【感想】イスラム国の野望

高橋和夫 / 幻冬舎新書
(23件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
5
9
4
1
0
  • 中東を難しくしたのは誰か?

    おそらく、この本の原稿ができあがった時には、日本人が誘拐され、殺されるという事件もおきていなかったのではなかろうか。
    ゆえに、あとがきにも「中東に関する本の出版は、めまぐるしい情勢の展開に追い抜かれてしまう危険と隣り合わせです」と書かれているような状況が生まれてしまう。
    中東の歴史を知るほど、現在の状況を生み出している元凶は英仏露にあるという気分させられる。戦後は、東西のパワーバランスのために、米露に翻弄されてきたとも感じる。
    これらの欧米露へのいわれなき反発がイスラム国を生み、人々を戦闘に駆り立てているのかもしれない。
    けれども、結局「野望」は分からない。現在と未来を語ることは、推論でしかないし、人文科学も社会科学も結局、人間が行ってきた歴史にしかその答えを見いだすことができないからだ。
    中東の過激派の「野望」が何かという答えが出るには、もう少し時間が必要だろう。
    我々が気をつけねばならないのは、、中東でおきる戦争やイスラム過激派のテロは、宗教戦争ではないし、イスラム教徒=過激派というステレオタイプ的なレッテルを中東に貼ってしまうことである。
    中東に生きる人々も我々と同じ人間であり、おそらく平和に幸せに暮らしたいと願っているはずである。
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    投稿日:2015.03.22

ブクログレビュー

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  • matttttsun

    matttttsun

    「戦争で負けるのは大変だが、勝ったとしても強くなった軍隊をどうするかという問題が残る」
    「マンデラの功績は政権を握ると過去を赦し、白人に復讐しようとしなかったことだ」

    投稿日:2020.05.11

  • hironakaji

    hironakaji

    2017年91冊目
    読書会3Bの10月度テーマ本でした。
    中東についてはニュースで見てなんとなくわかっているようでわかっていない。
    本書はイラン、イラク、クエート、シリアなどの中東の国々とアメリカやイギリス
    そしてロシアとの関係性をとてもわかりやすく説明しています。
    もちろんタイトル通り、イスラム国が生まれてきた背景などもわかります。
    中東を理解する上ではオススメの一冊です。
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    投稿日:2018.10.28

  • ブックコンシェルジュ 近藤俊太郎

    ブックコンシェルジュ 近藤俊太郎

    イスラム国だけではなく、イスラム教の基本知識についても丁寧に解説されていたので、分かりやすい一冊。ちょっと前に読んだ「イスラム国の衝撃」より先に読んでおけばよかった。

    そして、日本人ジャーナリスト殺害以後について言及された書籍が出たら照らし合わせながら読みたい。続きを読む

    投稿日:2018.04.04

  • deroderoh

    deroderoh

    同じ筆者の「中東から世界がくずれる」を先に読んでしまっていたので、内容がかぶっている部分が多かった。

    投稿日:2017.11.12

  • vesperaquae

    vesperaquae

    他方、シーア派は最初からアリーが後継者になるべきだったと考えており、間の3人はそれを不当に横取りした人物とされています。ですから、イスラム諸国で名前を訪ね、アブーバクル、ウマル、ウスマーンと言う名前が出てきたら、すぐにスンニ派と分かります。シーア派の人たちは絶対にこの名前を使いません。19ページ

    「バアス」とはアラビア語で「ミッション」、つまり「使命」という意味です。どのような使命かと言うと、アラブ世界を統一し、アラブの栄光をもう一度取り戻すこと。つまりアラブ統一運動を目指す政党です。21から22ページ

    カリフに必要なのは正当性です。正当性がなく、実力で権力を握った人の言葉「スルタン」と言います。日本で言えば天皇がカリフ、征夷大将軍がスルタンに当たります。53ページ

