【感想】公正的戦闘規範

藤井 太洋 / ハヤカワ文庫JA
(15件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
7
5
2
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0
  • 近未来SFの俊英が描く、最新短編集! お勧めっ!

    電子書籍で人気を博して実際に本の出るSF作家になったという、まるでSFの中の話しのような経緯でデビューした近未来SFの俊英、藤井太洋さんの最新短編集。

    5つのエピソードが載っていて、インターネットがなくなって、閉じたトゥルーネットのある世界のコンピュータに生まれた知性を描く『コラボレーション』。

    量子コンピューティングをテーマに、近未来のフィリピンで展開される『常夏の夜』。

    軍用ドローンがブンブン飛んで楽しいです。上海のゲーム会社を舞台に、主人公が昔持っていた中国が国策的に作っていたスマホHW7に入っていたアプリについて意外な秘密が明かされていく『公正的戦闘規範』。

    今のトランプ政権下では笑うに笑えない、銃が持ててて、白人優位で、テクノロジーに肯定的でないもうひとつのアメリカが独立している未来を描く『第二内戦』。

    そして、一番SFっぽい、木星系の資源採掘に携わる宇宙労働者の話『軌道の輪』。

    どの話も、実現性がロジカルに考えられていて、最新のIT業界などに詳しい藤井さんならではの作品。SF好きは必読!
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    投稿日:2017.09.08

ブクログレビュー

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  • vinland

    vinland

    シンギラリティ―を、AIが意思を持って人類を排除するというような荒唐無稽な世界としてではなく、計算力や処理能力が飛躍的に上がることで起きる変化として描く。
    量子コンピューターや相互にやり取りするAIなどによって技術的には現在の延長のような世界でも劇的な変化をもたらすことを短編ならではの鮮やかな場面の切り取りで描いている。
    既存のインフラやその延長上の技術で十分に快適な生活を送れるということを倫理ではなくAI制御の側面からしっかりと示す。凄惨な話もあるが、どこかで技術への信頼や明るい展望が示される。

    いままでこの作者の登場人物にはいまいち優等生過ぎて共感できないとこがあったが、今作では全く気にならなかった。今後作者の作品がますます楽しみとなった。
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    投稿日:2023.08.26

  • おさるのかごや

    おさるのかごや

    SF短篇が5つ。カバーは表題作の山場、近未来の中国での対テロ戦です。テロリストを倒すのは未来兵器なのですが、戦闘への人の関わり方を考えたお話しです。戦闘能力を持ったドローンが大量生産されたら怖いですね続きを読む

    投稿日:2021.11.18

  • れふ

    れふ

    他よりも取り扱う技術が新しいからなのか、求めるリアリティの水準が合っているからなのか、相変わらず藤井太洋の描くSFは面白い。
    物語がこれから膨らみ、盛り上がっていきそうなところで終わってしまう短編であることだけが残念。
    200215
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    投稿日:2020.02.16

  • もるがな

    もるがな

    このレビューはネタバレを含みます

    藤井太洋の送る技術特異点とその先の近未来を描いたSF短編集。量子コンピューターによる量子アルゴリズムとフリーズ・クランチ法という未来予測。クォイン・トスというゲームが彩るセブ島での一騒動を描いた「常夏の夜」が個人的に一番面白かった。近未来的なガジェットがてんこ盛りでありながら、ディストピアめいた悲観的な視野は一度もなく、量子ネイティブへの期待という人類の希望が詰まっている。因果逆転した記事を参考に、暴走するクラブマンからの攻撃をかいくぐる姿は良質なハリウッド映画を見たときのような興奮を味わうことができる。

    表題作である「公正的戦闘規範」もドローンにより人類不在になりつつある戦争に公正さを取り戻すという意欲作である。ORGANというオペレーターが直接戦場に立ち、火器や無人機を操作するというのが非常に面白く、殺意を戦場に閉じ込め、その戦う姿に物語を付随させるという結論には膝を打ってしまった。大切なのは誰が血を流し戦っているかであり、そこに物語があるか否かである。戦争の概念が変われば戦場は薄く広がっていき、テロが激化するため、あえて戦争を戦場に固定してしまい、裏を返せばORGANさえ倒せばそれが勝利条件になるため、戦争そのものがわかりやすくなる。この視点は非常に斬新であり、感銘を受けてしまった。人類同士の争いを超えた、人類vs無人機の戦争でもあるのだ。

    「第二内戦」はアメリカが二つに分断された話なのだが、アメリカの歴史や開拓者精神、自警団的な発想を考えれば一番ありそうな未来に思えた。古き良き時代のアメリカを取り戻し、マッチョ思考に彩られた白人だけが住む国。FSA「アメリカ自由領邦」という国名がとても良い。

    どの短編も、幕引きは常に人類の新たな挑戦と希望に満ち溢れている。本来の技術革新はこうしたワクワク感に溢れているものであり、SFといえばディストピアというイメージを持っている人にこの本書を読んでほしい。

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    投稿日:2019.05.30

  • うみ

    うみ

    このレビューはネタバレを含みます

    5篇収録の短編集。どれも、めっちゃ面白かった!
    一つ目の「コラボレーション」を読んだ段階で、当たりを確信できた。この著者を追っていくしかないな!(確信

    テクノロジーを悪とせず、テクノロジーの生み出す変化を好意的に捉えているのが相性の良い理由なのかな?(良かった理由は、まだよくわかってない

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    投稿日:2018.10.14

  • unodai

    unodai

    そうそう、これこれ!
    現在の延長線上にあるちょっとした未来と、新技術がもたらす社会変化をポジティブに描いてくれる、藤井太洋ワールドが炸裂です。
    未来に希望が持てる作品です。

    投稿日:2018.08.11

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