【感想】マイナス金利―ハイパー・インフレよりも怖い日本経済の末路

徳勝礼子 / 東洋経済新報社
(9件のレビュー)

総合評価:

平均 3.3
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  • 日銀のマイナス金利政策の意図と影響を推測する手がかりにはなるかも

    この本の出版は2015年10月で、日銀のマイナス金利導入の発表よりも前です。
    本書では「名目金利はプラスでも、為替取引を介せば事実上マイナス金利が発生する」メカニズムを説明し、「事実上のマイナス金利の影響」を評価しているのであって、日銀のマイナス金利政策について直接論じているわけではないです。ですが、いろいろ考えるヒントにはなると思います。

     ※以下の記述は本書の内容と私が思ったことが混在しています。

    <別の基準で考えることの重要性>
    日本国内で暮らしているとどうしても「円」を価値の基準として考えてしまうが、ドルを基準に考えてみるとまたちょっと違う景色が見えてくる。たとえばアベノミクスが始まる前の日経平均株価は1万円弱で、アベノミクス後は一時2万円を超えたが、為替は1ドル80円から120円になっている。ドル換算で見ると125ドルから166ドルへの上昇。円で見れば2倍でもドルで見れば1.3倍。これは価格の例だが、金利についても2つの基準(円、ドル)で考えてみると、円だけを基準に考えるのとは違った景色が見えてくる。

    <貨幣の基本機能に鑑みて>
    少なくとも日本国内では「円」が価値の基準として認識されている以上、「円」の価値が目に見える形で目減りするマイナス金利は、「価値の保存手段」という貨幣の重要な機能の1つを失わせる(あるいは人々にそういう不安を抱かせる)のではないか?(本書では「保存機能が弱まる」と言っているが、その程度で済むのだろうか?)
    通貨の番人たる日銀がそんなことして大丈夫なのだろうか?

    <とは言え日銀は自らの責務を放棄しているとも言えない>
    日本銀行の責務は物価と金融システムの安定を図ること。マイナス金利は、借金を実質的に減らすという形で日本最大の債務者であり日本の安定した統治の要である政府に最大の利益をもたらす。最大の目的はデフレ脱却ではなくそっちなのだろうか?
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    投稿日:2016.02.26

ブクログレビュー

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  • Mark

    Mark

    金利について勉強するのには良い本であった。しかしでは具体的にそれを改善するためにどのような手立てを取るべきなのかと言う内容について言及がなかったのが残念であった。

    投稿日:2022.05.07

  • やなぎ

    やなぎ

    よくまとめられている。
    新聞の内容では得られない部分が特に参考になった。
    投資などしている人は知識の深化におすすめ。

    投稿日:2020.02.11

  • きしやん

    きしやん

    このレビューはネタバレを含みます

    それなりの事前知識がないと、読んでても意味が分からない。
    よって、半分ぐらいしか理解できなかったw
    書籍内ではマイナス金利が発生するメカニズムや流れを主眼としており、それによる影響に関してはあまり議論されてなかった気がします。
    知識が足りないから理解しきれていない可能性も多分にありますが・・・

    この書籍から一番重要だと感じた部位を引用します

    名目成長率=実質成長率+GDPデフレーター
    名目金利=実質金利+期待インフレ率

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    投稿日:2019.09.15

  • M. Nakamoto

    M. Nakamoto

    軽い気持ちで読み始めましたが、なかなかの読み応えでした。日本という国の危険性を再認識しました。資産を早く海外に移したいものです。

    投稿日:2016.04.02

  • headshrink

    headshrink

    このレビューはネタバレを含みます

    出版は絶妙のタイミングだが、実際には日銀のマイナス金利政策前に書かれたもの。金利が決まる過程などについてはやたらと詳しいが、じゃあ、どうすればよいのか、は余り書かれていない。

    ・今は金利よりも為替が実質的に金融政策の役目を果たしている。通貨安によって輸出の競争力が増し、海外所得が自国換算で増価し、実質的に景気緩和効果をもたらす。

    その中で、日本の場合は財政リスクがあるからマイナス金利になるという逆説的な結論になる。最悪シナリオとしてはこれまで国債暴落やハイパーインフレが想定されていたが、マイナス金利によってゆるやかに債務が減っていくというシナリオも想定される。ただし、それはハイパーインフレなどのように一時的なショックでなく、長期的な日本経済の衰退、衰弱死的な破綻を招くシナリオでもある。本来、お金を預けると金利がもらえるのは、そのお金を使って収益を生み出す仕事を誰かがするからなのだが、実質成長率がマイナスになった結果として名目金利もマイナスになっており、現在の日本の低金利は構造的なものになっている。

    ・プロジェクトは金利以上の利回りがないといけない。低金利であれば、利回りの低いプロジェクトにも手を出しやすくなり、景気を刺激することが期待されるが、これは時限的なものであるべき。低金利が長期化すると、低収益プロジェクトが温存され、成長率を押し下げる。

    成長率が低下している状況で緩和を進めても実体経済よりはリスク資産に流れやすく、バブルが発生することになる。

    ・金利の底は0%とされてきたが、マイナス金利になってしまった。マイナス金利には底があり、タンス預金との裁定によって決まる、すなわち、保存コストよりは下にいかないはずなので、−1〜−5%の間が底だろう。

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    投稿日:2016.03.24

  • redmoney41

    redmoney41

    マイナス金利に興味を持ち、手に取ってみた。
    コンパクトにまとまっており、入門書としては最適。
    筆者じたいはどちらかといえば、アベノミクスに反対の立場だが、あまり気にならない。
    後は、筆者と逆の考えを持った人の、同内容の本を読んでみたいものだ。続きを読む

    投稿日:2016.03.02

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