ教養を求めたのか、など当時の社会情勢を描きながら中学を卒業した後すぐに働く青年たちの様々な思いを考察し…たもの。 当時の高校進学率(全日制)は今に比べて格段に低かった。それには様々な理由があるが、一番の理由は、学費の問題だ。それ故、昼間は働きながら定時制の高校に通う人が多かった。そして定時制に通うほとんどの人たちは良い企業への就職や、転職のためではなかった。(もちろんそういう人たちもいた) 彼らの目的は「教養」を身に着けることだった。彼らは全日制の人たちよりも一足早く社会に出て上司の人たちから理不尽な扱いをたくさんしてきた。勤労青年たちはその不条理な社会に疑問を抱き「人としての生き方」や「社会の在り方」の真理を発見するため定時制に通いだした。 しかし学業と仕事の両立は様々な理由で難しいものだった。(職場環境、人間関係、学習環境、学習内容、健康面など) これらが理由で「教養」への熱が次第に冷めていった。 そこで勤労青年たちの「学ぶ場」として新しく誕生したのが「人生雑誌」というものだった。彼らは雑誌を通して定時制には無かった「哲学、歴史、思想、社会科学」といった実利的ではないものを学ぶ事ができた。(それらは彼らが求めていたもの) だが「人生雑誌」も様々な理由から徐々に衰退していく。(それを読むことによって社会から左翼的と思われ悪いイメージがついた) そして高度経済成長期に入ると段々と経済的格差が無くなって物質的にも豊かになり始めると同時に高校進学率(全日制)も上がった。 また、定時制に通う人に対する社会的評価も変わり始めた。経済的な理由から定時制に行く人が少なくなったが故にそれでも定時制に進学する人は「学力がない」、「落ちこぼれ」などと評価されるようになっていった。 自分の中の結論としては、世の中が経済的に豊かになった行き青年たちの生きがいというか人生での目的が「物質的」に豊かになることになっていったのではないかと思う。心の平安が「教養」ではなく「消費」に代わっていったように感じた。続きを読む
投稿日:2021.06.01
めぐみ
かつての勤労青年の教養への憧れ、そしてそれがどうして喪失していったのか、若者たちの生の言葉もたくさん引用され、面白かった。 これほどまでに、人生について私は考えたことがあっただろうか… そんなことも思…いながら読んだ本だった。続きを読む
投稿日:2021.03.16
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