【感想】天下一の軽口男

木下昌輝 / 幻冬舎時代小説文庫
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
5
4
2
0
0
  • 今年は「彦八まつり」に行きます

    笑いの好きな大阪人の必読書です!
    大阪に住んでいながら、名前は知っていたものの、生國魂神社に行ったことがありません。本作品に描かれていた彦八を想像しながら、彦八まつりに行こうと思います。

    投稿日:2019.08.05

ブクログレビュー

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  • DJ Charlie

    DJ Charlie

    紐解き始めて、直ぐに頁を繰る手が停められなくなり、素早く読了に至った一冊である。
    長い江戸時代の前半側、未だ17世紀である、将軍の代で言えば4代目、5代目というような時代を背景にしている物語だ。所謂「上方落語」の元祖というような人物と伝わる米沢彦八を主人公とする物語だ。
    現在では所謂「お笑い」というのは、何やら間口が広いエンターテインメントということになるのかもしれない。かなり古くから諧謔というのか、笑いを誘うような表現は在ったかもしれない。が、「人々の御愉しみ」ということで誰かが何かを演じて、それを観る、聴くで笑うというような現在の「お笑い」にも通じる営為が起り、発展したのは江戸時代と考えられる。その「お笑い」の草創期に活躍したと伝わる人物の物語が本作である。
    「誰かが何かを演じて、それを観る、聴くで笑う」というような芸が、確立している、認知されているとも言い悪いような時期に、米沢屋の彦八はそういうことをして身を立てたいというようなことを夢見る。近所の色々な人達の物真似をして、考えた笑える話しを演じて披露する場を勝手に設けて、幼馴染の女の子と一緒にその場を取り仕切ってというような少年時代を過ごす。そして長じて、勃興する「お笑い」の世界に身を投じて、様々な経過が在る。そういう経過を辿るのが本作の物語である。
    本作の物語そのものが、名古屋に設けられたという、現在の常設の寄席に相当するような場所で、或る男が「米沢彦八なる人物」を語っているという様子を間に挟みながら進んでいて、何処となく「古典落語の内容を小説化」という風情も漂う。
    大坂から江戸に出て、色々と在って大坂に戻り、そこで名を成す米沢彦八の経過だが、「江戸時代の或る男の物語」の体裁ながらも「何時の時代にも在るかもしれない」というような普遍性を帯びているような気もした。成功しそうな者が出てくれば、足を引っ張るような謀を巡らせるような者も現れるというのは、時代や場所を問わず在りそうだ。そういう中で、成功しそうな何かが必ずしも成功しない場合も在ろうが、曲折を経て成功する場合も在る。本作を読み、愉しみながらも考えさせられた。
    「大阪に所縁の内容である文庫本」で「御薦め!」を大阪の書店関係業界の皆さんから成る選考委員会で択んで推薦しようという<大阪ほんま本大賞>という賞のことを知り、過去の受賞作品の紹介に触れた。そういう中で、所謂「上方落語」の元祖というような人物と伝わる米沢彦八の物語というのに強く惹かれた。作品を愉しんだ後に、最近幾つかの作品を愉しんだ作者の作品と知ることになった。そこが少し興味深い。
    「時代モノ」ということになると、「何やら面倒な…」と思われてしまうかもしれないが、本作に関しては断じてそういうことはない。大阪の難波が、未だ畑が沢山在る村だった頃、道頓堀が竣工して水運に利用されるようになっていた頃、現在で言う「お笑い」を志した男が在って、幼馴染の女の子の最高の笑う顔を観たいというだけの理由で色々と奮戦するという物語が本作である。「時代モノ」の体裁でいて、その枠を大きく食み出している。大阪が舞台の青春モノ、サクセスストーリーだ。凄く面白い!!
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    投稿日:2023.09.11

