【感想】避難弱者―あの日、福島原発間近の老人ホームで何が起きたのか?

相川祐里奈 / 東洋経済新報社
(5件のレビュー)

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  • 原子力災害考証館ふるさと

    原子力災害考証館ふるさと

    読売新聞の元記者で、国会事故調の調査員となった方の本。原発事故が起きたのち、双葉郡にあった老人ホームでどんなことが起きたのかが記されています。介護やケアをしている人の視点から書かれた一冊です。

    投稿日:2020.07.25

  • nakaizawa

    nakaizawa

    (2014.02.19読了)(2014.02.07借入)
    副題「あの日、福島原発間近の老人ホームで何が起きたのか?」
    【東日本大震災】
    この本は、福島の原発事故に伴って、原発から20キロ圏内にある老人ホームにいた人たちに何が起こったのか、の調査記録です。老人ホームの責任者、職員、居住者、等、です。
    大部分は避難させられるか、自主的に非難したか、ですが、移動や避難所の環境を考えて避難をしなかった人たちもいました。
    避難した人たちは、移動や避難所の環境に堪えることができず、無くなったり、病状が悪化したりしました。職員のなかには、家庭の事情などによりやむをえず、避難する人たちについてゆくことができない人たちもいました。
    苛酷な環境の中で、避難者と同行した職員は、少ない人数で、奮闘することになりました。
    時間がたつにしたがって、疲労の度を増す職員を救い出したのは、受け入れをひきうけた避難区域外の老人ホームでした。
    原発事故が起こると、今後も同様の事態が発生します。自治体は、基本的に住民の対応に手いっぱいで、老人ホーム等の福祉施設に個別に対応する体制は、取らないようです。
    ということは、各老人ホームが個別で、非常時の対応を考えておかないといけないということになります。その際には、この本が参考になるのではないでしょうか。
    取材を受けた人の中に、福島原発が爆発したというのを聞いて、チェルノブイリや広島を思い浮かべて、もう終わりだと思ったという方がいたので、近くの人たちは、かなりの精神的衝撃を受けているのを感じました。
    僕のいる岩手県・沿岸南部は、あいだに宮城県があるし、ほとんど影響はないだろうと感じていたのとは、かなり差があるなと思います。後になって、岩手県でも、家畜の飼料となる牧草が放射能に汚染されていたとか、椎茸が汚染されて出荷停止になるのを聞いて、思った以上に影響が及んでいたので、驚きでした。

    【目次】
    プロローグ 「いまもまだ戦っている最中なんです」
    第1章 「終わりだ。原発が爆発した」
    第2章 「おらがこんな状況だから、みんなおらのことおいて逃げんだべ」
    第3章 「やっぱり、高齢者には避難は無理なんだ」
    第4章 「最後は俺がケツを拭くから。明日にでも受け入れるよ」
    第5章 「子どもができなくなったら、どう責任とるんだよ!」
    第6章 「弱者が淘汰されていくのかと思うほど簡単に亡くなっていく」
    本書の刊行に寄せて  黒川清・三瓶政美
    謝辞
    原発間近の特養・養護老人施設の避難経緯

    ●避難弱者(278頁)
    自分では避難さえできない多くの入院患者や高齢者などの「避難弱者」は、安全とは決していえない状況で移動せざるをえなかった。彼らを支える職員たちは、自分も家族も被災する中で、家族か仕事かどちらかを選ばなければならなかった。時間もない中、悩みに悩みながら決断し、苦闘するが、その間にも多くの命が失われていく。そのような苛酷な状況だった。
    ●緊急避難の状況(282頁)
    避難の実態、避難の経路、避難先での生活、国、県、行政の対応、避難にあたった被災者でもある職員の苦悩、見えない放射線との戦い、リーダーとしての判断
    ●介護・看護職員(202頁)
    避難するのか、しないのか―。
    判断を迫られ、結果、避難した職員は多かった。そういった職員たちを「人の命を預かる介護・介護職員として無責任だ」と批判する声もあるかもしれない。しかし、職員の中には、家庭の事情などさまざまな思いの中、難しい判断を迫られ、泣く泣く去っていった人が多かった。働きたくても放射線の影響を懸念して避難を決めた人や、妊娠や結婚などの理由で職場を離れた人もいる。彼らの中には2年半経った今も、あの時に避難した自分を責め、負い目を感じながら、再び県内の介護施設で働いている人もいる。
    ●受け入れ先確保(274頁)
    介護環境がない施設に避難することになった場合、介護の質を保ち、利用者の安全を考えるのであれば、少しでも早く介護設備の整う受け入れ先施設を見つけ、利用者を移動させることが重要である。

