【感想】水曜日の凱歌(新潮文庫)

乃南アサ / 新潮文庫
(41件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
14
17
4
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • さくら

    さくら

    このレビューはネタバレを含みます

    戦後のRAAについて、史実をもとにした小説。
    主人公は14歳の少女。
    元は7人家族だったが、兄は戦死、姉は空爆で爆死。
    まだ小さかった妹は、空襲から逃げる最中、行方不明になってしまった。
    主人公は、残された母と2人で、戦後の混乱期を生き抜いていく。

    母は、RAAに通訳として雇われる。
    RAAの施設に居住するから、嫌でもRAAの事情を間近に見てしまう。
    空襲の被害にあい、たくさんの悲惨な死体を見てきた主人公は、これ以上、心が傷つくことはないと思っていたが、RAAの悲劇、理不尽さに心が少しずつ蝕まれていく。
    特に母が、アメリカ人の将校と付き合い出したことには強く反発する。
    ついこの前まで敵だった国の人、家族を死に追いやった国の人となぜ付き合えるのか、主人公は理解できない。
    そうでもしないと生きていけない時代だったということは、14歳の主人公にはまだ理解できない。
    特に戦争が始まる前までは、わりと裕福な家だったから、どんどん変わっていく母に戸惑うのだろうと思う。
    しかし、価値観も生活スタイルも何もかも変わっていかないと、こんな混乱期に生き抜いていくのは難しかったのだろうと思う。

    幕末から明治への変革期、そして、戦後の混乱期、時代に合わせて素早く変わっていくことは日本人に身についている賢さなのかもしれない。

    生きていくたために、家族のために、アメリカ兵と付き合い出した主人公の母、RAAでアメリカ人を相手に身体を売る女性、パンパンになった女性。
    誰が彼女たちを責めることができるだろうか。
    全ては戦争、国家、激しく移り変わる時代の混乱期の犠牲になった女性たち。
    そして、そういう女性たちの悲しみの上に、今日の平和が成り立っている。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.11.08

  • おびのり

    おびのり

    昭和20年8月15日水曜日。その日誕生日でもあった鈴子は、母と敗戦を迎える。
    戦争は、彼女達から多くを奪って終わった。そして、敗戦は、若い多くの女性たちに新しい苦難を与える。
    戦後、RAA(特殊慰安施設協会)が設立され、若い女性達が、一般女性の防波堤として集められていく。彼女達は、自分や家族の生活の為、仕事として受け入れる。
    鈴子の母親は、夫を事故で亡くし息子達を戦争に取られ、生きていく為、RAAでの通訳の仕事を得る。
    RAAを近くで見た鈴子が、見聞きして理解した戦後を描く。辛い箇所はあるけれど、中学生くらいから読めるのではと思う。
    鈴子は、それと共に彼女のお母さまの変貌を見てきた。戦前、妻と母親であったお母さまは、生活の為、好きだった英語を武器に通訳として、働く。娘に「自分で生きる力をつけなさい。」と教育を与える。その変化に戸惑い反発もするが、戦後を生き抜こうとする女性たちも立ち上がり始める。
    多くの犠牲と労苦の上に今があるんですね。
    続きを読む

    投稿日:2022.10.18

  • ロブはた☂

    ロブはた☂

    超絶久しぶりの乃南アサ作品。面白いんだけど、僕この人の文章あまり得意でない、と言うことを今さらながら思い出した。この人の作品には「涙」で出会い、あれは傑作で一気読みしたけど、その頃から文章は肌に合わなかったんだな。その後数作品読んだけど、その後しばらく離れてた。エッセイの「美麗島紀行」も同じ台湾を愛するものとして楽しく読んだけど、ちょっと違うな感は有ったし。今回隔離期間用に2冊手に入れてきてこれが一冊目、さあどうするかなあ。面白くない、と言うことではなく個人のテイストだけの話なんだけどね。続きを読む

    投稿日:2022.08.06

  • 和也

    和也

    昔は、外人に体を売らなきゃいけない人がたくさんいたんだ…それをパンパンと呼ばれ…こういう時代があったこともちゃんと知っておかなきゃいけない。

    投稿日:2022.07.08

  • scent

    scent

    戦後母と14歳の娘が生き抜くお話でした。
    終戦までは男達が 国外に出て 戦い
    戦後は女性達が 国内で戦った話です。

    戦時中は 夫や息子を差し出し
    終戦後は 妻や娘を手放さねばならなくなった
    多くの日本の人達
    何の為の戦争だったのだろうか?

    戦時中は アメリカに対してのすごい嫌悪を現していたのに
    戦後手のひらを返したように GHQなどに擦り寄っていく人々。

    心が豊かになる10代の主人公が
    戦争の恐怖 戦後の混乱、
    占領下でも 生きていくには 
    あきらめと いえるような 生き方をするしかなかった。

    少女から大人になっていく
    過程でこのような状況になってしまった主人公ですが
    終わりの方には 友人との再会もあって
    希望が見えたような気がして 良かったです。

    生き抜くというのは 本当に大変な事だと
    しみじみ思いました。
    続きを読む

    投稿日:2022.06.11

  • 百子

    百子

    昭和20年8月15日水曜日は、戦争が終わった日。

    「凱歌」とは、「勝利を祝う歌」のこと。



    14歳の鈴子が、

    進駐軍相手の特殊慰安施設で通訳として働くことになった母と、

    戦後を生き抜いていく物語。

    生きていくために苦しみながら施設で働く女たちも登場するのですが、

    暗く重い物語になっていないのは、その女たちのたくましさのせいかもしれない。





    ※特殊慰安施設協会とは、日本が進駐軍の性暴力に備えるために女性を募り、

     東京、熱海など日本各地に、慰安所を作った実在の組織で、

     5万人を超える女性が売春や娯楽を提供したとされる。
    続きを読む

    投稿日:2022.03.26

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。