【感想】シグルイ 1

山口貴由, 南條範夫 / チャンピオンRED
(55件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
27
16
7
1
1
  • 残酷描写の先にあるアート

    原作は南條範夫先生の駿河城御前試合の一節。
    作劇は御前試合当日からそれぞれの過去編に紡がれる構成です。

    盲目の剣士と隻腕の剣士の対決から、所謂「伊達」者同士の色物勝負に一見映るが、その実剣を極めるにあたり五体満足でいられるほうがおかしいという奇妙な説得力があり、その末に到達した剣技には奇抜に見えてもその凄味たるや半端ないのであります。

    切断描写、ひいては人体破壊、部位欠損が躊躇いなく描かれていますが、その破壊からは技の冴え、強さが感じられ、それゆえにある種の美しさを持つに至っており、さらには空気感や臭いまでも伝わってくるかのような描写は、写実、印象派のようなアートの域にあると言えるかもしれません。

    そして、戦国時代を経て侍の在り方も変わってきた江戸初期の時代背景や、散りばめられた武士言葉も読んでいて癖になる喃。


    合わない人には門前払いですが、引っかかった人には襟口掴まれて引き込まれ、気が付けば片手念仏鎬受けとかやってる、そんな漫画です。
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    投稿日:2015.05.19

  • 美しく、残酷に。

    異様な言語感覚と異常な論理性によってファンを魅了し去った怪物作の開幕である。

    本作は「残酷無惨時代劇」であるが、これは単なる描写としての残酷さに留まらない。
    残酷さ、は封建社会を描く本作の作劇上必要にして欠くことのできない要素なのだ。

    「人間の感情が極端にはしる所に残酷はうまれる」。原作者、南條範夫は端的にそう示す。
    また、こうも言う。「封建社会の完成形は少数のサディストと多数のマゾヒストで構成される」と。
    人が人として自由に羽ばたいていこうとすれば、どうしてもそこには衝突が生まれ、流血を招き、さらなる理不尽をさらけ出すこととなる。
    そうした諸々の社会的桎梏を無名戦士たちの死闘を通じて描く、これが南條における駿河城御前試合であった。

    殺伐として透徹した原作の土壌に咲くのは、血と臓物を吸った花である。
    異形と化すまでに描きこまれた作画は圧巻の一言。いずれのページも緊張感にみなぎりかえって胸を突く。「臭うな」と。
    生々しく、ときに画面から汚泥のごとき臓物の臭いが立ち上ってくるような感覚がある。生物なのだ。
    薄い皮膚を破れば血潮が吹き出す、生臭さと説得力に満ちている。
    そう、描写としての残酷さは根底に潜む残酷さを洗い出し、新鮮な血の臭いに乗せて読み手に届けてるためにあるのだ。
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    投稿日:2015.05.18

ブクログレビュー

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  • daiyuuki24

    daiyuuki24

    江戸時代初頭、天下の法に反して駿河城内で挙行された真剣御前試合で対峙したのは、片腕の若武者・藤木源之助と盲目の天才剣士・伊良子清玄だった!! 
    徳川家光の実弟でありながら自刃させられた徳川忠長は、数々の残虐行為により罰せられたが、真剣による寛永御前試合は最悪のものだった。
    その御前試合で雌雄を決したのが、藤木源之助と伊良子清玄。片腕の剣士と盲目で片足が不自由な剣士の立ち合いに込められた因縁が、明らかに。
    残酷無惨時代劇、開幕!!

    濃尾無双と名高い虎眼流の後継者と目された藤木源之助と虎眼流に道場破りに来た伊良子清玄のライバル関係の始まりが、岩本虎眼の頂点にした虎眼流のザッツ封建主義的な支配関係や藤木源之助vs伊良子清玄など異能な剣士同士のバトルで描かれていて、凄まじい迫力ある絵力に惹き込まれる第1巻。
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    投稿日:2023.01.21

  • sminami

    sminami

    このレビューはネタバレを含みます

    テンションが高い
    薔薇のモチーフが多い
    残酷な描写が多い
    掛川あたりってこんな話が転がってるんだなあ
    今度こだまに乗ったら思いを馳せよう

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    投稿日:2021.05.30

  • ホン・ヨンドル

    ホン・ヨンドル

    このレビューはネタバレを含みます

    江戸時代初頭、天下の法に反して駿河城内で挙行された真剣御前試合で対峙したのは、片腕の若武者と盲目の天才剣士だった!! 残酷無惨時代劇!!(Amazon紹介より)

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    投稿日:2020.01.18

  • jyona

    jyona

    全15巻を読了。

    途中、本筋から外れた話もあったが、最後まで一貫して美しい残酷物語でした。登場人物が悉く狂気をまとっていて共感は全くできないのですが、それぞれが一貫した強い意志のもと、己の剣を死に物狂いで磨く様が、この癖の強い、しかし迫力と画力の高い絵と相まってどんどん物語に引き込んでいきます。

    ラストシーンが衝撃的で、また説明がなされないまま終わってしまったのですが、ネタバレを読んでそこにも伏線回収があったのかと、改めてこの漫画の完成度の高さに感服しました。巻数といい一気読みにぴったりな漫画です。
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    投稿日:2018.04.16

  • tsukasa26

    tsukasa26

    美しく、残酷に。 駿府城領主徳川忠長 自刃 陰腹かげばら 諫言かんげん 天下は既に泰平 翻意=反抗する気持ち 駿河五十五万石 暗君 濃尾無双 不覚傷 背面の隆り 沈痛 弔辞のそれ 武門の誉れ 封建社会の完成系は少数のサディストと多数のマゾヒストによって構成されるのだ 隻腕と盲目の剣士 差配 不屈の精神を持った剣士にあっては自己に与えられた過酷な運命さだめこそかえってその若い闘魂たましいを揺さぶりついには… 無明逆流れ 太刀筋 異形と化すまでに鍛え込まれた背中 万力の如く刀身を締めつける跛足の指先 遠江国とおとうみくに掛川 鍔迫合 手心 艶めいた芳香 道場破り 隆盛 斃すことまかりならぬ伊達にして帰すべし 機を逸した 骨子術 指搦み 膂力 かじき 虎眼流 殺めるは易し伊達にするは難し 道場は芝居をするところではござらぬ この時清玄が見せた跳躍は鍛錬によって到達し得る領域を明らかに凌ぐものである 天稟 否彼奴はすくたれ者にござる 指の鍛錬になりますゆえ 藤木源之助 世襲制 何の呪いだ… 岩本虎眼 心の平衡を失った 所作を封じた 涎小豆よだれあずき 鉢巻切 練り 手拭 奥歯を粉砕 活動方針を示唆 漸く器が整いおった 敬もうて いずれが強い種かと尋ねておる 誹り兜投げ 数馬と兵馬 船木流免許皆伝 根絶やしにしてくれる 蛮行 機織の町掛川を血に染める さよのなかやま小夜中山鎌鼬 人間の感情が極端にはしるところに残酷はうまれる 女なら悲愁を描く男なら残酷を描く 残酷が表面化しない社会 私が取り上げるのは、何か問題が生じた時、それを和らげようとするのではなく、寧ろカンカンになってしまう人間、感情を極端に走らせる人間である。 南條範夫 失うことから全ては始まる 正気にては大業ならず 武士道はシグルイなり続きを読む

    投稿日:2017.04.22

  • REKI

    REKI

    全15巻。

    駿河城御前試合をモチーフにした2人の剣士と2人の女性の話です。
    かなり残酷な表現が多いですが、絵の迫力・緊張感に引き込まれるように読んでしまいました。

    投稿日:2014.04.22

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