【感想】ホメロス オデュッセイア 上

松平千秋 / 岩波文庫
(47件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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  • イリアスよりホメロス入門におすすめ

    もし「イリアス」と「オデュッセイア」、どちらかを読もうと迷っているとしたら、こちらをお勧めします。
    話としては「イリアス」が先ですが、おそらく諸々の配慮から色々な人物を活躍させなければならなかった「イリアス」と違って、「オデュッセイア」は主役が「堅忍不抜」のオデュッセウスで筋が明確になっており、非常に分かりやすいです。「イリアス」で延々臍を曲げていたアキレウス同様、オデュッセウスも長々とヒモ暮らしをエンジョイしていたようなのですが、幸いなことに、心を入れ替えて家路を目指す所から物語は始まります。さらに主に人間相手(たまに神様が混ざってることもある)の戦争を描いた「イリアス」とは異なり、一つ目の巨人サイクロプス(キュプロクス)や歌声で旅人を惑わす海の怪鳥セイレーンなど、有名どころの怪物も登場し(むしろ原典です)、古代ギリシア感もばっちりです。
    以上のことから考えて、ホメロスを読み始めるのならば、「イリアス」より「オデュッセイア」から読まれることをお勧めします。本書がどうにも合わないという場合は、おそらく「イリアス」も同様かと思います。
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    投稿日:2015.04.03

ブクログレビュー

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  • けんご

    けんご

    トロイア戦争終結後から消息不明となっていたオデュッセウスの冒険譚。

    様々な神の助言や妨害を含めた介入を受け、いろんな土地や島に流れ着く。
    オデュッセウスの部下が一つ目巨人のキュクロプス族に蹂躙される様は痛々しい。

    オデュッセウスとは別に息子のテレマコスも父の足跡を辿って旅しているため、どのように父子再会となるのか下巻も楽しみです。

    解説にある通り、オデュッセウス単独の物語ではなくオデュッセウスや息子、妻を含めた一族の物語ですね。
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    投稿日:2024.01.08

  • サマ

    サマ

    このレビューはネタバレを含みます

    血なまぐさい戦争英雄譚だった「イリアス」とはうってかわって、戦後のオデュッセウスが散々苦労して国へ帰る冒険譚。様々な民族や怪物、海の難所を超えて最終的に部下たち全員と船を失うことになるまでを語っている。イリアスはひたすら英雄たちが戦いあって臓物やら脳、脳髄やら飛び散りまくっていたが、こちらではそういった現実的なグロ描写はかなり抑えられてファンタジー的な趣が強い。もともと神たちが人間に話しかけ、力を貸したり罰したりという世界観がベースにあるから、ファンタジーな怪物もそんなに違和感なく地続きに受け止められているのだろうか。
    オデュッセウスが知恵や工夫で怪物たちに立ち向かうのも面白いのだが、長年に渡って主不在の実家を荒らしている求婚者たちにどう落とし前をつけさせるのかとか、今後同時並行している息子テレマコスの旅で青年の成長が見られそうなので下巻が楽しみ。

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    投稿日:2023.08.04

  • ゆうたろう

    ゆうたろう

    謎の素性を持った主人公が旅を行い、危機を脱し帰還するまでの物語。
    正直『イリアス』の方が好き。
    キュクロプス、ナウシカ、セイレン、キルケなど、触れなければいけないキーワードが盛り盛り。

    投稿日:2023.06.25

  • nakaizawa

    nakaizawa

    「ホメロス オデュッセイア(上)」ホメロス著・松平千秋訳、岩波文庫、1994.09.16
    394p¥670C0198(2022.10.27読了)(2016.09.16購入)(1996.05.07/4刷)

    【目次】
    凡  例
    第 一 歌 神々の会議。女神アテネ、テレマコスを激励する(四四四行)
    第 二 歌 イタケ人の集会、テレマコスの旅立ち(四三四行)
    第 三 歌 ピュロスにて(四九七行)
    第 四 歌 ラケダイモンにて(八四七行)
    第 五 歌 カリュプソの洞窟。オデュッセウスの筏作り(四九三行)
    第 六 歌 オデュッセウス、パイエケス人の国に着く(三三一行)
    第 七 歌 オデュッセウス、アルキノオスに対面す(三四七行)
    第 八 歌 オデュッセウスとパイエケス人との交歓(五八六行)
    第 九 歌 アルキノオス邸でオデュッセウスの語る漂流談、キュクロプス物語(五六六行)
    第 十 歌 風神アイオロス、ライストリュゴネス族、およびキルケの物語(五七四行)
    第十一歌 冥府行(六四〇行)
    第十二歌 セイレンの誘惑。スキュレとカリュブディス、陽の神の牛(四五三行)
    訳  注
    解  説

