【感想】プーチン幻想

グレンコ・アンドリー / PHP研究所
(18件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
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2
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  • 遠くて近い国の出来事

    本書は日本人の多くが持つプーチン、あるいはロシアのイメージを破壊する良著である。
    中でも刺激的なのが第3章である。ここではソヴィエト連邦崩壊後のウクライナがいかに国策を誤りクリミア併合に至ったが順を追って解説されている。注目すべきはウクライナを日本と置き換えても通用する部分が実に多い所である。
    そしてこれは遥か遠い異国のことのようでいて「隣国の隣国」で起こった現実であることを思えば日本に対する警告であるといえる。
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    投稿日:2019.04.03

ブクログレビュー

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  • だまし売りNo

    だまし売りNo

    ロシア連邦の危険性を明らかにする。著者にとっては悲しいことに、その正しさはウクライナ侵略で明らかになった。

    投稿日:2023.07.25

  • yonogrit

    yonogrit

    765

    このように、プーチンは自国民を大量に殺すことによって権力を握った。「やむをえない場合しか暴力を使わないプーチン」や「伝統的価値、家族、国家を守る保守主義者のプーチン」というのが妄想にすぎないことは、ご理解いただけたかと思う。  今のロシアは、大量虐殺や対外謀略を実行した残酷な組織であるNKVD─KGB─FSBに延々と支配され続けて



    プーチンにとっては、NATOの東方拡大は「裏切り」行為で



    当然、この認識は完全に間違っている。そもそも「NATOは東へ拡大しない」という約束はどこにも存在しないし、NATOの仕組み上、発生するはずがない。プーチンを始めとするロシアの帝国主義者の妄想にすぎないが、全世界(日本を含む) にいるロシアのファンがその妄想を信じて


    プーチンは言葉ではつねに西洋との協力的な関係の必要性を強調しており、西洋との相互尊重が重要だと言っている。だが、プーチン自身は西洋の価値観やルールを一切尊重していない。西洋を都合よく利用しようとしているだけだ。だから、あるときは「協力関係」を訴え、また別のときは非常に好戦的な態度を



    アメリカの何十倍も国際法を破っているロシアが「自分の意思を他国に押し付けている」と言うのを聞くと、まさに「お前が言うな」と言いたく

    ここ数年、とくに二〇一四年の欧州議会議員選挙以降、ヨーロッパではかつてなかった類の「右翼」勢力が出ている。国によって事情は多少異なっており、昔からあったマイナーな勢力が急に支持率が上がったという事例もあれば、全く新しくできた勢力がすぐ時流に乗った、という場合も



    両国の国力を総合的に見れば、中国はロシアよりもかなり強い。ロシアは中国に依存しており、中国はかなりの程度ロシア国内に進出している。普通に考えれば、ロシアにとって恐るべき状態である。にもかかわらずなぜ、プーチンは安心して中国共産党に身を委ねるのか。  疑問に思うであろうが、答えは簡単である。それはロシアが中華秩序の一部であるかぎり、プーチン体制は安泰だからである。少なくとも、中国の手でプーチン体制が倒されることは一〇〇%ありえない。中国からすれば、プーチン体制が続く限り、ロシアは中華秩序の一部であり続ける。しかしプーチン体制が覆ったら、次の指導者は中国からの離脱を図ろうとするかもしれない。それは中国にとって厄介なことである。だから欧米陣営に寝返る恐れのないプーチンは、中国にとって安心・安全で最高なロシアの指導者なのである。それをプーチン自身もよく理解しているので、中国を恐れていない。  中国のほうもロシアを潰すつもりはないし、領土を併合するつもりもない。理由は先述したアメリカとの対立において、ロシアの国力が必要だからである。しかも今の中国は、ロシアの国力を一〇〇%利用できる状態にある。親中プーチン政権が習近平の言うことを絶対に聞くからで



    ロシア人の領土執着がいかに異常か



    開発できる領土が有り余るほどあってもなお、新たな領土を無限に欲しがるのだ。常識的に考えれば、クリミア半島や千島列島に固執するよりは、膨大なロシア大地の開発に力を入れたほうがよほどロシア発展のためになる。しかしロシア人の思考は違う。すでに持っている領土を未開発のまま、新たな領土拡大の夢を見ている。このような思考はロシア人が昔から持っている特徴なので、ロシアとの外交を進める上でつねに念頭に置かなければなら



    日本の文化に興味があるという理由で、その人が親日になると思い込んでいる日本人は認識が甘い、と言わざるをえない。  その国の文化が好きだから、またはその国に興味があるから、という理由でその国のシンパになるとは限ら



    日本のアニメを好きなことによって日本そのものを好きになり、親日になると考えるのは、先述した「お花畑思想」で



    もしロシアが日本侵略をできるほどの力を身につければ、状況が変わる。もし日本侵略で利益を得られると判断すれば、ロシアは 躊躇うことなく日本を侵略するであろう。つまり、ロシアの日本に対する考え方は昔から変わっておらず、十分な国力がないだけである。この点を絶対に勘違いしてはいけない。「物理的に可能になったときに侵略を実行する」というのはロシア外交の基本であり、昔から一貫した姿勢で



    安定的な発展を理想とする保守主義とは何の関係もない。プーチンの内外政策は保守主義ではなく、共産圏独裁者の振る舞いそのもので
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    投稿日:2023.07.18

