【感想】無人暗殺機 ドローンの誕生

リチャード・ウィッテル, 赤根洋子・訳, 佐藤優・解説 / 文藝春秋
(15件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
6
5
2
0
0

ブクログレビュー

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  • azu1227

    azu1227

    このレビューはネタバレを含みます

    イスラエル発アメリカ産まれのプレデターが
    政治的イザコザとテロの間で揉まれまくって
    育っていく
    実はヒューマンドラマ。

    軽く読める本じゃないけど
    著者が5年間じっくり取材した内容が濃いエキスになって
    脳みそに入ってくる。

    ガッツリ読書したいときにオススメ。
    読みごたえ&読後の達成感がすごい。

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    投稿日:2022.07.14

  • うみ

    うみ

    読んだ。良かった。最低の邦題でどん引きだった(スルーしてた)のだが、はらぺこ氏の書評を聞いて購入。
    こんな邦題つけるセンスの無い出版社が悪いし、5頁の解説しか書いてない佐藤優の顔写真入りの帯とかあり得ないだろ。
    UAVの急激な発達と米軍で使用されるようになった裏には映画に出てくるような強いキャラクターが何人もいたのね。

    とても良い書籍だったのだが、「warship」を「戦艦」という定番の誤訳に加えて、
    米軍の特殊部隊「ネイビーシールズ」を「シール部隊」という誤訳は新鮮だったw
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    投稿日:2018.10.14

  • sasha89

    sasha89

    民間での実用が先行して規制が後追いしているドローン。これだって
    首相官邸屋上のヘリポートに誰も気づかないうちにドローンが停まって
    いた事件がなければ、誰かが怪我をするまで考えなかったのだろうな。

    アメリカでもホワイトハウスの敷地内に落下し、警戒態勢が敷かれた
    のは記憶に新しい。

    無人機ドローン。現在は民間での活用やそれに伴う規制がニュースに
    なることが多いが、元を辿れば軍事技術の民間転用だ。

    戦争はイノベーションの母である。こうして毎日のように利用している
    インターネットも、害虫を退治する殺虫剤も、ドローン同様に軍事技術
    の研究からの産物だものね。

    搭乗するパイロットを必要としない航空機があれば兵士の犠牲を出さ
    なくて済む。そんな無人機が作れないものだろうか。始まりはイスラエル
    での開発だった。天才的なプランを持っていたイスラエル人の航空技術
    者が新天地を求めてアメリカへ渡った。

    当初は諜報機関も軍も「玩具じゃないか」とバカにしていた。特に偵察機
    や爆撃機を操縦するパイロットたちは自分たちの腕を上回る無人機が
    出来るはずがないと、鼻で笑った。

    しかし、ボスニア紛争で無人偵察機が実用化されたから開発に拍車が
    かかる。そして、アメリカの陸海空軍の間で始まる主導権争い。

    偵察機としての役割を満足に果たすことの出来た無人機に、次に期待
    されたのは攻撃機としての機能だった。そう、9.11アメリカ同時多発テロ
    の後に一躍脚光を浴びた「プレデター」の誕生である。

    本書はドローン開発の歴史を詳細に綴っているので、いかに戦争が
    様々な技術開発の土壌になっているのかが分かる。

    それにしても「プレデター」とはよく名付けたものだ。「捕食者」。それは
    ターゲットを発見し、地球の裏側からの遠隔操作でターゲットの命を
    奪うことが出来るのだもの。

    ただ、これがアメリカ大統領令で禁止されている「暗殺にあたるのでは
    ないかとも思うんだよね。CIAがキューバのフィデル・カストロ暗殺計画
    を実行しようとしていたことが表沙汰になって、「暗殺はいけません」と
    なったはずなのだけれど、テロを未然に防止する為ならば暗殺も単なる
    「殺害」と言い換えられるのか?

