【感想】「公益」資本主義

原丈人 / 文春新書
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
4
5
1
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • shosho

    shosho

    どこでこの本を知り購入しようと思ったのか忘れてしまったが当たりだった。素晴らしい考え方だと思う。日本的経営がまだ色濃く残っている時に就職し、全体最適を常に考えるようにしてきた自分にとって株主資本主義、金融資本主義はやはり合わない。とは言うものの、それがグローバルスタンダードだと言い切られてしまうとスッキリしないまま従ったり、分かったふりをしていたような気がする。こう明解に言ってくれると大変ありがたい。
    ①富の分配における公平性
    ②経営の持続性
    ③事業の改良改善性
    会社は株主だけのものではない、というのは以前読んだ岩井克人の本にも通ずるものがある。良い会社かどうか、見極める指標として「公益」資本主義についてはもう少し勉強したいし、この考え方に合致するような会社経営をしたいと思った。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.27

  • Everybody_hosso

    Everybody_hosso

    バブルが弾けるまでの日本型の資本主義を取り戻そうというメッセージ本。元気がもらえます。
    就職活動する前に読んでみたかったなぁ。結局東芝も株価という実態のないものを追い求めて破滅したんだなって思いました続きを読む

    投稿日:2023.12.09

  • おぬま

    おぬま

    twitterで「岸田首相のブレーンはコイツだ」「新しい資本主義の影の立案者だ」などと言われてるのを見て著者を知り、どんな内容なのか知りたく購入した本。

    最初の30ページほどは、とにかく資本主義の悪い面を語っているので、「なんだ、ただの社会主義者じゃん」と思った。
    もし「新しい資本主義って結局何なの?」を知りたければ4章から読むのがお勧め。
    読み終えて、少なくとも著者が目指したい資本主義を理解はできたと感じた。

    界隈で強く批判されるほど、悪い考えとは思わなかったし、むしろ賛同したいと思った。
    同時に、「新しい資本主義」というワードだけが独り歩きしているのは、これも政治なんだなぁ、と感じる。

    今後、岸田政権がこの本の考えに沿ったかたちを目指すのか、注視していきたい。
    続きを読む

    投稿日:2022.02.28

  • 湖南文庫

    湖南文庫

    原丈人(1952年~)氏は、慶大法学部卒、スタンフォード大学大学院工学修士の実業家、ベンチャーキャピタリスト、考古学者。当初は考古学を志して、その資金づくりのために渡米し、大学院在学中に起業した後、1984年にベンチャーキャピタルのデフタ・パートナーズを設立、その後シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストとして活動し、米、英、イスラエルの世界的企業の会長を歴任。2013~20年に内閣府参与。米NGOのアライアンス・フォーラム財団代表理事、デフタ・パートナーズ・グループ会長。
    本書のテーマである「公益資本主義」とは、著者が2007年の著書『21世紀の国富論』で提唱し、2014年の世界経済フォーラムのアジェンダ決定会議の場で示し、2017年には同フォーラム年次総会であるダボス会議で、山本幸三内閣府特命大臣が日本政府を代表して言及したもので、2020年のダボス会議で発表された「ステークホルダー資本主義」の元となっている考え方(ほとんどパクリ)である。
    私は以前より、世界に広がる格差の元凶である資本主義に問題意識を持っており、これまでも、ジョセフ・スティグリッツ、広井良典、水野和夫、トマ・ピケティ、斎藤幸平ほか多数の著書を読んできた。それらはどちらかというと長期的かつ概念的なものであったが、もう少し短期的・技術的な対処方法も考えたいと思い、本書を手に取った。
    一読すると、現在の資本主義(これを著者は「株主資本主義」と呼んでいる)の実像と問題点、株主資本主義と公益資本主義の違い、公益資本主義を実現するためのポイントと具体的なルールなどが明確に理解できる。
    因みに、株主資本主義と公益資本主義の違いは以下。
    <株主資本主義> ●短期の勝負、●新たな富を生まない(単なるマネーゲーム、ゼロサムゲーム)、●一部の超富裕層と大多数の貧困層を生む、●英米の金融界、メガファンド、投機家、ウォールストリートが望む資本主義
    <公益資本主義> ●中長期の勝負、●新たな富を生む(プラスサムゲーム)、●層の厚い中間層を生む、●大多数の日本人と、世界の大多数の国民が望む資本主義
    また、公益資本主義を実現するための3つのポイントは以下である。
    ●中長期投資・・・持続的成長を支えるために、中長期的な投資を行う。経営陣は、短期の利益を求めつつも、中長期的な課題にバランスよく取り組む。●社中分配・・・会社があげた利益を、株主だけでなく、会社を支える社中(経営者、従業員、仕入先、顧客、株主、地域社会、環境)各員に公平に分配する。こうすることで社会の格差を是正し、貧困層を減らし、層の厚い中間層をつくる。●起業家精神による改良改善・・・リスクをとって果敢に新しい事業に挑戦し、常に改良改善に努める。

