【感想】選択と捨象 「会社の寿命10年」時代の企業進化論

冨山和彦 / 朝日新聞出版
(10件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • pinkfish

    pinkfish

    GとLの世界。グローバルに憧れる日本人は多いが日本ではローカルで地に足のついた仕事をする人がいないと飛躍できない。
    国内企業の悪いのはGに目を向けすぎてLを疎かににしていることかもしれません。

    投稿日:2023.11.02

  • あああら 1646886番目の読書家

    あああら 1646886番目の読書家

    このレビューはネタバレを含みます

    選択と捨象 「会社の寿命10年」時代の企業進化論 2015/6/19

    永久に変化し続けないと淘汰されてしまう
    2015年12月13日記述

    元産業再生機構COO、経営共創基盤CEOの冨山和彦氏の著作。
    2014年10月6日から2014年12月22日まで朝日新聞・朝日新聞デジタルにおいて計10回にわたり連載された「証言そのとき 再生請負人がゆく」をベースに大幅に加筆したものである。

    本書で唯一残念であるのは誤字である。
    P48のタイトル 中小企業の経営者から産業革新機構のCOOへ
    明らかに産業再生機構の間違いであろう。
    朝日新聞出版の編集、校正はどうなっているのか?
    自分が読んだのは第1刷の分であるので、それ以降は修正頂きたいものである。

    カネボウ、三井鉱山、ダイエー、JALなどの企業再生に関して振り返り企業経営において大事な事は何かを語る。
    カネボウに関しては他の書籍でも数多く著者が書いてきているので再読感はある。
    しかしそれ以外の三井鉱山、JALに関しては本書で裏舞台を見ているような思いだった。

    印象的だった提言、指摘、文章を書いてみる。

    永久に変化し続けないと淘汰されてしまう

    多様性を持たないホモジニアス(同質的)な組織では、産業構造の大きな変化には対応できない
    意識的に多様性を高める努力をしなくてはならない
    ⇒外から人材を連れてくる、共同体の発想に染まっていない若手を抜擢する

    あれもこれも(多角化)ではなく、「あれかこれか」(選択と集中)

    ローカル経済圏においては良質な雇用を増やし、経済全体を押し上げるには本当はつぶれるべきなのに生きながらえているゾンビ企業や、若者を酷使するブラック企業には退出してもらうことが大事なのである

    ソニーがまず行うべき改革は、何よりも大人の会社として新陳代謝力を持つこと自前主義の文化や自らの革新性や技術力への過度な期待を捨て去り外部資源を買収・活用できるよう、心も体もフルオープンな会社になること

    大人の会社としては、ものすごいスピードでラディカルなイノベーションが次々と起っているような市場は、若くて小さな会社に譲ればいいのである。

    経営陣選びは「戦う指揮官」を誰にするかということである。
    定年退職者の「あがり」や、社員の論功労賞のポストではいけない。

    Lの経済圏では、顎を引き、地域と顧客に密着して、精緻に緻密に執念深く経営すること
    規模より密度を制することが大事

    「あれかこれか」を選択する場合は、将来世代から見てどちらが好ましいかを基準に決めていくしかない

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    投稿日:2022.01.12

  • ゆうたろう

    ゆうたろう

    ・不要な事業を捨てることが企業の生き残りには重要
    ・企業は箱でしかなく、重要な事業さえ生き残っていればそれでよい、企業組織の存続にはマクロ的には意味がない
    ・これからは、大企業のプレーヤーが多いG(Global)と、小売りや交通、福祉、医療といった地域密着型のサービスが基本となるL(Local)の2つの経済圏がある中で、今後はGDPの7割を占めるLの世界が日本経済のカギを握る
    ・Lの世界では地域と顧客への密着、そして精緻に緻密に執念深く経営することが必要
    ・企業経営の本質とはつまり、「情理」となる共同体の基本原則をよく理解した上で外部環境の変化と折り合いを付け、「合理」(市場競争の経済原理)に基づく冷徹な判断を下すこと
    ・情理に偏り、あれもこれもと捨てずに問題を先送りにするのでなく、合理的判断に基づき選択と取捨を実行出来るかが、今後の日本企業生き残りにかけて重要になってくる
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    投稿日:2021.06.10

  • a0019447

    a0019447

    このレビューはネタバレを含みます

    選択と集中ではなく、捨てることが大事というタイトルからしてすぱっと明確な本。冨山氏の本
    古くて大きな会社に対する処方箋として名著。
    企業再生実務の観点からも非常に示唆深い。
    昭和時代の遺産、歴史を学べる本とも言えそう。
    後段のGとLの世界の課題感も個人的には共感。


