【感想】キャスターという仕事

国谷裕子 / 岩波新書
(65件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
23
20
12
0
0

ブクログレビュー

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  • ginkan2

    ginkan2

    このレビューはネタバレを含みます

    国内国際、政治、経済、地域、生活、教育、災害、事件、等々、世の中のありとあらゆる課題を正面から取り上げ、深めていく。頭が下がります。「ハルバースタムの警告」、なるほど。テレビに限らず「分かりやすさ」を求められる今日ですが、世の中、そんな単純じゃないですよね。複雑極まりない。単純化ではなく、手間をかけて深めていくことが、今、全てに求められている気がします。国谷さんの言葉、力強いですね。一語一語にエネルギーを感じます。マスコミ界にはもちろん、我々一般人としても肝に銘ずべきことが沢山見つかりました。

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    投稿日:2024.04.10

  • 湖南文庫

    湖南文庫

    国谷裕子(1957年~)氏は、大阪府生まれ、聖心インターナショナルスクール、米ブラウン大学卒。父の勤務に伴い、幼稚園から中学校まで、ニューヨーク、サンフランシスコ、香港、日本を行き来しながら過ごした。P&Gジャパンに就職するも1年で退職し、その後、知人の紹介でNHKに仕事を得、「NHKニュース」英語放送の通訳者、ニューヨーク総局のリサーチャー、「ワールドニュース」駐米キャスター、「NHKニュースTODAY」の国際コーナー担当等を経て、1993年4月から2016年3月まで23年間、「クローズアップ現代」のレギュラーキャスターを務めた。現在は、東京藝大理事、国連食糧農業機関(FAO)日本担当親善大使、等として幅広く活躍。菊池寛賞(国谷裕子と「クローズアップ現代」制作スタッフ/2002年)、日本記者クラブ賞(2011年)等を受賞。
    私は、国谷さんの少し下の世代だが、若い頃から「クローズアップ現代」は好きで、その看板である、知的で凛々しい国谷さんのファンでもあったが、昨年末の「クローズアップ現代・放送30周年 年末拡大スペシャル」に、ゲストとして出演した国谷さんを久し振りに見て、本書のことを思い出し(本書のことを知ってはいたが、読んではいなかった)、早速入手し読んでみた。
    本書は、基本的には、国谷さんがNHKに仕事を得てから、「クローズアップ現代」のキャスターを降板するまでの、キャスターとして成長していく過程、「クローズアップ現代」制作の舞台裏、印象に残る放映やインタビューの相手、更には、キャスターとはどうあるべきか等を、率直に綴ったものである。
    その中で特に印象に残ったのは、テレビ報道の持つリスクと、それを踏まえてキャスターはどうあるべきかという部分である。
    テレビ報道は、その映像の力により、当該事象を端的にわかり易く伝える強力なツールになり得るし、加えて、メッセージがシンプルな方が視聴率を稼げるともいう。しかし、世の中の事象の多くは、実際にはそんなシンプルなものではなく、安易にわかり易くすることは、当該事象の深さ、複雑さ、多面性をそぎ落としてしまうことになる。そして、更に危ういことは、視聴者がそのようなシンプルなメッセージに慣れてしまうことにより、わかり易いものにしか興味を持てなくなることである。そのようなテレビのデメリットを補うために、キャスターは、テレビに映し出された映像がいかなる意味を持ち、その背景に何があるのかを、言葉にして視聴者に伝える必要があり、それはときには、難しい問題を難しい問題として、視聴者に受け取ってもらうということでもあるのである。
    翻って、昨今は(本書の出版から5年ほどしか経っていないのだが)、テレビすら見ることなく、インターネットやSNSで自分の知りたい情報・わかる情報にしかアクセスしない人が増えており(そもそも、閲覧履歴からそのような情報ばかりを提示するようにプログラムされている)、それが、社会の分断を煽る原因のひとつとなっていることは周知の通りである。
    そう考えると、国谷さんが提示する、「テレビ報道とは、キャスターとは、どうあるべきか?」という問いは、我々の民主主義の将来につながる重要な問いでもあるのだ。
    また、終章では、「ここ二、三年、自分が理解していたニュースや報道番組での公平公正のあり方に対して今までとは異なる風が吹いてきていることを感じた。その風を受けてNHK内の空気にも変化が起きてきたように思う。」と書き、特定秘密保護法案や安全保障関連法案について(十分に)取り上げられなかったことを指摘しているのだが、それが何らかの巨大な意思によるもので、また、国谷さんの降板とも関係があるのだとすれば、由々しきことである。
    ともあれ、本書は、テレビ報道とキャスターに焦点を当てて書かれているが、「クローズアップ現代」が扱ってきた様々なテーマについての国谷さんの思いも聞いてみたいと思う。
    (2024年1月了)
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    投稿日:2024.01.16