    ☆関連図書(既読)
    「福島 原発と人びと」広河隆一著、岩波新書、2011.08.19
    「福島の原発事故をめぐって」山本義隆著、みすず書房、2011.08.25
    「さくら」馬場国敏作・江頭路子絵、金の星社、2011.12.
    「日本人は原発とどうつきあうべきか」田原総一朗著、PHP研究所、2012.01.12
    「官邸から見た原発事故の真実」田坂広志著、光文社新書、2012.01.20
    「見捨てられた命を救え!」星広志著、社会批評社、2012.02.05
    「飯舘村は負けない」千葉悦子・松野光伸著、岩波新書、2012.03.22
    「闘う市長」桜井勝延・開沼博著、徳間書店、2012.03.31
    「おいで、一緒に行こう」森絵都著、文芸春秋、2012.04.20
    「原発労働記」堀江邦夫著、講談社文庫、2011.05.13
    (2014年2月20日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    原発から爆発音が聞こえた―放射線が飛び交う中、自らの危険を顧みず老人に寄り添った介護士たちの奮闘と葛藤を克明に描き出す感動のルポ。
    続きを読む

    投稿日:2014.02.20

  • おおきに!(smoneyb)

    おおきに!(smoneyb)

    淡々と、偽りはなく、ただ東日本大震災、原発事故が起きた福島の老人ホームで何が起きたか。原発事故に続く避難はどのように行われて、利用者、職員たちはどのような状況におかれ、行動し、そして利用者のなかには避難行動の間に命を落とされた方も少なくない。
    原発再稼動を口にする前に、行政の長は、国会議員はこのレポートを読んで欲しい。告発では無い、淡々と何が起きたかを記したこのレポートを。そして、再稼働した原発で事故が起きた場合でも、決してこのような事態を起こすことはないと、自らの良心に照らして正直に言えるのなら、責任を持ってその言葉を口にして欲しい。そして、万一の事態になったら、すべての仕事を放り投げても、その現場に立ち、責任を全うして欲しい。
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    投稿日:2013.11.18

  • taishibrian

    taishibrian

    福島第一原発が水素爆発したとき、周辺の高齢者福祉施設ではどのような事態が起こっていたのか。「原発事故で亡くなった人はいない」という失言をした政治家がいたが、実際にはこの事故がきっかけとなって避難や慣れない土地での暮らしを余儀なくされ、結果的に命が短くなった方々が大勢いた。

    デイケア、養護老人ホーム、特養、、普段の自分の生活から聞き慣れない施設名が並び、これら高齢者福祉施設での活動が暮らしから乖離している事実に気づく。そして原発があったからこそ、その地域に多くの高齢者福祉施設が建てられた現実がある。そこにいる高齢者たちは、生活するにも介助や支援が必要である生活弱者であり、さらに緊急時に避難をする際には“避難弱者”となる。

    高齢者福祉施設に勤務する人たちは、あの日、大地震と津波、そして原子力発電所の事故という過酷な状況に遭遇し、自らも家族が行方不明になる等の被災者であったが、“避難弱者”である入居者たちに寄り添い、二転三転する避難先で衛生状態悪化や物資不足に苦慮し、最終的に受入先を見つけるところまで奔走した。

    一方で高い放射線量を計測しながらも、高齢者を無理に移送する方がリスクが高いと国や自治体の命令を無視して残った施設もあった。果たしてどちらが正しい選択だったのか、我々がその場に居合わせたとしてもそれを判断できる自信も根拠もまったくないだろう。

    高齢者福祉施設に入居している方々にとって、国や自治体の勧告にしたがって安全なところまで避難し続けることは、別の見方をすれば見知らぬ土地で赤の他人に迷惑をかけ続けるということである。人間にとって、住み慣れた故郷で人生を全うしたいと想うことも、尊厳を満たす考え方である。

    人道か尊厳か、命の軽さか重さか、避難か故郷か。非情なる現実のルポを通じて、人間の生き様と業が垣間見える。
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    投稿日:2013.11.12

  • kaerubon

    kaerubon

    献本で。
    3.11のあの時、福島の老人ホームでは何が起こっていたのか。
    厳しい現実と、東京で右往左往していた自分の無力を感じる。
    筆者は20代半ばだそうだが、よく取材していてると思う。
    貴重な資料になるのでは。続きを読む

    投稿日:2013.09.18

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