    メモ
    ・現代においてイノベーション環境で持続的に成功している会社は、コアをわきまえた上で、事業と機能の新陳代謝と連続的なイノベーションを積み上げている。コアドメイン周辺で起きそうなラディカルなイノベーションシーズは若くて小さな会社を買収していくスタイルをとっている。
    ・運命共同体を形成する約束事としての企業理念やらしさなんてものはグローバル化とイノベーションの時代においては百害あって一利無し。
    ・大人の会社としての新陳代謝とは、若くて小さな会社を取り込んでしまうこと、イノベーション力が競争要因になっている領域は捨て去り参入障壁高く競合密度の低い市場に出ていくことの二つ。例えばgeは航空機エンジン、医療機器、重電といった若くて小さい会社は戦えない領域に出ていった。代わりにデジタル領域やコスト勝負の領域からは撤退してしていった。
    ・カネボウ再建のwhatの話。手触り感がないならそれがわかる人を据えて解決に繋げようという話。
    ・企業は共同体を守り延命することご至上目的になった瞬間に腐敗し、傷んでいく。成長や理念や競争は二の次になる。内向き思考になる。
    ・歴史の真相は中空的なことが少なくない。だからこそ関わる人の動機付け、インセンティブや性格を観察することが重要になる。それこそが結果の決まっていないシナリオの先を予測する最も有効な手掛かりになる。経営観を醸成する根本は人間観を磨くこと。
    ・G型は激しいグローバル競争を意識して戦略的にダイナミックに選択と集中を行う必要。L型は足元を見つめてコツコツとやるべきことを精緻にやること。
    ・地方の基幹産業は農業ではなく、サービス産業。この底上げをしない限り地方経済再生につながらない。
    ・地方で活きていく人々のために行うべきこと
     共働き夫婦が子供2人を育て大学を出せる年収を得られること
     限定正社員やジョブ型雇用の長期雇用を確立すること
     労働者がプライドもって働ける環境を整えること
     すなわちL型新中産階級の構築。
    ・言葉を見に付けていない人間に考えろといっても時間の無駄。

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    投稿日:2021.01.17

  • hopstep

    hopstep

    日本の大企業の宿痾をよく分析して書いている。
    が、あまりにも自信過剰な書きっぷりが鼻につく。
    ところで融資の個人保証をやめろという主張はいかがなものか。
    どこの国でも中小企業はある程度、公私混同している。国によって程度は違うが、日本はかなり悪いほうだと思う。とても、現場をふまえた提言とは思えない。続きを読む

    投稿日:2019.02.09

  • ucym100

    ucym100

    選ぶことは、捨てることである

    ロイヤルティーが事業や仕事でなく、会社に向いている

    永久に淘汰し続けないと淘汰される

    共同体は同質性を保とうとして、暗黙の約束事をたくさんつくる

    要するに、外の企業とは弱肉強食の資本主義の世界で競争するけれど、企業内は運命共同体として、みんな平等で落ちこぼれを出さない社会主義でやっていこうということである

    共同体は多様性を嫌い、同質化を加速させ、大きな環境変化に対する適応力を失っていく

    情理 共同体の構成員としての人々の行動原理
    合理 市場競争の血も涙もない経済原理

    多角化 あれもこれも
    選択と集中 あれかこれか

    企業が滅びでも事業が残り、資本力、経営力のある企業に買収されれば、むしろ新しい雇用を生むチャンスである

    グローバル化の進展により、先進国での雇用で現実に起きたことはなにか。地域密着で対面型のサービス(流通、運輸、社会福祉、飲食、観光)などを提供するローカルな経済圏で働いて給料をもらっている人の比率が上がった

    現代においてイノベーション環境で持続的に成功している会社は、自分のコアドメイン(中心領域)やコアコンピタンス(根源的組織能力)をしっかりとわきまえた上で、事業と機能の新陳代謝と連続的なイノベーションを積み上げている。一方でコアドメイン周辺で起きそうなラディカルなイノベーションシーズは、若くて小さな会社を買収していくスタイルをとる

    cf. GE エネルギー関係のベンチャー企業を買収 コマツ 若いベンチャー企業と連携

    ラディカルイノベーションが主たる競争要因になっている領域は思い切って捨て去り、蓄積的な顧客基盤や経験技術、ノウハウがモノをいう寺領領域や事業モデルにシフトする。血で血を洗う市場から、参入障壁が高く競合密度の低い市場に出ていく

    共同体を守るために、共同体内の当面の調和を犠牲にしてでも果断な決断を行う能力は、洋の東西を問わず、企業が持っているべき根本的な組織能力なのである。それを滅殺するような体質は絶対に一掃しなければならない

    山本周五郎 樅の木は残った

    捨てる決断はボトムアップ型の意思決定では絶対にできず、必ず手遅れになる。トップリーダの専権事項なのだ。正しいタイミングで捨てる判断ができるリーダー人材を育て選抜することは、決定的な意味をもっている

    大事なのは選ぶことと捨てることである

    JALの企業年金は豪華 基礎年金と厚生年金をあわせると月50万 パイロットとCAのカップルなら月100万もあり得た。それが月額10万減るだけの話だったが、あたかも半減されて生活がなりたたなくなるような大騒ぎが始まっていた

    Lの経済圏 小売、卸売、交通、物流、福祉、保育、介護、医療 地域密着型のサービス 地域ごとに違うチャンピョンが存在し得る、棲み分けも可 生身の顧客に密着、対面していないとサービスを提供できないので、いわゆる空洞化は起きようがない

    最近Lの経済圏でどこも深刻化しているのが人手不足

    人口減による国内市場の圧縮圧力と働き手不足の両方の影響下では、なによりも労働生産性を上げることしかない

    団塊の世代が平均寿命を迎えるまでの20年間は、もっぱら消費する側に回る高齢者の数が圧倒的に多くなり、生産する側は働き手不足は構造的に変わらない。

    GとLの世界では経済圏が異なり、両者の間に、かつてのような垂直的な産業関連性がないため、大企業が儲かれば中小企業にトリクルダウンがおこることはほとんどない

    地方自治体と商工会議所などの産業界、金融機関が手を携えて長期的に粘り強く居住の集約化を促進しないといけない。都市計画を再設計し、商店と病院と介護と保育の機能を一カ所に集約するのだ

    鬼怒川温泉の再生 池田頭取が立派だったのは、この温泉街が全体として完全な供給過剰構造にある現実を直視していたことだ

    東京の事務敵職業の有効求人倍率は0.35倍 2014/10 この国からなんとなく東京に出てサラリーマンになるという選択肢は確実に消えつつある
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    投稿日:2016.12.03

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