    著者はあとがきで、「今後、世界の人口は、途上国を中心にさらに30億人程度増加すると予想されているが、地球上のすべての人々が、平和で豊かに暮らせる世界を望んでいるはずである。こうした世界を実現するには、経済の新しい仕組みが必要となる。資本主義自体も、いずれ新しい仕組みにとって代わられるだろう。しかし当面の間は、資本主義が続くことも間違いない。ならば理想論にとどまらず、まず現実的に世の中を変えることが重要だ。その原動力となり得るのが、本書で論じてきた「公益資本主義」だ。」と書いているが、著者の思いに100%同意する。
    岸田新首相は「新しい資本主義」を掲げるが、公益資本主義こそそれなのではあるまいか。税制や金融制度や法令を変えればできることであり(資本主義のシステム自体を変えるのとはレベルが違う)、何より、公益資本主義とは、日本がかつて行ってきたことそのものなのだ。
    (2021年12月了)
    続きを読む

    投稿日:2021.12.16

  • けいちゃん

    けいちゃん

    この前に読んだ「会社はだれのものか」で登場していた原丈人さんで検索して見つけた本。1,2,4,5章を読んだが、非常に意欲的な作品。学生のようなエネルギーを感じた。そして実績も十分のようだ。三方良しの日本型経営から発展しうる公益資本主義と主にアメリカを念頭に置いた株主資本主義を比較、そして株主資本主義の欠点を指摘。公益資本主義においても、まずは大いに稼ぐことが大前提、この点は激しく同意。利益さえあれば大抵の問題はなんとかなると思うので。利益を上げれていない法人企業は頑張っていただくとして、この著書の偉大と思うところは、利益の出ている会社が公益資本主義を実践するための手段が用意されているところ。株主資本主義の影響を薄めるというアプローチで、保有期間に応じたキャピタルゲイン課税や市場作り、法人企業のストックオプション廃止などを提案。成長と分配を掲げる岸田政権にも考慮していただきたい。中長期投資家としての私の希望でもある。5-10年保有したら税率0%、デイトレーダー(1年未満)は30-40%など大賛成です。格差の拡大こそが諸悪の根源であると、ここの理由づけも時間がある時に考えてみたい。続きを読む

    投稿日:2021.12.11

  • ますく555

    ますく555

    このレビューはネタバレを含みます

    英米主導のグローバリズムは、英米の基準や価値観、考え方を諸国に押し付け、英米が利する世界になることを理想とする主義だといっていいものです。そこには、グローバリゼーションの名のもとに、各国・各地域の多様性をおしのけて一律化をすすめていく作用が生じている。その波は確実に日本をも飲みこんでいて、90年前後にバブルがはじけてから敬遠されるようになった「日本型経営」を、より排斥していく方向に力が働いてきた。グローバリゼーションを進めたアメリカの資本主義は、いまや「株主資本主義」と言われます。株主の利益を最優先事項とし、会社は株主のものであり、株主の利益を出すために隷属したものだと当り前のように考えられている。利益を得るため、それもできるだけ短期間に株主が大きな利益を得るために、研究開発などの中長期のビジョンを会社に捨てさせて、短期の利益ばかりを考える戦略をとらせ、ことによっては従業員をリストラしてまで株主や役員が大きな収入を得る行為をします。もはや、我利我利亡者といった体です。こういったスタンスの帰結するところが、貧富の拡大、格差の拡大なのでした。会社が利益を得ても従業員の給与は上がらず、株主や経営陣に還元されます。
    くわえて、ヘッジファンドやアクティビストの存在があります。
    ヘッジファンドとは、株価や商品の相場、通貨相場などにおいて、「将来の理論値と実態との乖離」に着目して資金を注ぎ込み、利ザヤを稼ぐことを目的としたファンドのこと。(P87)
    アクティビストは、かつてのサッポロビールやブルドッグソースにTOB(株式公開買い付け)を仕掛けたスティール・パートナーズや、ニッポン放送や阪神電気鉄道の株を買い占めて話題になった村上ファンドのような、いわゆる「モノ言う株主」です。しかし、彼らはなんのために「モノを言う」のか。「健全な企業経営」のためではなく、その企業が持っている資産の売却や現金の配分こそ彼らの狙いなのです。(P87)
    これらが合法的に行われる現行の資本主義、つまり、ただ金さえ増えればよいという価値観で動いている「株主資本主義」や「金融資本主義」と呼ばれるもの。このかたちでの資本主義によって、グローバリズムが広がった日本などの先進国、それはグローバリズムの旗手である英米も含むのですが、それらでは中間層がなくなり、スーパー富裕層と貧困層の二極化を生みました。
    本書は、こうした現行の資本主義のおかしさをはっきり指摘したうえで、「株主資本主義」に代わり、なおかつより豊かな世界をもたらす「公益資本主義」を提唱するものです。「公益資本主義」は先述の「日本型経営」に立ち帰るような要素のある考え方です。「会社は株主のものである」ではなく、「会社は社会の公器である」とします。株主だけを優遇するのではなく、従業員、顧客、地域、地球環境などに、公平かつポジティブに働くような主義です。著者は、この「公益資本主義」をアメリカ人に説いたときに、「共産主義じゃないか!」と言われたことがあるそうですが、そこは違うと否定しています。「公益資本主義」は利益あってのものですし、「株主資本主義」よりもたぶんに持続性もあり、そのうえで収益もそれ以上にあげられるようです。詳しくは本書をあたってほしいのですが、格差の進行する「株主資本主義」というものが、歪んだ資本主義であることを意識できるようになるだけでも違うと思います。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2020.07.15

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。