【感想】女神的リーダーシップ ~世界を変えるのは、女性と「女性のように考える」男性である

ジョン・ガーズマ, マイケル・ダントニオ, ヤマザキマリ, 有賀裕子 / プレジデント社
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
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  • 「性差」では何も語れなくなった

    少なくとも自分の感覚では、「男らしく」「女らしく」といった性別役割分担は、前世紀や昭和時代の遺物になってしまったのだろうと思います。
    確かに女性の社会参加は遅れており、この分野では日本は最後発国となっていますし、先進国でも女性の管理職の割合などを義務化して何とか状況を進めている段階です。
    それでも、私たちの生活レベルで男女の役割を見ていくと、支配や競争に疲れてしまい、奪うよりも分け与えるほうが利益が大きいということに、ようやく気づき始めました。競争を成長の源泉としてきた自由主義や資本主義の転換点でもあるかと思います。
    余談になりますが、いまだに「支配」のフレームワークで生きている人が、総じて自分は権力の支配に虐げられている不幸な人間だ、と自らを規定しているのは、非常にもったいないと思います。支配・被支配の構図から抜け出せば、自分がどれだけ自由なのか気づけると思うのですが。

    前置きが長くなりましたが、世界のあらゆる地域で、男女問わず「協力」や「共感」で新しいものを作り出し、成長していくことが起こっています。本書で最も印象的だったのが、アイスランドの事例です。
    同国は経済成長を謳歌していましたが、2008年の金融危機で財政破綻、2011年には過去の反省を踏まえた新たな憲法草案を作ることとなりましたが、国民参加でソーシャルメディアを活用した議論が行われたとのことです。
    経済成長の時期は競争社会、財政破綻後は共感と協同の社会と、全く異なる側面を見せていますが、人々にとっては後者のほうが居心地が良いのではないでしょうか。その中で作られた憲法は、自分たちが作った新しいアイスランドの象徴になりうるでしょう。

    日本でこれをやるには国の規模が大きすぎますし、そもそも世界で最も制定(改正)からの時間が長くなってしまった憲法はある意味でブランドになってしまっていますが、より身近なところで共感と協同の社会が作られています。
    インターネットを通じて、人々は関わり合うし、助け合います。言葉の表面上はいがみ合っているように見えても、奥底では通じ合っているのではないかと思うこともよくあります。助けたり助けられたりするのを拒絶しているようでも、単に恥ずかしがっているだけでしょうし、それでいいのではないでしょうか。
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    投稿日:2014.02.27

ブクログレビュー

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  • キミドリ

    キミドリ

    <女神的リーダーシップ 未>

    今、世界各国で求められるリーダー像は旧来の、一元的で直線的な男性的なリーダーシップではなく、共感性や柔軟性があり、利他的で他人の話を聞く女性的なリーダー像である。

    れらが重要視されるようになった背景には、世の中が複雑化し、異なる業種のチームワークが欠かせなくなったことがあげられる。socialなつながり、相互依存、透明性がより大切になってきている昨今、互いに共感し、調整する能力がますます必要になってきているのだ。

    この本では、中東、南米、日本、中国等の実際の女性リーダーや、男性であってもつながりを大切にする女性”的”リーダーを紹介している。

    <感想>
     共感や思いやりがリーダーの資質として大切であることが前提の日本に暮らしていると、ことさらそれらを女性”的”としなくても、いいんじゃないかと思ったが、たぶんそれは日本の文化圏の特殊性なのかもしれない。
     欧米等の強烈でともすれば独善的な「リーダーシップ」に比べるとそれらの資質を女性的としてクローズアップすることにはそれなりに意味があるのかもしない、と思った。
     女性がリーダーになれば万事解決とは思わないが、”力強さ”よりは”柔軟性”がより有効な時代に入っているのかもしれない。
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    投稿日:2018.12.22

  • mamo

    mamo

    これからのリーダーシップは、女性的な要素が重要になってくる、という本。
    と書くと、「男性的とか、女性的とか、言っている時点で性差別じゃん」という声が聞こえてくる(私だけか?)が、ちゃんとした統計調査に基づいていて、タイトルのイメージから想像されるより、ずっとしっかりした本です。

    まず、グローバルなアンケート調査で、いろいろな資質が男性的か、女性的か、どちらでもないか、ということを調べる。
    そして、その調査をした人以外の人に対して、さまざまな資質が、リーダーシップとか、成功とか、幸福にどの程度関係しているか、という調査をやる。
    そうすると、これからは、従来、どちらかというと女性的と捉えられてきた資質が男性的とされるものよりも、重要性が高まっているという、分析がある。

