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江尻勝 / KADOKAWA Game Linkage (1件のレビュー)
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澤田拓也
日本でも徐々に盛り上がってきたeスポーツ。その中でごく初期の段階から組織体として頑張ってきているDeToNatorの代表の江尻さんが業界分析も踏まえて熱く語ったもの。タイトルの「革命を起こさない」とい…う宣言は、同社が、にわかな盛り上がりに流されない、地に足を付けた戦略を堅持する意志を示している。具体的には事業としての三本柱として、①育成・教育事業、②ストリーマー支援事業、③海外競技への継続的挑戦、を挙げている。健全で持続的な経営体制の確立とそのための人材育成とブランディングにも目を向けているところが、通常の企業の考え方としても理に適っている。その思考回路は、次のような現状分析からも伺うことができる。 「数字を取ることは大切だ。その実感は年々強まっている。2018年、多くの企業が「eスポーツ、eスポーツ」と声高に訴えたが、自分の肌感覚で言うと、企業側の動きはそれほどいいものだとは思わなかった。 2019年に入っても状況は変わっていない。あまりの変化のなさを恐ろしくさえ感じる。この状況をどう変えていくかとなったときに、私たちとしては、きちんとした事業計画を各社に提案し、企業としての立ち位置や収益構造を確立させないと無理だという結論に達した」 「「eスポーツはもうからないから撤退しよう」。日本はいつそう判断されてもおかしくないギリギリの状況にある。他社の力に頼らずに安定したチーム運営を長く続けるには、スポンサーがゼロでも自分たちの会社の売上だけで黒字を維持できるのが理想だ」 若い選手が多く、またその選手寿命も短いプロゲーム業界にとって、教育は非常に重要になってくることは自明だが、そこに注目をして事業として成立させようとするのは素晴らしい。eスポーツが盛り上がって、もし環境が急激に変わることがあるとすれば、そのときこそ選手の教育は重要になる。それは社会的にeスポーツが受け入れられるためにも必要な活動になる。選手として成功するためには、心技体が揃っていなければならないが、その中でも「心」を正しく成長させなくてはならないというのは至言と認識するべきだ。 また、著者がeスポーツとゲームとを明確に分けている点にも外部のスポンサー企業は意識をしておくべきことだろう。著者はゲーム業界全体を見るべきだという。「eスポーツ」というときのどこか「単なるゲームではない」と言いたげなニュアンスが気にいらないのではとも感じた。 今後、日本でもプロリーグが隆盛して、フルタイムの選手が活躍するような時代になるのだろうか。そのためにこうやって業界のことを考えて発信しようとしている人がいるというのは頼もしい気がする。著者は海外に挑戦することが重要だとしながらも、日本のeスポーツの発展を願っている。中でも、JeSUに多くの期待をかけているようだ。果たしてどのような未来が待っているのだろうか。 1年後や3年後にこの本を見返すとまた違う印象を持つことになるのかもしれない。続きを読む
投稿日:2020.02.25
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