    ☆関連図書(既読)
    「イリアス〈上〉」ホメロス著・松平千秋訳、岩波文庫、1992.09.16
    「イリアス〈下〉」ホメロス著・松平千秋訳、岩波文庫、1992.09.16
    「ホメロス物語」森進一著、岩波ジュニア新書、1984.08.20
    「ギリシャ神話」山室靜著、現代教養文庫、1963.07.30
    「古代への情熱」シュリーマン著・村田数之亮訳、岩波文庫、1954.11.25
    「オイディプス王」ソポクレス著・藤沢令夫訳、岩波文庫、1967.09.16
    「コロノスのオイディプス」ソポクレス著・高津春繁訳、岩波文庫、1973.04.16
    「アンティゴネー」ソポクレース著・呉茂一訳、岩波文庫、1961.09.05
    「ソポクレス『オイディプス王』」島田雅彦著、NHK出版、2015.06.01
    「アガメムノン」アイスキュロス著・呉茂一訳、岩波文庫、1951.07.05
    「テーバイ攻めの七将」アイスキュロス著・高津春繁訳、岩波文庫、1973.06.18
    「縛られたプロメーテウス」アイスキュロス著・呉茂一訳、岩波文庫、1974.09.17
    「ギリシア悲劇入門」中村善也著、岩波新書、1974.01.21
    「古代エーゲ・ギリシアの謎」田名部昭著、光文社文庫、1987.08.20
    「驚異の世界史 古代地中海血ぬられた神話」森本哲郎編著、文春文庫、1988.01.10
    「古代ギリシアの旅」高野義郎著、岩波新書、2002.04.19
    「カラー版 ギリシャを巡る」萩野矢慶記著、中公新書、2004.05.25
    (「BOOK」データベースより)amazon
    トロイア戦争が終結。英雄オデュッセウスは故国イタケへの帰途、嵐に襲われて漂流、さらに10年にわたる冒険が始まる。『イリアス』とともにヨーロッパ文学の源泉と仰がれる、ギリシア最古の大英雄叙事詩の、新たな訳者による新版。(全二冊)
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    投稿日:2022.10.27

  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    「イリアス」とともにニ大叙事詩と仰がれるギリシア最古の英雄物語。トロイア戦争終結後のオデュッセウスの冒険。

    「アキレウスの怒り」がテーマの戦記ものであった前作から一転、オデュッセウスを中心とした冒険ファンタジーとなっている。父の消息を求めてテレマコスが旅立つ冒頭からワクワクがとまらない。神々が介入してくるのはイリアスとも共通するが、本作ではさらに王宮や冥府、魔女や巨人、漂流や裏切りなど、波瀾万丈の要素が盛りだくさん。紋切り型といわれればまさにその通りで、それは長い時を通してこの偉大な古典が愛されてきたことの証明でもある。無双すぎてモテすぎるオデュッセウス、やってることは今のラノベも変わらんではないか?(笑)。

    上巻はこれまでの経緯がすべて語られ、さぁこれからどうなる!?というところで終わる。ここで訳者の解説が入るが、《上巻巻末の解説で下巻のネタバレをする》のはやめてほしい。有名なタイトルとはいえこれから触れる人もいるのだから……。これから読む初見の人は注意してほしいと思う。
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    投稿日:2022.10.13

  • 燃えつきた棒

    燃えつきた棒

    ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズⅠ』を読んで、自らのあまりの教養のなさを痛感し、少しでも『ユリシーズ』の理解を深めたいとの一心で手に取った。
    結果は、大苦戦である。

    まず第一に、この岩波文庫の本は、1994年の版であり、活字が極めて小さい。
    ことに「注」に至っては、活字があまりに「小さすぎて読めな〜い」と放り出したくなるのを、ハズキルーペの力を借りてようやく何とか読んだという代物だ。/


    二つ目に、そもそも、僕自身に『オデュッセイア』自体を読もうというモチベーションが、あまりなかったということがある。
    これだけ有名な本なのだから、もっとずっと前に読んでいてもおかしくはなかったはずだ。
    例えば、テオ・アンゲロプロスの映画『ユリシーズの瞳』を観た後に読んでおいてもよかったかも知れない。
    だが、結局読まなかった。
    そもそも、僕は、古典中の古典をほとんど読んでいない。
    同じホメロスの『イリアス』も読んでいないし、シェイクスピアも、先日『ハムレット』を読んで、その相性の悪さは水と油のようだった。

    セルバンテス『ドン・キホーテ』も、前篇だけ読んで積読状態になったままだ。
    ほとんど、古典音痴と言うしかない有様だ。
    なぜ、僕は古典とここまで相性が悪いのだろうか?
    たぶん、一つには、古典の世界は、「神」が君臨する世界だということがあるのだろう。
    僕は、「神」という奴が大嫌いなので、その感情が「バカの壁」となって、古典作品の理解を妨げているのかも知れない。/


    三つ目は、ストーリー展開があまりに紋切り型な点である。
    オデュッセウスは一日も早く故郷イタケへ帰らんと欲するも、ことごとく神々に行く手を阻まれ、数多の島々を放浪せざるを得ない。
    判で押したようなそのストーリーは、昔のラジオドラマ「君の名は」を聴いているようだ。
    ここのところ読みたい本が目白押しで、早く読み終えたいと焦る僕の心を嘲笑うかのような、無限連鎖の「金太郎飴」ストーリーだ。
    そういう訳で、この本も、『ユリシーズ』を読み始めなかったら、ずっと積読のままで終わっていたのかも知れない。/


    ところが、上記のような数々の不満にもかかわらず、驚いたことに、この『オデュッセイア』の世界は、いまだに現代に通ずるものがあるのだ。
    何しろ、EUやアメリカなどの欧米民主主義国の人々は、ウクライナを「生贄の羊」として差し出して、ひたすら冷酷な「荒ぶる神プーチン」の怒りが静まるのを祈るだけなのだから。
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    投稿日:2022.04.08

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