    で、その実例をアイスランド、イスラエル、ブータンなどなど(日本も入っている)から、紹介してあって、最後にまとめ、という構成です。

    内容をあまり書くと、読む楽しみがなくなりそうなので、このくらいで。

    これをそのまま受け入れるかどうかは別として、なるほどそれあるよね、という共感と、久しぶりに思考を揺さぶるというか、これをどう展開するか、という刺激をうけた本でした。
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    投稿日:2017.05.01

  • xiaobao

    xiaobao

    男性的な行動は現代社会の課題解決に役立たない。

    成功へのカギ(女性的リーダー像)
    つながり、、人脈を築き保っていく能力
    謙虚、、、よく聞いて学び、手柄を分かち合おうとする姿勢
    率直、、、包み隠さず誠実に話をしようという意志
    忍耐、、、解決策がすぐに見つかるとはかぎらないという認識
    共感、、、他者への深い理解につながる気配り
    信頼、、、信頼される実績と人柄
    寛容、、、全ての人や考えを受け止めるあり方
    柔軟性、、、必要に応じて変化、順応する力
    弱さ、、、自分は完璧ではなく失敗もあると認める勇気
    調和、、、調和の取れた目的意識

    米国では16歳人口の免許保有率が、1988年の44%から2008年には30%に低下している。同じ現象は欧州全域でも起きている。

    景気が悪化して失業率が上がるとボランティアは増加する。

    アイスランド新憲法前文
    我々アイスランドの人民は、機会均等な社会を築く事を望んでいる。多様な出自の人が集まる我が国の社会には、奥行きと深みがあり、我々は先祖から受け継いできたこの国とその歴史、自然、言語、文化に対して責任を負う。アイスランドは、自由、平等、民主主義、人権を土台とする開かれた主権国家である。政府は福祉の増進、文化の振興、さらには国民、国土、生物圏の多様性の尊重に努める。我々は現在及び将来の世代の調和、安全、幸福を増進したい。他国との和平に尽くし、地球と全ての人類を尊重する所存である。以上の理由から、全国民が従うべき最高法規としてここに新憲法を制定する。

    雇用、教育、健康などで見た女性の幸福度が、国民全体の幸福度を映し出す。

    長期的な変革を実現するには、リーダーは目標や理念への忠誠を、自身の栄達よりも優先しなくてはならない。

    弱さこそが変革をうまく推進するうえで最も大切な武器となる。
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    投稿日:2015.07.10

  • toshiomi0324

    toshiomi0324

    ヤマグチマリさんの絵柄に釣られた。
    女性的、というキャッチフレーズが何だかなぁとは思う。内容は強欲資本主義に代わる活動をしている人をひたすら紹介していて、読み物として悪くはない。
    しかし、、、わざわざ男性を貶め、女性を持ち上げる必要はないと思うが。キャッチが重要だったんだろうな。としか。続きを読む

    投稿日:2015.02.06

  • rafiki0108

    rafiki0108

    『世界を変えるのは、女性もしくは「女性のように考える男性」である』というサブタイトルが印象的。各国の潮流(事例)紹介は、「なるほど~」とワクワクするものもあれば、あまりピンとこないものもあり。この流れが加速したら、私ももっといろんなことがやりやすくなるかもしれない。続きを読む

    投稿日:2014.11.28

  • 亞綺羅

    亞綺羅

    借りたもの。

    これは男性的/女性的の二者択一なジェンダー論の本ではない。

    今日、理想的なリーダーには〈女神的〉価値観が求められているという。
    この本にある〈女神的〉価値観とは、地域や時代を問わず“女性的”と分類された資質である。
    共感、公平、叡智…
    それらはギリシア神話の女神アテナが象徴するものと指摘。

    〈女神的〉価値観は女性のみが持っている資質ではないが、女性の方がより顕著でより自然に扱っている。
    それ故に、女性の指導者が今後の世界の発展に必要であること、現在活躍する女性リーダーの事例も挙げて示唆している。
    今、現在の女性の社会進出を肯定するための良著にもなりそうだ。
    しかし、女性のみにスポットを当てず、〈女神的〉価値観を持ち、活かす男性達も紹介している。

    具体的なデータや、洋の東西を問わない事例、意外と知らなかった他国のリアルな話に、読んでいて惹かれた。
    アジアや中東など、女性への差別意識が強いとされる国であっても、それは既に燻っている。
    日本の3・11での「希望の缶詰」エピソードも挙げられている。利害に関わらず他者に手を差し伸べる共感と助力の精神……

    排他的(男性的と目される資質)な成長戦略では無く、真に共生する成長戦略を、現代人は求めている。
    それは先進国、発展途上国に関わらず。それをデータとしても再確認できる良い本。

    ヤマザキマリによる表紙絵が印象的。
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    投稿日:2014.07.11

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