    ところが、民族主義という考え方が台頭したことによって、「別に何人でもいいじゃないか」という寛容さが失われてしまったのです。例えばセルビア人ならばセルビア人として誇りを持つべきといった考え方が次第に広がり、第一次世界大戦で敗れる前から、オスマン帝国内での分裂が進み、オスマン帝国の弱体化が住んでいました…民族主義に根ざした新国家が成立した場合、その中で「自分は何人」と言い始めると国内が分裂してしまいます。そのため、その国の人は全員同じ民族だとみなすと言う強制力が働き始めます。78ページ

    サダムフセインは、前述のように秘密警察を組織して国民を徹底的に監視し、文句を言う人は殺すと言う、典型的な独裁者でした。イラクで開かれた国際会議に出席したときのことです。イラクの人たちは会議中に眠っていても、「フセイン大統領」と言う名前が出てくるとすぐに起きて拍手喝采をします。ソ連の記録するには、スターリンの演説後に全員が立ち上がって熱烈な拍手を送る映像がたくさんあります。それはスターリンの演説に感激したわけではありません。常にKGBが監視しており、最初に拍手を止めた人間がシベリアに送られるとも言われていたからです。86から87ページ

    タリバンの起源も、ソ連のアフガニスタン侵攻に遡ります。当時、多くの義勇兵が立ち上がってソ連を追い出したのは良いのですが、今度は内輪もめを始めて内戦状態に陥りました。それを憂い、治安と秩序の回復を目指して、イスラム神学校に行った人たちが結成した組織が、タリバンです。アラビア語で「神学生」を意味します。このとき、彼らを助けに現れたのがアルカイダです。アフガニスタン侵攻が終わっていちどはそれぞれの国に帰ったものの、適応できなかった人たちが再結集したのです。…なおタリバンはアフガニスタンとパキスタンと言うエリア限定のブランドで、アルカイダのような国際組織ではありません。115から116ページ
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    投稿日:2017.04.10

  • jarinkocafe

    jarinkocafe

    あとがきで「わかりやすく」がモットーと書かれていたけど、確かに。中東とかイスラム世界とかいうと、それだけでややこしそう、というイメージがあるけど、高橋先生はそれを実にわかりやすく解説してくださる。「わかりやすい」ことがはたしていいことなのか、という意見もあるが、まったくの混沌としたイメージが整理されて、理解の助けになることは確かだと思う。

    ただ、この本の内容ですら、すぐに古くなってしまうくらい、イスラム圏の動きは流動的だ。この本が出版されたのが2015年1月29日。後藤さんがイスラム国によって殺害された映像が流されたのが2月1日。高橋先生がこの本を執筆されていた時には起きていなかったことが起きてしまった。高橋先生は、イスラム国が日本人を標的にする可能性はあると言及されている("イスラム過激派の新ブランド")が、最後の章では「イスラム国の敵意は基本的には欧米に向けられている」と述べられている。そしてそれは先生が執筆されていた時点ではその通りだったのに違いない…。先生は「イスラム国に接近するジャーナリストっや研究者の活動をあまり縛らないように」「せっかくのチャンネルを塞ぐことのないような政策的な配慮が望まれる」と書かれている。日本政府がこの提言をもっと早く聞いてそれを受け入れていれば…

    内容が古くなった、といっても、内容が誤っているわけではなく、なぜイスラム国のような組織が生まれてきたのか、バアス党とはどんな政党だったのか、イスラム国とアルカイダなどとの違いなど、なるほど、と腑におちることがたくさんあった。結局、今の中東の混沌状況を作ったのはヨーロッパやアメリカの責任というところはかなりあるわけだ…。また、キリスト教の教義は難しく(三位一体というのは理解しにくい)、論理的なひっかかりを信仰によって乗り越える必要があるが、イスラム教では、ムハンマドは神の言葉を聞いた普通の人間という位置づけでありわかりやすい、などの説明にも、そうだよな、と思った。
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    投稿日:2015.10.17

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