【感想】タテ社会の人間関係 単一社会の理論

中根千枝 / 講談社現代新書
(98件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
31
25
19
5
1
  • 人生経験と海外経験があってこそよくうなずける

    今まで読もうとして50を過ぎやっと読みました。私が生まれたころの執筆ですが、なお新鮮です。特に今までの海外経験とも照らし合わせ、非常に納得する点が多々あります。わが子にも読んでほしいですが、高校生では理解が表面で留まるかもしれません。また10年後に読んで見たい本です。読み手の人生経験で面白さが変わるような気がします。続きを読む

    投稿日:2016.02.23

  • 日本って、特殊なんだよね

    アメリカに住んでいると日本の社会構造の特殊な部分が強く感じられます。著者の鋭い考察には納得できます。

    投稿日:2015.07.26

ブクログレビュー

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  • k

    k

    東大で名誉教授を務めた社会人類学者である中根千枝による書籍。
    1967年発行。

    日本の社会的構造を他国のそれと比較する形で分析し、その特徴を解明することが本書の主題とされている。

    本書における筆者の主張をまとめると、下記の3つである。

    ①日本社会における集団意識では「場」が優先される

    ② 日本人は「ウチ」「ヨソ」の意識が強く、人間関係の機能の強弱は実際の接触の長さ、激しさに比例する

    ③日本の組織の階層は強い「タテ」の関係で構成される

    ①は、一定の個人から成る社会集団の構成の要因は、二つの異なる原理「資格」と「場」の共通性に大分できるという前提に立つ。
    「資格」とは、社会的個人の一定の属性を表すものであり、先天的な性別・血縁、後天的な学歴・地位・職業などがある。
    これに対して「場」とは、地域、所属機関のように資格の相違を問わず、一定の枠によって一定の個人が集団を構成している場合を指す。

    日本社会の組織においては、この比重が「場」に重く置かれている。日本人は、記者であるとかエンジニアであるというよりも、まずA社の者ということを言うし、他人も第一に場を知りたがる。

    日本社会は非常に単一性が強い上に、集団が「場」によってできているので、常に枠をはっきりさせて、集団成員が「他とは違うんだ」ということを意識しなければ、他との区別がなくなりやすい。
    そのために、日本のグループはしらずしらず強い「ウチ」「ソト」の意識を強めることになってしまう。

    結果、ローカリズムが強まり、自集団でしか通用しない共通認識・共通言語が発達する。
    さらに、ローカルであることは直接接触的(tangible)であるということと必然的に結びつく。
    つまり、日本社会における人間関係の機能の強弱は、実際の接触の長さ、激しさに比例する。日本のいかなる社会集団においても、「新入り」がそのヒエラルキーの最下層に位置付けられているのは、この接触の期間が最も短いためである。年功序列制の温床もここにある。

    これが②の主張に該当する。

    「場」の共通性によって構成された集団は、閉ざされた世界を形成し、成員のエモーションな全面的参加により一体感が醸成され、集団として強い機能をもつようになる。

    これが大きい集団になると、個々の構成員をしっかりと結びつける一定の組織が必要となる。
    理論的に人間関係をその結びつき方の形式によって分けると、「タテ」と「ヨコ」の関係となる。たとえば、前者は「親子」「上司・部下」関係であり、後者は「兄弟姉妹」「同僚」関係である。
    「ヨコ」の関係は、理論的にカースト、階級的なものに発展し、「タテ」の関係は親分・子分関係、官僚組織によって象徴される。

    この内、日本の組織は「タテ」の関係で構成されることが多く、それが故に、同一集団内の同一資格を有する者であっても何らかの方法で「差」が設定され、強調されることによって、驚くほど精緻な序列が形成されることになる。
    例えば、同じ実力の資格を有する旋盤工であっても、年齢・入社年次の長短などによって差が生じるというのはこのためである。
    これが3番目の主張になる。

    以上が本書における著者の主な主張である。

    さらに本書ではここから発展して、日本的階層構造の成り立ちと功罪、日本人の能力平等観、社会的分業、日本的宗教観についても述べられる。

    また日本的社会構造から帰着するリーダー論と階層のモビリティ(移動性)についても著者の自論が述べられており、非常に興味深かった。

    これは、日本の階層構造は強い「タテ」関係で成り立つので、一見弾力性がなく硬直した組織のように見えるが、内部構造は実は非常にルーズに作られているという論である。
    つまり、「タテ」線の機能が強く密着しているので、個人の能力次第で自分の上司や先輩の仕事に進入することができる。これは他の社会であれば強いタブーとして扱われるが、日本の集団内部構造は許容する。
    だからこそ、能力の高い若手は自由に羽を伸ばして活動できるので、序列偏重の年功序列の強い組織にいながらそこまで不満を蓄積することなく働けているのだ。

    故に、リーダー個人の能力の有無はそれほど大きな問題ではない。日本のリーダーの威力というものは、部下との人間的な接触を通して発揮される。優れた能力をもつ子分を人格的に惹きつけ、いかにうまく集団を統合し、その全能力を発揮させるかというところにある。