    アメリカの無人機が殺害したうちの9割が誤爆だったとの報道もあった。
    開発者にとっては夢の平気だったのだろうが、誤爆された方は堪らない
    よね。

    アメリカはこの無人攻撃機の輸出に力を入れるらしい。買わされるの
    かしらね、日本の自衛隊は。そんな懸念を持ちながら読み終わった。

    この無人機の登場で戦争の在り様さえも変化したことまでフォローして
    おり、情報量も豊富なのだが翻訳がとことどころ日本語の文章として
    おかしいとことがあるのが残念だった。
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    投稿日:2017.08.22

  • okadata

    okadata

    祖国のために無人機の開発を始めたが国有企業イスラエル航空産業と利害が一致せず新たな拠点をアメリカに求めた天才エンジニアのエイブ・カレム。エール大学出身で自ら飛行機を操縦する冒険野郎にして逆張りで財をなした投資家のニール兄弟。ドローンの開発は米軍が主導したというよりも彼らイノベーターが推し進めたものだった。インターネットやGPSを開発したことでも知られる国防高等研究計画局DARPAが資金提供したとは言え、空軍はパイロットのいない航空機を重視せず、海軍と陸軍がバラバラに開発をしていた。

    1989年冷戦の終結とともにブッシュ大統領は5年以内に640億ドルの軍事費削減を承認した。オスプレイなどの計画も廃止され無人機の市場はなきに等しく、それでもカレムの会社を買収したニール兄弟は「麦わら帽子は必ず冬に買え」と言う自分の投資の黄金律を信じていた。

    転機が訪れたのはボスニア戦争で、今では当たり前になった映像のストリーミング技術は当時はまだ手品のような技術だった。1995年当時でも画像解析者は白黒写真を好み、ライブ映像ではなく静止画の解析を重視していた。このような風土のため偵察ビデオを潜在的利用者に送信するためのインフラはまだ存在しなかったのだ。プレデターのサラエボ上空の映像は500マイル離れたイタリアのNATO司令センターCAOCで見られるようにするため衛星を通じてヴァージニア州のハブに送られ、海底の光ケーブルを通じてナポリの南部司令部と司令センターに送られた。プレデター作戦センターの電話が鳴りっぱなしになり、司令官らは様々な目標の映像を要求した。

    プレデターが偵察機から殺傷兵器へと変わる第一歩はレーザー照準器の搭載からだった。1998年アルカイダによるアフリカの大使館の爆弾テロをきっかけにCIA長官チャールズ・アレンはビンラディンを逮捕または殺害することを生涯の目標とした。クリントンは報復措置として巡航ミサイルを使用したが、標的とされたのはただの薬品工場だった。これ以後CIAはコラテラル・ダメージ=民間人の犠牲を出さないことに苦慮するようになる。2000年9月、アフガン上空のプレデターのカメラがビンラディンらしき人物を発見した。しかしクリントンにミサイル発射を説得するにはただ見つけただけではなく、ミサイルが届くまで標的がそこにいることを示さなければならない。これを解決するのがドローンが"撃つ"ことだ。技術的な課題は次々解決され、法的な課題も解決されていった。

    最後まで残った課題は誰がプレデターの運用に責任を持ち、ミサイルを発射するかだ。レーガン大統領による「暗殺の禁止」命令は生きていたがビンラディンに対する攻撃は自衛行為として決議された。2001年9月4日ブッシュ政権初めてのアルカイダに対するNSC閣僚級委員会が開かれCIAも軍も引き金を引くことに対する責任を負おうとしないし、どちらも、プレデター武装化計画の資金を出そうとしないというのが議論の内容で当面プレデターによる暗殺は見合わせ、CIAは偵察活動にのみプレデターを運用することになった。