  • 57☆

    57☆

    私には難しく読むのに時間を要した。公平、公正、フェアな報道番組を作ろうとしていた人がいるんだなと思った。逆風が吹いても、しなやかに風に吹かれ、攻撃的にならずに聞くべきことは誰にも聞く。これからも、こんなテレビ番組なら観たいと思う。続きを読む

    投稿日:2024.01.11

  • yoshi1004

    yoshi1004

    クローズアップ現代のキャスターとして政治、経済、社会などを鋭い語り口で切り込まれた国谷氏の新書。何事にもフェアで真摯な態度で臨まれていた姿が懐かしい。TVのエンタメ化の裏で報道番組の公平公正のあり方が変わっている、との一文に深く納得した。続きを読む

    投稿日:2023.09.25

  • yasu2kei

    yasu2kei

    世の第一線で放送された番組の制作者のひとり、キャスターとして見て捉えた世界を知れる本。

    また、国谷裕子さんの職業半生を自伝的に知れたこともとても印象的だった。たまに番組を見ていた当時はまったくそう思わなかったが、国谷さんが帰国子女であり日本語にコンプレックスを抱えてキャリアをスタートさせていたというのはとても意外で、人に歴史ありだなと思った。続きを読む

    投稿日:2021.12.28

  • あああら 1646886番目の読書家

    あああら 1646886番目の読書家

    このレビューはネタバレを含みます

    キャスターという仕事 (岩波新書) 新書 – 2017/1/21

    キャスターとは不明瞭なものをはっきりと定義付けすることだ
    2017年4月3日記述

    クローズアップ現代で23年キャスターを勤めた国谷裕子氏による自身とクローズアップ現代を振り返った書籍である。

    ただ単純にわかりやすいだけを目指すのではなく、ものの底流に何があるのか
    どんな背景があるのか等の映像では伝えきれない面を言葉で伝えてきたのだという。
    確かに本書を読むとクローズアップ現代という番組がそうだった事に気がつく。
    普段ニュース7の後でそのまま見ていることも多かった。しかしもっと注意深く視聴しておけばと悔やまれる。

    彼女が1993年にはじまったクローズアップ現代のキャスターを行う前にニューストゥデーの国際担当キャスターを外されるという挫折を味わったと
    述べる項目はあの国谷裕子さんが!という思いがしたし意外だった。
    (誰でもはじめは素人だし最初からバリバリ凄い人は極わずかであろう)
    キャスターとしてのはじまり(海外のNYだが)、リベンジとして1000本ノックとして修行したのも衛星放送だった。
    そういう意味で著者は幸運であった。
    また再び訪れたチャンスをものにする力を持っていたのだ。
    (何がダメでどうすれば改善できるか正確に把握し実行することは案外難しい)

    中国の天安門事件を録画したテープを持って空港を出る為、機材をヘアドライアーと述べて日本国内に持ち帰る場面はリアリティがある。
    またジャーナリズム魂を感じる。
    また冒頭で紹介したハルバースタム、途中に紹介するテッドコペル氏のナイトラインのあり方は今でも放送機関のあるべき姿を示していると思われる。
    当事者がナイトラインに出演を避ければ、視聴者は何か説明できない都合の悪いことがあるに違いないとまで思わせる存在感のある番組だったと。
    今、森友学園への不当に8億円も安く国有地を売却した問題が報道されるがナイトラインのような存在感ある番組が厳しく安倍内閣を追求出来ていない
    今の日本は未だにジャーナリズム後進国としか言えないのだろう。

    第4章でキャスターとしての役割について述べている。
    視聴者と取材者の橋渡し役自分(キャスター)の言葉で語る(個人の主観、私見を語ることではない)
    言葉探し(新しい事象に言葉、名前が与えられることで不明瞭なものがはっきりしてくる。

    後半には出家詐欺騒動についても振り返っている。
    ただ試写の段階で気が付かなったというのは同情する。
    取材そのものを全否定するまでは判断出来ないだろう。。。
    難しい問題である。

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    投稿日:2021.12.14

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