【感想】歌うカタツムリ-進化とらせんの物語

千葉聡 / 岩波科学ライブラリー
(17件のレビュー)

総合評価:

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  • 進化論が進化していく

    進化論の歴史における 選択か偶然かの一進一退の論争をカタツムリを軸に描き出す。進化論の進化の歴史というべきか。読んでいて、わかったようなわからないような気分になる。適応主義陣営も遺伝的浮動がまったくないとは言っておらず、中立説陣営も自然選択の存在を認めていないわけではない。ワタクシの理解では程度問題の話をしているのである。なのに(またはそれゆえに)この激しい議論続きを読む

    投稿日:2024.04.26

ブクログレビュー

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  • ぶらっくほーる

    ぶらっくほーる

    生き物は本当に美しいと思う。単純であればある程美しいと思う。全てに意味があって、無駄がなく、残酷で。恋矢の話は印象に残った。

    投稿日:2020.10.23

  • stratton

    stratton

    カタツムリを題材とした進化生物論という、凡人にはほとんど縁も馴染みもない話を、ここまで読ませる内容に仕上げた著者のサイエンスライターとしての力量に脱帽。
    一読するとその意味が味わえる「進化とらせんの物語」という副題も秀逸だし、ものの見方が凝り固まってしまうことを「3.14とはなんですか、と聞かれて『円周率!』とマッハのスピードで答えるも、ホワイトデーに思いが及ばない勉強熱心な甲斐性なしがその例である」と書いたり、とにかくライターとしてのセンスが秀逸。
    本題であるダーウィン以降の生物進化に関する学説の激突も、いい意味でプロレス的で、とっつきにくい内容であるはずなのに、読む手が止まらない。しかも、著者は若手研究者と思いきや、1960年生まれの教授で、かつ、一般向けの著書はこれが初めてという二重のビックリマークが付く。いろいろな意味ですごい本。

    それにしても、本書に数回出てくる、日本人研究者の研究成果に関するくだり…「これは世界的にも極めてレベルの高い斬新な研究だった。だが残念なことに、論文はどれも、海外の研究者の目に届きにくい国内の雑誌に発表されたため、海外にはほとんど知られることがなかった」 
    著者の無念さがひときわ印象に残る。
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    投稿日:2020.09.26

  • Treasoner

    Treasoner

    カタツムリの研究史を時系列に、世代ごとの人物に焦点を当てながら紹介。登場人物はグールドしか存じ上げなかった。時代によって浸透していた考え方に違いがあるのは印象的。 個人的には海棲の貝類がどのようにして上陸を果たし、ナメクジやカタツムリに進化していったのか、の方が気になった。 環境、同種や捕食者による圧、遺伝のランダム性など、影響要素が多すぎるため、生態系への理解を深めることへの難しさがよく分かる続きを読む

    投稿日:2020.08.12

  • 澤田拓也

    澤田拓也

    プロローグでハワイの歌うカタツムリの伝説について持ってくるところでまずしびれた。この音を物語の最重要人物の一人であるギュリックが聞いていたというのも素敵な登場のさせ方であるし、このハワイマイマイの伝説が、最後に小笠原の歌うカタツムリにつながり、人間の作為によって絶滅してしまったハワイマイマイの運命に結び付けられるところなどは、物語の組み立てとして最高に美しいと思った。日本にもついに上質なポピュラーサイエンスの書き手が現れたのかもしれない。

    「雲海に包まれたハワイの高峰のように、孤立した高い峯の頂にひとりで上りつめてしまったギュリックの意義、その理論がもつ本当の価値は、当時の主流の生物学者たちに理解されることはなかった。その真の重要性が理解されるのはずっと後のこと。1930年代以降、メンデルの遺伝学とダーウィンの進化理論が結びつき、総合説 - 現代の進化学の枠組み - が誕生するまで待たねばならなかった」
    と第一章を締めくくり、そして続く第二章を「眼下に見える海は、白く縁どられたエメラルド色の結晶体のようで、沖に向かって、さまざまに彩りを変えつつ彼方で紺碧の空と一線を画していた」-と始めて、南太平洋のポリネシアマイマイの研究にいそしむクランプトンの話題に振っていく辺りの表現力はため息が漏れるほど素晴らしい。クリンプトンの研究は、ギュリックの中立的な偶然の変化による非適応な種分化を膨大なデータによってサポートすることになるのだ。

    ダーウィンに始まり、ウォレス、ギュリック、フィッシャー、ケイン、クラーク、ライト、ドブジャンスキー、ハクスレー、グールド、マイアなど進化生物学の対立と発展の物語がカタツムリの研究をひとつの軸にしてうまく語られる。そして中立進化説に多大な貢献をした木村資生や速水格といった日本の研究者の関係も詳細にわたって語られる。実をいうと著者の千葉氏は速水格の研究室の出身であり、小笠原諸島のカタマイマイのフィールドでの研究も本当に生き生きと語られる。

    場所によって変わるカタツムリの殻の特徴は、適応進化と中立的進化の対立に関して、具体的な分化の様子をフィールドで確認することができるため、非常に有用でわかりやすい対象であったのだ。また時代の途中から遺伝子解析を使うことができるようになったことで研究が進んでいった様子もよくわかる。

    ポピュラーサイエンスが好きな人にはぜひ手に取ってもらいたい。進化論にそれほど興味がなくても楽しめるはずだ。お勧め。

    ---
    kindle版では、位置で26%のところから参考・引用文献が始まっている。これは紙の本ではどうなってるんですかね。まだまだ残っているつもりで読み進んでいたら急に終わってしまった感があり、めちゃくちゃ長いんじゃないのと思っていたので、ほっとしたのと残念になったのと両方の気持ちがわいてきた。いずれにしても、多くの地道な研究の積み重ねによって出来上がった作品であることはよくわかった。
    続きを読む

    投稿日:2020.05.03

  • 人生≒本×Snow Man

    人生≒本×Snow Man

    生物学の本格的な啓蒙書を読み解くには、専門用語や立論手法に関する独特の難しさがある。本書も例外ではない。まぁ生物学に限った話ではないのだが。

    さて、本書は、ダーウィンに代表される適応説と、ギュリックに代表される非適応説が対立しながら発展していく、弁証法的な生物進化論の歴史が綴られる。

    7章 貝と麻雀での、古生物学者の速見格の弟子たちのカタツムリの生態の解き明かしがおもしろい。進化の過程が体感できる。

    最後には、役に立つことの単面性とも言うべきカタストロフィが静かに伝えられる。

    この本を読むと、同じ千葉さんが文を起こされた絵本『カタツムリ小笠原へ』の学術的な意識の高さと子供たちに伝えたいメッセージが明確に分かった。

    ※26ページに及ぶ参考文献が岩波書店のWEBにある
    https://www.iwanami.co.jp/files/hensyu/science/029662-references_1810.pdf
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    投稿日:2020.03.13

  • なー

    なー

    このレビューはネタバレを含みます

    著者は速水格のお弟子さん。カタツムリはあくまで手段と言ってるけど、やっぱりこれはカタツムリの本だよなあ。でも進化研究の題材にカタツムリがよく使われていることはわかった。グールドもだよ!
    それにしても1人で何十年もコツコツと何万匹ものマイマイを採取分類するヒト達。その執念ってか情熱ってスゴい。まあ、絶滅した種もあるってことだけど、それって採取し過ぎで…ってことはないよね?まさかね。
    あと、右巻きの貝と左巻きの貝はうまく交尾できないとか、右巻きの貝しかうまく食べられないヘビがいたりとかで、意外に巻きの向きが重要なのには感動した。

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    投稿日:2020.01.15

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