  • zhongxia

    zhongxia

    「北方領土返還」と「北方領土問題の解決」は全く違う。北方領土は「返ってくる」のではなく、「取り返す」「返還させる」
    この本はウクライナ侵攻前に出たものだが、いずれ侵攻をすると予感しているかのようだ。

    投稿日:2022.11.27

  • DJ Charlie

    DJ Charlie

    ウクライナ出身の著者による論である。眼に留めて、手にして紐解いた。色々と考えながら読み進めて読了に至った。
    本書は2019年3月に第1刷が出ている。その時点で、クリミヤの問題等、ロシアとウクライナとの摩擦は続いていた。そこから最近の「特定軍事行動」とロシア側が称する「侵攻」が大規模に行われるに至り、ロシアやウクライナへの関心が高まって本書は増刷を重ねたようだ。自身が入手した本は2022年5月の第7刷だった。執筆時点から何年かを経ているが、内容の価値は全く損なわれていないと思う。
    本書は大きく2つの部分から成っていると思う。
    前半部は執筆時点の日本の政権が対ロシア外交に積極的と見受けられた中、ロシアのプーチン大統領に関して幾つか言われていることが在ったが、それらに関して「本当にそうなのか?」とし、「全然そうだとは思えない」と説き、プーチン政権の“問題”が多いと見受けられる行動、ロシアの「本音?」と見受けられるような事柄等を挙げている。
    前半よりやや分量が少ないが、後半部は、ソ連時代末期の1990年頃からの今日のウクライナが成立して行く経過、そしてそこから日が浅めな1990年代に在った「核兵器」に関する経過を論じている。
    「国家が謀略も辞さない場合が在る機関を有している」というよりも「謀略を旨とする機関が国家を有している」というようなことに尽きるのが、前半部ではないかと思った。本書で挙げられている事項だが、色々と伝えられている事柄だと思う。
    プーチン大統領の、或いはロシアの人達の「日本観」として、<日ソ不可侵条約>が「有名無実だった…日本側が安寧を脅かし続けていて…」というような観方が多数派かもしれないというのは、多分本当だと自身でも思う。
    <大祖国戦争>を異様に「拠所」のようにしているという論が在った。これに関しては、もっと素朴に「先人が大きな犠牲を払ったことに敬意を表する…」というように、偶々ユジノサハリンスクでロシアの人達が5月9日の催事に集まっている様子を視た限りでは感じられたというのが自身の感想だ。が、「戦勝」に強い拘りは在るようには見える。
    そしてロシアと中国だが、プーチン政権の下では相互に強く依存するような間柄ではないのかという論が在った。
    こういうような前半部に対して、後半部はより興味深かった。
    かのゴルバチョフ大統領が“ソ連”の改編を図ろうかとしていた頃のウクライナの様子を或る程度詳述している。これは余り他で読んだことが無い。ウクライナの人による、自国の少し前の動向、経過を語ったモノというのも貴重であるように思った。
    そして“ソ連”を「止めてしまう…」に至る中でロシアが突き抜けた動きを見せたが、それを主導した当時のエリツィン大統領の想いは判り悪いとしているが、「或る種の権力闘争?」と示唆している。これは自身もその「闘争?」のようなものだと観る。
    「核兵器」だが、1991年末にウクライナが独立国として登場したような頃、「世界第3位」という程度のモノがウクライナ国内に在ったのだそうだ。これには驚く。
    こうした「核兵器」に関連する核燃料として利用可能なモノだけでも、「国の予算の何年分だ?!」という資産であったそうだが、これが敢無く損なわれ、安全保障というような見地でも何やら変な様子になって行ったかもしれないということが語られていた。
    少しランダムに本書で取上げられている事柄の一部を挙げてみた。
    本書の冒頭の方に、「欧州諸国の人達に比べて、日本の人達は隣の中国に関しては色々と観方が在る」のと同様に「ウクライナの人達は隣のロシアに関して色々と観方が在る」というようなことが綴られている。日本から視れば、中国も隣りだが、ロシアもまた隣りである。色々と“材料”を得るようにして、考えてみる必然性は高い。隣人に「難在り?」と思った時、引っ越しが叶うのなら引っ越しすれば好いのであろうが、“隣国”ということになれば引っ越す術は無いのだから。
    本書の、殊に後半部は広く御薦めしたい。
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    投稿日:2022.10.01

  • 学びのブタ野郎

    学びのブタ野郎

    最後まで面白く読めました。
    特にロシア、ウクライナのソ連崩壊周辺の歴史に関しては、ウクライナ側からの目線で語る媒介はないので興味深かったです。
    もし他の本では主観的な歴史がもっと書いてあるなら、ぜひ読みたいです、続きを読む

    投稿日:2022.08.17

  • ライオン

    ライオン

    親日ウクライナ人が説く日本の危機。
    今年のウクライナ侵攻の前の作だけど、プーチンの親日幻想が全くのデタラメとか中露の蜜月っぷりなどの事実がたくさん。日本の政治家も正しい認識のもとで外交を行うべき。自分の実績より国益、なぜ当たり前のことができないのか、そういう政治家を落とすことができないのか…。続きを読む

    投稿日:2022.07.06

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