  • pokke

    pokke

    上方落語の祖・米沢彦八を主人公に描いた小説。
    江戸で裏切りや盗作騒動などで挫折を味わい、二度と辻噺はしないと大坂へ戻ってきた彦八が
    たまたま足を踏み入れた生玉さんで舞台に上がり、人のいない客席を見ながら、「もし、ここに客が入れば、どんな光景がひろがるんやろか。」と想像し、再び辻噺をする決意をする場面では、応援したくなると同時にうるっときました。
    頭も悪い、喧嘩も弱いのに問題ばかりおこす筋金入りのぼんくらやけど、老若男女どんな人をも区別せず全ての民を笑わせるために一生をなげうった彦八の姿には心動かされた。
    安楽庵策伝の「わしはな、笑いで人を救いたいんや。日々の暮らしに疲れた民の顔に、ほんの一時かもしれへんけど、笑いという花を咲かせたい。そうすることで苦しみや痛みを、しばし忘れてもらうんや」という思いそのままに生きた人だったんだなぁ。

    コロナがおさまり、生玉さんでの彦八まつりが復活したら是非行ってみたいし、上方落語がもっともっと繁盛したらいいなと思いました。
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    投稿日:2022.09.19

  • scent

    scent

    上方落語の始祖である ぼんくら男のお話でした。

    人を笑わす その相手は誰かというのは
    時代と共に変化していく。
    笑いも 昔は 偉い人が占有していたんですね~~~

    文化や 娯楽は 庶民が 加わる事によって
    どんどん広がるのですよね。

    笑を 商売に変える。
    今では 当たり前に見えてる事も
    最初は大変な苦労があったのですね。
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    投稿日:2022.06.16

  • ka2te2

    ka2te2

    彦八という人間を通して世相やら文化やら歴史やら笑いやらを感じた一冊。木下先生、絵金さんとかの時にあった物足りなさも今回はたっぷりで大満足。

    投稿日:2022.02.09

  • Ryohei

    Ryohei

    木下作品は3作目。気軽に購入したのでそこまで期待はしていなかったが、非常にテンポが良く、期待以上の面白さだった。

    話は単純で、子供時代の彦八が天下一の御伽衆を目指し、江戸へ行って栄光の兆しと挫折、大阪での生涯の居場所を見つけ、晩年は後世代にどう残すかを自問する展開。これに二代目安楽庵策伝のエピソードが冒頭に加わる。

    子供の頃の彦八を知っていると、大阪生魂神社で人々を笑わせることを使命と気づくシーンはジーンとくるものがあった。最後の後進のためにという部分は少し尻切れ蜻蛉な感じがするが、史実に基づくとすると仕方ない気はするし、彦八らしいとも思う。

    笑いで金を稼ぐことすら考えられなかった時代があったということを改めて感じ、それを打破してきた武左衛門や彦八には畏敬の念を覚える。近年、M1などお笑いの賞レースが盛んになり、笑いに命をかける芸人が増えてきているが、お笑い=馬鹿な奴、社会の落ちこぼれというイメージが、それこそ歌舞伎や能と同じ専門家集団として見られてきているのは私は非常に良い傾向だと思う。
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    投稿日:2021.10.04

  • _startling

    _startling

     木下昌輝さんの作品にはじめて触れたのは、
    『戦国十二刻 終わりのとき』。

    「時代ものを書かれる方で、
    今、おススメの作家さんはいませんか?」
    と伺った折、
    日本橋のタロー書房さんに教えていただきました。

     木下作品でよく語られるのが、
    その視点の斬新さ。
    私も夢中になり、あれよ、あれよという間に
    現在刊行されていらっしゃる8割を読破。

     なかでも、繰り返し読んでいるのが
    「天下一の軽口男」。
    江戸中期、庶民のあいだに落語を広めて行った
    米沢彦八の一代記がつづられています。

     大阪の本屋と問屋が選んだ
    ほんまに読んで欲しい本
    「大阪ほんま本大賞」(2019年)受賞作。

     当時、お座敷に呼ばれるかたちで発展していった江戸、
    神社を中心に、ストリート・パフォーマンスとして発展していった大阪。
    東西の落語の発展のすがたを、
    楽しみながら学ぶことができる1冊です。

     大阪出身の彦八が、若き日、江戸で学び、
    ある一件を機に、帰郷して拓いて行った道。

     愉快な表紙とは裏腹に、
    その壮絶な一生に惹きこまれます。

     連載後、
    大幅に加筆修正されるケースが多い木下さん。
    文庫版では連載時との変化も楽しみのひとつですが、さらに、本作の舞台化の折、
    主演された落語界と縁の深い駿河太郎さんとの
    対談原稿も収録。

     ひとつぶで三度おいしい? 大好きな作品です。
     
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    投稿日:2021.06.24

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