    これは非常に興味深い考察であると思った。
    経験的にも、能力とモチベーションの高い若手が職位を越えて、その組織のタスクを実質的に回しているケースを見てきた。得てしてそうした若手の処遇は年功序列に阻まれて無能な上司・先輩よりも悪いが、彼自身が自由に仕事ができていること、彼の功績は後年になって昇進という形で返ってくるため我慢していることが多い。
    従来はそれでもよかったかもしれないが、不確定性が高まり、人材流動性が高まった現在においてこのタイムラグは致命的である。JTCの人事は無能故にこれに気付けていないが。
    この議論は本書とは筋が異なるので据え置く。

    本書は日本的社会構造の特質、その問題点を鋭く分析した本である。50年以上前の本であるが、その分析は現在にも通ずる精緻なもので、かつ以降の議論に多大な影響を与えてきた。
    こうした思考を頭の中に入れておくことで視野が広げ視座を高めることができる。
    久しぶりに良い本に出会った。
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    投稿日:2024.03.20

  • つー

    つー

    本書は1967年に初版が出されたものではあるが、現代社会の会社の中に、そして政治を動かす政党、官僚組織にも概ね当てはまる内容である。少なくとも私が所属する会社も一般的には社員規模数万人の大企業と言われ、本社組織だけでも1000人以上が働く会社であり、本書の言うタテの構造が全く当てはまっている。今日も誰かが書いた稟議書を眺めながら、誰かが提出してくる企画書を忙しく眺めながら、「そこだけ担当してる立場ではないから、こんなに専門的に(さも知ってるかの様に)書かれても解らないよ」との考えを頭の隅に追いやって、まるで無意識でもある様に書類を決裁者に回す。時折、自分の存在に自信を失うほど、決まりきったタテの構造の一部に陥った自分の姿を客観的に眺めて、果たしてこれで良いのかと疑問に苛まれる。但しこうした構造があるからこそ、更に上の上司が世に言う盲印でもそれ程大きな問題になる事もない。決裁もその分早いのかもしれない。一方、他の部署との調整ごとはいつも難を極める。高く、分厚い壁を設けてくる部門間折衝ほど自分の力を発揮できそうで楽しいのだが、無駄な時間に感じられる事が多い。今日数名の部下と面談したが、正に本書でいうタテ構造の中で評価を勝ち得るか。その難しさに話が集中したりする。本来は組織の枠を超えて十分話し合い、役割分担を明確にしてから、スピード感ある施策を施さなければならないのに、どうも本書記載の通り、互いのチームに如何に仕事を持ち帰らないかの闘いの様相を呈して来る。知り合いのデジタル庁職員から話を聞く限り、各省庁間の横の連携も、概ね同じ様な形で仕事が進められているようだ。果たしてこの構造がいつまで続くだろうか。一つヒントになるのは従来の日本型雇用である、新卒一括採用と年功序列から役やり・能力をベースに組織化する形から、欧米のジョブ型雇用に変わりつつある点である。「うちの会社」も早くから実験的にジョブ型雇用を取り入れてはいるもの圧倒的な指示方=トップダウン式の仕事から脱却に至っていない。その辺りが日本的雇用体系、タテ組織の我が国にあっていないのか、中々当社で本格的に進めるのはハードルが高い。
    少子化だからこそ、ジョブ型雇用の形を取りたいのだが、何となく上からの抵抗に毎回頓挫する事態だ。
    これじゃあいつまで経っても大会社で組織の存在意義を100%意味のあるものにして、有機的に動かすなんて無理なのでは。その様な疑問を抱きながら、自社の組織に置き換えて、時にはメンバーや他の管理職の皆さんの顔が思い浮かびながら、ニヤニヤ読んでいる自分がいた。部門長の皆さんの机の上に配布でもしようかしら。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.12

  • planets13

    planets13

    日本という社会を明快に分析していると思う。場を基礎とする集団意識、縦を基礎とした樹状構造とそのヒエラルキー、これらは現在でも通じるものがあるだろう。初版初刷りの発行が 1967 年、底本の発表は昭和 39 年 (1964 年) というのが信じられないくらい。入社 2 〜 3 年で転職してしまう若者が当時すでに増えていた (p.56) とはさらに驚いた。続きを読む

    投稿日:2023.12.24

  • 349gjwsinferas

    349gjwsinferas

    経営側ではなく、従業員の同期という発想が能力主義を阻み、年功序列を加速させる
    日本では、良きディクテーターシップは起こり得ない。だから、リーダーは無能である方が良い。なぜなら、自身で思考できないが故に、全体の意見を吸収させるため。
    カースト制度などインドは「資格」が重要だが、日本ではどのような「場」に所属しているかが問われる。そのため嫁にいった娘という本当の血縁関係よりも、婿養子の方が重要視される。
    続きを読む

    投稿日:2023.08.24

  • くぴー

    くぴー

    なぜ日本では傑出したリーダーが生まれないのか、なぜ日本の労働力の流動性が低いのか、年功序列はどのように機能しているのか、、、そういった疑問について1つの枠組みを得ることができた。
    60年前の本とは思えないほど、現代でも当てはまることが多くあった。社会が変わるということが、それほど難しいということなのかもしれない。

    本書の内容が記憶に新しいうちに『タテ社会の力学』も読むと、筆者の主張がより理解できました。
    続きを読む

    投稿日:2023.06.25

  • Anony

    Anony

    感想
    時代は変わる。しかし社会のタテ構造はなかなか弛緩しない。気候が人種が、建物の構造が影響を与えているから。長所も短所もある。

    投稿日:2023.06.12

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