    9月11日の朝11ヶ月前に自爆テロ攻撃で部下17名を殺された戦艦コールの元艦長リッポルドはアレンに誘われCIA本部を訪れた。アレンにCIAのアルカイダ対策を聞かされたリッポルドは「アメリカがあの男と戦争をしているのだということを、アメリカ人は理解しないでしょう。アメリカ国内で重大な事件が起き、何千人とは言わないまでも何百人もが死ななければならなくなるまでは」と語った。CIA秘録によるとCIAにはアルカイダによる飛行機テロの断片的な情報はかなり上がってきていたので、問題はプレデターではなく集められた情報を分析するCIAの能力だったようなのだが。

    9月17日ブッシュは暗殺禁止令を緩和し、CIAに武装プレデターを使用する権限をCIAに与えた。しかし、中程度以上のコラテラル・ダメージのリスクのある目標を攻撃するには大統領の承認が必要で、CIAに変わりプレデターを操縦する空軍がビンラディンを発見した場合には大統領の承認は必要が無い。さらに米軍や同盟国軍が関わっている場合にはCIAは事前にトミー・フランクス陸軍大将と協議しなければならない。

    オマルを標的にしたプレデターの最初のミサイル発射の様子は臨場感に溢れるが一方で指揮系統の混乱を示している。CAOCにいる連合軍航空司令官ウォルドは当初プレデターの映像を見ることすらできず、オマルを建物から追い出すために発射された最初のミサイルについて事前に知らされず激怒した。フランクスとCIAは標的の近くにあるのがモスクに近すぎるとミサイル発射を見合わせた。当初の混乱の中ウォルドには誰がミサイル発射を命令したかもわからなかった。プレデターの映像には熱心な視聴者が1人いた。ブッシュ大統領その人だ。

    この本は基本的には武装ドローンを評価しており、コラテラル・ダメージについても評判の悪化を怖れるCIAがいかに気を使っているかのように書かれている。誤爆された側はたまったものじゃないのだが。
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    投稿日:2016.03.02

  • shimu2

    shimu2

    [無人革命]ヨム・キプール戦争、ユーゴスラビア内戦、そしてアフガニスタンとイラクにおける対テロ戦争を経て、今や軍事の構図を変えた感のあるドローンの歴史と、それに携わった人々の歩みを記した作品。傍流中の傍流だった技術や考え方がいかに革命をもたらしたかが詳述されています。著者は、国立航空宇宙博物館の研究員や「ダラスモーニングニュース」の記者を長年にわたり務めたリチャード・ウィッテル。訳者は、英語と独語の翻訳を多く手がける赤根洋子。原題は、『Predator: The Secret Origins of the Drone Revolution』。


    無人機が本格的に実践投入されてからまだ日が浅いこと、そしてその技術が日増しに一足飛びの進歩を遂げていることを踏まえれば、本書で明かされるドローンの歩みに驚嘆されずにはいられないはず。その歩みの一つひとつを、それこそオペレーションレベルまで紐解いて記録した著者の苦労はいかほどだったかと思います。できるだけ中立的にドローンの進歩をわかりやすくまとめた一冊としてオススメできる作品です。


    ドローンがもたらした政治的、軍事的、倫理的変化についてはもちろんのこと、技術的な発展についても極めて詳しく解説がなされているため、その側面からドローンについて考察を深めたい人も、本書の内容には大いに満足を覚えるはず。それにしても以下の著者の一文は、不穏な響きも含めて何か極めて予言的なものを含んでいる気がします。

    〜無人機技術はすでに人間の死に方を変えた。それはいつか、人間の生き方を変えるかもしれない。〜

    解説は作家として活躍されている佐藤優氏です☆5つ
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    投稿日:2015.11.11

  • arno

    arno

    アメリカにおいて軍事用無人機がその性能を認められ広まり始めるまでを描いた良書。
    佐藤優が巻末に無人機の本としては最良と書いているので本当にそうなんだろう。
    なお本書の無人機は遠隔操縦であり自立判断のAI系とは異なるので、そちらに興味がある方にはお薦めしない。続きを読む

    投稿日:2015.09.23

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