【感想】ゲーマーはもっと経営者を目指すべき! 電子特別版

4Gamer.net編集部, 川上量生 / KADOKAWA
(8件のレビュー)

総合評価:

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  • ドワンゴの経営感覚

    ゲーム情報サイト「4Gamer.net」で連載していた、ドワンゴ社長川上量生氏の対談集です。自分は元の対談記事を読んでいなかったため、それぞれのお話を新鮮な気持ちで読むことができました。
    川上さん自身が大のゲーマーで、ゲームの自慢話をしたかったそうです。それでは対談企画が通らないだろうということで、書名にあるような経営と結びつけたテーマで「だまして」企画を通そうとした結果が本書です。とはいうものの、なかなかどうして、しっかりした経営の考え方をお話しされています。

    第2章の、新しい事業を軌道に乗せるためのエネルギー理論があり、なるほどと思わされました。
    経営やマーケティングでは「キャズム」という考え方がでてきますが、これを化学の「活性化エネルギー」に置き換えて説明しています。
    (川上さんが大学で工学を専攻しており、化学の考え方が身に付いていたこともあるのだと思います。)
    新しい製品やサービスは、キャズムを越えると大きく売れ行きを伸ばします。「キャズム」「活性化エネルギー」でそれぞれ画像検索して並べてほしいのですが、キャズム越えを化学反応、越えるのに必要な労力を活性化エネルギーと対比しています。キャズム越えを簡単にする施策があれば、それが触媒と言えるわけです。
    ここからが川上氏の理論で、活性化エネルギーの山を越える前(反応物)と越えた後(生成物)のエネルギーは、どちらが高いか決まっていません。これが製品・サービスにも当てはまり、キャズムを越えた後のエネルギーのほうが小さければ、キャズムさえ越えれば後は勝手に売れていく、という考え方ができるということです。
    そういうサービスを見極めることが大事で、ドワンゴがサーバー構築⇒着メロ販売⇒動画共有と業態を次々に変えていったことも、儲かるサービスへの嗅覚力と、競合が出れば撤退という軸がしっかりしていたからではないか、と考えられます。

    そして、自分が将棋が好きというのもありますが、コンピューター将棋の「やねうらお」氏との対談、その後に日本将棋連盟の谷川浩司会長(十七世名人)との対談があったのを興味深く読みました。
    将棋にランダムの要素がないことで、コンピューターにとっては暴力的な計算量で人間を圧倒するだけではなく、究極的には相手がどんな手順を指し手も自分が勝てる着手を見つける(見つけられなければ自分の負けである)こともできるでしょう。
    ゲームの本質としても、将来の数十通りの手順のうち勝てる順が1つしかなくても、その1つを選ぶことができます。これが確率に左右されるゲームであれば、期待値を算出して勝ちやすい手を選ぶことになり、ゲーム性が大きく変わってしまいます。

    ドワンゴは変な会社だと思っていましたし、変であることは間違っていないと思いますが、読む前に感じていたネガティブな感覚はなくなりました。
    もともと2ちゃんねるの西村博之氏の関与が強く、2ちゃんねる流の人間関係の破壊者となる不安を持っていたり、ニコニコ動画の立ち上げ時にYouTubeにただ乗りしたりといいイメージがなかったのですが、本書を読んで「自分たちの目指す社会を自分たちの手で生み出そう」という気持ちを強く感じました。
    自分がそれまで感じていた、破壊であったりとか、他者へのただ乗りであったりとか、そういったずるい手段は(川上さん自身が言うほど)取っておらず、自ら汗をかいているという印象に変わっています。
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    投稿日:2015.09.19

ブクログレビュー

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  • arasanta

    arasanta

    出てくる人たちは、若いときに一見無駄に見える時間を費やしており、それが成功体験(?)となって結果的にいい方向に転換した人たちだなと感じた。
    今はタイパに比重が置かれており、答えがあるのかもわからないことにどっぷり手間暇をかけることがなくなっているが、おいおいスケールするのは一つのことに没頭できる能力なんだなと感じる。
    聞き手となるインタビュアーや編集がうまく、分厚い本だがスイスイ読めてしまう。良い本だった。
    紙面でスキップされていた任天堂の岩田氏の記事とその後の特別編は、まだインターネットで読めます。
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    投稿日:2023.09.16

  • nimbus3

    nimbus3

    現カドカワ代表取締役社長の川上量生氏が4Gamer.netの企画で行った対談本。ニコニコ動画の業績が良かった時代の記事なので、やや調子に乗った発言が目立つが、それも含めて味わい深い。

    ゲーム経験は経営(ビジネス)において役に立つか、という切り口で語られており、対談相手となっている著名人のゲーム遍歴が語られる。ゲームについての話題は共感できる話もあるし、ピンとこない話もあるが、これは読み手の世代によるものだろう。むしろ対談のテーマから外れた、ゲームと無関係な話題のほうが総じて面白かった。

    ネットビジネスにおける人間と機械(AIなど)の戦いは、確実に人間側が負けるが、最後までその流れに抗いたい、人間らしいコンテンツを作りたいという川上氏の主張は悪くないと思う。現実にニコニコ動画が、資本の力によって敗勢に追い込まれつつある現状を思うといっそう感慨がある。
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    投稿日:2018.12.03

  • orangewind

    orangewind

    川上さんが語る話は深く多岐にわたり大変面白い。もう明日から経営に使える知識の宝庫という感じ。ただ、その話の展開にインタビューアーさんがついて行ってない箇所も一部あり、若干食い足りない部分もあるのも事実。ただ、川上さんの発想力は半端ないので、ついて行ける人って、そんなにいないんだろうな、とも思う。あのインタビュアーさんだからこそ、ここまでの内容に構築できたという印象もある。続きを読む

    投稿日:2017.07.31

  • morinokazedayori

    morinokazedayori

    ニコニコ動画やニコニコ超会議を手掛けるドワンゴの社長川上量生へのインタビュー。ゲーマーは実は頭がよいのでリアルで経営者を目指すべき、というところからスタートし、ゲーム好きな著名人(角川書店社長、棋士谷川浩司氏など)や、ドワンゴのニコニコ超会議スタッフなどを交え、話題は多岐に渡る。川上氏の豪快な人柄が面白く、ネット業界の熱さと勢いが伝わってきた。続きを読む

    投稿日:2016.09.12

  • kawaakami

    kawaakami

    このレビューはネタバレを含みます

    引用しまくってますけど、大好きな本だな。名字にも親近感があるし。サービスの作り方のところの科学反応式もすごい。しかも今読んでいるエピジェネティクスの考えとおんなじじゃん!久しぶりの会心のシンクロニシティ

    レビューの続きを読む

    投稿日:2016.05.07

  • Pecteilis radiata

    Pecteilis radiata

     ゲーム、ネット関連ビジネスがいかに一部の集まりで運営されているかという事がよくわかる。無理矢理でも一つに集約させようとすればできてしまうところが怖い。

    投稿日:2015.09.18

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